それから1年の月日が経過した。
生まれてからとにかくいろんなことが出来たので(まあ、前世社会人の記憶あるし)神童と讃えられまくっている。
Fate世界のそこそこの魔術の家に生まれた様で、直ぐに魔術書などを人が周りにいない間に読み漁った。
今度の人生はマジで生きてやる。それが今生の指針だ。前世では考えられないほどのスタートダッシュが出来るのだ。自分を鍛えあげるのも楽しくて仕方ないのだ。
転生特典についてはものすごく後悔したが、元々俺は過度なチートプレイはゲームがつまらなくなるから好きじゃないしな!
……………すきじゃないしな(涙)
「ズェピアさま。どうなさいました?」
「本…よんでた」
ちなみに今の俺1歳な。
声をかけて来たのは俺の世話係のマリーナだ。
美しくつややかな黒い肌を持ち、紫色の綺麗な長髪を、後ろでまとめた美しく清廉そうなのに、服の布面積がやや少ないせいか色っぽい十代後半の容姿をした
俺の生まれた時からの付き合いである。
一歳児から意味のある回答が帰ってきたことに驚いたのかマリーナは驚きに僅かに目を見開くが、流石に毎回驚いていられないのか、小さくため息を漏らした後、俺の寝床の脇に追加の書物を置いていった。
なぜ一歳児である俺の要望に彼女が答えてくれるかといえば、何度も俺が近場の本を読もうと寝床を脱出したからである。
生まれて初めて喋った言葉も「本」だしな。
しかもこの身体が転生特典通りに優秀らしく一度にい視界に入る情報を分けて解読できる。
これがまた情報の吸収力がダンチで、今ならよくパソコンのスペックとか見せるために、一台のモニタに色んな映画を流しても全て楽しめることだろう。
そう…映画があればな!
なんだか、特段貧しくはないが文明水準が低いというか…そう、魔術がある事からFateの世界っぽいんだがやけに時代が古かった。
俺をここに飛ばした中年ハゲ、適当な仕事しやがって…
まあ魔術の恩恵でこの時代の人間にしてはそこそこ文明的な生活をしているがやはり不便さは在る。
いつか俺がこの時代に文明の花を咲かせようと妄想する。
以前なら妄想にリソースをとられると他の作業が止まったが、この身体なら色んな事が同時に進行できる。
すげーや。転生特典。
だが、チートや例外ばかりのFate世界ではまだまだ力不足だ。今はとにかく強くなって、原作に関わるのを目標に努力するとしよう。
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私は、魔術師というものが苦手だ。
だが、素養が在った私はこの家、エルトナム家に引き取られ使用人として育てられた。
それは幸運だっただろう。
けれども、その出会いが無ければ、両親を失ったマリーナという無力な少女は世界の果てで朽ちていたはずなのだ。
基礎的な魔術を学ばせてもらい、使用人として働いている。
恩はあるが、やはり魔術師は嫌いだ。初めて、ズェピア様が生まれた時はとても可愛らしかった、世にこれほど貴いものがあるのかと、必死にいつもの無表情を作りながら感動したものだ。けれど…
旦那様はズェピア様を次代のための、家のための道具程度にしか思っておらず、奥様は血統だけで連れ込まれた自分に何も感じていないし、息子への愛情も感じられない。
これが魔術師の家系というなら、それはなんと悲しく寂しいのだろう。
しかし、ズェピア様の才能は周囲に無関心を許さない。
元来ここ、アトラス院の魔術師は魔術師の出力に比例する魔術回路をあまり多く持たない。
アトラスの魔術師曰く、「己が最強である必要はなく、最強を欲するならば、それを創ればいい」とのことだ。
まあ、そうは言っても、魔術回路が大いに越したことはないと思いますが…
詳しくはないけれど、実はよその魔術協会への見得だったりするのではないかと思う。偉い人ほど面子を大事にする事はよくあることですし。
それに比べエルトナム家の当主である旦那様は態々、魔術回路に優れた奥様を娶る所、アトラス院では変わり者なのかもしれません。
脱線してしまいました。思考が分散するのは末席とはいえアトラス院の魔術師の性でしょうか…閉話休題。
……とにかくズェピア様は優れた魔術回路をお持ちだ。赤ん坊ゆえ、興奮した際のちょっとした魔力の乱れの出力が違いすぎる。
そして生まれてすぐ、情報を求めるようにあらゆる書物を求める。
更に生後一年程で簡単な受け答えまで出来るほどだ。
周囲の人達はズェピア様を魔術回路から神童だと判断するが、私は違うと思う。
回路がなくてもあんな風に行動し始める一歳児なんてどこの国でも神童足りえるだろう。
私も最初こそ一歳児らしからぬ行動に不気味さを感じたが今は気にならない位驚かされ、最近慣れてきたのである。
ズェピア様はきっとすごい人物になるだろう。
だが、今の旦那様や奥様の態度から、親の愛を知らないで育ってしまい優秀なら、沢山の人を傷つけてしまうだろう。
そうならないように、私だけでもしっかり愛情を注いであげなくてはと思う。
ああ、それにしてもズェピア様可愛いなぁ。