セブンスドラゴンⅢ code:VFD inブルー   作:メレク

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世界を壊す者

ナガミミによって連れてこられたのは、セブンスエンカウントの奥にある建物。

 

エレベーターというさらに小さな鉄の箱に入れられ、扉が勝手に開いた先は、入ったときとは異なっていた。どうやらこのエレベーターという箱は、場所を自由に行き来できるらしい。

 

(人間は随分と高度な物を作っているな...)

 

「おら、何ぼさっとしてやがる。さっさと来やがれ」

「...すまない」

 

デカイ態度をとる小さい生物についていくと、一つの扉の前についた。

 

「ここに俺達のボスがいる。話を聞くんだな」

「おっきな会社...地下もあったよね?」

「おまけにほとんど全自動...」

「元は小会社だったがな。アレが成功してがっぽりだ」

 

呆れるような声をだすヤイバとアオギリに、ナガミミは外に見えるセブンスエンカウントの建物を見ていた。

 

「...さっきより高度が上がっている」

「エレベーター使ったんだから当たり前だろ?」

 

どうやら、エレベーターは魔法の箱ではなく、上下に動いているだけらしい。

 

「ブルー?」

「...いや」

 

ミオに声をかけられて頭を振る。その理由は、自身でも理解できなかった。

 

「ともかく早く行け!話はそれからだ」

 

 

 

 

 

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「ようこそ、ノーデンス・エンタープライゼスへ。歓迎するよ☆」

「は、はぁ...」

 

扉の先で出迎えたのは一人の女。アオギリよりも赤く艶やかなして、目は開いているのか怪しいくらい薄い。どこか飄々とした人間、というのが第一印象だった。

 

「ん~子猫ちゃんたち、待ってたわよ」

「うげっ...」

 

その後ろから声を発するのは、顎まで髪を生やし、頭に何か被っている男。それを見て、アオギリはあからさまに嫌がる態度をとった。

 

「やーん、そんな反応されると悲しくなるわね~」

「いや、嫌いなわけじゃないんですよ?ちょっと生理的に受け付けないので...」

「さらに酷くなってるわよ...まぁいいわ。アタシはジュリエッタ。よろしくね?」

 

そう言って前足____手を出してくるジュリエッタ。

 

「これは?」

「え?握手だよ?」

「なにか意味があるのか?」

「握手もしらない日本人がいるんだ...」

「これから仲良くしましょうって意味だよ」

「そうか...」

 

ヤイバに飽きられたような顔をされ、ミオの説明で納得した。ジュリエッタに応じて、右手を差し出す。前に出す途中で、ジュリエッタががっしりと掴んできた。

 

「はーい、よろしくね?」

「...よろしく、頼む」

「よかったねぇ十郎太(じゅうろうた)」

「ちょっとアリー!」

「十郎太?」

「この子の本名よ」

 

アリーと呼ばれた人間が、ジュリエッタの名前を否定する。

 

「なぜ偽名を使った?」

「へ?」

「なぜ偽名を使ったのかと聞いているんだ。俺を利用しようと言うなら殺すが」

「この子物騒!!」

「ブ、ブルー落ち着いて...」

 

十郎太が叫ぶ中、ヤイバに抑えられて後ろに引っ張られる。

 

「おーヤイバ大胆」

「アオギリ手伝って!」

「私さっきの傷が...」

「さっきのバーチャルだし、怪我してないでしょ!」

 

やいのやいのと騒ぐ二人に、おろおろするミオ。騒ぎ立てる十郎太。

 

「...話、進めていいかな?」

 

そう言うアリーは、笑っているのか怒っているのか判断しづらい顔をしていた。

 

 

 

 

 

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「改めて自己紹介するね。私はアリー、ここの社長をしてるよ。こっちは渡真利(とまり)十郎太。ジュリエッタが愛称だから、そっちで読んであげて」

「よろしくね」

「で、こっちはナガミミ。もう聞いたでしょ?」

「あぁ」

「よろしくね、ナガミミちゃん!」

「小娘てめぇもか!俺のことはナガミミ様と呼べと言ったろうが!」

 

「ナガミミちゃん」「ナガミミちゃん」「ナガミミちゃん」「...ナガミミ」

 

「んがー!!」

 

空気を読んで答えると、ナガミミが発狂した。見た目は人形が騒いでいるだけなのでどこも怖くないが。

 

「よかったわね、ナガミミちゃん?」

「ぶち殺すぞ十郎太」

「そうよね。ごめんなさい」

 

余程十郎太と言われるのが嫌なのか、ジュリエッタは即座に頭を下げた。

 

「それで、そちらは?」

「...ブルーだ」

「ミオといいます」

「私はアオギリ、こっちはヤイバです」

「よ、よろしくお願いします」

 

互いに自己紹介を済ませた後、椅子と呼ばれた物に座るよう言われた。他の面々が疑問を持つことなく座っていくので、それに習って座ると、かつてない優しさが俺を包み込んだ。

 

「これは...!」

 

洞窟で座るときはいつも固く、人間の姿になった時座っていたのも似たようなものだった。だがこれは違う。

 

「恐るべし人間...」

 

尻に合うように形を変える柔らかい素材で、完璧な形で包まれる。思わず息が出た。

 

「ブルーって大丈夫なの?こう...頭が」

「私に聞かないで...ミオちゃんは?」

「私にも...」

 

ぶつぶつと呟かれる声の意味は分からなかった。

 

「まずは、この会社について説明しようか。ノーデンス・エンタープライゼスは、バーチャル技術について研究、それをセブンスエンカウントなどに使って繁盛している会社...ってことになってるね」

 

アリーが喋り出すと、各々が静かに話を聞き出した。

 

「でも、この会社の本当の目的は別にある」

「目的?」

「君達は、80年前に起きた二つの竜災害について知ってるかな?」

「話では聞いたことあります。かつて世界を滅ぼしかけた、ドラゴンによる災害...」

「最近ようやく復興と呼べる程度になったって...」

 

アリーの質問に、ヤイバとアオギリが答える。その返事に、アリーは頷きを返した。

「真竜と呼ばれるドラゴンと、それによって咲き誇るワロフロ。それが竜災害の正体よ。襲われた星はワロフロに侵食され、真竜に喰われる...この宇宙には、そんな存在が七体いるらしいわ」

「80年前に襲ってきたのは、第三真竜ニアラと、第五真竜フォーマルハウト」

「!」

 

ピクリと体が自然に反応してしまった。かつてブルーを召喚したのは、第五真竜フォーマルハウト。それが地球に現れたのは80年前だと言うのだから。

 

「二体の真竜は、竜を狩るもの______今や英雄と称されるムラクモ13班によって討伐されたわ」

「あ、お爺ちゃんから聞いたことあります。世界を救った最強の戦士たちだって...」

「世界中がワロフロに沈みかけて、それでも世界を救うために立ち上がった勇者...生きていたら、さぞ崇められただろうな」

 

 

 

 

 

「さて...ここまでが前置きよ」

「長い前置きですね...」

「ここからはすぐだから☆じゃあ、改めて私達の目的を言うね...いずれくる第七真竜と戦うための力を手に入れること」

「「「!!!」」」

「バカな!」

 

アリーの言葉に過剰に反応してしまい、椅子から立ち上がりかける。それを驚いて見てくる周りに警戒しながら座り直す。

 

「いや...第七真竜はまだ生まれてすらいない、というのを聞いたことがあってな......」

 

世界に七体いると言われる真竜。知らない奴もいるが、竜の中で、それが六体まで存在する。というのは分かっている。

 

そして、未だ空いたままの七体目の真竜の座。指揮官竜の一部は自分が真竜になるため努力をしていたはずだ。

 

「よく知ってるね。それを教えてくれた人をスカウトしたいくらいだよ...確かに第七真竜、私達はVFDって呼んでるんだけどね。それはまだこの世界に存在していない」

「VFD...」

「でも、もうすぐ奴は現れる。人間を...いや、全てを破壊するために」

 

アリーの発した言葉に、聞いていた全員が黙りこんだ。

 

「そこで、私は君達に協力してほしいんだ☆」

「協力?」

「今の話聞いて出来ることなんてなにも...」

「セブンスエンカウントで取ったデータによると、君達は持ってる者たち...S級の異能力を保持し、竜を狩れる力を持った者たちなんだよ。だからここに呼んで、こうして話を聞いて貰っている」

言って、アリーがこちらに視線を向けてくる。

 

「特にブルー。君には常人のそれとも、こちらの女の子たちとも違う異質過ぎる力がある。ぜひ協力して欲しいんだけどな」

「......」

 

俺は黙るしかなかった。

 

口を開いたら、従ってしまいそうだったから。

 

この人間には、逆らえない。本能がそう告げていた。

 

(だが、何故だ______?)

 

「わ、私もですか!?」

「あなたは戦闘能力自体はないけれど、ナビの力はS級よ」

 

驚くミオに、ジュリエッタが補足する。あの短時間でどれだけの情報が録れたのかは分からないが、嘘を言っているようには見えなかった。

「でも、私は...」

「真竜の検体からはたくさんのデータが得られるわ。それを使って作られる物______私達はドラゴンクロニクル、と呼んでる物を作ることが出来れば、VFDに対抗できる」

「逆にこれが作れなければ、人類は消滅するね。そして、残された時間は少ない。竜斑病は知っているよね?あれはVFDが現れる兆候なんだよ」

「竜斑病...竜が起こす、不治の病......」

「っ...それでも、私には無理です。こんな体だし、世界を救うなんて...そんな大きなこと...」

 

次々明かされる話の中で、ミオは怯えたように顔を横に振った。

 

「私には...無理です」

「そう...」

「ごめんなさいっ」

 

 

 

 

 

「ごめん、ブルー」

 

 

 

 

 

謝ってから椅子を立ち上がり、自動で開閉する扉の先に消えた。

 

「ミオちゃん...」

「仕方ないわね。意志のない人を無理矢理戦わせるわけにはいかないし」

 

ヤイバの言葉と、ジュリエッタの言葉が静かになった部屋に響く。俺は、扉の方をじっと見ていた。

 

「じゃあ、あなたたちはどうする?ドラゴンクロニクル計画...code:VFDに、協力してくれないかな?」

「...私達の力があれば、世界を救えるの?」

「その可能性は、間違いなく上がるだろうね。竜斑病を治す方法もきっと見つかる」

「......なら、やるよ」

「本当?誘っておいてあれだけど、辛い仕事になるわよ?」

「私が、何か役に立てるのなら。そういうの、憧れてたし」

「アリーは全然問題ないない☆」

 

ヤイバは竜と戦うことにした。セブンスエンカウントで怖がっていた彼女はどこへ行ったのだろうか。

 

「はぁ...ヤイバがやるなら、私もやるよ。知らない間に死んでほしくないし」

「アオギリ...!」

「これで二人ね」

「ブルー。君は、どうするかな?」

 

急速に事態が動くなかで、ブルーは何も言えなかった。口は開くことを忘れ、顔も動かさない。

 

『ごめん、ブルー』

 

(何故、こうもあの人間の言葉が響くんだ...)

 

アリーに聞かれていることも分からず、ただそれだけを考える。

 

元指揮官竜。人間になったことを知覚したのはほんの数時間前のはずだ。それが、今や人間の椅子に座り、二本足で歩き、別の人間に謝られている______止めていた思考回路が、一気に溢れだしたような感覚だった。

 

しかも、誘われているのは元同属の抹殺。誘ってきているのは自分を一度殺した種族。

 

「俺は......」

 

口ごもりながら、声を発した瞬間。

 

「お前ら、大変だ!」

 

長らくいなかったナガミミが、慌てた様子で入ってきた。

 

「竜の群れがこっち来てるぞ!」

 

その場にいる全員が、息を飲んだ。

 

 

 

 

 

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「ISDFは?こういうときの国際自衛軍でしょ?」

「向かってるけど、まだ時間かかりそうだ」

「...入口を封鎖して、ISDFを待とうか」

「スクリーンに出すわよ!」

 

ジュリエッタの声と共に、光る壁に絵が映し出される。そこには、空を多い尽くすように飛ぶ白と赤の竜がいた。

 

「何この数...」

「ヤイバ、私達はこれを倒すんだよ...その力がある。そうでしょ?」

「その通りだよ」

 

ヤイバとアオギリが覚悟を決め、アリーは笑顔で返した。

 

「この子は...」

「っ...」

「「ミオちゃん!」」

 

次に映されたのはミオの姿だった。怯えた顔をして、地面に腰を着けている。

 

「助けなきゃ!」

「うん!行こう!」

「隣のカウンターにいるチカとリッカに言えば、倉庫にある武器を取ってきてくれるはずだよ。自分が好きなのを頼みな~」

「「はい!」」

 

そのまま二人は走って扉の向こうへ消えた。

 

「で、君はどうする?」

 

アリーがこちらに投げ掛けてくる。ブルーは光る壁を一瞥して、歩きながら答えた。

 

「...今俺がしたいことは、俺の領土に入ってきた雑魚を殺すことだ」

「ドラゴンを狩るの?」

「格の違いを知らしめるだけだ」

 

そう言って、扉の前に立つ。

 

雑魚ドラゴンの分際で、許可なく他の指揮官竜の領土に入ってくるのは死を意味する。

 

(今の俺は人間の姿だが、そんなことは関係ない)

 

ちらっと、若草色の髪をした人間の顔が思い浮かぶ。

 

(...いつも一人だったから、印象に残っただけだ)

 

洞窟にいたとき、周りに氷しかなかったときと今は違う。何も分からないままだが、それでも。

 

「おいお前、こいつを持っていけ」

「?」

 

後ろからナガミミが、丸い何かを投げてくる。右手で受け取った物の正体は、俺には分からなかった。

 

「これは?」

「はぁ...懐中時計型の通信機だ。上のボタンを押すと連絡が取れるようになってる」

 

試しに突起を押すと、小さなナガミミが映った。

 

「分かったか?」

「...ナガミミ、俺はこんなものいらない」

「なっ、うるせぇよ!」

「だが、感謝する」

「...ケッ、こいつも持っていけ!」

 

更に飛んできたのは、二本の刀。セブンスエンカウントで使っていた物だった。

 

「武器なしじゃ、戦えないだろう?」

「...行く」

 

心で感謝してから、勝手に開いた扉を通る。目の前にはガラスが張られた壁がさらに広がっていた。

 

受け取った刀を腰につけ、一本を抜く。そして、そのまま目の前を切り裂いた。

 

「なにぃ!?」

「ちょっ!!ガラスが!」

 

綺麗に二つになったガラスは、外へ飛ばされる。強風が中に流れ込むものの、体勢を崩すことはなかった。

 

「俺の適応力が高いのか、人間の適応性が高いのか...」

「なに窓破壊してんだ、なに言ってんだバカ野郎!!」

「ちょっ、飛ぶっ...!!」

「俺の方が飛ぶわ!!」

「あっはっはっは!面白いね!」

 

そのまま俺は、眼下の竜に向けて建物から飛び降りた。

 

竜と、視線が絡み合う。

 

「ここは...俺の領土だ」

 

そう呟き、刀の降り下ろす。次の瞬間には、竜の首が体から離れていた。

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