「…素に銀と鉄 礎に石と契約の大公
降り立つ風には壁を 四方の門は閉じ 王冠より出で 王国に至る三叉路は循環せよ 閉じよ 閉じよ 閉じよ 閉じよ 閉じよ 繰り返すつどに五度 ただ満たされる刻を破却する
告げる 汝の身は我が下に 我が命運は汝の剣に 聖杯の寄るべに従い この意この理に従うならば応えよ 誓いを此処に 我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天 抑止の輪より来たれ 天秤の守り手よ。」
ある島国の冬木の町、広い屋敷の薄暗い倉の中で一人の男の声が響く。
年の頃は20代前半頃だろうか、眉間の皺が無ければもっと若くも見える。男…衛宮 切嗣は、召喚の儀を終えて一息吐く。
薄暗い倉の中に置かれたのは一つの箱に納められた英霊(サーヴァント)召喚の為に手に入れた媒介。切嗣が苦心して手にしたのは、聖杯の欠片。
無論、切嗣がこの度参加した【第4次聖杯戦争】の優勝商品である聖杯とは異なる。
聖杯の欠片が媒介…出来うる限り歴史を調べた所、思い付くのは、アーサー王伝説に置ける英雄達。
ガウェイン、ガラハット、トリスタン、あと…。
カッ
そこで切嗣の思考が止む。聖杯の置かれた魔方陣が強い光を放ち、倉中が光に包まれた。目映い光に細めた光の中には、上背のある騎士だろう英霊が佇む。
次第に光が弱まり、目の前の英霊(サーヴァント)と切嗣(マスター)と視線が合わさる。英霊の一見冷たいとも言える唇の端が僅かに上がった。
「…サーヴァントセイバー、召喚に応じ参上した。貴公が俺のマスターか?」
「…ああ。その通りだ。君は、ガウェイン…いや、ガラハットか?」
切嗣の問いに、セイバーの眉が寄り僅かに思案する様を見せ、直ぐに一人横に頭を振り不敵な笑みを浮かべる。
「貴公が我が名を名乗るに相応しいか、それを確かめてからだ。」
「…何だと?」
切嗣の顔に険が帯びる。その胸中では、厄介なサーヴァントがあたってしまった、と後悔も起こるが彼の冷静な思考は直ぐに切り替わる。
「どう確かめるというんだ?」
「…戦いの時の君の判断に委ねよう。それが不服なら、令呪でも何でも使えば良い。」
切嗣は気付いた。相手の呼び方が、貴公から君へと変わっている事を。距離を縮めて来たのか、それともマスターとして認めていないからか。
よし、良いだろう。
「…僕の目的は聖杯のみ。君はサーヴァントとして戦ってもらう。それだけだ。」
「なるほど。」
探っていたセイバーの瞳が、一瞬人間味を帯びた気がした。それは、苛立ちか呆れか。
セイバーとマスターが出会った頃、衛宮 切嗣邸から遥かに離れた教会の屋根に腰かけた少女がそれを見つめていた。
月に輝く金色の髪を後ろで三つ編みにし、青い瞳で彼方の二人をただ見つめる。
「…やっぱり、セイバーと切嗣は仲が悪いんだ。」
どうしよっかなあ、と呟き屋根からヒラリと飛び降りる。その姿は、肌を差す寒風吹く冬木の町に溶けて行くのだった。
運命に導かれる様に、7人のマスターと7のサーヴァントが巡り会う。それは必然。
一つの陣営は、お互いの胸中を見せず探り会う。
一つの陣営は、熱き誓いを交わし、
一つの陣営は、真摯に目標を定め、
一つの陣営は、怯えと気高さを混じり、
一つの陣営は、優しい親愛を注ぎ、
一つの陣営は、狂った愛で満たし、
一つの陣営は、好奇心を沸き起こし。
新たな歯車が回りだした。