提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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閑話休題って使ってみたかったんだ。

いい?雪風、先に行くよー



提督(笑)の武勇伝

「私達もそろそろ提督を持つ時かもしれませんね」

 

とある鎮守府の食堂。片目が銀の髪に隠れた艦娘、浜風は口を開いた。

 

「…本気か」

 

食事を終えて一息ついていた黒髪の乙女、磯風は紅い瞳を浜風へと向ける。

 

「昨日の戦闘で何か感じませんでしたか?」

 

「やはり浜風も感じたか。敵が手強くなっている」

 

「タ級だったけど、目が黄色く光ってる初めて見る奴だったね」

 

二人より小柄なおかっぱ頭に白いカチューシャを付けた谷風が付け加える。

 

三人は今までどこかに所属するという事もなく、要請に応じて各地の戦線へと赴いていた。

今回は、とある鎮守府で応援要請があり、前日に大規模な戦闘が終わったばかりである。

参加したのは彼女たちだけでなく、他の鎮守府や警備府からも応援は来ていた。

 

「タフラだね。あれは焦ったねぇ」

 

そこに現れたのはこの鎮守府の提督の一人である女性である。

駆逐艦を横抱きにしている彼女の姿に三人は何とも言えない表情を浮かべるが、一応、立ち上がり敬礼する。

 

「ああいいよいいよ。座って座って。私も同席させてもらうねー」

 

それを遮って着席を施す女性提督。

 

「司令官。おろしてよー。レディーは一人で座れるんだからっ!」

 

膝の上に置かれた駆逐艦…特型の21番艦か特III型の1番艦と呼ばれる、紺色のロングストレートな髪に薄紫色の瞳をもつレディー(笑)の暁である。

 

「ダメーッ! 昨日の作戦行動中の無理な前進、心配したんだゾ。そこで反省してなさい」

 

「うぅ…」

 

そこにいる事が反省になるのかと思う三人。

この女性提督の名前は 星崎 美琴(ほしざき みこと)である。そして転移者。この世界では観測組と呼ばれる者だ。

多くの日本人の特徴である黒髪と少し茶の入った瞳。

顔は美人というより可愛い系。学校一番じゃないがクラスで一番と呼ばれる顔だちだ。

ちなみにハンドルネームは雷電☆命である。

 

「あのタフラとは何ですか?」

 

「えっとタ級フラグシップ。こんな近海に出て来るなんてビックリだよね」

 

「…はぁ」

 

と言われても、そもそも自分たちは初めて見るタイプの敵なので返しようがないと思う浜風である。

 

「それより三人にはお礼しに来たんだった。助けに来てくれてありがとう」

 

そういって頭を下げる提督、その体に押されるため一緒に暁も頭を下げる。

 

「要請に応えただけだ。礼を言われるほどの事ではない」

 

武人らしく答える磯風に、

 

「それでもだよ。ありがとう」

 

そう言って笑みを浮かべる女性提督に、三人はそれぞれ多少の違いはあれど、こういう者の下でならば戦う事も吝かでないと思うのだった。

そして同時に純粋にお礼を言われ磯風、浜風はどう返したものか困った。

 

「どういたしましてと言っておくよ」

 

谷風がニカッと笑みを向け、浜風、磯風も続くように頭を少し下げる。

 

「うんうん。ところで三人は自分の提督をお探しかな?」

 

「聞いていたのか?」

 

「聞いていましたとも」

 

胸を張る女性提督。悪びれた様子はない。

 

「別段、隠すような事でもないでしょう。それに…」

 

それを見た浜風は女性提督…星崎提督に事のあらましの説明をする。

もともと三人…、というよりは磯風と浜風の二人は太平洋戦争における最終局面の戦闘に参加した艦である。

あの壮絶な戦いを経て、現代に女性の体をもって生まれてきた二人にとって、自分の提督に求める条件というのは他の艦娘達より厳しいものがあった。

自分たちの提督像として、どうしてもあの戦いで金剛と沈んでいった提督が思い浮かんでしまう。

他にも、色々とこの国や軍に対して割り切れない思いを持っているのだが、そこは言葉を飲み込む。

 

「プリンたべるかい?」

 

谷風が星崎提督の膝の上に載る艦娘にデザートを差し出す。

 

「わーい! ありがとう」

 

さすがレディー(笑)である。 

プリンが日本に伝わったのは、江戸時代後期~明治時代初期と言われている。

洒落で 風鈴 と漢字当てする場合もあり、老舗洋菓子店などで見かけたらスイーツのプリンの事なので、涼しげな音色を出すアレが何故?と首を傾げないように。

 

閑話休題。

 

さて、そんな二人も先の戦闘で色々と思うところがあり、提督の指揮下に入ることでパワーアップしたいと考えたのだ。

その事についてこれから話そうとしていた折、この星崎提督がやってきた。

次いで話も聞かれていたので、なら話してしまっても構わないと思ったのである。

 

「ふむふむ。提督に求める基準が高い娘達がいるってこないだライバック言ってたね…。

となると色んな提督に会うしかないだろうけど…うーん。あっ、餃子…」

 

「餃子?」

 

「そうそう、餃子。今、士官学校に私達のような違う世界から来た子がいるから会ってみたらどうかな? 提督としての能力は高いと思うんだけど」

 

「その人の名が餃子ですか?」

 

「うん。餃子」

 

「「「……」」」

 

三人とも微妙な表情であった。

という経緯があり、彼女たち三人は士官学校に赴くことになる。

 

「ねぇねぇこの間映画見てね、それからちょっと勉強したんだけど、長野提督ってすごいね。三人にとってどんな存在だったのかな? この間、掲示板でスレ立てしたら、ボロクソ言われちゃってさ。…思い出したら頭に来た…ムキッー!あいつ等許さん。こっちは当時を知る子が今目の前に、絶対ギャフンと書かせてやるぜ!」

 

彼女たちの考えなどどこ吹く風の星崎提督は、己の欲望のまま口を開く。

 

「後半の言っている意味が分かりませんが、長野提督は…そうですね。言葉では言い表せない特別な存在です」

 

目を瞑り、胸に手を置いて答える浜風。

 

「…あの方は最高の武人だ」

 

こちらも同じような仕草で応じる磯風。

 

「武装を強化してくれた恩人かな。とにかく凄い人だよ」

 

そんな二人に苦笑いを浮かべながらも、谷風が続く。

 

「そっかそっか。うんうん。私、最後の戦いの話ききたいなぁ…。あ、でも話したくなければいいからね」

 

自分が死んだ話なんて普通は出来ないが、あまり触れては欲しくない事なんじゃ?と 喋っているうちに思い至った星崎提督は言葉を慌てて追加した。

 

「そうか、聞きたいのだな。ならばこの磯風知る限りのすべてを話してやろう」

 

不敵な笑みを浮かべる少女の瞳がきらりと光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坊の岬沖で度重なる敵艦載機の攻撃。第2波攻撃を陸軍航空隊と瑞鶴航空隊の奮戦も有ってどうにか凌ぎ切り、大和率いる第二艦隊は一息つけたところであった。

太陽は水平線に沈みつつあり、第3波攻撃は明朝からと判断された。未だ、沖縄の地は遠く、夜間にどれだけ近づけるかと大和内で指揮官達は議論していた。

また、敵攻撃機の数を見るに、別動隊を率いていた長野艦隊は全滅したと考えられていた。

 

日本側の戦力

 

第二艦隊 戦艦大和 空母瑞鶴 軽巡矢矧 駆逐艦8隻(冬月 涼月 磯風 浜風 雪風 朝霜 初霜 霞)

 

臨時艦隊 戦艦金剛 榛名 軽巡大淀 駆逐艦5隻(時津風 浦風 夕立 時雨 長波)

 

 

連合国側の戦力

 

戦艦6隻 空母8隻 軽空母4隻 巡洋艦12隻 駆逐艦30隻以上

 

 

瑞鶴搭載戦闘機の数は45機、艦爆 艦攻の数は6機づつであり、

陸軍航空隊は60機、おおよそ100機で400機近い敵を相手に奮戦する。

しかしこれにより瑞鶴航空隊は数を半数に減らしていた。

 

この時、陸軍航空隊は基地に、ゲスト、帝国ホテルニ予定通リ と洒落た電文を送っている。この事から見て陸軍航空隊は、おおよそこの位置で敵の襲撃がある、と読んでいた事になる。航続距離の関係で第二艦隊の直掩を出来たのはおおよそ2時間程であるにも関わらず、第二艦隊は軽微な被害で済んだのだ。

 

連合国側としては日の入りまでには決着をつけておきたいところであったが、天候も悪化しつつあり断念。明朝になれば一隻の空母艦載機を相手にするだけでよいという判断もあった。

そのため、日の出とともに攻撃を再開するという事になる。

 

そして日本にとって運命の日。米将校曰く、わが国海軍史上最悪の一日。

 

台風接近に伴い、連合国機動部隊は久高島の東沖に展開していたが西へと移動を開始し一部の艦艇が中城湾に進入。

これが、のちに最悪の一手だったのではないかと米国内で議論されるがここでは割愛。

 

深夜未明。台風による大雨で視界の効かない中。砲撃音と共に連合国艦隊の悪夢が始まった。

エセックス級空母フランクリン、イントレピッドが立て続けに轟沈するのを皮切りに、艦隊に被害が出始める。

連合国艦隊のど真ん中に日本の艦隊が出現していると報を受ける。ただちに反撃を開始しようにも小型船舶は下手に舵を切れば転覆の可能性。

また移動に伴い艦隊陣形に乱れが生じていて連携も難しく、ましてや視界がほぼ効かない。風と雨音に消されて艦隊外部は敵の位置も分らず、

同士撃ちの可能性。まさに最悪。組織だった反撃が不可能であった。

 

零距離(※水平射撃で的に中る距離)から正確に撃ち込まれる砲撃、いくら最新鋭の戦艦でも堪ったものではない。

日本の艦隊は同士討ちなど頭にないように暴れ回り、被害は拡大の一途をたどる。ようやく嵐も収まり敵の全容が見えてきたのは黎明時。

高波など物ともせずに30ノット近い速度で暴れるコンゴウ型を見て「天候すらも操るかナガノッ!」という声がとある戦艦の中で響いたという。

そして、泥沼の消耗戦へと移っていく。

 

敵も味方も次々に沈んでいく。だが、長野艦隊は驚異的な強さを発揮していたという。

 

連合国側としては南下してくる第二艦隊の対処もしなくてはならず、

戦艦1隻、空母1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦6隻が北進。第二艦隊へと向けて舵を切る。

もっとも被害の出ていない艦の方が少なく、空母は残すところ1隻という有様であった。その虎の子の一隻が北へ向かい、

旧時代の艦隊決戦をすることになるとはこの時まで連合国艦隊将官は考えもしなかったであろう。

 

多勢に無勢で徐々に長野艦隊は追い詰められ、残すところ金剛と夕立を残すだけであった。

その時、魚雷の次発装填の為に戦域から離脱していた時津風と台風の影響で艦隊から逸れていた時雨が到着。

すぐさま、突撃をかけようとするが、

 

──北進シ、大和ヲ援護セヨ

 

との金剛からの命令を受け、北進開始。

 

2隻を追いかけようとする連合国艦の前に金剛は急速反転して滑り込む。

この時、主砲を放って無理やり体勢を整えていたと記録が残っている。

 

 

 

かくして第二艦隊も意図せず艦隊決戦を行う事になる。

 

 

戦況は一進一退を極めるが、長野艦隊より北進してきた時津風、時雨が到着することで天秤は傾き、大和の主砲がついに敵戦艦を捉え、撃沈させる。

アイオワ級戦艦ウィスコンシンは就役から4カ月という短い艦生を終える事になる。

また大和もこの時、中破判定の損害を受け速力が10ノット以下になるが、現、与論島、空港近くに座礁する事に成功する。

沖縄本土の北半分を射程に収める。もっとも、座礁した角度により1番主砲と2番主砲しか使える状態ではなく、1番主砲も

砲身損傷により使えなかった。そして2番主砲斉射を2回行った後、座礁と損傷の影響から電源が落ちてしまい、置物と化してしまう。

だが、連合国側はその事実を知ることは無く、大和の脅威により連合国上陸部隊は沖縄島南方へ戦線を後退させる。

 

この戦闘における戦果は撃沈 戦艦1 撃破 巡洋艦1 駆逐艦4 中破 空母1 駆逐艦2

 

第二艦隊で無事であったのは浜風、磯風、雪風の三隻のみで、霞が小破、矢矧が大破着底、他の艦も中・大破している。

大和の座礁で作戦は一応成功をおさめるが、

 

瑞鶴艦載機により金剛、孤軍奮闘セリと伝を受ける。

 

浜風、磯風、雪風、時津風、時雨が救援に向かう。この時、座礁した大和より燃料を補給していたが、もっと早く辿り着けていれば金剛は沈まなかったと乗員の多くが語っていた。

霞は近海で救助活動の為に同行せず。

 

そして5隻がたどり着いた時、金剛は一隻で敵戦艦2隻を含む艦隊と砲撃戦の真っ只中。

 

援護しようにも巡洋艦2隻駆逐艦6隻が邪魔をし、それらと死闘を繰り広げる事になる。

強引に突破した時津風が魚雷を戦艦に発射し見事命中、大きな損傷を与える。しかし他からの砲撃雷撃により

あっという間の轟沈。次いで、時雨が巡洋艦に衝突し、文字通り零距離射撃を敢行してから沈没。

轟音の後、損傷を与えていた戦艦ニュージャージーが金剛の砲撃を受け轟沈。連合国艦隊は撤退を始める。

 

日本艦隊側はこれを追撃し、結局、連合国艦隊で撤退に成功したのは戦艦アイオワ1隻と空母1隻駆逐艦6隻(空母、駆逐艦2隻は中破)という悪夢のような数字であった。

 

そして夕日と共に満身創痍であった金剛が沈んだ。

 

こうして無謀に思えた天一号作戦は幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうだ、すごい…だろう?」

 

と鼻息荒く語りだしたのだが最後の方は涙を堪えながら語る磯風。

 

「あの映画、ほんとに誇張無しだったんだ…。むしろ控えめ? とりあえずハイ」

 

そういって星崎提督はハンカチを磯風に差し出す。

ついでに膝の上でグスグス言っているレディー(笑)の頭を撫で宥める。

 

「…すまん」

 

素直に受け取り目元を拭う磯風。

 

「何時もの事だけど」

 

「やれやれですね」

 

実は谷風と浜風はこの話を何度も聞いているので思いを馳せる事はあれど、そこまで感極まる事は無くなった。

それに浜風とて当事者である。誰かの言葉を借りずとも、その戦いの事は鮮明に覚えているのだ。

とは言いつつも話す度に磯風の語りが上達していることもあり、場面場面で危うくホロリとしてしまいそうになっていたりする。

 

こうしてトークショーを終えた数日後に士官学校にて思わぬ再会を果たすことになるのである。

 

 

 

 

 

そして迎えた士官学校でのお見合いの日。

何人かの提督候補と面談するもイマイチ三人の琴線に触れる者はおらず、少し辟易とした気分になっていた。

それは提督候補の生徒達との面談だけが原因ではない。

初対面でいきなり指揮下に入ってもいいと思える人物に会えるとは思っていない。

時間をかけるしかないと三人とも考えていたから。

 

では、何故か?

 

大部分は査察という名目で訪れている海軍大将の存在。

彼に何かされたわけではない。大将自身は軍人らしい軍人だというのも分ってはいる。

だが、隔意は無いとも言えない。

先人たちが必死になって残した国が、組織が、戦争末期のあの頃と変わらず、なかなかの腐敗具合だ。

そこの組織の長に対して複雑な思いが胸中で絡み合う。

そんな人物が、途中からこちらを監視するように付いてくるのだ。

 

「何だか息苦しいねぇ」

 

「そうですね」

 

「だが、あと一人で終わりだ。もう少しの我慢だ」

 

小休憩中、食堂の外にあるベンチに三人は腰掛けていた。

海軍のお偉方は食堂の中でお茶をしている。つかの間の心安らぐ時である。

 

そこに穏やかな笑みを浮かべた空母の母がやってきて、変なお願いというより要請をしてきた。

三人が了承したのを見届け、

 

「くれぐれもお願いしますね」

 

と念を押して去っていった。

 

「一体なんだろうねぇ」

 

「私に聞かれてもわかりませんよ」

 

「そうだな。まぁ会えば何かわかるだろう」

 

休憩も終わり、最後の一人との面会に望むべく、とある教室に赴いた。

 

「…初めてお目にかかる。長野業和だ」

 

三人は思わぬ再会を果たす。




あれ、餃子が一言だけだった。不思議だなぁ。

端折った架空戦記みたいになってるけど細かいところは気にしちゃ駄目よ?

前話のあとがきで改陽炎型に磯風さん入ってませんでしたが仕様です。
彼女、時津風より施工日早いねん。なんで武装に高角砲を乗せただけ。
あと餃子(苺味)は改陽炎型の設計者ではないです。改修を施しただけ。
マイナーチェンジってやつですね。
高角砲は浦風砲です。海軍での評価が低く、一基積むのがやっとだったんです。

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