海岸の町   作:アイバユウ

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第176話

 

私達が海岸の町に戻ったころにはすでに夕方だった

ヘリはユウさんが以前から住んでいたところに着陸した

 

「今後はこういう事は控えてもらえると助かるんだけど」

 

ルミナさんの言葉に私はできるだけ頑張ってみますと答えた

 

「分かっています。それにこれで彼女たちとも会う事は無いでしょう」

 

「何か困ったことがあればすぐに連絡してね」

 

ルミナさんはもう少ししたらこの町で数台走っているタクシーが来るわと教えてくれた

今日はそれに乗って家に帰りなさいと

私は分かりましたと言うとタクシーが到着するとすぐにユウさんと一緒に後部座席に乗り込んだ

 

「カオリちゃん。久しぶりだね」

 

「おじさん。お元気でしたか」

 

この町の住民は誰もが顔見知りばかりだ。タクシーの運転手さんとは釣り仲間だ

防波堤でのよく釣りをしている。この町でタクシーは重要な公共交通だ

隣町の設備に整った病院に行くために利用する住民が多いのだ

 

「カオリちゃんは元気がないように思うが、大丈夫なのか?」

 

「少し疲れているだけですよ」

 

私はこの町の人々に心配されることが多い。

以前はよく自殺が多発していた崖の展望台に行っていたからだ

ただもう行く事は無いだろう。というよりも行く必要がないからだ

今はこの温かい町で生きていくことを決めたからだろう

 

「私は変わったのでしょうか?」

 

「カオリちゃんの未来に光が差し込んできたんだよ。きっとね」

 

ユウさんの言葉に私は嬉しかった。もしそうならこれから先、いい思い出だけを覚えておきたい

悲しい思い出をどこかに捨てて。幸せに暮らしていきたい。この町でみんなと一緒に

たとえ途中でお別れの時があろうと静かに暮らしていくのだ。

誰にも邪魔されず永遠に。世界を見守っていく

私とユウさんが乗ったタクシーはすぐに旅館の前に到着した

私は手持ちにいくらかお金を持っていたのでお支払いをしようと思ったら

おじさんに今日はサービスしておくよと言われた

 

「でもそれじゃ、おじさんのお給料が」

 

「釣り仲間だからね。それにカオリは早く家に帰って休んだ方が良いよ。私でも疲れているのがよくわかるから」

 

私はそんなに疲れた表情をしているのだろうか

とりあえず今回はおじさんの優しさを受け取る事にした

タクシーから降りるといつものように正面玄関から入りお父さんにただいまと言った

 

「無事でよかった。カオリ」

 

するとお母さんも近くにいたのですぐに私のところに近づいてきた

 

「無事だったのね?」

 

「ユウさんが守ってくれたから大丈夫だったよ」

 

私がそう言うと夕食はあとで部屋に持っていくからとお母さんは言ってくれた

私とユウさんはそれぞれ別館の自室に行くことにした

部屋に入ると少し気が抜けたように感じられた

やはり疲れていたのかもしれない。私はロッキングチェアに座りテレビを見ていた。

ニュースの話題は世界中の政財界の大物が続々と逮捕されているという話でもちきりだった

すべてはゼーレの影響なのだろう。世界は彼らの身勝手で進むのではなく多くの人々が選んだ決断で進み始めた

これで世界が少しでも平和になれば良いのだけどと願った

 

 

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