海岸の町   作:アイバユウ

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第29話・第30話

 

地下1階の駐車場に到着すると2人は車に乗り込み,

駐車場から出ると街へとくりだしていった

 

「さて、いったいどこに行きたい?」

 

ユウさんが聞いてきた。

私は出かける先など特に考えていなかった

 

「あの、第三新東京市立第壱中学校に行ってもらってもいいですか」

 

「かまわないけど、何かあるのかい?」

 

ユウさんは車に装備されているナビ機能を使い第壱中学校を登録した

そして、ナビの指示に従って、その方向に向かった。

その途中、懐かしいと感じてしまった私

今でも過去を引きずっていると実感した

でも、過去は捨てられない。

過去があるからこそ今の自分があるのだから

そんなことを考えているうちに第壱中学校が見えてきた

 

「懐かしいのかい」

 

「どうして知ってるんです」

 

まるで私の過去のことを知っているかのような口ぶりに

私は警戒心をむき出しにしてしまった

 

「気に触ったならごめんね。ルミナさんからある程度の事情は聞いてるよ」

 

「どこまで知ってるんですか」

 

ある程度、そのある程度が私にとっては重要だった

 

「君の過去を詮索するつもりはないから安心して」

 

そう言われても、私の不安は払拭されなかった

どこまで知っているのか。それが私にとっては重要だった

 

「君がサードチルドレンだったということまでは知ってるよ」

 

つまりすべて知っているということだ。

私はこのとき、自分の手元に銃がなくてよかったと思った

もし持っていたら、私は迷わず撃っていたかもしれない

 

「君にどんな過去であったとしても、水川カオリに違いないんだから」

 

その言葉を聞き安堵の表情を浮かべた。

彼はきっと、いつまでも私の味方でいつづけてくれる。

 

「こんなところにずっといてもあれだし、街に戻ろう」

 

「そうですね」

 

そうして、私達は再び街の中心部に戻っていった

 

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今日は日曜日ということもあり、街の中心部は人通りが多かった

 

「今日は人通りが多いね」

 

「そうですね」

 

中心部は交通量も多く、一部では渋滞も発生していた

海岸の町とは違い、多くの人がいる街。

 

「どこかで朝ごはんにしようかな?」

 

たしかに今日はまだ何も口をしていない。お腹もすいてきた。

ユウさんは近くのファーストフード店の駐車場へと入っていった

そして、2人そろって降りるとお店に入っていった。

 

「カオリちゃんはなににする?」

 

「私はハンバーガーのセットでかまいません。ドリンクはオレンジジュースで」

 

「わかったよ。先に席を確保しておいてもらえるかな」

 

「わかりました」

 

私はファーストフード店の空いている座席を探した。

そして、混雑している中、ようやく2人分の開いている座席を見つけた

本来は4人で使うスペースだが、今は仕方がないだろう

しばらく待っているとユウさんが私のハンバーガーセットを持って現れた

 

「僕のは少し時間がかかるみたいだから、先に食べていていいよ」

 

そう言われたが、何か気がとがめたため、私も一緒に待つことにした

数分後には私と同じハンバーガーセットが店員が届けてきた

 

「それじゃ、食べようか」

 

「はい」

 

私達は少し遅めの朝食を食べ始めた

私はハンバーガーセットを味わいながらゆっくりと食べる

ユウさんはなんだかせわしなさそうに食べていた

 

「ユウさん、急がなくても大丈夫だと思いますけど」

 

「気に障ったらごめんね。昔からの癖でね」

 

ゆっくりと食べるねというと私の同じペースで、ゆっくりと食事をしていた

食べ終わるとゴミをゴミ箱に捨てて、ファーストフード店を後にした

 

「さて、これからどうしようか」

 

これからどうするかはなにも考えていなかった

街をゆっくり見るのもよし、ホテルに戻ってプランを練るのもよし

でも私は心のどこかで、懐かしさを感じていた

それと同時に嫌悪な気分も感じていた

自分にとっては悪魔のような場所だった

 

「とりあえず、もう1度街を見ませんか?」

 

「そうだね。この前はあんなことがあって、ゆっくりできなかったしね」

 

そう、この前はあんなことがあって、たしかにゆっくりできなかった

私達は車に乗り込むとゆっくりと街を見物していった

遷都の話は相変わらず進んでおらず、いまだに首都は第二東京市のままだ

 

「高台からこの街を見てみようか」

 

「はい」

 

ユウさんは車の進路をこの街が一望できる展望台の方向に向けた

そこは昔、ミサトさんと一緒に街を見た場所と同じ場所だった

その場所に向かって車は走り出した

数十分後にはそこに到着した

私とユウさんは車から降りると、展望台へと向かった

そこから見える風景は多少なりとも変わっていたが、『昔』のままだった

 

「神は天にいまし、全て世は事もなしか」

 

あのときの神様が見れば、今の風景をどう感じるだろう。

それは今となっては分からないことだが。

私には懐かしさと苦しさしか出てこなかった

 

 

 

 

 

 

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