ウチの飼い猫が俺を魔法中学生にしてくれました   作:豚野郎

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2話

 

 ソファーから猫を抱き上げ、高い高いをする。

「雌か……」

 下腹部を凝視する。うん、あれがついていない。

 まあ、雄だからってどうという話でもないんだが。

 ねこまんまの器の前に猫を置く。

 猫は鼻で匂いを嗅ぎこちらを一瞥すると、素直にねこまんまを食べ始めた。

「ずいぶんお腹が減ってたんだな…」

 頭をなでてやる。

 ずいぶんと人懐っこい猫だ。段ボールから抱き上げた時もそうだったが、爪も立てなければ、こちらを警戒する声一つ上げない。

 それよりも、……どうしようかな……。

「ちょー飼いてえ」

 これは交渉の余地ありだな。

 テーブルの上から自分の携帯を取り、おふくろの美津子に是非を問うメールを送る。

 今日は遅くなるって言ってたし直接聞くにせよ、メールで返事が返ってくるにせよ、少し時間がかかることだろう。まあ、ウチのおふくろは結構おおらかな性格をしているから猫くらいは飼わせてくれるだろう。

 猫はしばらくこのままにしておいて、風呂でも沸かすか……。結構雨で濡れてしまったし、猫も洗ってやらないといけないからな。

 再び風呂場に行き、風呂の栓を抜く。水が抜けたら洗剤を内側にまんべんなく振りかけ、ブラシでごしごしと汚れを落とす。水で泡を洗い流し、お湯を入れたら今度はキッチンで昨日の洗い物を食洗機にかける。

 すねに何か柔らかい物が当たる。

「おっ、ようやくごちそうさまか」

「にゃあ」

 見るとねこまんまを食べ終えた猫が俺のすねに額をこすりつけている。

 あっ、ダメだこりゃ。おふくろがダメって言っても俺絶対この娘飼うわ。

「一足先に身体洗ってやるか………」

「にゃあ」

 上着とズボンの裾をまくり、三度目の風呂場突入を行う。

 桶いっぱいにお湯を注ぎ、シャンプーを少し混ぜる。人間よりも肌や毛がデリケートな猫に対しての配慮だ。

 頭に掛からない様に熱くない程度のお湯をかけてやる。

 普通は嫌がったり暴れたりする物だが、なかなかどうしてこの猫はたじろぎもせず、ゆったりとシャワーを満喫している。

 次は薄めたシャンプーを手で掬い、身体を洗う。猫はじっと、目を細めて気持ち良さそうにしている。まるで人間みたいだ。

 案外、毛も身体も清潔で、シャンプーの泡に薄黒い垢は出ない。捨て猫とは到底思えない。

 シャワーでシャンプーを落とし、風呂場から出す。

 先ほど使ったバスタオルは洗濯機の中に放り込んでしまった。

 引っ張りだして再度使用するのも気が引けるため、少々非合理的だが棚から新しいバスタオルを取り出して猫を拭く。棚を見ると残りのバスタオルがあと一つしかない。これから俺が風呂に入ることを考えると、残りの数はゼロと言って良い。

「おふくろ、怒るだろうなあ……」

 これは段取りを間違えた。帰って来てすぐに風呂に入れてやれば良かったなあ…。

 おふくろから中学生なんだからいい加減に家事くらい自分でやれ、と言われてから料理や部屋の掃除はできる様になったが、未だにこういう計画的な所ではミスをしてしまう。

 ちゃんと謝れば許してはくれると思うが、多少の御小言は覚悟しないと行けないかもしれない。

 そんなことを考えつつ、バスタオルで猫の身体を拭く。

 一通り拭き終えたら今度はドライヤーでマイ・ハn———もとい、猫の身体に蔓延る水分に止めを刺す。

「うっし、気持ち良かったか?」

「にゃあ」

 バスタオルを、ほんの少しの罪悪感と共に汚れた同類達が待つ洗濯機に突っ込む。

 作業が一段落ついたから、少し暇になる。

 部活無所属の中学二年生である俺は、受験勉強に追われることもなく学校のHRが終わったらまっすぐに家に帰って来ている。

 てな訳で、ただいまの時刻は……。

「午後四時……。飯作るのにも遅いし…何やるか…」

「お米は先に磨いで水につけておくと美味しくなりますよ」

「ん、ありがとう。そうしておくか…」

 ん……?今、俺誰としゃべった?

 …ハハハ。まさかついに俺にも見える様になったのか、ゴーストとやらが。

 おそるおそる振り向く。

 そこには———

「◎%¥&$×#△!?」

「え?ど…どうしたんですか?」

 目の前には、先ほど夢で見た女性。忘れようもない。奇麗な髪とそしてHな太ももとおっぱい……。

「ぐはあ…!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「……いつの間に…家へ……」

「いつの間にも何も、あなたが私を…って、もうこんな時間ですか」

 …訳が分からない。

 彼女は俺が家に入れたって言っているが、そもそもこんなモテるどころか女子から直視すらしてもらえないこの俺が、こんな奇麗でHなお姉さんをどうやって家に連れ込むって言うんだ………?

 こんな時間とか言ってるし、なんなんだ全く……。

「あっ、失礼しました。この姿で会うのは始めてですね。いや、あちらではもう会っていますか」

「は、はぁ……。と、とりあえず立ち話もなんなんでソファーに座ってもらえますか?———何か飲み物はいりますか?と言っても、お茶とブラックコーヒーくらいしか無いんですけど……」

「…あっ、それじゃあコーヒーを御願いします」

 見た目は年上そうだし、下手に回る。

 台所の冷蔵庫からコーヒーを取り出し、食器棚から取った二つのガラスコップに注ぐ。

 女性は妙にかしこまった感じでソファーに座る。テーブルにコヒーを置き、テーブルを挟んだ向かい側のソファーに俺も座る。

「ちょ〜っと質問良いですか?」

「どうぞ」

「あなたは……誰?」

「…トラコと申します」

「いやそういうんじゃなくて。……まあ、ややこしいから良っか。んじゃ、どうやって家に入ったんですか?」

「その……あなたに連れられて」

 これだけ聞いたら俺は危ない誘拐犯だ。

「身に覚えが無いんですが……」

「じゃあ、先ほどあなたが遭遇した戦闘については見に覚えがありますよね?」




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