海岸の町   作:アイバユウ

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第151話

「カオリちゃんは耐えられるかな」

 

彼がカオリちゃんが眠っているのを確認してから私に話しかけてきた

私としてはこんなことはやめてほしかった。できることならあの町で静かに暮らしている事の方を望んでいた

でも彼女は選んだ。自らの道を。ならそれを尊重するのも彼女のためだと思って強引に押し切られた

各国にとってもゼーレの残党が存在することは重い課題であることは事実だ

政治、経済に深く関与していたから。闇が深すぎる

各国でも排除したいと思っているが根深いだけに簡単にはいかない

そこで局長は彼女をダシにする事で一気に制圧する事を私に提案してきた

私は猛烈に反対したが、これを逃したらもう2度とチャンスは訪れないと言った

今彼女の勇気を利用しない手はないと

 

「耐えてもらうしかないわ。この計画にはいろいろと手がかかっているのよ」

 

今更できませんでしたというわけにはいかないのだ

これは各国の駆け引きという名の微妙な条件の下で成立しているのだ

そうでもなければ成立するはずがない

カオリちゃんをあの町から出すだけでもリスクがあるのに

国外に出すとは無茶な事を考えたものだ

 

「君が賛同するとは思わなかったよ」

 

「私もよ。本来なら拒否したかったけどこういわれたのよ」

 

若い内に芽は詰んでおいた方がいいと

再びゼーレの支配が伸びる前にうまく処理できれば理想的だと

局長は最善の策を出したのだという事は分かっている

代わりに彼女が犠牲になるかもしれない事も分かっている

リスクなしの計画などないと。少しは厳しいラインを進む

 

「現実主義だね。君のところの局長さんは」

 

「まったくもってその通りよ。でもそこが怖いところなのよね」

 

だが現実を直視できなければ問題が生じる。

無視していくわけにはいかず、放置するわけにもいかない。いづれは答えを見つけ出さなければならない

それが戦場なのだから

 

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僕の横で眠っているカオリちゃん。実は睡眠導入剤を混ぜたお茶を飲んでもらった。

緊張するだろうから少し入れておいたのだが効果は抜群だったようだ

ドイツまでは長旅だ。少しはリラックスした時間が必要だから

ルミナさんの言っている事はもっともだ。僕ははっきり言って無謀な賭けに近いと思っていた

カオリちゃんの前では彼女のことを後押ししたが実際は違う

できる事なら彼女には2度とゼーレなどとかかわりを持ってほしくなかった

だが時が止まる事は無い。なら、向かう未来に期待するしかない

彼女が幸福に暮らせる世界を目指していくしかないのだ

 

 

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