セブンスドラゴンⅢ code:VFD inブルー 作:メレク
2020年、人類は危機にさらされた。
世界の主要都市に竜(ドラゴン)が、フロワロと呼ばれる赤い花を咲かせながら進行した。
人類の力を圧倒的に凌駕するドラゴン達に、人間は怯え、すくみ、死を選ばざるを得なかった。狂喜する者も、泣きわめく者も、皆死んでいった。
しかし、そんな中で立ち上がる者達がいた。
ムラクモ。そう呼ばれていた施設の新人部隊、13班は、心が荒んでいた人々と協力し、道行く数多の竜を倒していった。
そしてその力は上位のドラゴン、七体の帝竜を打ち倒し、帝竜を引き連れ地球に進行してきた第三真竜ニアラにさえ届いた。
結果を言えば、人間は竜という天災を乗り越えてみせた。各世界、甚大な被害を受けたものの、復興が始まる。
しかし、現実は非情だった。
翌年、2021年、復興の目処が立たない内に、第五真竜フォーマルハウトが東京に顕現した。
毒性の高い黒いフロワロを出しながら世界を蝕む天災に、英雄と称されていた13班は再び立ち上がった。
大勢の人がなくなっても、仲間が犠牲になっても、彼らは戦い続けた。
そして____________
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「Gayyyyyaaaaa!!!」
洞窟内に、絶叫に似た雄叫びが上がる。聞いたものを震えあがらせる一声。しかし、それでも立ち向かってくる奴等がいた。人間の、女が二人、男が一人。
仲間意識はなかったが、ここにいた同族は全て殺された。軽く耳にした程度だが、少し話したことのある雷竜も、いまいましい炎竜も殺されたらしい。
「やぁぁぁ!!」
「これで...フレイム!!」
こちらの弱点が炎だと知っていたのだろう。攻撃は炎を纏った武器だったり、炎自体だったりする。一方で、こちらの攻撃はそこまで通らない。何か対策をしてきたのか、それとも______
(俺の攻撃が効かないほど、強いか...)
真竜の中でも人気のないフォーマルハウトは呼び出せる指揮官竜が限られていた。だから、炎や雷の奴は一度死んでいた所を再び蘇されられたし、自分も選ばれてしまった。
しかし、自分はフォーマルハウトのような、人間を殺すことに生き甲斐を感じていなかった。だからこそ氷の城を作り、自分からは決して人間を襲うことはなかった。
来るものを拒む巨大な城。冷気で全てを拒絶する城。
しかし、奴等はやって来た。氷の城を踏み越え、ここまできた。
「萌えろぉ!」
「それ字違くない!?」
「おっといつものくせが。気にしないでくれ」
「気にするわよ!」
男の放った魔法を氷で打ち消す。だが、その隙を突かれて剣技を食らってしまう。
「gaaa!!」
傷口が燃えるように痛んで叫びを上げる。しかし、抵抗のため振るった爪は避けられてしまった。
一撃の力では遠く及ばないが、それを補う速さが人間にはあった。だからこそ、致命傷を負わせられずにこちらが攻撃される。
その行動にうんざりした。
(しつこい...消えろ。ニンゲン)
「glllaaaaaaaaaaaa!!!!」
「来るよ!」
「シールド展開!」
「刀子!すぐとどめをさせるように!」
「うん!」
自身の巨大な翼に冷気をため、それを一気に放出する。ブリザード。
礫一粒一粒が、鉄の塊のような力を持って相手に向かう。その冷気と相まって、凍え死ぬことを強制させる一撃。
(いけ)
翼をはためかせ、死の一撃を放つ。体力的に、最後の一撃。
「うひょー!こっわ!」
「うぅ...大丈夫。刀子!」
「いける!」
______しかし、それは、三匹もいる人間、誰も殺せなかった。
「はぁぁぁぁ!!!」
それどころか、炎を纏った剣で、切り裂かれた。
「やった!」
「これで最後の帝竜か...」
力の限界で倒れるのを見て、人間の男女が喜びの声を上げる。
「ga、ga」
強いものが弱いものを淘汰する。自分達竜がしてきたのはそういうことだった。
それが人間の方が強くなっただけなので、悔しさはあれど怒りはなかった。
(...強いて言うなら)
最後に思ったことは、
「さよなら...ゼロ=ブルー」
(...フォーマルハウトも、倒して欲しいな)
自分をこんな場所に連れてきた竜の退治だった。
こうして、氷竜______ゼロ=ブルーと名付けられていたドラゴンは、終わりを迎えた。
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目が覚めると、広がっていたのは青空だった。鳥がさえずり、太陽が顔を出している。
そんな中、彼が感じたのは違和感だった。
(なんで...)
基本、弱点である腹を見せながら寝ることなどありえない。しかし、重力から感じたのは自分が仰向けで寝ていたという事実だった。
(なんで...)
そして、場所。彼は太陽が見える場所にいなかった。なぜなら______
(俺は、洞窟で...!)
直前の記憶が蘇り、慌てて立ち上がる。
「うわっ」
しかし、バランスを崩してしまった。自分の体に違和感を感じながら両前足を地面につける。
「っつつ...ん?」
痛みを感じながら薄目を開けると、肌色の腕が地面を押しているのが見えた。
まるで、人間の____________
「なんで...」
氷結の城にいたはずの氷竜は、自分の右前足______右手を見て、疑問しか出なかった。
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近くに立て掛けてあった棒二本を両手に握らせて立ち上がり、近くを通っていた人間を真似て歩く。人間は一本を両手に握って地面に突き立てて動いていたので、二本を片手ずつに握って動くのは可笑しいのかもしれなかったが、氷竜はそんなことを気にしている暇はなかった。
ただでさえ体を支える尻尾が消え、足は今までの半分なのだ。簡単にバランスを保てないのは当然だった。
(人間って凄いな...)
少し前、自分を襲ってきた三人の人間が縦横無尽に動いていたのに感嘆しながら、時間にして五分、距離にして50メートルのところに彼は立った。
目の前には、『セブンスエンカウント』と書かれた鉄の塊があった。
(...入れるだろうか)
もともと暗い、閉鎖した空間が好きなため、彼はこの中に入ろうとしていた。人間がこの鉄の塊______人間が住む建物から出入りしているのは確認済みだ。
そうして、右の杖と左足を同時にだしたところで、
「お客様、ここは会員限定ミミ!チケットは持っているミミか?」
「...?」
何か変な生物がこちらに話しかけてくるが、言っていることが分からないため無視する。
「ちょっ、無視はひどいミミ!君はここには入れないミミ!」
「...何故だ?」
「チケットがないからミミ!」
入れない、と言われて理解したのはいいが、入るための条件が分からないためどうしようもなかった。この変な生物を食べてしまえばいいのだろうか。
「あ、あの...」
「なにミミか?いまミミは忙しいミミ。後で...」
「こ、この人もいれてあげてください。チケットはここにありますから...」
そこには、若草色の髪をした人間がいた。
そいつが何かを渡すと、ミミミミうるさい奴は驚いたように後ろに引いた。
「これはS級の特別招待チケット!?すいませんでした!どうぞミミ!」
先程とは一転、中へ促す生物。
「これで、入れますね?」
人間は中に入っていこうとする。なぜかこちらまで連れて。
だが、元々ここに入りたかったので、素直に従うことにした。手に持つ棒を動かして歩行する。
「あ、あの...」
「!いっつ...」
しかし、中に入ろうとしても扉は開かず、ぶつかってしまう。ゴンッ!といい音と痛みが感覚を刺激した。
さっきここを通った人間は手をかざすだけで通れたはずだが______
「...」
忌々しげに目の前の壁を見つめていると、そこには片目をつむり、棒を二本持ち、頭を痛そうにしている人間がいた。
「......」
片目を開ける。目の前の人間も片目を開いた。右足を出す。相手も同じ方の足を出す。
「これは...」
「ガラスの扉がそんなに珍しいミミか?」
ガラス、と呼ばれたそこには、若草色の髪をした人間と、変な生物と______二本の棒を持ち、青い髪、薄い青い目をした、一人の人間を写していた。
「これが...」
柔そうな肌をして、爪などないに等しく、牙は丸く小さく、なにより翼がない。まして______竜の面影など、微塵も感じなかった。
「これが...俺の......」
俺の、今の姿だと言うのだろうか。
頭では理解しても、本能は理解を拒んでいた。このガラスというのが、目の前に立つ者を写すのは分かる。だからこそ、自分がこんな姿なのが分かっていた。それでも、分かりたくなかった。
(...夢だな)
そして、これを夢だと考える。竜が人間になるなど有り得ないし、ましてさっき殺された身だ。
「この自動ドアは、手をかざさないと...」
人間が手を扉にかざすと、それは左右に分かれていった。写る顔を真ん中から半分に裂かれるのをみて、なんとも言えない気持ちになった。
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「私、こういうところ来たことなくて...ちょっと強引だったけど、一緒に入ってくれてありがとうございます」
隣で何かを話す人間を置いて、俺は自分の今の姿を見ること以上に戦慄していた。
「なんだここは...」
「え、知らなかったんですか?セブンスエンカウントっていうゲームですよ?」
扉の先は、洞窟のように暗い場所だと思っていた。だが実際はどうだ。
太陽ではない明かりが色とりどりに輝き、人間でごった返している。
暗い場所で眠れることを期待していたので、なんとも言えない気持ちになった。
「セブンスエンカウントにようこそ!初めての方?」
「は、はい」
「全く、彼氏なんて連れちゃってさ...いいな~いいな~乙女だな~」
「か、かか彼氏じゃないですから!」
「そういうことにしておこう。じゃあ説明するからよく聞いてね?」
「ホントに違うんです...」
帽子をかぶった人間がこちらに話しかけてきたが、ショックから立ち直れないままで上の空だった。
「______というわけ。じゃあ頑張ってね!」
「あ、ありがとうございます」
新しく来ていた人間が離れた後、ずっと隣にいる人間がこちらに顔を向けてくる。ここに入れてくれたやつだから無下にはしないが、こんなところだとは思ってなかったため腹が立った。
「えーと...自己紹介もしてなかったね。私、那雲澪(ミオ)っていいます。あなたは...」
「...名前、か」
指揮官竜に正確な名前はない。下位のドラゴン亜種との区別をするために名前をつけるし、真竜はその強さから名前を持っている。
しかし、真竜ほどの強さもなく、基本一種しかいない指揮官竜は、名前をつける必要がなかった。あって俺の名前は、氷竜。しかし、人間の姿でそう名乗る訳にはいかないだろう。
『ゼロ=ブルー』
不意に、その名前が思い浮かんだ。聞いたのは数時間前だが、どこか懐かしい名前。自身を殺した相手が呼んだ名前。
「......ブルーだ」
「え?」
「ブルー。俺の、名前だ。そう呼ぶといい」
どうせ意識が死ぬ前の夢物語だ。と考えて、皮肉めいてその名を使う。
「ブルー...わかった、よろしくね」
「あぁ」
「じゃあ、私戦えないし、オペレーターやるからブルーはオフェンスをお願いできる?」
「...何の話だ?」
「え、ゲームの話じゃないの?あれの...」
人間______ミオの指差した先には、人間一人がようやく横になって寝れそうな場所がいくつも並んでいた。
(やっと寝床か)
「分かった。じゃあそうしよう」
「うん。ありがとう」
まだ使いなれない棒を駆使しながら寝床までたどり着き、体を滑り込ませる。棒は外に置いた。入ってそのままでいると、上から蓋を閉められる。
(まるで死の配送だな...)
そう思った直後、男______ブルーの意識は刈り取られた。
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「ちょっと、どうなってるのよ!?」
「なんだよいきなり...」
「いきなりでもしょうがないでしょ!あんた今誰を通したの!?」
「はぁ?なに言って...」
「いいから!」
「...ライムグリーンの髪したチビと、青い髪した目付きの悪い男」
「それのどっちか!ログインしただけでとんでもない数値出してるのよ!!」
「はぁ?そんなわけないだろ。入るだけで力がわかるわけじゃないんだし...バグじゃね?なんとかしろよ製作者」
「バグかどうかはもう調べたわ!ともかくそっちも中に入って確かめて!」
「へいへい...人使いが荒い会社だ」
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再び目を開けると、そこはさっきの建物ではなく、住んでいた場所とも違った。さっきのガラスが大量に配置され、床には竜が現れる場所に咲くフロワロで埋め尽くされている。
「...今度は、また違う夢なのか......」
独り言は、誰にも聞こえることはなかった。
こんにちは?メレクです。
新作はドハマリしたセブンスドラゴンになります。ミオちゃんマジ天使!
詳しくは活動報告で語りますが、不定期更新になりそうなので気楽に待って頂けると幸いです。