海岸の町   作:アイバユウ

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第72話

あの悲劇から時間が経過した。ネルフの影は薄まりつつあった

私は再び心休まる日々を過ごせることが多くなってきた

ようやく忘れてきたことに心から嬉しいと思っていた。

ようやくだ。もうこれでネルフとは縁は切れただろうとこのころはまだ思っていた

しかしまだまだ続きがあるとは思ってはいなかった。

ルミナさんの家はあれから何度か訪れたが、彼女と会う事はなかった

相葉ユウさんに連絡を中継する形で取ってもらったら、監察局での問題が解決するまでは

戻ってることはないと言われてしまった。少し寂しさを感じてきたがそれはそれで仕方がない

ルミナさんも仕事なのだから。私はそう納得するしかなかった

今日も私はいつも通り朝に起きると、事務室に行って猫のえさが入っているキャットフードを手にする

いつも通り小皿に盛り付けるとそれを持って本館と別館の間にある広場に持っていった

するとそこには以前と変わりないネコさんたちの集まりがあった

その事に私はまた少し、うれしさを感じた。変わる事がないものがある

それがどれくらい重要なのかをよく理解していたからだ

私の部屋の金庫には拳銃が入っている。ユウさんがいつでも使えるようにと100発入りの弾と一緒に

もちろん、ここにいる限り使う事はないだろう。平和な町なのだから

こんな小さな町で銃を使った出来事など起きるはずがないとその時は簡単に考えていた

誰だってそうだ。ある程度エサやりを終えたとき、友達の仲居さんが声をかけてきた

 

「カオリちゃん。自分のご飯もちゃんと食べないとだめよ。最近食事量が落ちているらしいってみんなで心配しているんだから」

 

その言葉に私は思わず苦笑いをしてしまった。あの激動な日々を迎えてからというものの。

食事量は大幅に減ったことは事実だ。仕方がない。いろいろとトラブルがありすぎたのだから当然と言えば当然の結果だ

まだまだ、普通の人の半分ほどしか食事量はとっていない。

あの事件の前からもあまりとっていなかったからなおさら心配されてしまった

だから私は今日はちゃんと食べますと答えた。本当に食べられる稼働は分からなかったが

とりあえず答えを用意しておく必要はあった。そうでないとまた心配をかけてしまうのではないかと思ってしまったからだ

私はあの時から逃げないと決めたのだ。昔は逃げちゃだめだと言っておきながら逃げてしまった。

しかし今は違う。ようやく得た幸せを壊さないためにも逃げることは決してしたくない

平和に暮らすためには時には正面突破しなければならない時もある事を学んでいた

私はネコさんたちのエサやりを終えるといつものように、小皿をもって事務室に戻った

洗面台で小皿を洗うとネコさん専用のお皿置きのコーナーに戻すと食堂に向かった

 

「おじさん。今日の朝食は何ですか?」

 

「焼き鮭とみそ汁にご飯だ。多めが良いか」

 

いつものぶっきらぼうな答えだがそれでも心配してくれていることが言葉の中から分かった

私はいつも通り少な目でとお願いすると仕方がないなと言った表情でご飯の量を減らしてくれた

私はそのご飯を食べ始めた。まだ8時ごろという事もあり、食堂にはあまり人はいなかった

食堂が本格的に混雑するのは9時から10時の間が多い。今日は団体のお客さんは来ていないという事は知っていたので

私は静かな1日が過ごせそうと思った。食事をいつものように何とか食べ終えると、ロビーに向かった

受け継にいるお父さんに海岸まで行ってくるというと、いつものように旅館で使うお酒の注文を頼まれた

本当なら電話で済むことなので私に頼んでくるのは、どこかにふらついていってしまう事を心配しているのだと思っていた

本当のところはどうなのかはわからないが。私はいつもの注文のメモを預かると靴を履いて歩いて海岸まで歩いていった

 

「戦争と平和は紙一重っていうけど、本当なのかも」

 

私は砂浜まで歩きながらそんなことを考えていた。

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