セブンスドラゴンⅢ code:VFD inブルー 作:メレク
それでは本編どうぞ。
「ほんといい加減にしろよ!?力あるからってなにしてもいいわけじゃないんだぞタコ!」
「......ベッド」
「仕事が先だ!!」
何度めかの会議室で何度めか分からないナガミミの叫びが響き、流石にブルーも黙った。
「ナガミミは心配してるんだよ☆通信機を捨てて戻ってきて見たら涙目の女の子二人と死にかけの男の子が帰ってきたんだもの」
「な、違うに決まってんだろ!」
アリーに反発するナガミミ、それをやれやれと見つめるジュリエッタ。
「アオギリ、大丈夫?」
「不可抗力不可抗力不可抗力...」
ぶつぶつ呟くアオギリに、それを心配するヤイバ。ある種の地獄絵図が完成していた。
「それで、何で呼び出された」
「あぁ、それなんだけど...良い報告と悪い報告があってね。どっちから言おうかな...」
「失礼する」
「!!」
その時、扉が開き二人の男が入ってくる。その姿にブルーは目を見開いた。
それは自分が壊し修繕された窓ガラスを見たからではなく______傷痕を顔につけた大男と、赤竜に似た竜を、自分が戦っていた指揮官竜を一撃で倒した相手が現れたからだ。
「...そんな睨まないでください」
青年は、飄々とした態度で言葉を発する。だがその態度が余計ブルーの神経を逆撫でした。
「噂をすれば、だね。ようこそノーデンスへ。社長のアリーよ」
「ISDF特殊部隊隊長、ヨリトモ トウゴだ」
「特殊部隊所属、キサラギ ユウマです」
「...なぜ貴様らがここにいる」
「ぶ、ブルー!」
ヤイバに連れられて部屋を出され、近くにあった椅子に座らされる。怒ってます!と言わんばかりの顔をしているのはブルーでも分かった。
「話ややこしくしないでよ!これから大事な会議なんだから!」
「...何が始まる?」
「今の人達がタイムマシンを取り立てに来たんだよ。ノーデンスが内緒で作ってたみたいで...」
人間に関しては無知に等しいブルーは、とりあえず黙って聞くしかない。
「で、もしかしたらもう過去にも行けないかもしれない...ルシェ族も助けられない」
「ニアラと戦えないのか?あいつらのせいで?」
「そうならないはずだけど...って、ダメだから切ろうとしちゃ!」
刀を持ったのにヤイバに止められる。引き下がりそうにもなく話も途中だったため渋々座り直した。
「っ...ブルーって頭のネジどこか外れてるよね...」
「...頭がおかしいのはお前だ」
手荒なことをしないという意思を示すため、丁寧に刀を外してから立ち上がり、ヤイバの前に座り込む。そしてそのまま膝を触りだした。
「ブルー!?なにやってるの!?」
「黙れ...エンシェンタスのトゲを喰らったな?」
「え...?」
「あれ自体に毒性はないが、あいつにつけられた傷は放置してると膿を出すぞ」
「いつっ!」
「動くな...我慢しろ。治らない傷がつくぞ」
「!」
「はぁ...糞が」
力任せに傷の周りを押し付け、血がにじみ出てくる。ブルーは自分の着ている布を破りその血を拭い巻き付けた。
「医療設備があるなら詳しく見てもらえ」
「ありがとう...優しいんだね、ブルー」
「...気まぐれだ」
「服は私直すから。裁縫できるんだよ?」
「この布か?こんなものいらないくらいだが」
「ちゃんと着てて!」
騒いでいると、会議室の扉が開いた。中から二人の男が出てくる。
「貴様ら...」
「これから僕らもアトランティスに向かいます。これからは共に真竜を妥当する者として頑張っていきましょう」
「!...俺がニアラを殺す。引っ込んでいろ」
「そういうわけにもいきません。自分は竜を倒すためにいるのだから...」
「ユウマ」
「...それでは」
二人がブルーの前を通りすぎ、ブルーは歯噛みした。
「...何故だ」
「ブルー?」
「......」
何故かあのユウマという人間には、竜の気配がした。しかも真竜程に強い。
(おまけに指揮官竜を一撃で死に至らせる力、一体...)
「おらお前ら、戻ってこい。話の続きをするぞ」
ナガミミに連れられ、再び会議室の中に。アリーはさっきから何もなかったように話を始めた。
「悪い報告っていうのは今のね。ISDF...国土自衛隊と言えばいいかな?そいつらにうちのタイムマシンがバレた」
「...それは、俺がニアラを倒せなくなるのか」
「んにゃ、今の話し合いで剥奪はされなくなったから安心して。ポータルの使用権とアイオトの検体データが引き換えだけど...こっちはフォーマルハウトのデータが貰えるから結果的には交渉では勝利かな」
アリーはにこやかな笑みで話を続ける。
「ここからは本格的に良い報告なんだけど、ニアラの居場所、並びに討伐の糸口が見つかった」
「!!早く教えろ!」
「落ち着いてくれる?条件も厳しいんだから...座ってくれたら続きを話すわ。ナガミミがね」
「俺かよ...」
ブルーは溢れる闘志を抑えて椅子に座る。それに習ってヤイバも、元々部屋にいたアオギリの隣に座った。
「...まず、前提から話すぞ。あの場所『アトランティス』にはルシェって言う一族がいる。ネコミミみたいなのが特徴で、当時の書物だけなら石器程度だが...海を開いて作られたことから、文明の発達した歴史の裏に隠れし一族、ってとこだな」
頭の上に手を当ててネコの前をするナガミミ。しかしブルーはネコ自体が分からない。
「ブルーが気絶した後、ドラゴンを倒したヤイバとアオギリが助けに行ったんだが...そこで会ったのがルシェ族現王女、ウラニアだったわけだ」
(エンシェンタスを二人で?ついこの間まで何も出来なかった人間ごときが?)
ブルーにとって二人だけでドラコンを倒したことの方が意外だった。
「ウラニア王女いわく、ルシェ族はニアラに占拠された国ごと奴を消すつもりらしい。とんだ爆破テロに巻き込まれたわけだが、俺達としてはそれは困る。検体が手にはいらないからな。そして...」
「...ウラニアは自爆しても仕方ないって感じだった。それを私は助けたい」
ナガミミの言葉を受け継ぐ様にヤイバの言葉が連なる。
「真竜を倒すって点では皆同じなんだがな...どいつもこいつも堅物で話を聞きそうにない」
「それはナガミミだって一緒でしょ!」
「御託はそこまでだ。ニアラの居場所と討伐方法を教えろ」
「はぁ...場所はベルク海洋宮殿の地下だ。そこがあの国の核部分で、ニアラはそれを分かってて侵入したから出てこないだろう。俺達も今すぐ行きたい所だが、当の王女様はよそ者の俺達を入れないだろうな」
「ならその王女を殺す」
「私はルシェを助けたいの!ブルー聞いてた!?」
「ヤイバ、ここでニアラを殺さなければ死ぬのは俺達だ。甘い虚言を吐くなら俺の邪魔をするな」
刀を引き抜く直前で止める。だがそれだけでブルーの気力は伝わり、ヤイバを傷つけた。
「ブルー...!!」
「んーでも、アリーとしてはヤイバちゃんの案に一番賛成かな」
予想外の形でアリーが乱入してくる。
「何故だ」
「もうひとつの話...ニアラの討伐方法なんだけど、真竜を倒すには竜殺剣が必要なのね」
「竜殺剣...?」
「文字通り竜を殺すための剣(つるぎ)。かつてフォーマルハウトを倒す時にも使われた伝説の剣」
「...それと、ルシェとやらを助けることになんの関係性がある?」
「関係ありありよ?竜殺剣はルシェ族にしか作れないからね☆」
「なんだと...」
真竜をも殺す剣の存在、真竜を殺せる力を持つ一族を殺そうとしていたブルーは途端に静かになった。
「鉱石の声を聞けるルシェ族は、オリハルコンなんかの特によい素材を見つけて作ることに至っては超一流よ。過去の竜殺剣も、作ったのは蘇ったルシェらしいしね」
「ならばルシェ族を脅して作らせる」
「んー...ISDFが話に行っちゃってまた悪い印象ついちゃうし、王女様達に聞きに行くのは難しいかな」
「また邪魔をするのか、あいつらは...」
「でも、ルシェはあそこにしかいないわけじゃない。あそこは言わば上級貴族の場所。なら低層区画の人達と交渉すればいいんだよ!」
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「...うまいな」
「あの、それただのアイスなんですけど...」
「ただの氷がこんなに甘いわけがない。もっとだチカ。もっと持ってこい」
「は、はい...」
「よく食べるね...」
「お腹壊しそうだよね」
新しくブルー達用に用意された部屋で、ブルーはひたすらにアイスを食べていた。
低層区グラディオンに向かうためポータルを接続している間、正社員となった彼らに新しくあてがわれた部屋だったのだが、そこの温度は異様な程に冷たくなっていた。
「......おかわりだ」
「はい...これお金大丈夫なのかな...」
事務員でもあるチカは、その銀色の髪をぶるぶる震えさせながらブルーにおかわりの棒アイスを渡す。ブルーは二秒足らずで食べきり、おかわりを要求する。これの繰り返しだった。ちなみに同僚、姿が瓜二つな金髪少女リッカはサボりである。
「転送された先でも食べれるよう用意をしろ。でなければ殺す」
「ひっ!準備してくるのです...仕事多い...」
「ブルー、人使い荒いんじゃないの?」
ずっと見ていたアオギリとヤイバのうち、流石にブルーの傍若無人さに呆れたアオギリが戒める。
「お前はこのアイスを食べたことがないからそう言うんだ...」
「いやあるから」
「仕方ない。食え」
「え、むぐっ!?」
有無を言わさず棒アイスを口に突っ込まれる。しかし勢いは制限していたのか突っかかることもなく、優しく口の中に甘さと冷たさが広がった。
(こんなものがあるとは...人間どもめ)
「...いや、普通のアイスだけど」
「普通の氷は味がしないだろ!!」
「なんでそんなノリノリなの...」
「ヤイバ、貴様も食え。俺が許す」
「いや、お腹壊しちゃうかなぁって...」
「これの旨さが分からない奴は分かるまで喰わせてやる!!」
「「きゃ!!」」
「ブルー...いい加減にしろぉぉぉ!!!」
準備完了を知らせに来たナガミミが絶叫するまで、ブルーは止まらなかった。