Fate/Problem Child Order   作:ザイソン

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救国の聖女

話を聞くために撤退したフランス兵を追って行く。幸いにもすぐ側の建物に撤退したので追いつくのは容易だった。

 

撤退した建物は、おそらく砦だったのだろう。今は外見だけはそれらしいが激しく損傷しており、砦としての機能を果たしていない。

 

更に負傷兵が多い。史実ではフランス側のシャルル七世がイギリス側についたフィリップ三世と休戦条約を結んでいるはずなので戦闘は起こらないはずだ。

 

「ひぃっ!また来たぞ・・・!」

 

フランス兵は十六夜達をみるなり怯え、情けない声をあげた。確かに十六夜の投石を受ければ誰もがそうなるが。

 

マシュはフランス兵に笑顔で話しかけた。

 

Bonjour. Nous sommes des voyageurs.(こんにちは。私達は旅の者です)

 

「へっ?」

 

フランス兵は頓狂な声をあげた。

 

十六夜はニヤニヤしながらこう告げた。

 

「てめえらに危害を加えるつもりはない。大人しく武器を置くことをオススメするぜ」

 

「て、敵ではないのか・・・」

 

フランス兵は安堵の声を上げる。ずいぶんと簡単に信用するが、それはなぜか。理性を取り戻したのか、あるいは———戦う気力が無いほどに萎きり、疲弊しているのか。

 

「一つきくが、シャルル七世は休戦条約を結ばなかったのか?」

 

「知らないのか?王なら死んださ。()()の炎に焼かれてな」

 

「魔女?」

 

()()()()()()()()だ。あの方は・・・魔女となって蘇った。イングランドは既に撤退した。だが俺たちは———」

 

そう、彼らフランス兵たちの故郷はここ、フランスである。逃げ場はなかった。故郷を捨てて他国へ逃げ延びる事もしたくない。

 

(ジャンヌ・ダルクが魔女?サーヴァントの可能性があるな)

 

ジャンヌ・ダルク。百年戦争後期に征服されかかっていたフランスを救うために立ち上がった英雄。神の声を聞いたとされる。

最期はイングランドに捕縛され、異端審問の末に火刑に処された。

彼女に救いがかかるのは四百年後。彼女は聖人として認定された。

 

「ジャンヌ・ダルクが魔女ね———と、何か来たな?」

 

十六夜は何かの気配を感じ、視線を平野に写す。そこには人間ではなく、その亡骸、即ち骸骨でできた兵士———骸骨兵が大量にこちらに向かっていた。

 

「ヒッ、来た!奴らだ!」

 

フランス兵は小さな悲鳴をあげる。どうやら何度か攻撃を受けているようだ。

 

「ハッ、今度は遠慮なしで行くぞ!マシュ!」

 

「はい!マスター、指示を!」

 

「了解!木っ端微塵に叩き潰してしまえ!」

 

十六夜は骸骨の群れに突撃していき拳で粉々にして行く。

 

「おいおいおい!もっとやる気出せよこの木偶の坊!」

 

十六夜は近くの木を根こそぎ引っこ抜いた。

 

「ハッ、死に晒せ木偶の坊!!!!」

 

そしてそれを第三宇宙速度でぶん投げた。投げられた木は大気摩擦により燃え尽き、その砕けた破片が散弾の如く飛び交っている。

 

骸骨兵はそれを避けられるはずもなく、木っ端微塵に砕け散って行く。

 

そうやって三分間の十六夜の蹂躙が続き、後には骨片しか残らなかった。

 

「・・・もっと骨のあるやつだと思ったんだがな」

 

「いや、骨はあったさ。身がなかっただけ」

 

「ハッ、それはいえてるなマスター」

 

「おまえらあいつら相手によくやるなぁ」

 

フランス兵は呆れた様子で十六夜達を見る。

 

「では、もう一度事情をお聞かせください。ジャンヌ・ダルクが蘇ったというのは本当ですか?」

 

「あ、あぁ。肌と髪の色こそ違うがあれはまさしく聖女様だ。火刑に処されたと聞いたときは憤慨したさ。だが彼女は蘇った!悪魔と取引して!」

 

「悪魔?あの木偶の坊か?」

 

フランス兵にとっては木偶の坊ではなくそれなりに強い相手ではあるが。

 

「いや、違う。あれなら俺たちでもまだなんとかなる」

 

悪魔について聞こうと望月が口を開こうとすると、何かの咆哮が聞こえた。

 

「ああ!不味い!おいおい、立てたて!迎え撃て!食われちまうぞ!」

 

フランス兵は慌ただしく動き始め、武器を手に取り始めた。

 

「あれは———」

 

望月が目にしたのは、爬虫類のような鱗に巨大な頭蓋、白亜紀の翼竜のような翼をもつ、ワイバーンと呼ばれるものだった。

 

「龍種・・・?いや、あれは龍じゃなくて、()か」

 

十六夜のいた箱庭において"龍"と"竜"は区別される存在。そう十六夜は聞いていた。純血の龍は十六夜の世界において神霊に匹敵するほどの力を持ち、神霊と並んで最強種と呼ばれている。

もしかしたらこの箱庭とは全く違うこの世界は龍と竜はまったく同一の存在かとしれないが、十六夜にはどうでもよかった。

 

「さっきの木偶の坊よりかは楽しませてくれそうじゃねえか・・・」

 

『馬鹿言ってる場合じゃないぞ!』

 

ロマンが騒いでいるが華麗にスルー。

 

さて、十六夜たちサーヴァントはワイバーンの炎の一撃程度で死ぬことはないが人間の兵士達は別である。

 

十六夜はどうするかと考えたが、突如凛とした声が響いた。

 

「兵達よ、水を被りなさい!炎を一瞬だけですが防げます!」

 

「———え?」

 

兵士が声のした方向を向くとそこには長い金髪を三つ編みにし穂先に槍の付いた旗を持つ女性がいた。

 

「武器をとってください!私と共に続いてください!」

 

そう言って金髪の女性はワイバーンの群れに突っ込んでいった。

 

「コイツ、サーヴァントだな!」

 

『間違いなくそうだね!しかし反応が弱いな・・・』

 

「つまりあいつはそこまで強くないんだな!そのくせ一人で突っ込んでいきやがって!」

 

十六夜はワイバーンの群れに突貫し迅速かつ的確に首をへし折っていく。

 

「やっぱ有象無象の雑魚かよ!竜は竜でも龍ぐらいになって出直してきやがれ!」

 

十六夜はワイバーンを振り回し地面に叩きつける。一撃でワイバーンを絶命させていくその姿はまさに鬼といっても過言ではない。

 

そして十六夜はワイバーン相手になんとか立ち回っている金髪のサーヴァントを見つけた。

 

「オイオイ、一人で立ち向かうのはいいがもう少し自分の実力を考えていけよ」

 

「あ、貴方は———」

 

サーヴァントが口を開いたその刹那、十六夜の投擲した小石が頬をかすめて背後のワイバーンに激突した。

 

「まあサーヴァントなら多少の無理はきくか・・・ふうん、旗ね。旗は人々を束ねる証であり、誇りでもあり、中心的存在がかかげるもの・・・見た目からしてヨーロッパ系の民族、しかも女ときた。服装から時代は中世、軍に所属していたと考えるのが妥当。しかし戦闘慣れしているところから後ろで指示する王族ではなさそうだな。さて、これだけのヒントがあれば、真名は容易に想像がつく」

 

十六夜は地面を蹴りつけて岩、打者を散弾のようにワイバーンに浴びせながらそのサーヴァントの真名を予想した。

 

「女で、中世で、軍で、旗を掲げるにふさわしいヨーロッパ系のサーヴァントといえば———救国の聖女 ジャンヌ・ダルクしかいねえだろ」

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