では、どうぞ。
「うん、止めよう」
ある種、宣誓ともとれるその言葉にドルモンは答える。
その大きな瞳をぱちくりさせて。
「でもどうやってやればいいんだ……?」
止めようとは言ったものの、あの怪物のようなもの相手に。
恐怖を感じたアレ相手にどうすればいいのだろう。
その答えは、紫色の獣竜が持っていた。
「戦うんだよ、ボクたちが」
「ボクたちが?」
「うん、もちろん。ほとんどボクがやるんだけど……ボクたちデジモンには本来戦う機能がないんだ。無理をすればできなくはないけど」
「戦う機能がない……?そういえばデジヴァイスにもそんなコマンドはなかったな……」
「それをできるようにするのがパートナーの存在なんだ。一緒に戦おう、コウキ」
小さな手を、ドルモンが差し出す。
大きさこそ違えど、それは猫や犬のようなかわいらしいものだった。
「うん。戦おう、ドルモン」
その握手を交わした瞬間だった。
一人と一匹の周囲を光が覆う。
人はそれを、その光を絆と呼ぶのかもしれない。
同時刻。
アイリス・ザ・ワールド本社ビルのさらに上空。
一機のヘリが旋回していた。
「御覧いただけますでしょうか?!今、この街に突如現れた怪物が、アイリス・ザ・ワールド社の本社ビル屋上に陣取っています。周囲ではあの怪物と似た存在が複数目撃されており、人々を襲っているとのことです!現場からは以上です!」
ヘリコプターの中からレポートしていたのはキャスターの御堂レイ。
新人だった。
初めての大きな仕事が未曾有の怪物事件の実況になるとは思っていなかっただろうが、その図太さゆえか、彼女は難なくこなしていた。
「とりあえず……これでいいんですよね?アイリさん」
「敬語はやめてくれる?依頼したのはこちらだし、そもそも私は年下なんだから」
ほんの少し畏怖のまじった眼でレイから見つめられるのは未成年の少女。
瑠龍雅アイリだった。
アイリス・ザ・ワールド創始者一族の娘であり、事実上このヘリを飛ばしたのも彼女である。
未成年ではあるものの、彼女はこの場において最も権力を有していた。
それゆえのレイの態度だったわけだが。
「まぁいいわ。パイロットさん、ヘリをもっと近づけてくれる?」
「できません。あのビルの上にいるやつがどう動くかわかりませんしそれに」
「いいからやりなさい」
「……了解しました」
その少女の言うことは、絶対だった。
パイロットは高度を少し上げ、ゆっくりじわじわと、本社ビルに近づいていく。
その屋上に居座っている怪物は思った以上に大きい。
「お嬢様、ここらへんが限界です。なるべく早く戻らないと」
「そう、なら戻っていいわよ」
言いながら少女はシートベルトを外し、ドアを開放する。
「ちょ、アイリさん!?」
「おしかりしないようパパには言っとくから。それじゃ。ここまでありがと」
いたずらっぽくウインクを残して、少女は夜空に飛んだ。
「来て、ブイモン!」
「なるほどな、事情はわかったわ」
少年がパートナーと絆を交わし、少女が空を飛んだその瞬間。
彼は港にいた。
正確には彼と、一匹。
だが。
「ほな、お前はアイツを止めに来たっちゅーことかいな」
彼、御楽院ユウタが語り掛けていたのはところどころに鎧のようなパーツをつけた、少し大きめの獣竜。
名をリュウダモンと言った。
「うむ、元々パートナーである主の元に馳せ参じるつもりではあったのだが、今火急になさねばならぬのは……」
事態はデジタルワールドの存続に関わる。
それゆえ、リュウダモンのコトバは切迫の色を帯びていた。
「みなまで言うな相棒。俺とお前はどういう関係や?」
「どういう……?パートナーであろう?」
にかっと。
ユウタは笑った。
「せやろ。なら困ったときはお互い様や」
その手を少年は握る。
「俺は何をしたらええ?教えてくれ、リュウダモン」
その光が晴れ、視界が捉えたのは真っ白な世界だった。
「ここは……」
「そこはボクの中だよ、コウキ」
響くようにドルモンの声が聞こえる。
「ドルモンの……中……?」
「そう。いろいろ説明しなきゃいけないんだろうけど……時間がないみたい」
ドルモンの視線が捉えたのは怪物。
その光景はコウキにも伝わっていた。
「あれは、さっきの……!」
「いくよ、コウキ。君がいれば、ボクは戦える。君がいなきゃ、ボクは戦えない」
それは覚悟を迫る声だった。
戦うっていったって何をすればいいのかわからない。
その時、ポケットの中で何かが震えた。
「……デジヴァイス?」
取り出したその画面には
analyze your brave...
「ボクの遊戯を分析する……?」
enter your “ORDER”
「命令をうちこめ……?」
わずかな英文を表示したデジヴァイスはその形態を変化させた。
「キーボード……」
見たことのない字の羅列。
英語でも日本語でもない、そんな知らない文字で何を打ち込めというのか。
でも。
「戦うって決めた……!」
一人じゃない。
ドルモンといる。
ドルモンがいる。
さっき手をのばしたボクはどこにいる?
ここだ!
だったら!
「文字をうつくらい……!!」
指は動いていた。
「 へヴィメタル 」
その感情が文字を通して、ドルモンに伝わる。
「いけぇーッ!」
目の前の敵に、打ち出される弾丸。
「へヴィメタル!」
力を宿した鋼鉄の塊が迫る敵を射抜く。
「……!!」
それは断末魔だろうか。
腹部をうちぬかれた怪物は叫びを残しながら消えていく。
0と1の光となって。
そのかすかな光はアイリスタワーに向かっていた。
「終わっ……おわッ!?」
目の前の敵を倒した安心でほっとする暇もなく、コウキの目の前は真っ暗になった。
暗闇のなかで最初に得た感触は頬をなめられる感覚。
くすぐったい。
ゆっくりと目を覚ました先にあったのは
「ドルモン……」
「起きたね、コウキ」
「どれくらい寝てた……?」
「そんなには寝てないよ。秒単位」
「そっか……」
身体を起こしながら、見る。
その先にあるのはアイリスタワー。
「ドルモン……あそこに、敵がいるんだね」
「うん」
「よし」
立ち上がり、土を払う。
「行こうか」
「行ってくれるんだね」
「……正直まだ怖い。怖いけど」
「けど……?」
「ドルモンがいる。一人じゃないなら、大丈夫」
「……ありがとう、コウキ」
「いいよ照れくさい。行こうドルモン」
「いけるわね、ブイモン!」
「あぁ!!」
上空から落ちる一人と一体は敵を見据えていた。
進化し、形態を変えていくその様を。
その手を握る。
言葉はいらない。
パートナーなのだから。
「ブイモン!進化!」
強烈な光があたりを覆う。
その時になってようやく敵、アルカディモンはその存在に気づいた。
上空から迫る二つの存在に。
小さな蒼き獣竜は信頼を糧にその姿を変えていく。
強大な翼と刃を持つ神速の騎士へと。
アルフォースブイドラモン。
「まだ奴は究極体にすら至っていない……!」
デジタルワールドでの危機を思い出す。
ロイヤルナイツ総出でかかっても倒せなかった敵。
「力を貸してくれ、アイリ!」
「言われなくても!」
アイリは白い空間にいた。
共に戦うために。
パートナーとして。
enter your “ ORDER ”
「いくよアル!」
「 アルフォースセイバー 」
「はぁああああああ!!!」
アルフォースブイドラモンの輝きが増す。
あふれ出る光が敵、アルカディモンの触手を切り裂いていく。
「―――!!」
そして敵は動いた。
その全ての触手をひっこめ、かわりに視線を神速の騎士によこす。
ニヤリと、笑ったように見えた。
「……ッ!」
本能的な恐怖。
アイリの身体を冷たいものが駆け巡る。
「何よ人さまのビルのっとった分際でッ!」
攻撃をくれてやる。
そう思った次の瞬間に敵は目の前にいた。
「なッ!」
「え……?」
その太い腕が、アルフォースブイドラモンの身体を撃った。
「ぐぁぁぁぁぁぁッ!」
「きゃぁぁぁぁぁッ!」
痛みはパートナーにも伝わる。
猛烈な痛み。
「……クソっ……やるじゃないのアイツ」
だがそれでへこたれるような少女でもなかった。
「大丈夫かアイリ!?」
自身の痛みをおして、パートナーの安全を確認する。
「大丈夫……ちょっと痛いだけ……アルこそいける?」
その声は少し震えている。
痛みゆえかはわからない。
だがそれを押し込めるくらいの強さを、少女は持っていた。
アルカディモンはたじろぐ彼らを興味深そうに眺めている。
まるで何も知らない子供のようだった。
動かないなら、こちらから仕掛けるのみ。
胸に掲げる黄金が輝く。
すでに、完全体である今でさえ、ロイヤルナイツと同等、あるいはそれ以上。
究極体にしてはならない。
今ここで、つぶす!
「いくよ、アル!」
キーボードを叩く。
「 シャイニングVフォース 」
感情の力を武器に、光に変える。
それはまさしく無限の希望。
眩い光は、己が敵を焼く。
「ギギギギギ―――!」
その光をアルカディモンは真正面にうけた。
その長い両腕、そして悪魔は笑った。
腕を広げ、その光を受け入れる。
「何を!」
喰らう。
光を。
力の凝集を。
「アイツ……!」
アイリはその光景を、理解した。
そして、絶望してしまった。
莫大なエネルギーを己が内に喰らう。
そして。
「―――!」
食事を終えた怪物は喜びを口にする。
人間には理解できない咆哮。
身体に罅が入る。
それは、崩壊ではない。
新たな絶望の、誕生。
肉体が0と1に分解され、そして再びカタチを成す。
究極体。
ロイヤルナイツさえ届き得ぬかもしれない次元。
単純な恐怖。
その具現。
足が震える。
「ねぇアル……」
「なんだ……」
目の前のソレが何なのか、わからない。
だから恐怖?
勝てないから、だから怖い?
知ったことじゃない。
足は震えている。
だから、どうした。
私には、アルがいる。
「しんどいかもしれないけれど、行くわよ」
少女は強がった。
指が動く。
「 アルフォース 」
蒼の騎士は感情を力にする。
恐怖にうちかつ己と、己のパートナーをどこまででも力(希望)に変えて。
そこからの神速の戦闘に、言葉はなかった。
「かー……えらいことなっとんなアレ……」
ユウタはアイリスタワーの頂上を見てもらす。
暗黒と光の乱舞。
離れているここからでもその戦闘のすさまじさがわかる。
「あっこに行ったらええんやな、リュウダモン」
「……うむ。あれが我らの世界の敵」
鎧をまとったかのような獣竜は武者らしい口調で朴訥に話す。
「15才の誕生日にこないなことなる思てなかったわ」
頭をかきながらユウタは話す。
「すまぬ、ユウタ」
「あー、今のは愚痴ちゃぞリュウダモン」
その背中からパートナーが獣竜に声をかける。
どこまでも快活に。
「少し……なんちゅうか不謹慎ゆーやつかもしらんけど、正直ワクワクしとるんや」
揺れる背から、右腕をパートナーの頭にのせ、ユウタは続ける。
「誕生日にデジモンがもらえるんは知っとった。けれど、それが実体化して一緒におれるんやで?こんな嬉しいことないやろ」
その言葉はリュウダモンのココロに響く。
パートナーはこう言っているのだ。
自分に会えて、嬉しい、と。
「デジタルワールドの危機かもしらん……。アルカディモンゆーたか。強いんやろうけど本体は一体やろ?俺らは二人や。あれくらい、どうにかしたろうやないかい」
「……うむ……!」
武者らしく、というべきか。
リュウダモンはあまり感情を表にださない。
しかし、ユウタにはわかった。
「いこか。リュウダモン。デビュー戦や」
そしてもう一つ。
彼の心には、ある予感があった。
親友が、自分の向かうところに向かっているのではないかという、確信に似た予感が。
そのころ、コウキとドルモンはアイリスタワーのすぐ傍まで来ていた。
近づけば近づくほどにその戦闘の過激さと敵の強さを思い知る。
「誰か戦ってる……」
「あれはロイヤルナイツの……」
「ロイヤルナイツ?」
「うん、デジタルワールドを守護する騎士たちのことなんだけど」
「騎士……」
頭上で戦う蒼の存在は確かに騎士以外に表現しようがない。
今の自分で、どこまであの戦闘に入り込めるかわからない。
けれど。
「行くよ」
ドルモンと二人。
少年は勇気を持って、その戦場。
アイリスタワーへと。
戦闘の余波は方々へと広がっていた。
アイリスタワーが超高層ビルであり、周囲には同様のビルがなかったことがせめてもの救いか。
そして、力の差は如実に戦闘へと現れていた。
明らかな劣勢。
ロイヤルナイツであり、パートナーを得ている現状でさえ勝てないと思えてしまう。
単純な戦局だけみれば。
動きだけ見れば。
アルフォースブイドラモンの方が有利なのだ。
しかし。
「斬っても斬っても……!」
どれだけ剣でさし、貫いても、敵は再生する。
さらにエネルギーによる攻撃は分解され、吸収される。
デジタルワールドでの絶望が脳裏をよぎる。
どうすれば勝てる……?
アイリもその思いは同様だった。
自信を持ち、勝気な少女もここに来てこの難局に対する突破口を見いだせない。
ジリジリと疲弊していく。
それに比して敵。
まるで「生」としての衰えが見えない。
精神が見えない。
「……クソっ」
「……やけに静かだな……」
タワー内へと侵入したドルモンとコウキはその異様なまでの静寂に驚いた。
外……正確にはビル上空での戦闘が別世界かのように。
人もいなければ怪物の気配さえない。
「……この感じ、なんか知ってる」
あたりを見渡しながらドルモンがぼそりと呟く。
「……どこか似たところに居たとか?」
「わからない。わからないけれど、少し懐かしい感じがするんだ」
その原因は、今はわからない。
「とにかく上に行くよコウキ」
「あぁ」
「……で、どうやって上に行ったらいいと思う?」
「……」
「……」
一人と一匹があたりを見渡して気づいたことがある。
このフロア、階段とエレベーターらしきもの、つまりは「上」に行くためのモノが存在しない。
普通の建物なら四階分ほどはあろうかという吹き抜け。
それと受付だろう無人の大きな机。
「……まあるでどうしたらいいのかわからないな」
そもそもこんな大きなビルに来た事がない。
パッと見ても、どう行動したらいいのかわからなかった。
「お困りか、少年」
背後にいた。
背後から聞こえた。
親友の声。
「まぁおるやろなとはなんとなく思っとったで、コウキ」
「ユウタ!」
「よ、リアルじゃ久しぶりやな」
黄金の毛並みを持ち、鎧を着こんだようなデジモンを連れたその人物は親友の御楽院ユウタだった。
「ユウタもパートナーを?」
「おう、リュウダモン言うねん。リュウダモン、こいつは俺の親友のコウキや」
「リュウダモンと申す。以後お見知りおきを」
「よろしく、リュウダモン。こっちはドルモンだ」
「よろしく。リュウダモン。ユウタ」
「おう。さて……再会もそこそこにとっとと上に行こか」
「それがユウタ、このビル、エレベーターも階段もないみたいなんだ」
「それなら大丈夫や。こっち来い」
自信満々といった体でユウタは歩いていく。
「確か、この柱の……あったあった」
中央に見えていた大きな柱。
そのすぐ脇に手をすべらせ、ユウタは隠されていたボタンを露わにする。
「よっしゃ上行くで」
ユウタがボタンを押したことで、柱は動き出し
「エレベーター……」
「すごい、現実世界にこんな仕組みあるんだ」
「感心するのはそこらへんにしとき。はよ上行くぞ」
乗り込んだエレベーターにはボタンが二つしかなかった。
上と下。
迷うことなく上を押したユウタは振り返り口を開く。
「さて……ゆっくり再会を喜びたいとこやけどコウキ。何が起こっとるかは?」
「わかってるよユウタ。アルカディモンがどういう存在なのか、ドルモンたちがなんで現実に現れたのかもわかってる」
「ほな無駄な説明はせんですむな……一緒に戦うでコウキ」
「うん!」
親友は固く握手を交わす。
パートナーのその行動を見てか、二体のデジモンもまた固く手を握っていた。
「とはいうもののやな……」
エレベーターが止まった。
時間にして四十秒くらいだったろうか。
扉が開く。
その先は一階と同じようい広大な空間であり、やはり
「……ここからどうすんの?」
「それが問題なんや……」
ユウタの父は決して大企業とはいかないまでもそこそこの会社の社長である。
それゆえにこのアイリスタワーには時折訪れ一階の隠しボタンも知っていたわけだが。
「こっから先は俺もよー知らんねんな……」
あたりをキョロキョロ見渡すも、上へと至るものは特に見当たらない。
「とりあえず、何か探そう。方法はあるはずだし」
「せやな。俺は右行くわ」
「ならボクは左を探してくる」
このアイリスタワーは根元こそ一本のビルではあるが、とある階層からは二つに分かれている。
その分岐点。
コウキとドルモンは東側へ。
ユウタとリュウダモンは西側へ。
それぞれ先へ向かった。
上空での戦闘は続いてはいた。
疲労していく騎士とまるで変わらない怪物。
ハッピーエンドの御伽噺とは違い、騎士の姿に敗北が迫っていた。
「だいぶ……きついわね……」
さしものアイリも、思わずそう漏らす。
それもそうだ。
アルフォース……感情の力。
すなわち心の力を最大限に使って、敵は滅びない。
希望を胸に抱いていても、なお絶望に染まりそうになる。
聖騎士として、世界の災厄は取り払わなければならない。
しかし……己にそれができるのか……!
両腕の刃に力を込める。
背の翼を羽ばたかせる。
アルフォースブイドラモンは、考えることを捨てパートナーを信じ戦いに全てを捧げた。
異変は、コウキとユウタが別れておよそ五分後におこった。
ビルの中の異常な静寂が少女の声により破られる。
「聞こえますか。タワー内にいらっしゃる人たち。私は瑠龍雅イリスです」
その声は、デジヴァイスから響いていた。
「あまり時間がありませんから手短に。先ほどあなた方がこの中階層にいらしたとほぼ同時に、世界中のネットワークが何者かに掌握されました」
「なんだって?!」
「なんやと?!」
「現在、世界中でまともに稼働しているのはローカルのみ……あの時と同じ現象です。おそらくはこのタワーの上にいるデジモンによるものでしょう。お二方にお願いがあります……姉さんを助けてください」
「姉さん……?」
「瑠龍雅アイリ、やったか」
「はい。今現在、上で戦闘しているのは私の姉アイリとそのパートナー……私もそちらに行きたいのですが……上までの道筋は私が案内します。急いで!」
「なるほどな……上のはここの気ぃ強い方やったか。まぁ妹もあぁ言っとるし行くでリュウダモン。全速力や!」
「ドルモン……行こう、戦場へ」
そして二人と二体はたどり着いた。
最上階。
東塔と西塔。
それぞれの屋上へ。
そして見た。
見てしまった。
蒼の騎士が、その刃が折れ、落ちる姿を。
あまりに静かに、その身体は屋上と屋上をつなぐブリッジに落ちた。
デジヴァイスから悲痛な声がする。
「姉さん!アル!」
アルと呼ばれたデジモンにアルカディモンの腕が迫る。
喰らおうとせんばかりに。
「 ブレイブメタル 」
「 居合刃 」
光を放ちながら二つの鋼鉄が、その手を阻む。
が、それだけだ。
微細なダメージすらない。
それでも光をまとったデジモンたちは、アルを守るようにアルカディモンに立ち向かう。
「どうよコウキ……間近で見たら思ったよりでかいなコイツ」
「そうだねユウタ……でも行くよ!」
「おう!」
白い空間の中―――再びキーボードを打ち込む。
その勇気に応えるようにリュウダモンとドルモンは動く。
何度も何度も、鋼鉄を放つ。
かなうはずがない。
そう思ったのはアイリだった。
どうして……。
明らかにレベルが違う。
どうしてそれでも立ち向かえる。
どうして……!
「それを勇気って言うんだよ、アイリ」
「アル……!大丈夫なの、アル!」
「少し……いやだいぶ大丈夫ではないな。この状態も長くはもたない。今私にできることをしようと思う」
「アル、何を」
「わかるだろうアイリ。少し迷惑をかけることになるが……アイリ、力を貸してくれ」
少女は予感がした。
正確にはデジヴァイスを通して、わかってしまった。
パートナーが何をしようと思ったのか。
その先にアルがどうなってしまうのか。
「……わかった」
少し噛みしめる。
気持ちを押し殺すように。
「それもまた、勇気だ……君は少し周りより大人びている。それに賢い。人に見えないものが見えたりもするのだろう。無理をするな。疲れたときには私がいる……少しの間離れてしまうが」
「最後の一言が余計よアル」
「すまない……」
「いいわよ。必ず戻ってきなさいよね……それで。アイツに勝つにはどうしたらいいの?もうだいたいわかっているけれど」
少女の顔に悲哀はない。
あるのは覚悟。
「私の力を、彼らに……!」
「了解!」
その思いは、力となる。
精一杯の思いを指先にこめ、打ち込む!
「 アルフォース 」
二筋の光は勇気を持った彼らに届く!
「またね、アル……」
眼尻に涙が浮かぶ。
それを振り払うように、少女は叫ぶ。
「受け取りなさい、アンタ達!」
「うわっ」
「なんやコレ……!」
その光は力だ。
少女と騎士の覚悟と希望をのせた力。
……少年たちよ、勇気ある者たちよ……!使えその力を!私たちの思いを!
デジヴァイスが、光を放ち文字を写す。
E V O L U T I O N
「ドルモン、進化!」
「リュウダモン、進化!」
二つの光が、暗闇にのまれたタワーを照らす。
「いくよドルゴラモン!」
「いくでオウリュウモン!」
銀と金の龍は、戦場に降り立った。
お読みいただきありがとうございます。
やりたかったことというのはデジモンの技入力ですね……あれをデジ文字フォントでやりたかったのですが、そもそも導入できず……色変えてドラッグ形式にしようかと思ったらその機能ないんですね。現状なんだかとてもお間抜けな感じになってますけど許して。
一応2016年6月現在、次の話で一旦の区切りとなります。
また、個人的にはもっと細かい描写を盛り込んでいきたい感が強いので随時加筆するかもしれません。その点ご容赦!