海岸の町   作:アイバユウ

9 / 299
海岸の町(パート2)
第9話


 

 

「よろしいのですか。局長」

 

一人の青年が少々年季の入った人物に向かって言っていた。

 

「かまわんよ。我々が何も知らぬと思っている連中の事だ。それに例の子には彼女が警備任務についている。問題はなかろう」

 

「ですが今回の件で我々の行動が露見する可能性も」

 

彼はルミナが行った行動に対しても不満を持っているようだ

ここは国際連合直属ネルフ監察局。ネルフの行動を監視し、権力がきちんと履行されている事を確認するところだ

先の大戦時の行動についてネルフがすべて信用された訳ではなく、ある人物の言葉がそれをなくしてしまった。

だが、それを表に出す事を恐れたのか国連は密告者を私に保護させ新たなポストを割り当てた。

彼女は私の元で監察局所属特別監視員としてある人物の警備に当たっている。もちろん、警備対象者には内緒でだ

ところが、昨日の報告で露見したというのだ。まあ、報告を受けた時点でやむをえないものだったと処理されたが

 

「なぜ彼女に任せるのです」

 

ルミナにそれほどの重大機密をなぜ彼女一人に任せるのかと言いたいのだろう。

彼にとってルミナは正体の知れない女性でしかない。私がどれほど彼女の事を説明しようと受け容れる事はないだろう。

私が彼女から聞かされた内容を言ったとしても・・・・・・

 

「彼女自身がそう望んでいるからだよ」

 

私にはそう返すしか言葉はなかった

 

 

------------------------

 

「はい、ネルフへはそのように、」

 

海が見える丘の上の小さな家、それは海岸の町に住んでいるルミナの自宅。

私はとある相手と電話をしていた。相手は私の上司。

 

「以後気をつけます。はい、それでは」

 

『ガチャ』

 

受話器を戻すとため息をつき、ベットに座った。ベットの上におかれた2冊のファイルを取り出した

それは毎月監察局が送ってくるネルフの行動記録と彼女に関連するような行動がされていないかを記録したもの

ただ今回の事でネルフ自身が動き出すの当然だろう。明日か明後日には彼女の事情聴取か連行という可能性もある。

それはなんとしても阻止しなければならない。今のネルフに彼女を連れて行くのは愚策としかいえない

 

 

 

「私は、『彼』を守りたいの」

 

視線の先にはカオリが住んでいる旅館が見えた。この家からは良く見える位置に旅館が建っている。

 

 

 

いや、逆なのだ旅館が見える位置に家が建っているのだ。それは・・・・・

 

「主よ、あなたの望みの通りに」

 

その言葉の意味は彼女への気持ち。私を守ってくれた事への恩返し

 

-------------------------------------------------------------------------------

 

もう少しであの旅館につくがあたりは真っ暗だ。たぶん彼女の両親も彼女のことを心配して待っているだろう。

彼は彼女の両親にどのように説明をしようかと悩んでいた。彼女を見れば確実に何かあったと感じるのは当然だが。

自分にはきちんとした答えは持ち合わせていないただ、もっているのは彼女だけだ。

あの夫婦なら無理には聞き出さないだろうが心配をかけることを嫌う彼女は無理に明るく振舞う可能性もある

 

どのように彼らに話そうか。私はそれだけを考えながら運転をしていた

自分は結局彼らから何かを聞かされたわけではなかった。

ただ、あなたの連れてきた子に危険が迫っていると言われただけだったが、私は彼らを信頼する事ができた

普通ならば信頼できないはずなのだが、彼らが来る直前にずっと尾行していた車が突然走り出したのを確認していたからだ

おそらく尾行していた対象者は彼女である事は明白だった。そして自分はその人物の顔に見覚えがあった。

ニュース等で見たわけではなく戦場で見たのだ。あの神の使いと謳われた二人の女性のパイロットの作戦指揮官だった女。

そして、俺達の仲間を殺した女だったのだから

 

あいつの顔は死んだって忘れはしない。

 

カオリちゃんには話さなかったが、俺は一応元ゼーレ側の人間だ。

もっとも傭兵として雇われていたが組織の最大の機密を知った事で仲間たちと反乱を起こした。

ゼーレの施設、現在のネルフドイツ支部の施設を占拠したがあの女が指揮する奴に殺されあいつ自身も参加していた。

俺はなんとか逃げる事ができたが特定の場所にずっと居らず町を転々とした

そして2016年、ゼーレが壊滅しネルフが英雄となったことをテレビで知ったときあの女が映っていた。

意気揚々とテレビでコメントしているところを見た俺は現実から離れる事にした。

日本では『帰還者』にたいして戸籍を提供していたことから、それを利用して自身を帰還者に見立て戸籍を得た

いろいろな場所に放浪したがその時にこの海がきれいに見えて自然が多く残っているここに居ついた。

ネルフが本当の英雄でない事は自分は良く知っている。ネルフのことはゼーレの機密を知ってから存在意義を知ったのだから

 

補完計画の遂行のための特務機関、そしてマルドゥック機関の真実。

それらを知っているからこそ今回彼女が遭遇した事態は何となく推測できる

彼女が銃を発砲しなければならない事態が買い物途中で発生し人を殺めたという事実が彼女を傷つけた。

ルミナさんはなぜかその場に遭遇した。おそらく彼女はカオリちゃんの護衛といったところだろうか。

そこから考えられる事はカオリちゃんがネルフになんらかに関係しそれもかなりの機密事項に当たるという事だろう

 

 

 

まあ、これは推測だが本当のことはわからないが自分はこれからも彼女の事を守っていこう。たとえ・・・・・

 

たとえ、彼女が茨の道を歩こうと自分はそれについていこう

 

それが自分にできる彼女への恩返しだ。

 

自分は彼女と出会い最高の思い出を手に入れることができた

 

ただ、いまはそれに感謝したい

 

 

 

私は運転しながらそんな事を考えた

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。