セブンスドラゴンⅢ code:VFD inブルー   作:メレク

4 / 12
帝竜と帝竜

両足を地面に打ち付ける。鈍痛が辛くて両手もつけたが、そのお陰でどこも怪我することはなかった。

 

「......」

 

肉眼で空を見上げる。紫色の空を、ドラゴンが白く多い尽くした。

 

(あれの黒色は見たことある気がするが...)

 

人間の領土を攻めなかった過去のブルーは、他の指揮官竜よりドラゴンの名前を覚えている自信があった。というか、氷の城の中ではやることが限られていた。

 

(やはり、時間がかなり過ぎているのか)

 

「邪魔だ。どけ」

『guaaaa!!!』

 

地上に降り立つ白いドラゴンに向けて喋る。返ってきたのは咆哮だった。

 

(やはり、通じないか...)

 

「あ、あぁ...」

 

そして、そこには先程まで共にいた人間______ミオが、倒れている。

 

「どけと言っている。白いの」

 

そのまま二つの刀を投げつける。狙われたドラゴンは、避けるまもなく首と、目をやられた。

 

『ga.gaaa..』

 

「貴様らがここへ来たのだろう。鳴くだけでなく立ち向かってきたらどうだ」

 

歩いてドラゴンの元までたどり着き、二本の刀を引き抜く。血が流れたのち、『核』がこぼれ落ちた。

 

「この程度か...」

 

竜の『核』というのは、竜が形づくる上で最大の所といえる。心臓の中に埋め込まれており、その個体の強さの基礎を決める。

 

基本的に自分で増やすことは不可能だが、条件が揃うと増やせるらしい。普通の竜はこれが一つ。指揮官竜は三つ。真竜は五つある。

 

白いのからこぼれた『核』は一つ。これで、名実共に格下であることが分かった。

 

「あんな大きいドラゴンを...」

「ブルー!?なんで!?」

「私達の方が早く外出たはずなんだけど...」

 

あっけにとられるミオの元に、ヤイバとアオギリが合流する。ブルーは黙って空を______自分が割った窓ガラスを眺めた。

 

「...なんで窓ガラス割れてるの?」

「アオギリ...人間って、ビル三階から飛び降りて無傷でいられますっけ?」

「ほ、ほら、私達能力S級らしいじゃん?その力使えば行けるんじゃないかなぁ...」

『お前ら、ぼさっとしてる暇はないぞ!避難誘導しやがれ!ヤイバ、役に立ちたいんだろ?さっさと仕事しろ!』

 

アオギリとヤイバが喋る中で、もらった装置からナガミミの声がした。

 

「そうだった!じゃあミオちゃんも会社の中に入っててね!アオギリ!」

「うん、行こうヤイバ」

 

二人が駆け出した所で、ブルーはナガミミに声をかけた。

 

「なぜ人間を助けなければならない?俺は自分の領土にくる雑魚を潰しているだけだ」

『てめぇは...今人間を助けておけば、後で奴隷のように使えるぞ?』

「ナガミミちゃん...」

「...一理あるな。つまりミオは俺の奴隷か」

「えぇ!?」

 

会話を聞いていたミオが驚愕のこえを上げるが、ブルーもナガミミも気にしない。

 

『じゃあその調子で...この反応は!』

 

ナガミミが叫ぶのと、異質な雰囲気を持つ赤いドラゴンが降ってくるのは同時だった。辺りに強い風が吹く。

 

「...赤竜、ではないな」

「気を付けろ!そいつは帝竜だ!さっきのとは比べ物にならないぞ!」

「......そうか」

 

かつて共に地球に来た同族の中に、赤竜と呼ばれるドラゴンがいた。そいつに似て赤色をした帝竜は、ガラスの様に他の世界を写し光る翼をはためかせ、辺りに吠える。

 

ただの咆哮は、辺りの人間の腰を抜かせることを十二分に達成した。

 

「終わりだ...」

「やだぁ...やだよぉ!」

「お母さーん!!」

「皆落ち着いて!避難して!」

「まだ大丈夫だから!早く!!」

 

老若男女が泣き、叫び、地獄絵図が完成する。ヤイバとアオギリが慰めるものの、この現実は変わらなかった。

 

「...指揮官竜同士での領土の争いは、強い者が残り、弱いものが去る」

「へ?」

「雑魚では話にならない。あのくらいで実力を試すさ」

 

『ちょっ、何いって、ブルー!?』

 

名前を呼ぶ声を最後に、ぶつっと音が鳴る。それ以降ナガミミの声はしなくなった。特に気にせず、歩き始める。

 

「嘘...あんなのと、戦うつもりなの?絶対死んじゃうよ!ブルー!!」

「ミオ、お前はここにいるべきではない。さっさと消えろ」

「でも!」

「...俺は別に、貴様ら人間を助けようというつもりはない。戦いの邪魔になる奴は全員消えろと言っているんだ」

 

両手に握った刀を弄ぶ様にくるくると回し、切っ先を帝竜に向けて止める。

 

「新しい竜...お互い、実力を出すにはちょうどいいだろう?」

 

煽るような言葉に、名も知らない竜は雄叫びを上げた。

 

 

 

 

 

-------------------------------------

 

 

 

 

 

「...よかったのか?あれと戦えばISDFにはバレるし、うちも目をつけられるぞ?」

 

ナガミミは、ブルーとの通信を切ったアリーに対して呟く。

 

「そのうちバレるし、そこまで変わらないよ」

「でももし、帝竜...スペクタスと戦って、死んだらどうするの?まだひよっこよ?」

 

笑いながら話すアリーに、ジュリエッタも疑問を投げる。その顔には本当に心配だという感情が伝わってきた。

 

「私達が相手にするのは真竜だよ?これでやられるならその程度ってことだよ」

 

アリーはそう言って、外を映す画面の見ながらほくそ笑んだ。

 

 

 

 

(それに、アリーの見立てなら____________

 

 

 

 

 

-------------------------------------

 

 

 

 

 

「ッシ!!」

 

右手にある剣を投げつけるも、竜の堅い鱗はそれを弾いた。

 

「ここまでとはな...」

 

誤算はいくつかあった。ここが先程リトルドラグを倒したような室内でないことは、走ることがまだ安定しないブルーにとって辛いことだし、人間の体がまだ戦いに慣れてなさそうなこともあった。おまけに、自身も人間の体を扱いきれていない。

 

だが、それを差し引いても____竜の時だったとしても、実力としては互角だっただろう。

 

「流石に、指揮官竜になるだけはあるか」

 

距離を詰められ残った刀と竜の爪がぶつかる。両足で体を支え、押し潰されることを拒絶した。しかし今、力では敵わない。

 

「ブルー!今助けるから!」

「私も!」

「邪魔をするな。俺一人で倒す...っち」

 

人間の避難を済ませたのかヤイバとアオギリがこちらに来るが、それをもブルーは拒んだ。その間に持っていた刀が鍔迫り合いに耐えられず砕ける。

 

「くそが...」

 

目の前の赤い竜の口元に、炎の奔流が溢れでる。おそらく______ブレス。

 

ブルーはそれに対抗しようと氷のブレスを____出せなかった。

 

(死ぬのか?こんなところで)

 

人間の姿に成り果て、わけもわからないこの場所で、夢から現れたような無知の元同族に狩られる。

 

「ブルー!」

「逃げっ...」

 

(...俺は、そんなこと認めない)

 

自身の強い意志が辺りの温度を下げていく。

 

(ここが人間の場所であっても)

 

自分を殺した奴ら、人間の拠点でも、真竜でもない奴にやられることは。

 

「俺は、貴様なんか認めないと言っている!」

 

俺と竜が叫ぶのは同時。その真ん中で、炎のブレスと、地面から生える氷の塊がぶつかり合った。

 

「俺を殺したいなら、俺から認められてからにしろ」

 

劣勢な状況でもお構いなしに喋り続ける。その度に氷はより温度を下げ、奴の炎を打ち消していく。

 

「貴様の力では、俺は倒せない。倒せさせはしない」

 

やがて______ブルーの氷は、自身の周りに生え、意思を持ったように浮遊する。刃のない剣を捨て、その手を竜へ伸ばす。

 

「...狩られろ」

 

伸ばした手を握りしめ、辺りの氷を飛ばす。その全ては竜に突き刺さり、ブレスを中断させた。

 

「ブルー!私達も!」

「こいつは俺が倒す。ニンゲンごときが邪魔をするな」

「あんたも人間じゃないの!」

「俺は貴様らとは違う。俺は______」

 

竜だ。という前に目の前の竜が爆発した。正確には、竜の元に飛んできた何かがぶつかり、爆発した。

 

「一班は対竜散弾用意!二班は要救助者の治療!」

『ハッ!』

 

声のした方を見ると、不思議な筒を持ち、全身を鎧で包んだ多数の人間と、いかつい顔をして指示をだす、顔に傷跡のある人間がいた。

 

「ヨリトモ提督。俺が行きます」

「...ユウマ、無理するなよ」

「その必要もありませんよ。随分と手負いのようですし」

 

そして、その隣にいる若い人間が、こちらに迫ってきた。

 

「ドラゴン...身の程を知れ。服従するべきは、どちらなのかを!」

「!!!」

 

そして、その人間は______一撃で、帝竜を、破壊した。三つの『核』がこぼれ落ちる。

 

(指揮官竜を一撃で...!?)

 

「君のお陰で楽ができました。ありがとうございます」

 

そういって微笑んでくる人間に______真竜の姿を感じて、ブルーは何も出来なかった。

 

 

 

 

 

-------------------------------------

 

 

 

 

 

「これは、完全に目をつけられたわね」

「遅かれ早かれこうなってたし、しょうがないよ」

「全く...おとなしく逃げときゃこんなにならなかったのにな」

 

いつまでその場で立っていただろう。気づいた時には真竜の気配がする人間は消え、アリー、ジュリエッタ、ナガミミがいた。

 

「ブルー?」

「大丈夫...?」

「...ああ」

 

ヤイバとアオギリに声をかけられ、本当の意味で意識が戻った。下がっていた頭を上げると、辺りは鮮やかな夕焼け色だった。

 

「ブルー、初めての実践はどうだった?」

「...これは、夢じゃない」

「当たり前だろ。そんなに怖かったのか?」

「まぁ、初めての実践であれだけ出来れば上出来よ。氷の魔法まで使ってるんだから...」

「ジュリエッタ!やっぱりあれ魔法なの!?」

「間違いなくそうでしょ?」

「ブルー凄いね!」

 

ヤイバが目を輝かせているのを、ブルーは気づかなかった。

 

(夢で、真竜のような人間に恐怖する思いなど、するわけがない)

 

この世界は現実で、自分が人間になったのもまた事実なのだと遅まきながらに理解した。

 

「だけどこれで決まりだね!君は...君達は、竜を刈るものだよ!」

「私達、何も...」

「あの帝竜に挑もうとしただけでも今は上出来上出来♪」

「そう...」

 

アオギリの言葉は、上機嫌なアリーの言葉に遮られた。

 

「ブルー...助けてくれて、ありがとう」

 

今度はミオが、こちらに話しかけてくる。

 

「......竜を倒したのは、あの人間だ」

 

自分でも驚くほど、声が掠れていた。

 

人間の姿になったばかりだったから本来の力も出せなかった。あの氷もあそこまで貧相ではなかったし、使ったあとこんなに疲弊しないなど、言い訳は山ほど出る。

 

「...あの、人間だ」

 

自分が傷しかつけれなかった相手を一撃で倒した。その事実が、ブルーの気持ちを蝕んだ。無意識に同じ言葉がこぼれる。

 

「なぁに?負けてショックだったの?生き残ったのに欲張りね...」

「でも...命をかけて他人を守れるなんて、普通は出来ないもん。倒した人は関係ないよ。私、小さく震えるだけで何もできなくて...本当、何が出来るんだろう......」

「ミオちゃん?」

「あ、ごめんね!変な空気にしちゃって。ブルー、このお礼はいつか必ずするから!じゃあ、私はこれで...」

「なにいってるの?君もノーデンスの医療フロアへゴーだよ!」

「ええっ!?」

「ほら、皆で行くわよ!」

「えええっ!?」

「ミオちゃん。諦めた方がいいと思うよ」

「アオギリさんまでぇ...」

 

アオギリがミオの肩を押し、アリーとジュリエッタ、ナガミミの後をついていく。

 

「俺は...あいつより...」

「ブルー?大丈夫?」

 

ヤイバが、いつの間にかブルーの肩を叩く。優しさが込められているのが、やられた側からでも分かる。

 

 

 

 

 

だが、それが辛かった。

 

「ニンゲンに...同情されてるのか?俺が??」

「...同情なんかじゃないよ。心配してるの。あんなに強いドラゴンと戦ったんだから」

「強い...」

「帝竜を一人で相手してたんだよ?」

「だが、倒したのはあの人間だ」

「私やアオギリ、ミオちゃんが怪我しなかったのは、あの人たちが来るまでブルーが相手してくれてたからだよ?私も戦おうとしたけど...やっぱり、怖いことは怖かったから」

「邪魔だったから退けただけだ」

「それでも助かったんだもの。ありがとう、ブルー」

 

そうやって微笑むヤイバは、さっきの人間と違った雰囲気だった。

 

「...なぜ、貴様はそうまでして俺を擁護する?」

「え?擁護してるつもりは無かったんだけどな...自分の思ったことを言っているだけだから」

「......人間の癖に、生意気だな」

「なにそれ!?それに私の名前はヤイバだよ!人間人間言って!」

「...ヤイバカ」

「今なんか字体にしたら罵倒の言葉になってる気がするんだけど!?」

「...強く、ならないとな」

「え?ブルー?ブルー!?」

 

気を失う前に見たのは、ヤイバの顔と夕日のコントラストだった。

 

 

 

 

 

-------------------------------------

 

 

 

 

 

「全要救助者の救護、完了しました」

「ご苦労。帰投するぞ」

「はっ」

 

ISDFの兵士がヨリトモの元を去る。その姿を見て、ヨリトモはふぅと息をついた。

 

「終わりましたか?」

「ユウマもご苦労だった」

「いえいえ、瀕死の帝竜を一撃で倒しただけですから」

「...あの青髪の少年が時間を稼いだのか」

「所々に氷が刺さっていましたよね?確かにただの氷ですが、的確に急所だけ狙ってありました」

「お前にそこまで言わせるとはな...」

「偶然かも知れませんけど。だいたい氷を出せる人間なんて...」

「...かつての竜災害の時にはいたらしいから、可能性がないわけじゃないだろうな」

「そうなんですか...」

 

世話話をしながら、二人はISDFが所有する車に乗り込む。

 

「...なんだお前ら」

 

そこには先客がいた。燃えるような赤髪と、つり上がった赤い目。体は細いながらかなりがっしりしているように見える少年だった。

 

「ここは国際自衛軍ISDFの車だ。避難民は出ていけ」

「俺様に命令するのかぁ?」

「...従わなければ力ずくだ」

「ハッ!ニンゲンに従う理由なんてないんでな!それより腹減ってんだ、てめえら食い殺すぞ」

「いい度胸じゃないか...」

「提督抑えて...これ、どうですか?」

 

ユウマが取り出したのは、昼食持に余ったカロリーバーだった。袋を破り、「どうぞ」と言って渡す。

 

「これが食い物...? 」

 

赤髪の少年は怪しげに見つめた後口にする。次の瞬間、目を見開いた。

 

「なんだこれ!うめぇ!!」

「なら良かったです。大人しくついて来てくれればまだ食べさせてあげれますよ?」

「マジで!?!?ニンゲンのくせにいい奴だな!」

「ユウマ...」

「一人くらい、大丈夫じゃないですか。それに、誰にも気づかれずにこの車に乗り込めるなんて...みすみす逃す方が危険です」

「......そうだな。おい」

「お?話は終わったか?」

「名前は?」

 

ヨリトモが名前を訪ねる。少年はしばし考える仕草をして、

 

「名前かぁ...炎じゃなくて...トロ..レトロ。俺の名前はレトロだ」

 

そのまま、残り半分のカロリーバーに食らいついた。




ここまででプロローグです。

ナナドラ2周目を始めたのですが、書きたいシーンが増えて困った......

感想等、くれると(きっと)投稿が早くなります。(笑)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。