「……はっ!?」
俺が気がつくとそこは保健室ではなかった。目の前には両開きの木製の扉があった。なんかどこかで見たことあるなと思っていたらその思考を遮るかのごとく話しかける人がいた。
「やっと正気に戻りましたか?」
「え?」
オカッパの髪に白を基調とした大洗の制服に身を包んだ園みどり子だった。どうして彼女が自分と一緒にいるのだろうか。というかなぜ自分はここにいるのだろうか。
「……そど子?」
「だからそど子って呼ばないでよ‼園みどり子よ‼」
思わず呟いてしまった言葉で彼女はまた怒ってしまった。自分は敬語を忘れるほどの怒りを彼女にいったい何度味わわせるつもりなのだろうか。
「すみません……思わず」
「まったく……気を付けてくださいよ」
なんと言うか彼女は自分に対して諦めを持ち始めているようだ。しかし自分は気がついたらここにいて目の前に大好きなガルパンキャラがいたりと混乱続きであまり責められないものであるから勘弁してほしい
「それでなぜ俺はここにいるのですか?保健室ではなく」
「ずっと呆けていたのですよ。元々私が保健室に来たのはあんたを生徒会から連れてくるようにと言われていたからです。一応あんたは不審者なのですからね」
なるほど自分は混乱に混乱が重なって呆けていたのかと俺は納得した。それで仕方なく彼女は呆けている自分を生徒会室まで誘導して連れてきたってところだと。……仕方がないとは言え自分自身がひどく情けなく感じた。
「まあ確かに不審者なのは当たり前ですよね、でも俺はなぜここにいるのかさっぱりわからないのですよ……自分は不審者ではなく被害者だと叫びたいほどです」
「誰がに誘拐されたとかでしょうか?と言っても学園艦に誘拐したあげく誘拐した人を校門前に置いてく酔狂な人はいないと思いますけどね」
確かにその通りだが自分はそういう意味で言ったのではない。どうしてこの世界にいるのだろうという意味で言ったのだ。いやこの世界の住人に同じ事を言ったら同じように返すだろう。この台詞から異世界転移というとんでもなく非常識なことを思い起こす人なんていない
「(……ん?ちょっと待て。どうして俺はごく普通に異世界転移だと思っているんだ?)」
そう言えばおかしいことに気が付いた。いやおかしなことだらけであるが自分がガルパン世界に転移していると何も根拠もないのにそう感じたことにおかしいことに気が付いた。これだけ混乱しているはずなのに冷静に今の状況を受け入れている。
「(……そういえば)」
「?どうかしましたか?」
首を傾げるオカッパ風紀委員の園みどり子を見る。確かに最初見たときはすこぶるクオリティーの高いコスプレイヤーだとは思った。しかし
「(それで混乱のあまり、いや自分の世界の常識的な対応してコスプレイヤーと言って園みどり子さんを怒らしてしまって何とか許して貰ったんだっけ。はぁ……ガルパンキャラに怒られるとか忘れてしまいたいほどの黒歴史だよ。ってそうじゃなくてそのあとで確か……)」
自分は何と思っただろうか。何か肝心なことを……
「考え事してるならさっさと入りましょうよ、生徒会だってこの時期ですから忙しいと思いますからね」
ムスっとした感じの彼女に思考を遮られてしまった。確かにこの生徒会室でずっと立ちっぱなしも変だし生徒会をいつまで待たせるのも悪い。ってこの時期?
「この時期ってどういうことです?何か特別な行事がたるのですか?……もしかして戦車道の大会とか」
「違いますよ。というかこの大洗に戦車道はありませんよ。はぁ……まさか日付も分かってなかったとは」
時期と聞いて自分は戦車道の大会だと思った。自分が最後映画に行ったのは6月の中旬だったはずだ。その何日か前に月刊戦車道特別号が届いて喜んでいたから多分そうだろう。ってことはこの世界の大洗では戦車道が復活しなかったのだろうか
「混乱していると思いますが詳しいことは会長たちから聞いてください。会長たちをいつまでも待たせるのは悪いですからね。あとそれと」
彼女はしっかりと俺を見据えてこう言った
「私だって気になっているのですから、どうして私のことを知っているのとかあまり知られていない大女学のことをなぜ知っているのとか聞きたいことは山ほどあります。だからまずは生徒会に不審者ではないと説明してください」
それを聞いて俺は涙が出そうになった。そうだった、彼女は混乱する俺を思いやって何も聞いていないのだ。唯一聞いたことは「なぜ校門に倒れていたか」だがあくまでも俺が今の状況を認識しているかを聞いただけで彼女の疑問ではない。しかも彼女は自分のことを不審者ではないと信じているという
「どうして俺が不審者じゃないと信じられるんだ?」
「そう言っている時点であなたは不審者じゃありませんよ。それに私は誇り高き風紀委員長です、色々な生徒と触れ合ってきてます。だからあんたがちゃんと誠実に謝ってきたときにこの人は絶対に不審者ではないと感じたのです」
嗚呼なんて素晴らしい人なのだろうと俺は思った。アニメではよく「学校の風紀を守る几帳面なキャラ」みたいな感じだった。でもそれは間違いではないんだか彼女の浅いところしか見ていなかったことを俺は知る。少なくとも目の前にいるのは俺の知る風紀委員のそど子ではなく、誇り高き風紀委員長の園みどり子だった。溢れ出そうな感情を押さえながら俺は口を開こうとしたがとあることに気が付いた
──そういえば目の前にいる園さんは風紀委員長なんだな
アニメなどの公式では風紀委員長ではなく風紀委員としか設定されてなかった。だからホントに目の前にいる彼女は俺の知るそど子ではないのだろう。そう感じるとなぜか俺は胸が痛くなった。さっきといいなんで胸が痛くなるのだろうか。まぁ些細のことである、俺は気にせずお礼を言おうと口を開いた
「ありが」
「例を言うのはまだ早いわ、生徒会に不審者ではないと説明していないのだからね。それと……やっとため口になったわね」
「……あっ」
気がつくと敬語を忘れて自分はため口で彼女と会話をしていた。彼女の献身的な会話のお陰で心が解されたみたいだ。本当に彼女には頭が上がらない
「でも……一つだけここで聞いていいかしら?」
「おう、大丈夫でっせ‼園さん」
「何か変なテンションになっているわね……聞きたいのは名前よ」
園みどり子さんによって解されたせいで俺の調子が良い性格が出てきた。変なテンションになっているが。
「そういえば名乗ってなかったな、俺」
まさかこの大洗女子学園で自分がガルパンキャラによく似た人に自己紹介するとは思わなかった。こんな経験を他のガルパンおじさんたちに言ったら発狂しそうである。だから俺は胸を張って言った
「俺の名前は」
「おいそこで何してる、部屋の前でごちゃごちゃ話すのはやめて、いい加減入ってこい」
「「……」」
自己紹介しようとしたら生徒会室の扉が開き中から片眼鏡をして広報腕章した知的に見える人が出てきて俺たちにそう言った。確かに俺たちは生徒会に呼ばれて生徒会室の前に来たのに入って行かずにずっと会話をして全面的にこちらが悪いことはわかっている。でもである。
「な、なんだその顔は」
「「……」」
タイミングが悪すぎた。まさに俺としては胸を張って自己紹介しようとし彼女としてもちゃんと名前を聞こうもしたところである。
お互いの顔を見合わせる。彼女の顔はひきつっていた、多分俺も同じ顔だろう。お互い同時につり目に片眼鏡をしたガルパンキャラに向き直った。
「な、なんだその目は。お前達が悪いんだぞ‼いつまで待っても入って来ないんだからな‼」
「……そうですね、待たしてしまってすみません」
「……それじゃあ行くわよ、規則は守るものだから」
この出鼻を挫かれて感じる怒りと鬱憤はどこにぶつければいいのだろうか。出会って間もないのに二人は気持ちを一致させながらそう考えた。なにも悪くないのに目の前にいる人にそんな感情をぶつけてしまうのは許してほしいと思いながら。そんな状態のまま二人は広報担当の生徒会役員に連れられ生徒会室についに入っていったのだった。
二話目なのに主人公の名前分からない事案