「う…。」
どれくらいの時間がたったのだろうか…ゼロを必死に助け出そうとした彼…エックスは目を覚ました。
そこは鬱蒼(ウッソウ)とした森の中…。
しかもエックスも見たことのない程の自然が溢れ、とてもサイバー空間とは思えなかった。
「ここは…?
いや、それよりも!!」
エックスは自分の周りを探す。
今は状況の把握よりも傷付いた親友の方が気掛かりだった。
「…!!
ゼロ!!」
すぐ近くで倒れているゼロを発見しエックスは駆け寄る。
ゼロを抱き起こすと容態の深刻さをすぐさま察知した。
顔色は最悪で高熱を出しており、酷く衰弱しているのは明らかだった。
「ゼロ…。」
エックスは今の状態のゼロを無理に動かすのは危険だと判断し、近くの木の根元へ寝かせる。
その際、エックスは妙にゼロの身体が濡れていることに気付いた。
「これは…汗…?」
おかしい…。
レプリロイドである筈のゼロが汗をかく筈がない。
そう思った時、エックスはやっと自分の身体の異変に気付いた。
「生身に…なってる…?」
機械の身体だった頃のどこか冷たかった感覚はなく、生身の温かさがエックスの身体中に広がっていた。
「一体なんで…。」
何故自分は生身の身体を持っているのか…。
そう考えていると鼻先にポツンと水滴が降ってきた。
「雨…。
…!!
ヤバい、ゼロっ!!」
エックスはゼロを急いで担ぎ、雨除けに自分が着ていた上着をゼロに掛ける。
自分もゼロも生身になっているなら体温を奪うこの雨は弱っているゼロには危険だ。
「どこか…雨宿り出来る所は…っ!!」
エックスは辺りを見渡す。
しかし、近くに雨を遮ってくれそうな木や洞窟は見当たらない。
「拙(マズ)いな…。
このままじゃ…。」
エックスは背中に担いでいるゼロを見る。
ただでさえ大量の汗で体温を奪われているゼロはぐったりとしていた。
「ゼロ…、死ぬなよ…!」
エックスは一旦ゼロを下ろし抱きしめる。
自分の体温でゼロを温めようとしていた。
そんな2人に雨は容赦なく降り付ける。
(寒い…。
でもゼロは今、もっと寒い筈なんだ…。)
エックスはゼロの身体を擦り、摩擦熱で少しでもゼロを温めようとする。
「ゼロ…。」
雨が打ち付ける中、エックスも寒さに震えながら…しかしそれでもゼロを温め続けていた。
数分が経ち、雨が上がる。
どうやら通り雨だったようだ。
「止んだか…。
良かったぁ…。」
そうホッとするエックスだったが直後、悪寒に襲われる。
「…っくしゅ!!」
くしゃみをし、震える。
「冷えちゃったかなぁ…。」
鼻を啜ってボソッと呟き、エックスはゼロを連れて森の出口を探す。
「ゼロ…、森を出るよ…。」
意識のないゼロに声を掛け、エックスは震える身体を堪えて歩きだす。
森をさまよい歩いていると人の気配を感じた。
(誰か…いる…?)
可能性があるとすれば自分達と同じように森に迷い込んだ者か、強盗か。
前者なら助けを求めて一緒に行くことも出来るが後者だったら病人であるゼロを連れている限り、逃げ切ることも戦うことも難しいだろう。
エックスは取り敢えず茂みに隠れ、様子を窺うことにした。
「ナツー、皆置いてっちゃったよー?」
ナツと呼ばれた少年が空を飛ぶ青い猫に言われ後ろを振り向く。
「何ぃー?
全くアイツ等しょうがねぇなー。
ちょっと待ってようぜ、ハッピー。」
「あい。」
エックスは茂みでそんな会話をする少年と猫を見て呆然とする。
(メカニロイドでもレプリロイドでもないのに猫が飛んで喋ってる…。)
エックスはそんな光景を見て混乱する。
「なぁー、何か用かー?」
「ナツ?」
ナツがエックス達が隠れている茂みに向かって声を掛ける。
(気付かれた…!?
気配はしっかり消した筈なのに…。)
エックスはゼロをその場に寝かせ、隠すと仕方ないと言ったように茂みから姿を現す。
「いつから…気付いてたんだい?
気配はちゃんと消したつもりだったんだけど。」
「気配は消せても簡単に臭いまでは消せねぇだろ。」
(まさかこんな距離が離れててボクらの臭いを嗅ぎ取ったのか…!?)
エックスはナツの鼻の良さに驚愕する。
「そこの奴も出て来いよ。
勝負ならいつでも受けてやるぜ?」
「ナツ!
無闇に喧嘩ふっかけないでよ!」
更に茂みに話し掛けるナツをハッピーと呼ばれた猫が宥める。
(拙い!!
ゼロにも気付かれてる…!
ゼロは今戦える状態じゃない!)
エックスは茂みの中のゼロを守るように立ちふさがる。
「悪いけど…この人は今戦えないんだ。
出来ることなら戦わずに穏便にこの場を収めたいんだけど…どうだい?」
「なんだ、戦えねぇのか。
そんじゃ仕方ねぇよな。」
エックスの提案をあっさり呑んだナツの言葉にエックスは「ふえ?」と間抜けな声を上げる。
「おーい。
出て来いよー。」
「君らは強盗…とかじゃないのかい?」
「違うよ!
オイラ達はフェアリーテイルの魔導師だよ!」
ハッピーの説明にますます訳が分からなくなるエックス。
しかし強盗でないと分かり、ホッとして強ばっていた力が抜け座り込む。
「お、おい!
大丈夫か?」
突然座り込んだエックスにナツが駆け寄る。
「うん…、大丈夫…。
それより、この近くに町はあるかい?
連れが病気なんだ…。」
そう言うエックスの額を触るハッピーが声を上げる。
「ナツー!
この人凄い熱出てるよ!」
「ボクの連れはもっと酷いんだ…。
早く休める所で休ませてあげたいんだけど…。」
声を上げるハッピーにエックスが言う。
「オイラ、ウェンディ呼んでくる!」
ハッピーはそう言うと来た方向へと文字通り飛んで行った。
「ウェンディ…?」
「俺の仲間だ!
回復魔法使えっから楽になるぜ?」
「魔法…?」
エックスはナツから話を聞こうとするも信頼出来そうな者に会えた安心感からか頭が働かなくなっていた。
「お前の病気の連れってあそこにいる奴か?」
ナツの質問にエックスは頷く。
「ああ…。
頼む…ゼロを…ボクの親友を助けて欲しい…。」
エックスはそうナツに頼んで倒れ込んだのだった。