大洗に転移したとある男の物語   作:金星信者

4 / 6
公式では生徒会腕章してませんがこの作品ではしている設定となっています


生徒会との会合

「やぁやぁ遅かったねぇーお二人さん」

 

数十人が事務作業しているであろう(今はいない)生徒会室をくぐり抜け「生徒会長室」に入ると赤みがかった茶髪を小さな黒いリボンでツインテールに髪を纏めた小さな女の子が目に入った。その子は自分よりも座高の高い黒い牛革で出来た大きな椅子に寄りかかりつつ足を事務机の上に投げ出しながらそう切り出した。小さい女の子がそんなことすると普通なら生意気としか思われなさそうだがこの少女からまったくそうは感じられない、むしろそうであるのが当たり前というように自然なのだ。左腕にしてある「会長」という腕章が後ろの大きな窓から差し込む光よって余計に強調されていることがそのことに拍車をかけているかもしれない。ある意味神々しさすら感じる光景でもあった。

 

「まったくだ、我々がどれだけ待ったと思っているんだ。というかなんで入ってこないで我々の部屋の前でずっと話しているんだ‼」

 

こちらから見てその子の左側で立つ知的そうに見える片眼鏡の女の子が俺たちに文句を言った。ただその文句の言い方がちっとも知的ではなく窓からの光で輝く短めの黒髪がその子の動きよって振り回された。姿は良いのに中身が残念を地で行くのがこの生徒会広報担当だった。微笑ましさすら心に芽生えるのだから罪な人でもある。だがそこがいい

 

「まぁまぁ桃ちゃん、この人だって今の今まで気を失っていて混乱していたのだからしょうがないよ」

 

大きな椅子に座る「会長」の右側に立っている女の子が「桃ちゃん言うな‼」を聞き流しつつそう言った。そちらに目を向けると彼女の胸が自分の目に飛び込んでくるんじゃないってくらい大きさの胸を制服の布の下から主張している、実際アニメで見るときよりも大きく感じて胸が熱くなりそうである。……オカッパ頭に睨まれたような気がして冷やされてしまったが。顔を見てもおっとりとしていそうな雰囲気で栗色の髪を少し長めの黒いリボンで一纏めにしている。俗に言うポニーテールというやつだ。左腕には「副会長」と書かれた腕章をしている。

 

なんだか物々しい雰囲気で登場した三人はガルパンの大洗女子学園生徒会こと、角谷杏生徒会長、小山柚子副会長、河嶋桃広報担当である。

 

角谷杏──大洗女子学園の生徒会長で、小柄だがその手腕は豪快で大ざっぱで性格も飄々としているが、リーダーシップに優れ非常に有能な人である。また主人公西住みほを戦車道に引っ張り込んだ張本人である。干し芋が大好きなのか年がら年中食べている。ちなみに料理上手でありもしかしたら一番女子力が高い人かもしれない

 

小山柚子──おっとりとした性格の生徒会副会長でその分角谷会長と河嶋には振り回され気味である。しかしその巨乳はどんなガルパンおじさんでもノックアウトする。おっとりした性格だがシビアな部分も見え隠れしており、主人公西住みほを戦車道に引き込む際はやんわりと脅しているに見えて一番威圧しているのに見えるのは多分俺だけではないはず。ちなみに数十人の役員がいるとはいえ、生徒会の雑用から書類整理までほぼ一人で行っているらしい。会長を有能な怠け者とするなら彼女は有能な働き者であろう

 

河嶋桃──知性的な風貌でクールな参謀タイプを思わせるが、その実非常に沸点が低く感情的になりやすい性格である。その上メンタルも弱く劣勢になると真っ先に泣き言を言い出すポンコツである。しかし会長の目論見を察してすぐに他校に練習試合を申し込んだり生徒会長の右腕としてきちんと活躍していたりと別に無能ではなくむしろ有能である。つまり臨機応変の処置ができない役人タイプと言えばいいのだろうか。勿論作中に出てくる学園艦局長の役人には似ても似つかないので勘違いしないでほしい

 

この三人は戦車道では「カメさんチーム」として組んでおり38(t)戦車(後半はヘッツァー仕様)に乗っていた。会長が車長・通信手、河嶋が砲手・装填手、小山が操縦手である……のだがその会長が専ら干し芋食っているだけですべての負担が河嶋にいっているので作中で河嶋は絶対砲撃外すウーマン化している。なので責めるのも酷な話だろう。なお後半からは会長も本格参戦して砲手を務めることとなりこちらは百発百中で河嶋も装填手として2~3秒装填をする有能さを見せている。もちろん操縦手である小山も超絶ドライブテクニックを見せている。ちなみに会長が砲手務める間、通信手がいなくなるのはご愛嬌だろう

 

そんなあの三人が目の前にいる。

あの生徒会室に隣接してる生徒会長室に俺は自分の足で立ち、三次元だがあのガルパンの生徒会が自分の前にいる。

そして隣にそど子もいる。

あの園みどり子がいる。

 

そうすると俺の頬に水の線が入った

 

「へ?」

「えぇ!?」

「な、なななな」

「ちょっと!?どうしたのよ!?」

 

俺の涙に四者四様に反応するが俺はそんなこと聞く耳を持たなかった。なぜなら感動で胸がいっぱいとなって言葉が交通渋滞を起こしていたからだ。その感動とはもちろん目の前にいる生徒会メンバーと隣にいるそど子の存在である。部屋に入ったらあのガルパン第一話にて主人公西住みほが「戦車道やれ」と脅されていたときと同じ状況だったのだ。まるで自分がアニメの中に生きている、そんな感覚が俺を襲った。それを痛烈に実感した結果自分は改めてガルパン世界に転移したのだと心にきたのだ。その結果溢れんばかりのガルパン愛が心の堤防を決壊させ目から愛を垂れ流している状態となってしまったのだった。それを実感したのはこの感情の暴発に気が付いたときであった。

ガルパンおじさんならば絶対に共感し涙を流すだろう

 

「うっ……くっ……」

 

「おーいかぁしまぁ、お前のせいだぞー?」

 

「か、会長!?私のせいですかぁ!?」

 

「ちょっとどうして泣いているのよ!?というか泣くようなところあったの!?」

 

角谷会長が広報に罪を擦り付けたり園さんが混乱してたりと少しカオスになっていた。そんな中いち早く冷静になった副会長が俺に自分のハンカチを差し出してきた。

 

「はいどうぞ、どうして泣き出したのかわかりませんがこれで涙を拭いてください」

 

「グスッ…ありがどうございまず」

 

鼻声になりながらもハンカチを受け取った俺は目からあふれ出る愛を拭く。しかし拭いても拭いても止まることがない。なぜだろうと少し考えるためにその行為を中断すると甘い匂いが鼻をくすぐった。どこからだろうと探るとどうやら手に持っている目の前のハンカチからするようだ。

気になったので鼻にハンカチを近づけてみた。涙のせいで分かり辛かったがやはりこのハンカチから甘い匂いがする。その匂いはひどく懐かしく感じる匂いで無性に心を落ちつかせる心地良いものであった。

 

「泣き止みましたか?」

 

小山副会長が顔を近づけ心配そうに聞いてくる。この香りへの思考を止めて目元を触ってみると涙がいつの間にか止まっていること気が付いた。どうやらこの匂いの安心感のおかげで止まったらしい。

 

「すみません、副会長さんのハンカチを汚してしまいました」

 

「大丈夫ですよ、いつも桃ちゃんが泣くから何枚も常備しているので」

 

「ちょ!?小山!?」

 

どうやらこの小山広報、アニメで見たとき以上に泣き叫ぶらしい。「恥ずかしいから言わないくれ小山‼」「うんごめんね」とやり取りをしているのを見ると日常茶飯事なのだろう

 

「ま、落ち着いたのならいいわ。まったく心配させないでよね」

 

「なーんか毒気抜かれちゃったねー、ここは生徒会らしく威圧的にいこうかと思ったけどいつも通りでいっかー」

 

相変わらず園さんは眉をひそめつつも呆れたような顔をして安心するという複雑な顔をしていた。一方会長さんから何やら物騒なことを言っていた。どうやらアニメで主人公にやったことをやろうとしていたが予想外の俺のマジ泣きに毒気が抜かれたようだ。理由はどうであれ泣いてよかったかもしれない

 

「んじゃ気を取り直して……身体の具合はどうよ?」

 

「まずそこからですか……ええ、お陰さまで健康そのものです。助けてくださってありがとうございました。それとハンカチもありがとうございました」

 

「ううん、助けたのは風紀委員たちですよ。私たちは保健室の使用申請を受理しただけですし。あとどういたしましてです」

 

「ふん、まぁ何も異常がないのなら言うことはない。ただ小山の言うとおり風紀委員たちにちゃんと礼を言っておけ」

 

汚してしまったハンカチを小山さんに返しつつそういえば倒れていたんだっけ…とすっかりあのやり取りで忘れかけていた。少し動揺しつつも三人に礼を言ったが副会長からも雰囲気を取り戻した河嶋さんからも風紀委員たちにもちゃんと言えと言われてしまった。確かにその通りなので礼を言うべく園さんを見ようとすると遮るように彼女の言葉が駆け抜けていった。

 

「あんたは私にしっかりとお礼を言ったでしょ?ここで言わなくていいわ。あんたを運んだ風紀委員はあとで私が呼ぶからそのときに言いなさい」

 

私がお礼をかわりに伝えておくからと言わないのだからやっぱり几帳面な性格なのだろう。俺はそのそど子らしさに俺は苦笑をしてしまった。

 

「わかった。でもあとで園さんにもお礼を言うからね」

 

「……まぁそれでいいわ」

 

少し照れたような顔をしていたことに俺は満足した。

 

「おいそこ‼イチャイチャするな‼」

 

「イチャイチャなんてしてませんよ‼河嶋さん‼というかなんでこんなやつと……」

 

なんか失礼なことを言われたがイチャイチャなんてしただろうか、そう考えていたら生徒会室の雰囲気が変わったような気がして俺は三人に向き直った。相変わらずの会長さんは不敵に笑っていたが、副会長は穏やかながらも刀のような鋭い目でこちらを見ている。広報はキリリッと今更ながらカッコつけていたが時すでに遅しだった

 

 

「さて、学園艦「大洗女子学園」にようこそだね、堤晴男さん」

 

会長さんが皮肉たっぷりに自分の名前を言った。どこで自分の名前を知ったのだろうか。「つつみはるおって名前なのね……」と隣で園さんが呟いていたことは置いておこう。わからないがとにかく今わかることは現在の自分は危険な状況に飲まれかかっているということだ

 

「貴様の容疑は不法侵入だ。そうだよな、小山」

 

「はい、この学園艦の乗船記録にもこの艦への移住申請もありませんでした。しかし侵入したのであれば船舶科の生徒か忍道履修生、または風紀委員が発見するはずです」

 

広報が自分を不法侵入者だと言い、副会長がどう侵入したのかまったく不明だと示す。しかしこのやり取りはのおかげで一つわかったことがある。それは自分が憑依ではなかったことだ。星の数って言って良いほど転生作品があるのがその中で憑依というものがある。つまるところそれは作中のキャラもしくはその世界の人物に自分の魂が憑依してしまうというものだ。俺は転移と憑依の二つの可能性を考えていた。この世界の堤晴男に別の世界の堤晴男が憑依したのではないかという可能性だ。しかしそれが杞憂だったために安心したのだ。もしそうだったとしたらこの世界の堤晴男を乗っ取ったということになるから。

 

「確かに不法侵入者ですが彼は被害者であると我々風紀委員は考えております」

 

「ほう……あの鬼の風紀委員と呼ばれた園みどり子風紀委員長がその男を庇うのか」

 

「いえ違います。確かに身体には異常がありませんがなぜ校門前で倒れていたのかまったく分からないと言っていたので記憶に異常が見られるからです。しかももし彼が本当に侵入者であるのならここに顔を出したりしないでしょう。ですので思い出すにしろ思い出さないにしろ定期寄航するまで保護観察することを提案致します」

 

「でももし彼が暴れたりして生徒や艦内住民に被害が出たらどうするのですか?どう責任を取るのでしょうか?しかもこれから始業式が控えているというのに……」

 

憑依否定の内心の喜びもつかの間、園さんが急かさず反論をしていた。それに対しての生徒会二人も欠かさず意見を述べていた。というかここまで園さんが俺を庇ってくれていることに嬉しさが込み上げてくる。出会ったまだ数時間ぐらいなのにである。そう感じていると園さんがこちらを向いた。どうやら俺の反論の時間がやってきたようだ。呆けている場合ではない

 

「副会長が言う通り自分が暴れる可能性を否定できません。園さんが言う通り俺は記憶が混乱しております。正直に言えば大洗学園艦にいることも半信半疑なのです。それに……」

 

ちらりと生徒会の後ろにある窓の奥を覗く。奥に写る光景は満開の桜と桜吹雪である。それ以外には人がチラホラととある準備をしていた。察するに始業式の準備だろう、だから生徒会室で作業しているはずの生徒会役員が全員いなかったのだろう。俺を呼ぶに当たって立ち退かした可能性も否定できないが

 

「俺が目覚める前の記憶では外は桜の季節ではなく雨が降る梅雨の季節でした。6月の下旬だったことは確実に覚えています」

 

「なっ!?つまり貴様は10ヶ月以上をも記憶を失っているのか!?」

 

「……それは本当ですか?風紀委員長」

 

「生徒会室前で話したとき彼は日付をまったく知らない様子でした。そのとき嘘をついているような目ではなかったことを報告します」

 

実際は違うのだが意図的そういう形に持ってかせた。別に俺は嘘をついているわけでもないし勘違いしたのはあちら側である。本当は正直に話したいのだが話したらどうなるだろうか?「実は俺……異世界人なんだ。それで君たちは俺の大好きなアニメキャラ云々」と。十中八九おかしい人と思われるだろう。確かに話したら不審者・不法侵入者扱いではなくなるだろう、精神異常者として扱われるだけで。同情と侮蔑を混ぜた感情で触れ合われるのは正直ごめん被る

 

「ですので手足縛って監禁でもいいと思ってます。俺はこの大洗が好きです、この大洗を形作っている人々が大好きです。だから俺自身も貴方たちを傷つけることは不本意であると思ってます」

 

「っ!?……貴様は」

 

「……風紀委員長」

 

「……彼がそう言うのでしたら私たち風紀委員が責任をもって監禁いたしましょう」

 

俺が監禁でもいいと言うと広報は面を食らったように驚き、副会長は驚きながらも園さんに確認を取り、園さんはこっちを睨みつつも了解の意を示した。確かに園さんの睨むとおり手足縛りの監禁はやり過ぎかもしれない。しかし俺はガルパンおじさんである。誇り高きガルパンおじさんである。ガルパン少女たちを守るためなら命も辞さない人種である。これくらい屁でもない

 

そう考えていてふと気づいたことがある。会長さんはなぜ黙っているのだろうか。さっきからずっといつものように不敵に笑っているだけで口を開かず静観しているだけだ。そう思いつつチラリと会長さんの方を見た

 

すると会長さんの口の笑みがニィィという感じで深まったのが目に入った

 

あ、これは何かやばいこと仕出かすんじゃと感じたのもつかの間だった

 

「うんオッケー、みんなの意見はよーくわかった。んじゃ私が堤晴男ちゃんを呼んだってことで決定ぇー」

 

「……え?」

「えぇ!?」

「はぁ!?」

 

「…………ファ!?」

 

こんな反応をしてもしょうがないだろう。会長が「あれぇ?会長の決定だよー?なんで拍手しないのー?」と言っている傍ら俺らが固まっていても誰も責められないだろう。

 

「どういうことですか!?会長!?」

 

「そうです‼いくら会長の決定と言えどもそれはないです‼」

 

「毎回無茶苦茶なことやりますが今回ばかりは無茶苦茶過ぎます‼説明を、説明を求めます‼」

 

広報、副会長、園さんと慌てながらも説明を求めていた。勿論俺も混乱していたが彼女ら三人が慌てるのを見て自分は落ち着くことができた。小説やアニメなどにおいて使い古されたものだが人が慌てているのを見ると落ち着くというのは本当だった

 

「会長さん」

 

「ん~?」

 

会長さんがこっちを向く、他の三人もそれにつられたのかこっちを向いた。少し緊張するがまずは整理しなければならない

 

「会長さんが俺を呼んだことにするとなると不審者・不法侵入者ではなく客人という扱いになるという認識になると捉えて良いですか?」

 

「まぁそうなるねー」

 

「生徒会の客人ってことは俺の身柄は生徒会が預かると考えて良いですね?」

 

「まぁそうなるねー」

 

「……そのメリットは?」

 

「……」

 

説明を求めるべきはここである。なぜその結論に至ったかではなく俺を客人にするメリットは何なのかである。いったい会長さんは何を考えているのだろうか。そう思いつつ俺は口を開いた

 

「俺を客人にするって自分で言うのもなんですが危険なのでは?身元も分からない若い男ですよ?ここは女子学校で…ありま」

 

途中で途切れてしまった。発言に自信がなくなったからではない。有無を言わさない目があったからである。

 

会長から笑みが消えた

 

彼女は無表情となり目を少し細めた

 

――それは眼光だった。

――それは威圧、目の圧力だった。

――それは心臓を鷲掴みにするようなものだった。

――それはアニメで見たあの局長への目と同じだった。

 

―――それは執念だった

 

俺は圧倒されていた。こんなに小さな少女からここまでの圧力を出せることに。こういう一面を知っていたのに関わらずである。唾を飲もうとしても口が渇いていることに気が付くのは今になってだった。こんなにも俺は蛇に睨まれた蛙になっていたのだった

 

「河嶋、小山」

 

「はい」

 

「なんでしょうか?」

 

対して生徒会二人は普通に彼女に接していた。多分ああいった彼女と何回も接していて慣れているのだろう。流石は馴染みである

 

「メリットを説明する、彼は私らにとって「希望」というのがメリットだ」

 

「……っ!?この男が…ですか!?」

 

「希望!?…本当に希望になり得るのですか?」

 

会長は何やら俺のことを希望の存在だと揶揄した。生徒会二人も驚いたように俺を見た。しかし自分の記憶を探っても希望だと言えるものはないと思う

 

「希望ってなんのことですか?私はなんのことやら分かりませんよ」

 

園さんが呆れたようにため息をつきながら言った。俺だってそうである。それで風紀委員長である園さんが知らずに生徒会三人だけが共有できるものとは何なのだろうか。

 

「それですまないんだけど、かぁしまぁ、小山ぁ。少し彼と二人で話したいからちょっと外に居てくんない?」

 

「……大丈夫なのですか?」

 

「少し……危険なのではないでしょうか?」

 

会長さんが俺と二人きりで話したいらしい。広報と副会長は心配して咎めようもしていた。しかしそれを遮るようにいつも雰囲気で園さんに言った

 

「そど子ぉー」

 

「そど子って略さないでください‼」

 

「んじゃあミドコンドリアぁー」

 

「誰が真核生物ですか!?」

 

いつもの雰囲気で彼女らはやり取りをしていた。会長さんが弄り園さんが怒りと。二人は同級生でそれぞれの長だから何かあったのかもしれない

 

「まぁ怒らないでくれ、ミドコンドリア」

 

「うんうん、気を立てないでミドコンドリア」

 

「あ~ん~た~た~ち~」

 

生徒会二人も会長さんに乗って弄っていた。でもしょうがないのだ、弄って面白いのが園さんだからだ

 

「まぁまぁ落ち着いてくれよ、ミド子」

 

「何うまいこと言ったようなしたり顔してるのよ‼ムカつくのよ‼」

 

なんだか収拾がつかなくなってしまったような気がする。しかし会長さんは不思議だ、あれだけの重苦しい雰囲気を出したかと思えばふざけだして軽い空気にしてしまったのだから。でもそれは俺のためなのだろう。正直あのままだとやばかったから、気を利かせてくれたのかもしれない。…あの状態にしたのも会長さんだが

 

「それでミド子」

 

「違います」

 

「彼はどうよ?」

 

不適な笑みを浮かべながらあの眼光を少し戻した会長さんが園さんに聞いていた。ミド子と言って締まらないようにするのが彼女らしい

 

「はぁ……彼は少なくとも誠実です。それは私が保障します」

 

「うん、ミド子が言うなら確実かなー」

 

「……その信頼感はなんとかなりませんか」

 

俺の人格を聞いたらしい。生徒会二人を安心させるための処置だろう。やはりこの人は侮れない

 

「だって目がいいんでしょ?園風紀委員長」

 

「それは視力の話なのですが……まぁその通りですよ、角谷生徒会長」

 

二人がニヤリとしながらやり取りをしていた。やっぱり彼女らは信頼し合っているようだ。考えればそうだろう、大洗を引っ張る生徒会と大洗を支える風紀委員会、どちらも巨大組織で足並みを揃えないと運営が出来ないわけがないだろう。その巨大組織の長の二人である、仲良くないわけがない。俺はガルパンの裏を見たような感じがして込み上げるものがあった。

ここにそど杏はいいぞと提唱をしよう

 

「んじゃあーそど子はかぁしまと小山の二人を出したあと誰も入らないように会長室で警備してくんない?」

 

「だからそど子はやめてください……本当に私でいいのですか?」

 

「そど子がいいんだよー」

 

「……わかりました、それでは小山さん、河嶋さん、行きましょう」

 

ニヤケを押さえているのか口元をヒクヒクさせながら生徒会二人に呼び掛けていた。なんだこのそど杏は(驚愕)

素晴らしいぞ

 

「……会長がそういうなら」

 

「分かりました。……会長に何かあったら只ではすみませんからね」

 

人としては馬鹿らしくもガルパンおじさんとしては至極命題のことを考えているうちに二人がそう言って出ていった。二人が出ていくのを確認しながらもそのあとに続いた園さんが扉のノブにてを握りつつ口を開いた

 

「会長、何かあったら呼んでください。それと」

 

背を向けたままの園さんがこちらを向いた。真剣な表情しつつ俺に向き直った。

 

「一つだけ忠告よ。会長には嘘や誤魔化しは効かないわよ……それだけよ、頑張りなさい」

 

そう言って出ていった。残ったのは俺と会長さんのみ。なぜか分からないが会長室がひどく大きく感じる。

園さんは「嘘や誤魔化しは効かない」と言っていた。どうやらこの会長さんも園さんも俺が誤魔化したことに気がついているようだ。それでは頑張るとは一体何をだろうか。誤魔化したことは謝るが別にそれは頑張ることではない、何だろうか。園さんの意味深な忠告について考えていた。すると

 

「話し合うんじゃないよー」

 

会長さんはまるで俺の心を読んだかのように言った。会長さんはいつもように不敵に笑いつつ何やら会長机の下の床を弄っていた。それで蓋のような物を持ち上げていた、どうやらそれは床下収納というものらしい

 

「これはかぁしまや小山たちも知らない秘密の隠し場所なんだよねぇー」

 

にひひと笑っているような感じで彼女は話始めた。なんだろうか、自分の本能が危険信号を発しているような感じがする。そんなよく分からない恐怖感に頭を捻っていると

 

「おーおーあったあった」

 

目的の物を見つけたみたいだ。彼女はそれを両手で持ち上げた、なんだか重そうにしている。自然と身体が動いてしまった

 

「手伝いますよ」

 

「おーサンキューねぇ、いやぁこういう力仕事はみんなかぁしまに任せていたからねぇ」

 

そう言って一緒に持った。でもそれは自分の手にひどく馴染むもので懐かしいものと感じた。気になったので力を込めて持ち上げてみるとそれは自分には馴染み深いものだった

 

「これ……俺のバッグじゃないですか。なんで会長さんが」

 

「おーやっぱりキミのだったんだねぇ」

 

そういうと会長さんはおもむろに俺のバッグのファスナーを開けた。勝手開けないでと言おうとするのつかの間、とあるものを俺のバッグから取り出した。嗚呼そうか、これが俺の心が発していた危険信号だったんだ。もう俺は逃げられない、俺は鼠、袋に入れられた鼠。

 

「この「月刊戦車道」。どういうことかなー?」

 

会長さんが取り出したのは俺が数日前に買った月刊戦車道特別号だった。表紙には主人公西住みほが胴上げされ、他の人はみんなボロボロながらも笑顔の素敵なものだ。……それが皮肉にも今には悪魔の笑みに見える

 

「この「大洗女子学園 初優勝への軌跡!」って何?」

 

会長さんが笑みを消して顔を近づけて言う。少し前の俺だったら会長さんの息がかかってうれしいとかそうやってしゃいでいたことだろう。でも今は底無し沼に入ったのごとく震えと冷や汗しかない

 

 

 

「キミは一体何者なんだい?堤晴男ちゃん」

 

 

 

今更ながらに園さんの忠告を理解した俺はただただ会長さんを見るしかなかった




ついに主人公の名前が明かされました

苗字の「堤」は第91師団師団長の堤不來貴中将閣下から

名前の「晴男」は大伯父の近衛師団将官の晴雄閣下からです、苗字は個人情報保護のためあえて出しません

※追記

晴雄→晴男に変更になりました。読み方は何も変わらないのでご安心をば


そど杏よ、広まれ(願望)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。