海岸の町   作:アイバユウ

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第2話

 

 

朝の海岸の町はきれいだ。

山から太陽が少しずつ上がるのがわかり、近くの小学校や中学校に向かっている生徒も多く見れる。

私はそんな光景を見ながら海岸線に沿った道を歩いている。

海は太陽の光をきれいに反射し、まるで大きな鏡があるようだ。

 

「おっはよう~!カオリお姉ちゃん!」

 

昨日夕方に出会った子供が私に元気よく挨拶をしてきた。私もおはようと挨拶をすると子供は私の髪を見て言った

 

「お姉ちゃんの髪は太陽だね」

 

私は言われたときはその言葉の意味が分からなかったが、子供が説明してくれた。

 

「お姉ちゃんの髪はね、太陽さんの色と同じなんだよ。朝はきれいな白色、夕方はオレンジ色、僕はどっちも大好き!」

 

子供は元気よく私にそういうと嬉しそうな表情をして腰近くまである髪を触った。私は少し嫌そうな表情をしてしまった

すると、その子は、僕、何か悪い事言ったという感じで聞いてきた。

私は別にそんなつもりはなかったが子供は敏感なようだ。

私にとってこの銀色の髪は嫌いだ。多くの罪を犯したがためにこんな髪になってしまった。

それを綺麗と言われても嬉しくなかった。この子が落ち込まないように私は簡単な言い訳をした

 

「少しこの髪にいやな思い出があってね。それを少し思い出しただけなんだ。ごめんね。誤解をさせて」

 

私がそう言うと、その子はそうなんだと言い、でも、お姉ちゃんの髪はきれいだし僕は大好き!その子はそう言うと、

遅刻するからと他の友達と少し早く歩きながら学校の方向に向かった。

この海岸の町は家の軒数はそれほど多くない。町としては小規模で田舎だがのどかな光景は好きだ。

都会はみんな忙しそうに動くが、このあたりは誰もがゆっくりと過ごしている。

感じる事ができない時間がここでは大きく感じられる。

 

 

お昼ごろには八百屋や漁業で生計を立てている人がゆっくりとした午後のひとときを過ごしている。

そんな光景がみれる場所だ。この町にに林間という形で来る中学生や高校生は多い。

近くには第2東京市・第3新東京市があることから、その地域の学校の生徒がくることは珍しくない。

ただ、第3新東京市にある学校関係の生徒は基本的に外部に出る事がないのであろうか、ここに来た事は一度もない。

それが、今回はじめてくることになった。私はそんな事で両親を心配させたくなかった。

 

「たしか、今日の昼過ぎには来るんだよね」

 

私ははっきり言えば会いたくなかった。両親が見せてくれた名簿には良く知った名があったからだ。

でもその時は私は嬉しいと感じてしまった。

 

『渚カオル』『惣流アスカラングレー』『碇レイ』

 

この名前を見たとき、私は本当にそう思ってしまった。

でも、しばらくして自分の事を思うと会いたくないという感情が大きくなり、もうそんな事は思わなくなった。

今の私には関係ないもの。『水川カオリ』なのだから、

 

 

 

私はため息をつきながらいつもの散歩コースである町の外れにある海を見渡せる展望台にたどり着いた。

そこに設置されているベンチに座った。この展望台は崖ギリギリの所に設置されている。

そのため、飛び降りようと思えばできるし、下は複雑な海流をしているため落ちればまず遺体は上がらない自殺の名所だ

そんな場所だが眺めは良い。大海原が一望できるこの場所は写真家やその手が好きな人物が良く訪れる。

今日はまだ誰も来ていないがおそらく昼過ぎからは訪れるであろう。

この場所の、この町のすばらしさのあまりこの場所に家を作り住んでいる一人の男性がいるのだから

彼と会う事は良くある。夕日が綺麗な海岸、そしてこの展望台などで。

よくモデルになってくれないかといわれたが私は断った。そんな事ができるほどのヒトは良くないと。

最初はあきらめずに何度か来ていたが、今ではいつか良い返事を期待しているよと声をかけるぐらいだ。

 

 

 

今日は風が強く、私の髪が時々風に流される。

それもまたこの場所の魅力なのかもしれない。自然が生き物のように感じられるこの場所の

人はあの悪魔のような出来事によって、自然という本来お互いに共生しなければならないものを見失った。

それを感じることができる場所はもはや少なくなっている今、そんな場所が残っている場所は数えるくらいしかないだろう。

これからさらに開発が進めばさらに減るであろう。人は傲慢だ

世界を創造し、少し余裕が出てきた今だからこそ分かる世界の感情。世界はまだ悲鳴を上げている。

私はそれを感じることはできるが、それを伝える事はできない。

神がすべてを教えてはならない。人は自立しなければならない。誰かの意思に従ってはいけないのだ

 

 

 

「今日も早いね。それにしてもいつみても綺麗な光景だね。カオリちゃん」

 

私が深い深い考え事をしていると声をかけられた。

大海原に向けられていた視線を陸地側に向けるとそこにはカメラを持った、20代ぐらいの男性が立っていた

この人物こそが私がさっき話したこの場所をこよなく愛する男性である

 

「ええ」

 

私が愛想なく返事をすると、彼は私を見て珍しいねといった。私にはいったい何が珍しいのかが分からなかった。

 

「いつもは明るい表情で言葉を返すのに今日はものすごく深刻そうな表情で言葉を返してきた来たからだよ」

 

彼はベンチにカメラの機材を置き、私の横に座った。

 

「心配な事でもあるの?」

 

私は別にとまたぶっきらぼうに答えてしまった。不機嫌なときの自分はどうしてもそういう答え方しか出来ない。

もともとあの1年間、『ヒト』とのコミュニケーションなど誰もいないのできるはずもないし、

もともとの性格もあって、人とのコミュニケーションはさらにやりにくくなった。そんな私でも彼はいつも話しかけてくれる

 

「いろいろと、悩む事もあって」

 

私はもう行くねと言うと、その展望台を後にした

 

 

 

もう時間はもう少しでお昼過ぎ。

展望台からあの砂浜までの道は前半は横ががけっぷちの道、後半は砂浜が横に広がる道である

太陽さんももう少しで真上に来る時間だけあって、道路のアスファルトから熱が湧き出てくるように感じる。

今日は特にそう感じるのはやっぱりあれの所為なのだろうか

町の中心部まで後半分というところまで歩いたとき、後ろから大型バスが走ってきた。

一応この道は1車線分しかなく途中で行き違いができるように一部広い部分もあるが

砂浜が見えるところまでいかないと1車線が続く。そんなところを大型車が通ればいやでも目に付く。

私がバスに乗っている人を見るとそこには私の良く知る人物達がいた

そして、その人物達は私を見て驚きの表情をしていたように見えたが、何せ一瞬しか見れなかったので詳しい事はわからない。

 

「別に家で会うんだし。いいか」

 

私はそう言うと再び歩き出した。この暑く、家まで続いている道を

 

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私が家に着くと、もう中は生徒でごった返していた。大きな荷物を持った生徒が先生から説明や諸注意を受けていたが

皆、これからのことに気持ちが高ぶっているのかあまり聞いてはいなかった。

 

「あら、カオリ、おかえり」

 

お母さんが私を旅館のロビーで見つけて声をかけてきた。

私は今日は暑いし早く帰ってきたのと言うと、お母さんはそうねと温かい笑顔で私の言葉を返した

ロビーにあるイスに座りのんびりとここに設置されているテレビを見ていた。

部屋に帰っても特にすることのない私はこうやって過ごすこともよくあることだった

別に私のことを知っているのは旅館で働いている人と両親しかいない。さらにあのときの仲間とは年が違うのだから。

私はもう戸籍上18歳、身長も普通の女性より少し高めなので特に年齢が低く見られることはない

戸籍を登録した際に私の年齢が分からなかったので、年齢を高くして登録したのだ。

だから安心して過ごせるはずなのだが、今はものすごく不安である。

 

「あの、少しいいですか」

 

私が少しずつ悪いほうへ考えが進み始める直前に声をかけられて声が発せられた方向を向くと、そこにはあの3人の仲間がいた。

何とか平常心を最大限に使って冷静になると、かまいませんよと了承の言葉を出した

大丈夫、気づかれないと、必死に自分を落ち着かせようとするがとてもそんなに簡単にはいかない

 

「はじめまして、渚カオルと言います」

 

「私は碇レイです」

 

「私は惣流アスカラングレーです」

 

3人はそれぞれ自己紹介をするが私はあまり聞いていない。もうなにがなんだかわからなくなりそうであった。

どうして私に話しかけてきたのか。どうして自分の事を見るのか、もう何も考える事ができなくなりそうだった

 

「カオリ、どうかしたの?」

 

私の様子に気づいたのかお母さんが声をかけてきてくれた。

私がお母さんのほうを見ると、少し慌てた様子で私に近づき3人に言った

 

「ごめんなさい。この子、少し熱射病にでもかかったみたいだから、部屋で休ませるわ」

 

ごめんなさいねと謝ると、カウンターでいろいろと仕事をしていたお父さんを呼んだ。

私をおぶって部屋まで連れて行くように頼んでいた。

お父さんは私の顔色を見て、お母さんに簡単な昼食をもってきてもらうように頼んでいた。

私はとても申し訳ないと思っていた。3人に会っただけでこんな気分になるなんて夢にも思わなかった。

吐き気、頭痛、眩暈、まるでたちの悪い風邪にかかったような気分になった

そう考えている間に私はお父さんのおぶられて別館にある私の部屋に連れて行かれた。

お父さんが布団を引いて私を寝かせてくれた

 

「カオリ、無理はするな。まだ1年しか経っていないんだ」

 

お父さんは私に毛布をかけながらいうと、私はありがとうと返すので精一杯だった。本当に気分が悪い。

それに気づいたのか、お父さんは私をおこし、背中をさすってくれた。たったそれだけだが少しは楽になった。

 

「あなた、カオリは」

 

お母さんが簡単な昼食を持って部屋に来た。本当に心配してくれたようだった。

お父さんが大丈夫だというとお母さんは安心した表情になったが、私がまだ顔色が悪かったのか、

 

「やっぱり心配だわ。近くのお医者様に」

 

そう言ってくれたが、私はそこまでしなくても大丈夫だよと返した。

ただ彼らに会ってあのときの記憶を思い出してしまったのだから。

あの悲惨な赤い世界にいたときの記憶。幾度となく忘れようと思ったが忘れる事ができなかった記憶

その記憶を夢で見ようものならしばらくは寝付けない。怖くて仕方がないのだ。またあのときに戻るんじゃないかと。

 

「なら、しばらく私がついているわ」

 

お母さんがそういってくれたが私は大丈夫だよと言い、断った。二人にそんなに迷惑はかけたくなかった。

これは自分の犯した罪の償いのようなものだ。

それに両親を巻き込みたくなかった。だが、お母さんは譲らなかった。

 

「だめよ。あなたは私の娘なんだから、それにあの子達はこれから海に泳ぎに行くそうよ。仕事は少し時間が空くから」

 

どう言っても動きそうにもないお母さんに私はそれじゃお願いと言うと、はいとやさしく微笑みながら言った

お父さんは、お母さんにそれじゃカオリを頼むぞと言うと仕事に戻っていった。

部屋を出て行く直前に、体調管理はしっかりとなと言い戻っていった

お母さんは不器用な人ねと言うと、私はお父さんらしいよと返した

彼女は私の頭をひざに置くと子守唄を歌ってくれた。

それは私があの夢を見て寝ることができなくなった時によく歌ってくれた歌

私はこの歌が大好きだし、本当にこの歌を聴くと眠ることができ安心できる。

お母さんの温もりが近くで感じることができるからだろう。家族の温もり。

私にとって、一生で会うことはないと思っていたものだったがこの場所で初めてであった。

あの戦場のような場所であった第3新東京市ではそんな愛情はもらえなかった。ただ、使徒を倒すために生きていた。

今になって考えてみればそんな感じでいたのかもしれない。だが今は自分の時間をゆっくりと過ごしている

そんな事を考えているうちに眠気に襲われた。後は何もわかない

 

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「あらあら、本当にこの歌が好きね」

 

この子がいつも眠れないときに歌ってあげる歌。私も小さいころはこのうたで眠ったことがある

そして今、私は人類を、世界を救ってくれたこの子に、親の愛情など知らぬカオリに私は精一杯の愛情を注いだ。

この子には幸せになる権利がある。いや、どんな人間にもその権利はあるはずなのに。

この子は一番つらい事を経験し、幸せなるどころか、大きな悲しみを背負った

私たちにいろいろと話してくれたが、おそらく私たちが想像できないほどの苦しみや悲しみを経験したのであろう。

あの子がこの話をするときはものすごく悲しい目をしている。

もし、神様がいるなら、この子にどうか幸せを、世界を救ったこの子に。

私たちの娘にどうか幸せを与えてあげてほしい。たった少しの幸せでもいいから。

でもそんなものはいない。この子が一番分かっている。この世界には神様などいないということを。

そしてこの子の話を聞いた私たちも。それでも願いたいというのは私の身勝手なのか。

できれば、あの子たちにはもう会わせたくない。もうこの子が苦しむ顔は見たくない。

たとえ、自分が生んだ子でなくても、今この子は私の、いや私たちの大切な娘なのだから

 

 

 

 

 

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