提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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おまたせしました。

今更ですが提督(笑)の生年を間違えておりました。
1900年ではなく1898年に訂正しました。それに伴い少しだけ文をいじりましたが、読まなくても問題ないレベルだと思いますので読み返さなくても大丈夫…の筈。

あと前話の感想で瑞鶴だけで凌ぎきれないと思うという感想を見て、あれ?と感じ読み返してみたら陸軍航空隊の下りが入ってなかった…。自分の中で勝手にβ版と呼んでたものを投稿していた模様。前話ちょっとだけその部分加筆してあります。あとプリン。



提督(笑)と大将閣下

おそらく、海軍学校史上最短で校長室の呼び出し回数記録してるんじゃないかと思う今日この頃。

お偉いさん達が固まっていた時間が動き出し、こうしてまたもや校長室に呼び出し、

…今回は連行されてきたわけだが。

その時、まぁひと悶着あったが磯風の「この方をどなたと心得る!?」には苦笑いが出たわ。

俺を勝手に放浪癖のある元副将軍にするんじゃないよ。

 

…待てよ。あながち間違いでも無いんじゃね?

 

各地で武力行使で事を収める御一行。と階級の肩書。

 

…俺がご隠居だとして、うちの艦隊で配役を決めるとしたら、お銀はお艦で決まりだな。

湯煙の中、お艦の後ろ姿から覗くうなじ…超見たいし超似合う。

八兵衛はヒェーか? それともメロンちゃんか? 助さん格さんは暫定で磯風浜風か? 弥七は谷風?

鹿島ちゃんは…悪代官にさらわれる町娘とかで…。

 

う~む。しっくり来てるようなそうではないような…。

 

「おいっ! 貴様聞いておるのかっ!」

 

おっさんが一人唾を飛ばして大声を上げている。

あーはいはい。現実逃避してましたよ。すみませんねぇ。

 

現在、校長室に俺氏、で向かい合う形で大将殿、校長先生殿と、えっと直江教官だっけか? とあとは知らんおっさんが二人。

なんかアレだな…さながら…。

 

「…査問会か」

 

やだねぇ。良い思い出無いよ。当たり前だけどさ…、山本長官が亡くなってから一回あったよな。

 

「そんな大したものではないよ。さて、はじめましてだな長野業和君。私は海軍大将の柳本だ」

 

普段、校長先生の腰掛けている席に座っている大将殿、その両隣に校長先生と直江教官。

おっさん二人は入口の前に陣取ってる。

 

「はじめまして」

 

はて、柳本? うーむ? 似てるっちゃ似てるか…?

ミッドウェーで蒼龍と共にしようとしてたからぶん殴って無理やり夕張に乗せて連れて帰ったんだよなぁ。

その後は飛龍に乗り込んで…敵空母を沈めろと叫んでいるお方の説得を…って、いらん事、思い出してしもうた。

多聞丸マジ多聞丸。

 

んで、蒼龍艦長のあいつは奥さんに先立たれて、後妻は戦時中に娶ったっけ? 

しかも一回り以上年下の…。酒の席でもげてしまえと言った覚えがあるような、ないような…。

んで息子が出来たって天一号の前に同期で集まったときに言ってた気が…。

 

って事は…、

 

「…柳作の息子か」

 

「貴様っ! 護国の英雄を呼び捨てとは何たる態度か!?」

 

入口に陣取ったおっさんの一人が吼える。あ、本当に息子なのか。

護国の英雄か…。まぁ北方派遣の空母雲龍の艦長だからな。ソ連から守った英雄か。

 

「やめろ。君らは外に出ていたまえ」

 

「しかし閣下!」

 

「出ていたまえ」

 

「くっ! 失礼します」

 

有無を言わせぬ大将の態度で二人のおっさんは外に出ていく。おっさんにそんなに見つめられても困るのだけど…。

扉の向こう側には何処からともなく駆けつけて来た、わが艦隊の指揮下の娘さんたちが艤装は展開してないけど、

剣呑な雰囲気でスタンバってるが大丈夫かな? 喧嘩しちゃ駄目よ? ヒェーだけが、何故か顔色悪かったけど…。

あと今日会ったばかりの駆逐艦三名様も。

 

「…いかにも、私の父は柳作だが、そういう君はただの歴史好きには見えんな…。一体何者だね?」

 

「…今は長野業和と名乗っている。それだけだ…です」

 

全く皆して哲学的な禅問答が好きだよね。

 

「今は…か。君は随分と艦娘達に慕われているようだが…? しかも今日初めて会ったとは思えないほどにね」

 

「困惑している」

 

本当に困惑している。何であんなにもこちらに好意的なんでしょうかねぇ?

 

「…ふむ。君が今日、指揮下に置いた三名の駆逐艦…うち二名は少々、提督に求める基準が高くてね。今まで、

こういう場に赴く事も無かったのだが、それが会って間もない君に自ら指揮下に入るという…。何かあると思うのが普通ではないかね」

 

それに関してはこちらが一番驚いているんですけど!? え、何? 指揮下に入っちゃったの!?

嘘やん! 全然、負担感じてないよ?

 

「…負担は無かったが?」

 

何かの間違いじゃないのか…?

 

「指揮下に置いた時の負担が無かった…と? …しかし、三名同時など今までなかったからな…。

なら扉の前にいる三人に聞いてみるか」

 

「……」

 

少し考えたような素振りを見せた柳本大将は直江教官に目を向ける。それを察して扉を開ける直江教官。

で、一言二言、何か扉の向こうで話していたと思ったら件の三名様、御入室である。

 

何故か、俺を守るような陣形ですが…。

 

「…彼をどうこうしようとは思っておらん。そう此方を睨むな。老体の肝が冷えるわ」

 

大してビビってるように見えませんがね? で、磯風、浜風、君らは何でそんなに警戒心剥き出しなん?

今にも艤装展開しそうな勢いだけど…、室内での艤装展開は緊急時以外駄目よ? 谷風さんは二人に引きずられるような感じだけど。

 

「…司令、無事か?」

 

「提督、御無事ですか?」

 

「提督、何か大変なことになってる…ますね」

 

「…という事で君の指揮下に入っているのは間違いなさそうだが?」

 

そうみたいですね…。わざわざ確認ありがとうございます…。

とりあえず、

 

「谷風。喋りやすい口調で構わん」

 

「さっすが提督っ! 粋だねぇ!」

 

これだけ気になった。なんか無理して敬語使おうとしてる感じが…。

 

「…我々に対しては何かないのか司令」

 

「……」

 

そう言って此方に向けられる紅い瞳と、無言で見つめてくる空色の瞳。

え、えっと…? なんか言わなきゃ駄目なのか? うんと…

 

「ご、御苦労?」

 

「うむ。この磯風。司令の為なら苦労など厭わないさ」

 

「同じく。提督をお守りします」

 

え、ああ。うん。ありがとう? なんやこれ。

 

「さて、君たち三名が彼の指揮下に入ったという事は確認できたわけだが、君たちは何故、彼の指揮下に入ろうと思ったのかね?」

 

「司令が司令だからだ」

 

「はい、磯風の言う通りです」

 

「二人と同意見」

 

「……」

 

ほら、大将閣下困った顔しているよ。俺も同じ立場ならそんな顔すると思うけど…。

まぁでも海軍の中に俺の事を一人くらいきちんと知っている人物がいても良いんじゃないか…?

ユーリエちゃんや文乃には悪いけど、奴の倅ならまぁいいんじゃないの?

海軍大将が流石に他国と通じていたり…。

 

陛下の側近にいたな、そういえば…。

 

あかん、やっぱり誰が信用できるかわからん。

 

そもそも海軍上層部に対してあんまいいイメージ無いんだよなぁ。

なんだよ大本営発表のあの戦果は。それを信じちゃう陸軍も陸軍だけどさ。

あの戦争の被害が拡大した一端は間違いなくあの発表だろ。

頭悪過ぎだろって何回も思ったわ。あと陸軍との仲が悪過ぎ。薩摩、長州のいざこざ何時まで引きずってんねん。

 

陸海軍あい争い、余力を以って米英と戦う

 

ってその通りだよ本当に。勝てる戦も勝てんわ…。

いや、そもそもアメさんと戦争になった時点でもう終ってたんだけどさ、それにしたってもうちょっと何とかならんかったのか。

長官ですら次官時代に「陸軍の航空機もやっと飛べたん?えらいね」なんて陸軍の事になると皮肉言ってるし。

いや、あれはメモ大好きな陸軍大将の事が嫌いだっただけか。

まぁでも戦争中は陸軍航空機の方が優秀な機体多かったんじゃないかって思うから皮肉をバネに頑張ったのかな?

 

零戦はあれはもう一つの完成された形で伸びしろほとんどないからなぁ。

 

何で、それぞれのいいとこを持ち合わせないかなぁ。もう過ぎてしまった事だけど、こっちはせめて兵器の共同規格持とうぜって頑張ってたのにさぁ、ほぼ成果なし。

別に陸軍がいいとは言ってないよ。三国同盟は陸軍が強硬に推し進めたし、アレで米英に目をつけられたのは間違いない。

でも陸軍とそれなりに仲良かった俺が目障りだったってのもあるんだろうけど、海軍はそんなに俺の事嫌わなくたっていいじゃない。

結構俺お役立ちな存在だったでしょ? それをさぁ、あの主席参謀殿ったら…愚痴愚痴何かにつけて言いやがって…。

頭来て、ミック先生作の三式潜航輸送艇の設計図と操艦マニュアルをそっと陸さんに渡してやったわ。

海軍関係者も招待して潜航試験で海軍が騒めいたらしい。モグラちゃんじゃなくてまるゆさんと呼ぶように。

全長が55メートルじゃなくて64メートルになったけど…。

 

…何の話だっけ? そうそう、海軍の上の方に対していいイメージ無いって話か。

でも、あの頃から70年経ってるわけだし知り合いの倅やし信用しても…。

 

いや、そもそも俺はそんな大した人物じゃないんだからええんじゃない?

史実に対して少しは日本の面子保てた位の事しかしてないんだから。

大体、信じてもらえるかもわからんしな…。

 

とりあえず、大将閣下、ちょっと二人でお話しませんか?

 

「閣下、出来れば二人だけで話したく」

 

「…よかろう。二人とも外へ」

 

「三人も外へ出ろ」

 

 

 

その後、小一時間ほどで校長室から若い男が出て来る。

男は指揮下の艦娘達を率いて去っていく。

校長室を覗いた大将の随伴の者たちは、机の上で頭を抱えている大将を目撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の男は今、何と言った?

 

──嘗て長野壱業という名で太平洋戦争を戦い金剛と共に沈んだ。

 

「…は?」

 

自分の声ながらも間抜けな声が出た。

 

「……」

 

「……」

 

なるほど、会った時から分かってはいたが、今こうして向き合っていると分かる。

一般人ではあり得ない凄味を感じさせる。だが、だからと言ってそれを信じる事など出来るわけがない。

一度、彼の生まれ変わりだと名乗る観測者が居たが、その者は艦娘達にそっぽを向かれていた。

なら今、目の前にいる男はどうだ? 少なくとも驚くべき速さで艦娘を指揮下に置いている。

とくに磯風と浜風は今日会ったばかりの筈で、その二人は壮絶な戦いを経験した者達で、目の前にいた男に対してさっきの態度はどうだ?

 

「……」

 

「……」

 

…可笑しいな。この者の言う事を否定できないではないか。

では、繋がりはどうだ? 磯風、浜風は彼に関わりのあった艦だ。そして夕張、第四艦隊の旗艦であった鹿島。

…なるほど。では、比叡と鳳翔は?

 

「もし仮に、それが真実だとしよう。鳳翔と比叡が君の指揮下に入った理由は何だと思う?」

 

「それは分からない」

 

そもそも自分がどうして艦娘達に好かれているのかも分からない。

そうポツリと呟く目の前の男。

 

「なら、彼女たちとどういった関わりがあった?」

 

「…鳳翔には上海事変の折、搭乗員だった。比叡は観艦式の際、御召艦改修に…同期の西田が艦長か…」

 

…よく調べているというべきか? この辺りは後でこちらで調べるしかあるまいが、デタラメ言っている訳ではないな。

そのメリットがないからな…。しかしますます…。

何か本人しか知りえぬ事…、儂の親父と、かの御仁しか知りえぬような事…。何かないか…。

 

──俺が死ぬ気でいたら炎の中からいきなり現れてよ、そんで思いっきりぶん殴ってきやがって、気が付いたら違う船だ。

 

──アイツはお前が生まれたからな。俺を北に送りやがった。

 

──海軍人事局の同期に頼んで若い連中を違う艦に異動させて、わざと補給を遅らせて置いていったんだ。かっこつけやがって…。

 

親父が酒を飲むとよく言っていた愚痴。しかしこれでは弱い。

が、どれだけ彼の事を調べていようが、多少は本人で無ければ考えるはずだ。

 

「父を北方艦隊に送った理由は?」

 

「…彼が適任だと思ったからだ」

 

一瞬だが、何かを躊躇ったな?

 

「本当の理由は?」

 

「…君が生まれたばかりだったから…全くの私情だ」

 

儂の生まれた頃の事まで…、いや、美談としてどこかに残っている話かもしれない。

 

「で、では、最期の戦いの折、連れていくはずだった艦を置いて行った訳は?」

 

「…補給が間に合わなかった」

 

「本当の理由は?」

 

「若い者は未来がある」

 

こちらも先ほどと同じで、美談として残ってるのではないか? どれも調べようと思えば調べがつくだろう。

 

しかしこれが芝居ならすごい役者だと言うしかあるまい。そしてかの御仁に対する知識量が多い。

 

手元の書類に目の前の男の写真が紛れ込んでいる。

同期の写真? 家の中をひっくり返せばもしかしたら一枚くらい出て来るのではないか?

 

一先ず、事情を聞こう。そして真実かどうかはそれからだ。

 

「なら、そういう事にするとして、経緯を、どうして今こうして生きているのか説明してくれ」

 

そこから語られた内容に顔を顰めて儂は頭を抱えた。

 

「文乃に話をしておく。少しは信じてもらえるだろう。だが、事を大事にしたくない。内密に頼む…お願いします」

 

「いや、それはそうだろう」

 

この男が嘘を言っているようには見えず、女帝の事を呼び捨てにするのに何ら躊躇った様子もない。

これは本当に…、そういう事なのか。

 

何故だろうか、希望と同時に引退したいと湧いてくるこの気持ち。

 

胃と頭が痛くなってきたような…。

 

「では、これで失礼する…します」

 

 

 

 

儂、このゴタゴタが片付いたら孫と遊ぶことを誓う。

 

 




前話で連合国艦隊撤退に成功を
戦艦1駆逐艦4 → 戦艦1空母1駆逐艦6に修正してあります。

戦果は連合国側の同士討ちや大型艦の航跡に巻き込まれて転覆や衝突なども多数あった模様。
金剛さんに執拗にタイキックされて、あっちへふらふらこっちへふらふらと衝突を繰り返す戦艦もいた模様。

なお最終的に日本側も霞とゆきかじぇ以外は大破状態。

あと餃子(苺味)の同期で本文に入ってなかった方
比叡の艦長
蒼龍の艦長
瑞鶴の艦長
第四航空戦隊司令
二水戦の司令 島風座乗
海軍省人事局長
海上護衛総隊参謀長
などなど。

餃子さんが海軍学校時代の練習艦は八雲です。

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