Fleet Collection -復讐への忠義-   作:霖雨

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Prologue&Ep1 Awake

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 Prologue

 〈緊急警告―緊急警告〉

 

 〈生命維持機能低下〉

 

 〈損傷状況“大破”〉

 

 けたたましい警告(サイレン)の音と共に、目の前には自分が瀕死の重傷と云う最悪の事実を報せる赤いシステムウィンドウが点灯する。

 顔を上げると一面に広がる蒼くぼやけた光。手を伸ばそうにもその手は水を切る。

 ここで漸く自分の状況を悟った。

 ――墜ちて死ぬのだと――

 しかし、不思議と不安は無い。やっと終われる。やっと楽になれる。

 やっとこの地獄から抜け出せると――。

 仲間達が傷つく姿を何度もこの目に焼き付けてた。     

 復讐鬼となり数々の深海棲艦を屠ってきた。時にはそれに対しての仲間からの糾弾も少なくは無かった。

 その時には既に仲間の敵と云う大義名分を掲げた快楽殺人に近い何かであったのかも知れない。

 しかし、それが本当に仲間の為であったのか自分の欲求を満たす為だけのものだったかは今は知る由も無く、今はもうどうでもいい事だ。

 もう仲間の沈没()に相まみえることは無いだろう――そう思えると少し自分が背負った重荷が軽くなったような気がした。

 だけど、ただ一つ、心残りがあるとすれば親友に別れも告げずに自分が沈没()することだろうか……、きっとあの子は泣くだろうな。だってもう一人の親友がんだ時でさえ立直るのにどれだけ時間を浪費したか。

 ――ごめんなさい

 ――背負ってしまってごめんなさい

 ――共に歩く勇気が無くてごめんなさい。

 口から泡を吐く。

 大量の海水が体内へと侵入し、それは苦しみへと変わる。酷く寒気を感じた。

 先程までの視界に広がる蒼い光はだんだんと小さくなり視界は闇に染まり水底へと堕ちていく。

Prologue―out

 

 

Episode-1 [Awake]

 

「現代化改修ねぇ……」

 手元の資料を捲りながらそう呟くのは、現在新・呉鎮守府所属【海色 白兎(みいろ はくと)

 階級は中将、大和撫子を沸騰とさせる黒髪、清楚と云う二文字が似合う女性である。士官学校時代はその大和撫子さながら文武共に成績優秀であり、実際に初めての戦場では初陣とは思えない程の的確な判断で艦隊を勝利へと導いた。

 その後も彼女は他の提督には到底真似のできない奇想天外な戦術を用いた指揮により現在の地位まで上り詰めた数少ない女性提督である。

 そんな彼女は現在

 “深海凄艦からの制海権及び制空権の奪還”

 を目標に新たに再設立された海軍本部の会議室で、他鎮守府の提督達と共に書類に目を通していた。

「只でさえ艦娘達はその身に余る兵器を運用していると云うのに……、力は大きければ良いと云う訳じゃないぞ?」

 書類を爪先でピンと弾くと海色提督は目の前の眼鏡を掛けた女性に冷たく言い放つ。

「確かに過ぎたる力と云うのは必ずそれに見合った代償が自ずと発生してしまいます」

 眼鏡の女性が続けて語りだす。

「ですが、それは“今”だけです。私たち人類の敵である深海棲艦、そして我ら人類の盾である艦娘…、“今”は辛うじてこちらの艦娘に軍配が上がっていますがそれも時間の問題です。皆さんもお気づきでしょうが深海棲艦は日々強くなっている、それが艦娘を超えるのも――」

「――早くないと?」

「はい! その通りです!」

 白兎の問いに眼鏡の女性は興奮気味に答えた。

「確かに、一番最初に出現した奴ら(深海棲艦)から現在に至るまでの奴らの成長・進化を見れば自然と今回のような強化の案は必要だろう」

 確かに深海棲艦は日々進化を遂げている。人類が初めて深海棲艦と遭遇・会敵の時深海棲艦の種類は一種類のみであり、それも二足歩行型の化け物しか確認されておらず、況してや現在では人型などが多数発見されているが当時は考えられない事であった。

 為らば、それに伴って艦娘達を強化していくべきであるのは必定。そこまでは理解できる、そこに関しては海色提督も納得していた。

 “だが”と続けて白兎は眼を細め云い放つ。

「限度と云う言葉を知っているか?」

 今回本部が他の鎮守府の提督達を一堂に会してまで提案したかった今回の案、

 【現代化改修】

 コンセプトとは日々進化する深海棲艦に対して人類の盾である艦娘の戦力的強化である。

 しかし、その中身は艦娘の保有する兵器を現在の海上自衛隊が保有する現代兵器、イージスシステムを艦娘用に改造し、艦娘に現代化改修と云う形で改装すると云う馬鹿げた企画である。書類を流し読みしただけで【艦隊空ミサイル】やら【トマホーク】【超電磁砲(レールガン)】などの単語が見える。

「確かに、このような兵器が運用可能となれば深海棲艦共を水底に突き落とす事なぞ容易だろう。だが艦娘とは元々旧日本海軍が造り上げた兵器の魂だ。破壊と防衛は相容れぬ存在だ。艦娘達が無事にイージスを使い熟せるとは思えんな」

 その発言に他の提督の賛同の声が挙がる。

 注釈を入れるならそもそもこの現代化改修と云う今回の案だが、そもそも元の艦娘の艤装自体が艦娘と共に生まれた奇跡の産物であり、旧日本帝国の兵器を模した何かである。既に存在する艤装を作りだす事は妖精の力を借りれば可能だが、生み出すとなると訳が違う。

 況してや既存の兵器を艦娘用の艤装へと作り変えるなど出来る物なら疾うにしているのだ。

「確かに、海色提督の仰る通り艦娘はイージスシステムに適応することはできませんし、況してや艤装に作り替えるなんて不可能です。しかしご安心を! それを可能にする外部デバイスを既に開発、試作品の運用を確認しております!」

 眼鏡の女性は胸を張り、眼鏡をクイッと中指で押し上げると渾身のドヤ顔で云ってみせた。

「ほう……、既にで試したと?」

 会議室を嘗てないほどの緊張感が襲った。

 すると眼鏡の女性は慌てて弁明の余地を図る。

「あぁ! ご安心を! 実験対象は全て自分ですので!」

 慌てて弁明した眼鏡の女性は慌てて胸ポケットから名刺らしき物を取りだし、丁寧に両手をそれを海色提督に渡した。

 名刺を受け取った白兎はニヤリと口を歪めると、ほう…と、呟いた。

「ご紹介が遅れました! 自分は対深海棲艦海軍技術科担当責任者兼夕張型軽巡艦一番艦夕張です、これからよろしくお願い致します」

 碧髪を緑のリボンで結んだポニーテールが大きく揺れる。眼鏡姿の夕張は白兎に対してウインクで挨拶を終える。

 

 Episode-out

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