海岸の町   作:アイバユウ

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第61話

 

あの出来事から1ヶ月が経過した。私は相変わらず、平穏な日々を過ごしている。

何も異常のない平穏な日々。かつて、昔『僕』ほしがっていた時間だ

今は私がそれを有効に使っている。なんとも皮肉なことなのかもしれない。

でもそれはそれで良いと思っている。私は今日も海岸の砂浜から夕日を眺めていた

いつもの光景だ。当たり前の光景がようやく戻ってきた。あの1ヶ月前の悪夢のような出来事から

 

「カオリちゃん。よかったら送っていくよ」

 

「お願いします」

 

ああ、そういえば少し変わったことがあった。ユウさんとの距離感が僅かながら近づいてきた。

それはそれで良いのかもしれない。人と接する機会が増えるのだから

私は砂浜から立ち上がり道路まで戻るとユウさんのSUV車の助手席に乗り込んだ

最近はいつもこんな感じだ。送ってもらってばかりいる。

足が鈍ってしまいそうだ。そんなことを考えながら、私は彼に最近は甘えてしまう

それが良いことなのか、悪いことなのかは、私にも判断できない。

きっと誰にも判断できないだろう。お父さんとお母さんには安心されている

今まで真っ暗な道を1人で歩いていたのに比べて車での送迎のほうが安全だからだ

 

「カオリちゃん、今度、どこかに観光に行こうか」

 

「どこかにですか」

 

「そうだよ。この街から少しはなれて、ちょっとした2人旅ってやつだよ」

 

私はそのアイデアに良い響きを感じた。

たまにはこの町から離れて、どこか放浪するのも良いだろう

そんな考えが私の脳裏をよぎっていた。

 

「良いですね。でも、ネルフのこともありますし」

 

そう、1ヶ月経ったとはいえネルフの影が完全に消えたわけではない

 

「そうだね。でもたまには思い切ったことも良いと思ってね」

 

それも確かだ。

思い切ったことをしてみることも良い事だ

でもその前に以前はルミナさんの家、今はティアさんの家に相談にいかないとと考えていた

 

 

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自宅の旅館の前に付くと助手席から車を降りた

 

「送ってくれてありがとうございます」

 

「良いよ。気にしないで。それじゃ、また明日」

 

「はい、また明日」

 

つまり明日旅行計画を練ると行くことだろう。旅行は楽しみだ

今までずっとこの町で過ごしてきたから。正面玄関の受付にはお父さんが待っていた

 

「今日も送ってもらったのか」

 

「うん、お父さんはユウさんのことは嫌い?」

 

「そういうわけじゃないが、彼が絡むとお前が危ない橋を渡ろうとするからな」

 

確かにその通りだ。ユウさんと絡んだ出来事で、安全なまとものことはなに1つなかった

心配するのは当然のことだ。

 

「大丈夫だよ。今回は危ない旅行じゃないから」

 

「旅行か、どこに行く予定なんだ」

 

お父さんは旅行という言葉に反対することはなかった

 

「まだ決めてないけど、どこか少し離れた場所に行こうかと思ってるの」

 

旅行のプランなど何も決まってはいない。でも私はまたどこか遠くにいきたいと思っていた

この世界を見てまわりたいと

 

「そうか。俺は反対はしないから母さんに話だけは通しておけよ」

 

「わかってるよ。お父さん」

 

確かにお母さんに話を通しておかなければならない話題だ。きっとお母さんもお父さんと同じように心配するだろう

でもきっと認めてくれる。そんな気がした。私は正面玄関から別館の自分の部屋に入ると、ベレッタM92の掃除を始めた

この銃を受け取ってから、もう習慣のようになっていた

 

「これじゃ、危ない18歳に見えるわね」

 

独り言を言ったが確かにその通りだ。銃を片手に旅行をしようとしている

傍から見れば、危ない少女に見えるだろう。それでも重要なのだ。この銃は

 

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