ポケモン王者   作:ドリーマー

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開始1発目から本格バトルなんて、そんな小説あるでしょうか……?


旅立ち許可を賭けて

「きーこーえーるーかー!!!」

 

 耳元で大声で怒鳴り、眠りこけている問題児を起こす。

 大爆笑に包まれる教室。その黒板の前で手を叩き、注目を集める。

 

「はい、というわけで今からバトル大会ね。すぐに先生来ると思うけど、このクラスのベストから数えて何人かが旅に出る許可が出て、ワースト10は補習だそうなんでー、手は抜かないほうが身のためかな」

 

 教卓に無造作に置かれていたメモにざっと目を通し、座っている同級生に目を向ける。

 

「知っての通り、これが第1回目で、これに合格したらかなり名誉だから頑張って。単純計算して、今シーズンのポケモンリーグに間に合うのは、ギリギリも含めて第3回までだから、早めに受かっておいたほうが良い滑り出しになるかなー。というより、10歳になって初めて、つまり人生で初のトレーナーズスクール・バトル大会で優勝飾ったら、旅立ちの後も結構優遇されるっぽいし、通信簿も良い感じに塗り替えられるだろうから、座学が苦手な人にもチャンスあり。よかったねー」

「ノドカは大丈夫でしょ」

「わかんないわよー。だって、留年間近な先輩が必死に練習してるのとか見たし」

「いやー、でもねぇ」

「はいはい、とにかく時間無いから! トイレ済ませたらすぐ第3バトル室までね!」

 

 声かけをしてから、自分のボールベルトを腰につけ、廊下に出る。

 既に人でごった返しているが、その流れにのって目的地まで向かう。

 

 10分後、バトル室の扉が閉められる。遅れてた人は参加する資格なしと考えられ、すぐに予選へと入る。

 座学である程度の成績を取っていれば予選なしで本戦に出られるので、情報収集に努める。

 わかったことは、勝った人はほとんど2体だけでうまく立ち回っていた。3VS3のはずだが、“エース枠”は切り札として隠してあるのだろう。

 アマチュアトレーナーしかいないこのトレーナーズスクールにとって、一番大切なのは火力ではなく読みだ。授業で習った基本的な戦い方に、無理矢理でも当てはめて戦っている人がほとんど。いくつかのパターンに絞れる攻撃の中からどれかひとつを推理し、それに合わせて指示を出す。それさえ出来れば、だいたいの予選は勝ち抜くことができる。

 だが、もちろん例外も存在する。ソウリュウシティ中心部に存在する、このトレーナーズスクールは、言ってしまえばある程度の頭と実力を持った人が集まっている。2つに1つの街に存在する普通のトレーナーズスクールとは違い、5歳で試験に合格して入れるスクールなのだ。6体以上のポケモンを所持し、既に育成を終えている人もちらほら居る。

 私もその枠に片足を突っ込んでいるといっていいだろう。一応、パーティは揃っているし、パーティコンセプトもある程度定まっている。育成はまだ最終段階に入っていないものの、ポケモンジム攻略を始められるほどの基礎はある程度固められている。

 

 話は逸れてしまったが、読みさえ出来ればある程度勝ち進めるこの試合、それに適しているメンバーを決めなければいけない。

 私は“バトンパ”と呼ばれるパーティを組んでいるため、3体までの選出ならば、先発で能力向上、受け、エースがいいだろう。自分の持っているポケモンでザックリ決めてしまうと、先発にエルフーンorテッカニンor兼受けのクレッフィ、受けは特殊の前述クレッフィか物理受けのギャラドス、エースはドラゴンズの誰か。先発は、一番落ちにくい戦い方が出来るテッカニンで確定。2度も出番が訪れることが無いだろうし、無難だろう。エースはアイツで決定だし、受けは……物理で押していく手口の人が多いために物理受けのギャラドスがいいのだが、いざとなったらアイツが代われなくもない。ドラゴンは基本的に種族値が高いのでなんとかなる。それも考えて、今回はクレッフィに決定する。

 テッカニンはきあいのタスキ、クレッフィはたべのこし、アイツはドラゴンジュエルを持ち物として決定する。

 

 考えている間に予選が終わり、本戦へと入る。

 名前を呼ばれる度にフィールドに立ち、戦いをこなしていく。

 

「———決勝、Aコート赤コーナー、ノドカ」

 

 順調に決勝までコマを進める。今までの本戦は、先程決めたメンバー以外を使って勝ち進んできたため、エースであるアイツは確実に切り札になり得る。というより、能力向上を進めたら基本的に無双する予定なので、切り札という切り札では無いが。

 

 相手は、この勝負に勝てなければ旅に出ることができなくなり、必然的に大学受験へと移っていくという18歳。今まで8年間、本戦であと一歩で負けるという、弱そうに聞こえる強者である。

 軽く礼を交わし、審判の声に合わせてモンスターボールを構える。

 

「戦闘、開始!」

 

 聞こえやすいよう、区切って発音される言葉の余韻が消えるより早く、素早くモンスターボールを展開する。最初の一体のボールは、どれだけ投げられるかではなく、どれだけ早く繰り出せるかという一点において考えなければいけない。できるだけ手前に向かってテッカニンを放ち、相手のポケモンを見る。

 相手はメガニウム、つまりはバトンを繋げていくようなパーティではなく、居座って死ぬまで殴るタイプだ。

 

「にほんばれ!」

「ま———つるぎのまい!」

 

 初手の攻撃を警戒してまもらせようか迷ったが、にほんばれをするようなのでさっさと舞わせてしまう。

 ▼テッカニンの特性:かそくで、すばやさが1段階上がった。

 

「ソーラービーム!」

「まもる!」

 

 自分を半透明な硬い膜で包ませ、溜めなしソーラービームを防ぐ。

 ▼テッカニンの特性:かそくで、すばやさが1段階上がった。

 

「もう一度!」

「まもる! 準備して!」

 

 再びソーラービームを防いですばやさをもう1段階上げ、

 

「バトン!」

 

 言葉少なめに指示を出し、次のボールを弾くように放つ。

 出てきたのは———サザンドラ。

 受けを入れる必要は無く、すぐに無双へと入る。

 

「———だいもんじ」

「避けて!」

 

 メガニウムが避ける暇もなくだいもんじを放ち、レベル差×タイプ相性=悲しい現実、ということでダウンさせる。

 メガニウムが回収され、ワンテンポおいて繰り出されたのは、ギャラドス。

 

「あくのはどうからのきあいだま」

 

 確実なダメージを与え、仕返しと言わんばかりのアクアテールでサザンドラが地面に押し付けられ、

 

「ギャラドス! じしん!」

 

 いくら特性がふゆうだろうと、空を飛べるポケモンだろうと、地面に押し付けられたら結局は同じだ。

 努力値はHPにも振ってあるのでそこまで影響はないが、ダメージを受けずに無双をやってみたかった。だが、もう遅い。

 抑えつけられたままのこおりのキバを喰らい、更にダメージを受ける。

 だが、心配はしない。

 

「———出来るでしょ、サザンドラ?」

 

 私のサザンドラは、こんな程度でギブアップするようなヤワなポケモンじゃない。

 サザンドラは、当たり前だと言うように吠え、あくのはどうを放って一瞬拘束を緩め、その隙にギャラドスを振りほどいて距離をとる。

 HP的にはまだまだ大丈夫なものの、やはりポケモンにも“疲れ”は存在する。短時間ながらもそれを回復させるため、ボールに戻す。

 

「もう一度積んで、テッカニン!」

 

 再びテッカニンを繰り出し、急接近してくるギャラドスを食い止めるためにまもるを指示するが、

 

「よくやったわ、ギャラドス!」

 

 それより早く、ギャラドスのこおりのキバが決まってしまう。

 きあいのタスキで間一髪で食いしばったものの、もう舞うのは無理そうだ。特性によってすばやさが上がったものだけでもバトンタッチで繋げた方がいいだろう。

 そう考え、

 

「最後にお願い! バトンタッチ!」

 

 素早くボールを開いてテッカニンを回収し、サザンドラを出すが———

 

「おいうち!」

 

 ———サザンドラとテッカニンが同時にフィールドに存在した瞬間、テッカニンにおいうちが決まる。

 既に限界間近だったテッカニンは戦闘不能となる。

 テッカニンがダウンしてしまったのは完全なる自己ではあるが、ギリギリですばやさをサザンドラに繋げられたことだけは感謝していいだろう。

 

「ありがとテッカニン。———今度こそ! 無双行くわよ!」

 

 サザンドラの気合い充分なきあいだまがギャラドスに決まる。この現実世界では、きあいだまは“どれだけ気合いがこもっているか”で威力が変わる。

 威力高めなきあいだまが決まったギャラドスは、戦闘不能になった。

 

「今年こそ負けないよ。行け! ヒヒダルマ!」

 

 大柄なヒヒダルマを目の前に、サザンドラが一瞬ニヤリとしたように見えた。

 効果抜群な技は持っていないが、ノってきているサザンドラには関係ない。

 

「ばかぢから!」

「迎え撃つようにあくのはどう!」

 

 ばかぢからを正面から受けつつ、あくのはどうで横に流しながら攻撃する。相手はいのちのたま持ちなのだろう、攻撃が強い気がする。

 ダルマモードにはなってほしくない。しかし、それも難しいかもしれない。

 

「きあいだま!」

「フレアドライブで迎え撃って!」

 

 きあいだまを急所に受けながらもスピードを落とさずに、サザンドラにフレアドライブを決めるヒヒダルマは結構凄いと思う。

 だが、こちらにはまだ切り札が残っている。

 

「これで決めるわよ、———りゅうせいぐん!」

 

 ドラゴンジュエルの力を借りながらのりゅうせいぐん。逃げる場所もなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「———サザンドラ、ヒヒダルマ、戦闘不能。赤コーナーは残りポケモン一体のため、勝者はノドカ!」

 

 ———そういえば、クレッフィ使わなかったな。

 

 今更のように思い出し、心の中でゴメンと謝る。というか、使う機会がなかった。本っ当にゴメン。

 それより、同学年からの優勝コールが地味にうるさい。

 

「あー、優勝はノドカさんです。えー、今回の旅の許可は、優勝、準優勝、3位、4位の方です」

 

 そういえば、優勝者以外も許可出るんだった。

 まあ、優勝者以外ダメだった年もあったようだし、全力を注いでよかったかもしれない。

 フィールドの反対側を見ると、許可をやっと得ることのできた18歳は嬉し涙を流していた。

 とりあえず、仮免許を返上して正真正銘のトレーナーカードを受け取って、とっとと家帰ってお風呂入って反省会をしよう。

 

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