海岸の町   作:アイバユウ

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第17話

 

彼女からの連絡に私はあえて笑顔で送り出すことを決めた。

そうでもしなければ命令無視ですら厭わないルミナならばありえないことこともない。

ならばさっさといってさっさと帰ってきなさいとこめて。私は彼女から話しを聞いたがそれは第3者の立場の言葉でしかない。

本当に彼女、いや彼があの時を実際にどう思って生きていたのか私たちには想像もできない。

本当にそれが望みだったのか。本当にそれが彼のためだったのか。ただ、その答えが見つかる日が来ることを私は願っている。

愚かな人である私たちにその結果が納得できるものであるのかわからないが

 

翌日、ルミナが本部に向かって自宅を後にすると、私は自宅の窓から旅館を見ていた。

一応監視という仕事だが、彼女の場合、監視というよりも見守っているといったほうが正しい。

旅館の電話を盗聴するわけでもなく、客に扮して潜入するわけでもない。

彼女が何人にも干渉されずに平和に暮らしているかを確認するのが実質の仕事であった。

今日もいつもの平穏に戻ったかのように暮らしている彼女だが本当にそうだろうか。

あんな事の後に普通に暮らせるものなのだろうか。表面上は普通であってもそれはあくまでも表面上でしかない。

人でもある彼女には内面があるのだ。それは他人には見えることのないこと。

そして時に自分でさえ思っていないことを深層心理の中にあることもある。

深層心理という爆弾が爆発した時、人は愚かで通常では考えられることではない行為をする。

それが人殺しであってもだ。昨日の彼女のように・・・・・・・

 

私は昨日の彼女の行為を正当化するつもりはないが同情はしてしまう。

ようやく得た平穏が何物にも代えがたいものである事は事実だ。

それがどれでだけ他人から見て当たり前の物であっても彼女にとっては大事なものなのだ。

それを守る行為を非難する必要はないだろう。ただ加減が大事なのだ。何事にも

 

私は思う。この大自然のように何もかもか共存できる環境であれば彼女のこれからの道はまた変わったものになっていただろう。

そして、ネルフが存在していなければまたそれだけで変わっていたであろう。

だが事実は変えることはできない。今この歴史を歩んでいる以上替えることができないものだ。

ならば彼女はすべてを乗り越えるしかないのだ。それは他人の力に頼るのではなく、自分の力ですべてを。

 

過去を糧にして生きている人間自身がその過去を捨てていくのに彼女にその考えを押し付けるのはいかがなものかと思うが

 

話は変わるが私達組織の中でも、彼女の扱いに関して疑念がないわけではない。

さらにたった一人のために数億円以上の予算がつけられていることに国連上層部から批判がまったくないというわけではないが。

実際に被災した国々はその極秘予算の承認にあの手この手と裏を回して結局承認されているのが実情だ。

まあ、ほかの国々もあんな大災害を2度と経験したくもないし、自国内でしてほしくないというのが本音だろう。

さらに詳しくいえば世界の中で欧米圏の国は彼女の動向に最も影響されやすい国である。

サードインパクト後、ネルフによってゼーレ協賛国であることが発覚し、国際的な立場すら失った。

特に欧州では主要国すべてが含まれていたこともあってその影響は計り知れないほどであった。

 

また話は変わるが、各ネルフ支部は各国譲渡が決まっていたがネルフによりマギに関しては本部直轄。

さらに現存している量産型はすべて本部移送という事実上の接収が行われた。

すぐにに国連内でこのことが問題になるも監察局設立までエヴァという武装の圧力により各国は黙るしかなかった。

追い討ちをかけるようにサードインパクトの影響は新たな領土問題まで引き起こした。

地軸が戻り始めたことによって北極南極で再び氷が張り始めたのだ。

おまけに南極では失われたはずの南極大陸が確認され、海底の大陸周辺に異常なまでの冷却が確認されたのだ。

それはわずか数年で南極大陸が氷の大陸に戻るという異常なものであった。

海水面が下がった際の領土問題を考える委員会が国連内で設立された。しかし、莫大な利権もあいまって委員会は紛糾。

その影響か、ネルフの問題にどうこう言っている暇がなくなってしまったのだ。自国の利益優先のおかげで。

ただ国連も馬鹿ではなかったのか、ルミナの『爆弾発言』のせいなのか、各国の利権争いにまぎれてネルフ監察局が設立された。

メンバーの大半が国際連合安全保障会議常任理事国の人間であったことは当初メンバーであった私は何の驚きもなかった。

それどころか「こんな部署、すぐにつぶされるだろう」と考えていた。

ところが開設後まもなく、本部に大きな人事異動が発生した。

開設当初に本部所属であった、所謂『ネルフよりの某国』出身者が次々と支部の監察に回されたのだ。

それは事前予告なく、抜き打ちで。当時の騒動は今も覚えている。

安保理も含めた大騒動にまで発展したがなぜか1週間ほどで収束。

それどころか、各国がこの人事に大いに賛成と表明した時の驚きは言葉にも表せないものであった。

まるで何者かの力が働いたかのような収束振りだった。その後この監察局はどことも中立で公正な組織に変わった。

組織の変貌。それによってネルフ側に対する厳しい監察の目が向けられ始めた。

 

 

 

そこから始まったのだ。私たちのネルフとの戦争は

 

そして、彼女、あの女性の保護が始まったのは

 

 

 

 

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