セブンスドラゴンⅢ code:VFD inブルー 作:メレク
「よく帰ってきたな。無事...とは言い難いが」
ポータルで戻ってくると、ナガミミの姿が見えた。
「アリーさんとジュリエッタさんは?」
「あいつらは今仕事だよ...ドラゴンクロニクルの民間研究、タイムマシンポータルの作成、それがISDFにバレちまったからな。交渉が良い方向に進んだとはいえ、現状では全て破棄されることもありえる。やれることはやっときたいのさ」
「私達はさすがに分からないからね...」
「まぁ今さら気にした所で仕方ない。お前らは黙って竜を狩る実働部隊として働けばいいんだよ。フヒヒヒ...あてにしてるぜ13班?」
「...話はそれだけか?明日が早いなら寝かせろ」
嫌な笑い響かせるナガミミに、ぴしゃりとブルーが告げる。
「あー...そのことなんだが、ここを襲ってきたドラゴンのDzでお前らの部屋を作った。家具は一通り入れたし好きに使え」
「え!ほんとう!?」
「風呂もトイレもある。ついでにそれぞれに合わせて新しく作り上げた戦闘服もあるから明日からは着ていくといい」
「やったー!!これでメディカルルーム生活からおさらば!ナガミミ様万歳!」
ヤイバとアオギリの二人は跳び跳ねそうな勢いで喜ぶ。ブルーにはまるで理解出来なかったが。
「こんな時だけ調子に乗りやがって...それと!ヤイバとアオギリは隣の部屋、ブルーはメディカルチェックを受けて、エントランスに行ってから部屋に行けよ」
「隣の部屋?なにするの?」
「スキル開発だよ。新薬が完成したんだって言うからよ。説明はそっちで行うからさっさと行け」
「俺はなぜだ?」
「お前には客だよ。一日中いて邪魔だから、さっさと済ませてこい」
「...エントランスとはどこだ?」
「一階の入口だ!!メディカルルームは行ったことあるだろ!エレベーター乗っていけ!」
「...待った。ナガミミ、私達の部屋って三部屋、せめて二部屋だよね?」
「なにいってんだ?そんな贅沢出来るわけないだろ」
その発言に、女子二人が固まった。
「Dzはドラゴンからとれる建築なんかのあらゆる作業効率を信じられないくらい早められる万能資材だ。そんな希少な物をほいほい使えるわけないだろ」
「ナガミミのケチ」
「な!」
「だってブルーと同じ部屋なんでしょ!?流石に不味いって分かってよ!」
「何の問題がある?寝床で何かするわけでもないのに」
「いやそうなんだけど!!」
「ブルーなら大丈夫かな...何も起きないだろうし、もしされても別に...はっ!」
やりきれない感情が交錯するアオギリと、頬を赤く染めるヤイバ。
「もうお前ら行けー!!」
その姿を見て、ナガミミが激昂した。
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「『一般人に打っても効果のない注射でも、S級の君達ならスキルを発現しやすくなる魔法の薬!これで強くなること間違いなし!!』って言われてやったけど...大丈夫なのかな」
13班用部屋にて、ヤイバはため息を溢した。
先程受けた注射は、ヤイバとアオギリのために作られた物だった。特殊な力、魔法などの新たな力______スキルを発現しやすくする新薬である。既に氷を顕現させているブルーには必要ないと判断され行われなかった。
「『これで強くなりやすく!より強い技を覚えられる!』って言ってたし、大丈夫でしょ。効果がなかったら無害で済むらしいし」
妙にテンションの高い医師から刺されたことに対する恐怖を感じるものの、ヤイバを励ますためアオギリは明るめの雰囲気を出した。
「それよりブルーが来る前にお風呂入ろお風呂!もうへとへとだよ」
「そうだね。二人で入るのは久々だけど...長引かせたらブルー入ってきそうだし」
「ブルーと一緒に入りたかった?」
「な!?アオギリ!?」
「冗談だよ冗談。ノックしてって言ったし問題はないと思うけど、さっさと入ろうか」
「うー...アオギリこそ入りたかったんじゃないの?」
「私は別にブルーのこと好きじゃないし?いや仲間としては信用してるけどね。ヤイバみたいじゃないの」
「はーい...って私もそういうわけじゃないから!」
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「......」
軽いメディカルチェックを受けたブルーは、エレベーターの『1』を押した。勝手に扉が閉まり、動き出すのを感じる。
(やはり体が動きやすくなっているな。親和性が高いのか)
氷を生やした体の部分_______肩と足は、治った今、前より動かしやすくなっている気がした。特に足は、今ならば走ることも満足に行える。
(いつでも顕現できないのが辛いが...早く任意での発動がしたい)
ブルーの生み出す氷は、未だ任意での発動は出来ず、大抵傷を負い、敵を目の前にしているときのみだった。
(今の姿でかつての力を手に入れれば、真竜だろうと...)
そこまで考えてエレベーターが開いたので降りる。ポーンと音を出してから扉が閉まった。
(......そういえば、俺に客?知り合いなど...)
「ブルー!!」
「...貴様か」
該当する人物一名と、声の主はピタリと一致した。
若草色の髪を揺らして、ミオがこちらに駆けてくる。
「やっと来てくれた...ずっと面会出来ませんって言われてて...」
「それでこんな時間まで待っていたのか」
外を覗けば既に闇夜が広がっていた。
「え、う、うん...だってブルーのこと心配だったんだもん...ヤイバさんとアオギリさんは?」
「あいつらは元気だ」
「ブルーは?怪我してない?」
「...心配するほどじゃない」
「嘘つくの下手だね...顔、傷ついてるよ?そこ座って?」
ミオが指したのは置かれていた横長の椅子で、大人しくそこに座るとなにかを開けだした。
「今日の用事はこれなの。おじいちゃんの診療所でよく効く薬を貰ったから...動かないでね」
「......」
ミオの手がブルーの頬に触れる。薬が塗り込まれる軽い痛みと、手から伝わる生暖かな感触にブルーは困惑するしかなかった。
「...もういい。やめろ」
「あ...ごめん、塗りすぎちゃった?」
「...違う。やられるのがこそばゆい」
「あー...」
「気遣って貰ったこと自体は、感謝する」
「!!どういたしまして!」
笑顔を咲かすミオは開けた薬を戻しだし...すぐに笑顔を曇らせた。
「また、誰かの為に戦ってきたんだね」
「俺は自分の為に戦っているだけだ。昔も今も、これからも」
「...あのさ、どうだった?やめようと思わなかった?たくさん痛い思いして...それでも、アリーさん達に協力するの?」
そんな言葉をかけられて。ブルーの返事は決まりきっていた。
「無論だ。俺は真竜を殺す」
「そっか...変わらないんだね。決めたことを真っ直ぐに、自分の信じたことを貫こうとして...私も、私に出来ること、探さなきゃ...コホ、コホッ」
咳き込むミオを横目で見ながら、ブルーは言葉を続けた。
「...俺はお前と初めて会ったとき、強い意志を感じた。俺が知る人間の中で一番だ」
(初めてまともに接した人間だから。というのもあるかもしれないが)
「え?」
「...お前はもう少し、自信をもってやればいい。そうすればもっといろんなことができるだろう」
「ブルー...」
「何を成すかは知らんが...ミオ、俺が保証しよう」
「...変わったね。前より優しくなった気がする」
「なっ...気のせいだ」
「えへへ...ありがとうブルー。私もう少し考えてみるよ。じゃあね!」
立ち上がって走り去るミオを見送り、ブルーは再びエレベーターに向かう。
(優しくなった筈はない。俺は自分のしたいことをして、言いたいことを言っているだけだ)
開いたエレベーターに乗り込む。その頃には無意識に緩んでいた顔が戻っていた。
(やることなど変わらない。真竜を...まずはニアラを殺す)
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「...ノック?」
提供された自室の前でブルーは止まった。
(ノックとは何だ?)
『入る前に必ずノックしてね!』
アオギリに言われた言葉を思い出したものの、ノックという行為自体が分からない。辺りに聞けそうな人もいない。
(まぁいいか)
結局なにもせず扉を開けると、そこには半裸のヤイバとアオギリがいた。
「っ?」
「え...」
「ブルー...」
三人が硬直する。
「なにをやっている?早く服を着たらどうだ」
「あ...あう...」
「...ブルー、私ノックしてって言ったよね?」
「ノックというものを知らないのでな。明日も早い、そんな寒そうな格好してないで早く寝ろ」
(人間の服は体温調節なのだろうな。体毛があまりないわけだ)
どうでもいいことを考えながら三つ並んだベッドの一番奥に入り込む。即座に暖気が閉じ籠り、ブルーの体を包み込んだ。
「このベッドは良いものだ...」
「...なんというか...今さら叫んでも遅いよね」
「見られたのも最悪だけど、ブルーが全く興味無さそうなのも腹立つ...女としての威厳がないのかなー!!」
肌色成分が多いのまま騒ぎ出した二人の声は、熟睡しだしたブルーに届くことはなかった。
ナナドラもいつの間にか九話目。早いものです。
お気に入り登録者様も二桁達成。ありがとうございます。
他の人からすればたいしたことないと思いますが嬉しい限りです。
これからもよろしくお願いいたします。