私の住む村がちょっとおかしい   作:ぴぴるぴる

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前回の話で最後に抜けや設定の祖語がありましたので昨日のうちに追加修正しました
ご迷惑おかけします


9~11歳ごろ

めげない月 漢日

 今日も買付に行く日だった。

 行きたくはなかったが、村長に荷物持ちを頼まれたので仕方なくついていくことにした。

 まだあのメガネっ漢はシャンプーに引っ付いている。聞けば買い付けのときはいつもあんな感じらしい。

 すぐにおらがシャンプーを迎えに行くだと息巻いていたよ。なぜか私に。

 ちゃんとメガネをかけてろ、デコ助野郎。

 ダボッとした服を着ていたので暗器あたりでも習い始めたのだろう。あれだけシャンプーに素っ気なくされてよくやるわ。

 そのシャンプーはというと薬師の娘をコテンパンにしていた。パチモンでも掴まされたのだろうか?

 

 

 

どんどん月 毒されている日

 久しぶりに村長にお叱りを受けてしまった。

 新しい技を伝授されたが、この頃行き詰っている。

 やり方はわかっているのだ。特大の重い氣を自分の頭上から落とす。

 だが氣を受け流せなければ自分を巻き込むだけでしかない自爆技だ。

 コツは自分の不幸を嘆くことが何よりも大事だと言われた。

 そんな不幸だと思ったことあるはず……ないこともなかった。あれ~?

 

 

 

また月 村長か日

 いつもより朝早くに村長に叩き起こされるとシャンプーと一緒に山二つ越えた先の拳精山に連れていかれた。

 場所変えて修行をし気分転換をさせる気らしい。久しぶりの遠出だと私達は喜んでいた。

 

 着いた先は大小様々な泉が湧きでるどこか神秘的な場所だった。

 岩だらけの拳精山をひたすら歩かされて遂に拝めた絶景に私はついつい(はしゃ)いでしまった。

 だが喜んでいられたのはこそまでだった。

 

 シャンプーと水を掛け合うと彼女はどこかに掻き消えていた。

 ただ彼女の服だけがその場に鎮座していた。痴女か、あいつは。

 シャンプーを呼ぼうと声をあげようとするが、私の声がどこか変だった。妙に甲高いというかなんというか。

 喉に手を当てようとして私は気づいた。姿が変わっていたのだ。

 

 ―――鶏に。

 

 また私は村長に謀られたのだ。そんなに私を掌の上でコロコロするのが楽しいか!

 村長おぉおお!と叫ぼうとしてもコケーッという間抜けな鳴き声しか出なかった。

 当の村長は腹を抱えて爆笑していた。私の獅子咆哮弾がついに完成した。

 ちなみにシャンプーは服の中で蛙になっていた。一緒に潰しちゃってごめんよ。

 

 管理人らしき人が慌てながら私たちにお湯をかけられると元に戻ることができた。

 よかった。本当によかった。

 

 このふざけた修行場は呪泉郷というらしい。名前からしておかしかった。

 泉の一つ一つに悲劇的伝説があるそうだ。

 泉の水に触れたら最後その泉に過去溺れた動物達の姿を変わってしまうらしい。

 何だそれは。変身体質の付与とか下手すると秘宝級の呪詛に匹敵するぞ。

 

 この呪いをどうにかする手立てはあるそうだが、しばらくそのままでいるしかないらしい。

 さすがのシャンプーもその言葉を聞いて真っ白になっていた。私はまだ鶏溺泉の水でよかったと思うべきか。

 

 この呪いを解くことは不可能に近く、同種の呪いで上書きするしか手がないそうだ。

 しっかりと呪いが体に定着しないとただ変身能力が追加されていくだけだとか。どんな結果になるか予想もつかないらしい。

 完全に定着するまで個人差はあるが20日ほどは我慢するしかないそうだ。

 

 シャンプーと二人で黄昏ていると現地ガイドの人からこの呪泉郷で水遊びをする馬鹿は初めて見たとオブラートに言われた。

 知らなかったんだよ!

 それにしてもこんな珍事に遭わせてくれたあの妖怪をどうしてくれようか。

 目と目があった瞬間、シャンプーと私の心は一つになった。

 

 

 

一歩踏み出せば月 即すなわち武となる日

 朝起きたら2人で顔を洗った後、洗面器の中身を猿溺泉の水に入れ替えて村長に渡してあげた。

 私達の腹の虫はおさまったが、特に変わった印象がしなかったのがなんか悔しい。泉の選択を間違えた。

 その後私たちはそのまま20日間も呪泉郷にいるわけにはいかず帰ることにした。他の呪いを受けたら色々と面倒そうだしね。

 

 帰ったら帰ったでまた村長から新たな技を教えてもらえた。名を土竜螺旋墜(どりゅうらせんつい)

 無駄にカッコいい名前だった。

 気弾をドリルのように回転させ地面に打ち込み対象者の足元から噴き出させ攻撃するという技だ。

 練習用の人形が錐揉みしながら打ち上げられそのまま尻から地面に陥没していた。

 技の威力は劣化飛竜昇天破だったが、相手の闘気が必要というわけでもないので使い勝手はよさそうだ。

 

 おいおい、この私を見くびってもらっちゃ困る。この前獅子咆哮弾を完成させたばかりだぜ。今の私の気功術はちょっとしたもんだ。

 とか調子にのっていたら実際にやってみると今の私ではめちゃんこ難しかった。

 地面に外気功を打ち込んで簡単に地上に戻ってくるわけがなかった。なぜ気づかなかった私。

 

 

 

汚ねぇ月 花火だ日

 なんとか氣弾を地面から打ち上げることはできた。

 しかし、打ちあがる場所がしっちゃかめっちゃかだ。村長に言わせると氣の捻り具合が重要らしい。

 氣とお友達になれとでも言うのか。要求される氣のコントロール技術がルナティックどころではない。

 あの、村長これ本当に私なんかが覚えられます?

 

 シャンプーはというと髪を掻き毟っていた。寸勁を覚えさせる気らしい。

 向こうの要求難易度も高そうだ。

 

 

 

もう月 待ちきれない日

 やっと明日でこの疎ましい呪いを受けてから20日が経つ。

 呪泉郷へ行く準備は済ませてある。明日が楽しみだ。

 もう誰にもチキンとは言わせない。

 

 

 

綺麗だろ月 でもこれ呪い解けてないんだぜ日

 呪泉郷に着いたら真っ先に娘溺泉に飛び込み私の体は完全に戻ることができた。

 そしたら村長だけ十代半ばまで若返っていた。違う泉に入ったらしい。かなりの美人さんだった。

 しかしこの村長、若い燕でも捕まえてみるかとふざけたことを抜かしていた。女傑族の掟はどこへいった。

 私の村では新しい結婚詐欺が流行りそうだ。

 

 冷静に考えてみると娘溺泉の水さえ確保しておけば約一月毎に面白体質になるだけだと気が付いた。

 しくじった。娘溺泉に入る前に気づけばよかった。

 手ぶらで帰るのもなんだかもったいなかったので、運べるだけのサンプルをなんとか持って帰ってきた。

 ただ同伴者二人の視線が無性に痛かった。

 

 

 

お前たちの力は月 こんなものか日

 村長は若返ったのがうれしいのか常時変身した状態でいる。関節痛が収まるらしい。

 村に帰ってから改めて村長の稽古が始まったがシャンプーと私の二人掛かりで手も足も出なかった。

 終始合気で受け流され、服にすら掠りもしなかった。

 あの皺くちゃの状態でも力の差があったのに、今では隔絶していると言っていい。

 コロンちゃんが強すぎて生きるのがつらい。

 

 

 

マッド月 サイエンティスト日

 やはり呪泉郷の呪いにはかなり強い呪詛が込められているようだ。

 猫に変身させた家畜の牛にマタタビをあげるとものの見事に酔っていた。

 変身したモデルの特性はちゃんと引き継げることが確認できた。

 どうりで一時期、物忘れが激しかったわけだ。

 

 さらに実験してみた結果、体の一部だけを変身させることも可能だった。

 馬の背中に羽を生えさせてあげたのだが、如何せん飛ぶことはできかった。

 浮力が足りないのか、それとも慣れが必要なのか。

 

 他にも実験をしたいが肝心の人間の対象者が私だけっていうのが問題だ。

 遅々としてデータが集まらない。何とか確保しなければ。

 

 

 

この月 ロリコン共め日

 この村に挑戦者(カモ)が来た。

 女傑族の噂を聞いて遠路遥々やってきたそうだ。誰かが婿ゲッチュしてきたのかと思ったわ。

 時々いるのだ。こういう奴らが。今回の男はどう噂が伝わったのか強さを見せつければ誰でも嫁にもらえると思っていた。

 村のみんなで何秒持つか予想していたら、あの男はなんと村長を指名しやがった。みんなでご冥福を祈ることにした。

 見るからに中年のくせしてコロンちゃん状態の村長を選ぶとかあの男ロリコンか。

 1秒と経たずにあの男は成敗された。慈悲はない。

 そして私は念願の実験体を手に入れた。テーレッテレー。

 

 実験の結果、人間相手にも体の一部だけに呪いをかけることができるみたいだ。

 これはおもしろいことになりそうだ。

 


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