海岸の町   作:アイバユウ

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海岸の町(パート6)
第44話


 

私は朝食を食べ終わると、裏口から食堂のキッチンに入っていった。洗い場に食器を返すとまた裏口から出て行った。

そして、朝の散歩に出かけようとしたとき、もらったばかりの携帯電話が着信を告げていた

相手はわからなかったが、出てみた

 

「もしもし」

 

『カオリちゃん、相葉ユウだよ。これが僕の携帯電話番号だから登録しておいて』

 

電話の主はユウさんだった。

電話の通話内容通り、携帯電話番号を知らせてきたのだ

 

「わかりました。でもどうして私の携帯電話番号を知ってるんですか?」

 

『君のお母さんに聞いたんだよ。だから電話したんだよ。これでもし何かあったとき連絡が取りやすいでしょ』

 

確かにそのとおりだ。携帯電話を持っているほうがいろいろと都合が良い。

 

「わかりました。登録しておきますね。ところでネルフの動きはどうですか?」

 

今、一番気になる話題だ。今後の私の行方を左右する重要な話題だ

 

『今のところ、静かな様子だよ。僕の協力者の話によるとね』

 

「1つ聞いても良いですか?」

 

『なんだい』

 

「ユウさんの協力者って誰なんですか?」

 

『君も知っている人だと思うよ。ただ警戒だけはしないでほしいけど』

 

私が知っていて諜報関係に強い人といえば1人しかいない

 

「加持リョウジさんですか?もしかして」

 

『大当たりだよ。彼は僕達の味方だよ。いろいろと情報を流してくれる』

 

信用できるかどうかは分からないが、ユウさんがいうなら間違いないだろう

 

「そうですか。でしたら加持さんに伝えてほしいことがあるんですけど、伝えてくれますか?」

 

『かまわないよ。何を伝えてほしいんだ?』

 

「畑を守れなくてすみませんでしたとだけ伝えてもらえれば、意味は分かると思います」

 

『わかったよ。伝えておくよ。それじゃ、またね』

 

私は言われたとおりユウさんの携帯電話番号を電話帳に登録した

 

 

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電話帳の登録を終えた私は朝の散歩に出かけた。海岸の砂浜に向かって歩いて行った。

その途中で何台かのバスとすれ違った。おそらくどこかの学校の林間学校なのだろう

今夜はうちの旅館は騒がしいことになりそうだ。

 

「今夜は騒がしいことになりそうね」

 

そうしていろいろと考えながら歩くと、海岸の砂浜まですぐ着いた

道路から砂浜に降りると波打ち際、ぎりぎりまで近づいていった

 

「そんなに近づくと濡れるよ。水川カオリちゃん」

 

突然懐かしい声を聞き振るかえると、そこには加持リョウジさんが立っていた。

 

「加持さん」

 

「覚えていてくれてうれしいよ。カオリちゃん」

 

「加持さんは、碇シンジって呼ばないんですね」

 

「そう呼ばれたいのかい?」

 

「いえ、今の私は水川カオリです。碇シンジはもう死にましたから」

 

私がはっきりと言うと加持さんは笑った

 

「今ははっきりとした意志を持っているみたいだね。あの時とは大違いだね」

 

あの時、それはきっと加持さんと本当の意味で語り合ったときのことを指しているのだろう

 

「あのときの私は死にましたから。今の私は今を精一杯生きることが目標なんです」

 

「そうみたいだね。それにしても碇指令拉致事件の犯人が君だったとは思わなかったよ」

 

「もともとの発案ではもっと良い方法でいくつもりだったんですけど」

 

そう、本来ならあんな強引な手段をとる計画ではなかった

もう少しおしとやかにいくつもりだったが。仕方がなかった。それよりも問題はどうしてここに加持さんがいるかだ

 

「どうしてこちらに来られたんですか?」

 

「一応、名目上は休暇ということだよ。本当の目的は君と話がしたくてね」

 

私と話。どんな話をしたいのだろう。

 

 

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