機動戦士ガンダム ‐inherited force-   作:群雲 沙耶

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3日振りの投稿です。文書を書くのは難しいですね。


第4話 蒼と緑

 夕刻、<テルモピュライ>の全区画に警報が鳴り響く。コロニーに対して攻撃を行ってきた者が襲来したことを伝えるアラームだ。中立の立場であるこのコロニーでは敵対行為をする者が来訪することなどこれまでに一度もなかった。ゆえに人々は鳴り響く警報が意味することを理解出来ず、その場に立ち尽くしていた。

 その事態を見越してのことか、<テルモピュライ>にする全ての市民の携帯端末に1通のメールが届く。

 『管制室より全市民へ緊急通達。港区よりアイゼンラート帝国軍のモビルスーツが侵入。全市民は至急、指定された区域まで避難されたし。』

 市民たちはメールを、そして飛来してくる<ジン>、<リーオー>を見て事態を理解し我先にと避難を始めた。

 怒号と悲鳴。そして狂乱が町に満ちていた。出店も何もかもそのままで逃げ出す者。はぐれた家族、恋人を探そうと奔走する者。膨れあがる人の津波が、地鳴りをしたがえて避難シェルターの方向へと駆けていく。押し寄せる人波のわずかな切れ目から聞こえてくる声さえ人の流れと悲鳴にかき消され、わずかな余韻すら残さずに消えていった。

 サイレン、アナウンス、悲鳴、クラクションが入り交じった喧騒の中、1人呆然と立ち尽くすノアの姿があった。始めに警報が鳴った時、彼女は町で夕飯の買い物をしていた。今日も遅くなる、と溜め息混じりに話した父の好物を作るためだった。昨日までと同じ、朝はハイスクールに通い、夕方は帰宅ついでに買い物を済ませ、作った夕飯と共に父の帰りを待つ。そんないつも通りの日常は呆気なく崩壊した。

 現実味を失った視界の中で、人々は競うように悲鳴を上げる。

 なんで、なんでこんなことが起きるの-----。周りの動きに習って避難するわけでもなく、そんな疑問が頭を埋め尽くす。

 「ここなら大丈夫だって…ここなら、安心していいって、お父さん言ってたのに…」

 頬を一筋の涙が流れる。

 「なんで…なんで…!」

 嘆声漏らすと同時、巨大なものが墜落したような衝撃音が耳朶を打ち、激しい揺れが辺りを襲う。

 思わず尻餅をついたノアは、反射的に両目を固く閉じてそれらが収まるのをやり過ごしたあと、恐る恐る目を開けた。そこで見た光景に、息を呑みそのままの体勢で竦んだ。

 身の丈二十メートルの灰色の巨人<ジン>が、二軒先のところに立っていたのだ。その後方からもう1人、大きな大砲を担いだモスグリーンの巨人<リーオー>が飛行しながら近づいてきている。鼓膜だけではなく肌でも感じられる轟音とともに、<リーオー>は道路上に着地した。

 ノアは放心したまま、恐怖心といっしょに買い物袋とスクールバックを放した。

 そのときだった。

 ガウンガウン、と激しい音を立てて、<ジン>が手にした75mm突撃機銃が火を噴いた。建物の外壁がマシンガンの弾で抉られ、被弾した車両が爆発し、爆風が逃げ惑う人々を襲う。

 人がごみのように倒れている。何の抵抗も許されず、突然にしてあるべき日常を、続くはずだった日常を奪い去られた。まるで地獄のようだった。

 轟音が鳴り響き、衝撃波が吹き付ける。どこかで爆発が起きたようだ。ふいにその方向へ目をやるとノアは、自分の顔から急速に血の気が引いていくのを感じた。

 爆発が起きたのは工業区。居住区を襲った2機とは違う、別のモビルスーツが襲っていた。そこにはノアの父が、アルバート・フロイスがまだいるはずだ。

 まさか、お父さんも…?---嫌な考えが頭を過り、身体中から汗が噴き出す。

 「お父さん…」

 また1つ、どこかで爆発が起きた。居住区を襲う<リーオー>のドーバーガンが数十階はあろう巨大なビルディングを撃ち抜いたのだ。張り巡らされたガラスが割れ、コンクリートの瓦礫とともに降り注ぐ。その真下、落下地点には丁度ノアの姿があった。

 逃げなきゃ---。力を奮い、立ち上がろうとするもノアの脚は応じてはくれなかった。見慣れぬ光景に腰を抜かしていた。

 「ダメッ…こんなのダメッ…!」

 腕を使って移動しようとするも、到底間に合わない。危機感に煽られて上を向くと、瓦礫がすぐそこまで迫っていた。そんな、嫌だ。死にたくない---。

 両目を閉じたノアの口から、悲鳴がほとばしった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、ノアは誰かに抱き抱えられる感触を覚えた。不意に両目をはっきりと開ける。後ろを振り返ると先程まで自分がいた場所が瓦礫の山で覆われてるのを見た。自分の左胸に手を押し当て心臓の鼓動を確認する。

---生きてる。そうわかった途端、強張った全身は軟体動物のようにほぐれノアは安堵に包まれた。

 「よかった、無事だったんだね」

 自分を抱えた人物は周囲の安全を確認すると物陰に隠れながら問いを投げ掛けてきた。

 声の主人の顔を一目見ようと顔を上げると、まず目に入ったものは---。

 

 「蒼い髪と蒼い瞳…」

 消え入りそうな声で口を動かした。緊張と恐怖から解放されたばかりで今はこれが精一杯だった。

 

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