家に入ると、男に横からショットガンを突きつけられた。
「床に銃とリュックを置け。」
俺は男の言う通りにした。
「分かった、分かったから撃たないでくれ。」
男は床に置いた銃を蹴り飛ばした。
銃を突き付けられたまま、誘導された。
ある部屋に入るとそこには柱から首輪にかけて繋がれた女と子供が立っていた。
まるで番犬を見ているようであった。
女と子供も番犬の様に唸っていた。
「なあ、この人たちは誰だ?」
「家族だ。そこに座れ。」
俺はその女と子供と距離が1mもない椅子に座らされた。
ショットガンを向けたまま、俺に質問してきた。
「あのトラックは依然俺を襲ってきた男たちが乗ってた。お前も仲間か?」
「違う、俺は奴らの仲間じゃない。」
「いーや、信用できないな。名前はなんて言う?」
「名前?」
「自分の名前も分からないのか?お前俺をなめてるのか?」
男はより声を低くして言った。
「違う、思い出せないんだ。記憶がないんだ。」
男は窓の外を見て、
「クソ、デッドマンがきた。大人しくしてろよ。」
男は部屋に鍵をかけて出て行った。
俺は椅子から離れ、女と子供を見た。
女と子供は顔中いや全身血まみれだ。
それに会話は出来ず、ずっと唸っている。
見た目は人間であるが中身は人間には程遠い。
こんなのが家族?俺が生きていた世界はこんなんだったのか?
ふと我に返り、窓からそっと逃げた。
音を立てずにトラックに乗り、エンジンをかけると銃声が聞こえた。
「待て!そのまま動くな。」
男はショットガンを俺に向けた。
一か八かで逃げることも考えたが、散弾銃だ。
俺はエンジンをきって、両手を挙げ車から出た。
「さっきデットマンを三人殺したが、トラックに乗ってた三人だった。奴らは射殺されたようだった。お前の仕業か?」
「・・・ああ、だが仕方なくやったんだ。でも生きてた。」
「そうだな。」
と言ってショットガンをおろした。
「家で話すか?」
「分かった。」
男は正気ではなかったが情報収集と機嫌をとるためにもしぶしぶお邪魔した。
ダイニングで座っていると男は俺にコーヒーを入れてくれた。
「さっきは名前を教えてくれなかったが、本当はあるんだろ?」
「いや、ない。本当に何も覚えてない。何年生きたかも、以前も世界がこんなんだったかすらも・・・」
「そうか。じゃあ俺はカウボーイだな。」
男は禿ていて中年太りしていて、ボーイには似ても似つかない。
きっと俺が落ち込んでいたからジョークを言ったのだろう。
「本当にそう呼ぶぞ。カウボーイ。」
「いいぞ、ナッシング。」
「ナッシング?」
「ああ、お前はこれからナッシングって名前だ。」
「そいつはひどいな。カウボーイとナッシングだなんて。」
2人でダイニングでバカ話した。
すっかり夜になり、
「ナッシング、客用の部屋があるからそこで泊っていけ。」
「ありがとう、カウボーイ。」
何時間も話したがさすがに家族の話に触れることは出来なかった。
そして今日も自分が何者かも分からないまま時間は過ぎた。