提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

21 / 87
いつの間にかお気に入り件数が1万超えていたでござる(驚愕)
公開してないはずなのに何故? と思いつつ、
お気に入りしてくれた皆さまありがとうございます。

この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。

娯楽として楽しんでいってね。


提督(笑)と旗を立てし者

おいおい、ちょっと待ちたまえ君達。

 

ここ俺の部屋。

 

なんで当然のように皆で入ってくるんでしょうか?

とりあえず、現状維持で終ったんだから解散しろ解散。

六畳間だよここ。8人も入ったら狭いよっ! 華やかなのはいいけど酔う! 女酔いする!

 

「…狭いですね。幸い、私達の荷物は少ないですが…」

 

「司令。寝る時は一緒の布団でかまわんな」

 

「いやぁ一組の布団に4人は無理でしょ」

 

部屋を見渡している浜風、磯風、谷風。

新しく加わった駆逐艦の娘さん達は何を言ってるんでしょうか?

もしかしてこの部屋に住み着こうとしているんでしょうか…。

 

ちょっと想像してみる…。

 

 

 

「おはようございます提督。体がベトベトですね」

 

「おはよう司令。昨日は激しかったな」

 

「腰が痛いよ」

 

はっ!? 止めてください! 事案が発生してしまうではないですか。

とりあえず座って俺の単装砲が臨戦態勢なのを悟られないようにしなくては…。

 

鎮まれぇ! 鎮まり給え単装砲! 煩悩退散 煩悩退散 どーまんせんまん陰陽師っ!

 

「ちょっとちょっと! 何をうらやま…こほん、勝手な事を決めてるのかしら」

 

「そうですよ。そんなうらやま…こほん勝手な事許しません」

 

「勝手は比叡が許しません! もしそんな事になったら…あぁお姉さまぁ…ヒェーー」

 

メロンちゃんが噛み付き、鹿島ちゃんがそれに同調して、ヒェーはヒェーしている。

 

「どうぞ提督」

 

「…忝い」

 

卓袱台を前にゲンドースタイルでいる俺に、そっとお茶を差し出すお艦。

この安心の安定感。でもやっぱり隣に座るのね。

 

「鳳翔さんも何か言ってあげてください」

 

「…そうですね。提督に抱きしめられて眠るとすごく幸せな気持ちになります」

 

両頬に手を当てて赤らむお艦。

え? 何言ってるの!? えっ何言っちゃってんの? そんな事した覚え…ありました。

 

あったけど、なんで今それ言うの!?

 

「司令っ! どういうことですかっ!」

 

ヒェーが掴みかかってくる。

 

「て、提督さん…そんなぁ…嘘ですよね?」

 

涙を浮かべる鹿島ちゃん。何故に?

 

「ぐぬぬぬ…」

 

メロンちゃんは事情知っているだろ! なんでお艦をそんなに威嚇してるん!? また関節決められちゃうよ?

 

「…鳳翔」

 

ゲンドースタイルを堅持する俺。何故って? 言わせんな恥ずかしい。

とにかくこの状況どうにかしてください。

 

「…ふふふ。冗談でも無いのですけど…」

 

そう言いながらもきちんとあの夜の事を説明してくれはるお艦。

 

 

「なーんだそれなら私、提督さんとデートしましたし。あーん、もしましたし。でも添い寝…うぅ」

 

デートだと!? あれは護衛だったんじゃ…。

 

よく思い出してみ?

 

一緒に買い物する、食事もする。だんだん打ち解けていく…。

 

デートかっ!

 

…しまったぁ! もっと楽しんどけばよかった…。

 

「鹿島さん…その、あーん、の話聞いてないんだけど」

 

「私も気になりますね」

 

「ひっ」

 

メロンちゃんが第四艦隊の旗艦だった娘に掴みかかっている。

なんだか井上さんに文句言っている俺を幻視できるのは何故だろうか。

そしてお艦はいつものニコニコした顔なのになんか威圧感ある。

ヒェーは腕組んで目を瞑って唸ってる。

 

「にぎやかな艦隊だな」

 

「そうですね」

 

「まっ、辛気臭いよりはいいよ」

 

おいっ! 元はと言えば君らが変なこと言ったからこのカオスな状況が生まれたんだからなっ!

なに我関せずなスタイルでいるんだい!

 

「ところで司令。なぜ偽名を使っているのだ?」

 

「そうですね。気になります」

 

俺は君の胸部装甲が気になります乳風さん。ゲンドースタイルを崩せないではないか!

 

「それは司令が司令とバレたらどうなるかよく考えたらわかります…ヒェー…怖くて想像したくないです!」

 

どういう意味だヒェー。人を危険物のように言いやがって…、大体、あの当時の軍人が蘇ったとしたら、

田中さんとか木村さんとか松田君とかめっちゃ頼りになるだろ。

他にも色んなぶっ飛んだ人も結構いたし…吉川君とか…。

 

多聞丸? はっはっは、…何それ超怖い! さっき会った大将閣下の胃に穴が開きそう。

 

…うん、偽名は大事だな。

 

「…なるほど。反乱だな。何時決行するのだ?」

 

「腕が鳴りますね」

 

は? 急に何物騒な事言ってるのよ…。そんな事しないよっ!

 

「…つまらん冗談だな」

 

お願いだからそんな怖いこと言わないでね? ね?

 

「……」

 

「……」

 

なぜ黙って俺の事を見るのでしょうか? 冗談だと言っておくれよ!

 

 

 

この時、磯風と浜風は背中に冷たいものが走っているがこの男は気付いていない。

提督の指揮下に入ることで接触していればある程度の感情が伝わるのだが、接触していなくとも繋がりは確かにあり、提督の命令には従うという本能のようなモノが刺激されまくっていたりする。

そして二人は、「国を守るためなら汚名など厭わない。だから、くだらない事を言うな」

そう解釈。勝手に勘違いしていたりする。

 

 

 

「と、というか、提督。お初になんて言ってたけど私達の事、最初から分かっていなかったかい?」

 

谷風さんがそんな事を言うのだけど、

 

「…当然だ」

 

艦これをゲームでやってた時は、シルエットだけでも判るほどの艦これ好きの提督さんやったんやぞ。

君たちを手に入れるのにどれだけ堀で苦労したと思う? 分らんはずなかろうって。

あれ? そういえばユーリエちゃんに艦娘達の顔と名前を覚えさせられたけど…、香椎いたか?

 

姉妹に比べて胸が…、サイドテールの黒髪…。可愛いけどなんか地味目…。

 

…いたな。流石、俺氏。変なところの記憶力パネェ。でもね、忘れていたのは無理もないと思うの。

一人当たり、2秒くらいよ? それくらいのスピードでユーリエちゃん説明していくんだもん。

あっ、と思う瞬間には次の子に行ってるわけよ。思い返せば、あの子意外とスパルタなのかもしれない。

変な男には引っかかりそうだけど…。

 

「「「……」」」

 

「…なんだ」

 

「…ヒェー」

 

なんで皆して固まってるのよ? メロンちゃんやお艦は鹿島ちゃんを弄ってたんちゃうん?

ヒェーはあいかわらずヒェーだけど一体どうしたのさ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大型の貨物船を守るように海原を走る乙女達。

何度かの深海棲艦の襲撃を撃退し、もうすぐ目的地に到着する予定である。

 

その艦隊から少しだけ離れる形で艦隊の最後尾にいる二人の少女。

 

紺色に白いラインの入ったセーラー服、桜色の長い髪。毛先に進むにつれ、その色を濃くしている。

頭部の髪は跳ね、犬の耳の様。無邪気さと狂気を同時に孕んだ紅い瞳。

 

その瞳は空に向けられている。

 

「夕立。今日も頑張ったぽい! 艦長も提督さんも見ててくれたかなー」

 

「きっと大丈夫さ」

 

そんな白露型4番艦の夕立に応えるのは、同型の2番艦の時雨である。

 

愁いを帯びたような海色の瞳。セミロングの黒髪を三つ編みにして一つに、先を赤いリボンで括っている。

頭頂部の髪は触角のように立っており、側頭部の髪が跳ねて、こちらも犬耳のようになっている。

そして髪飾りがアクセントになり、彼女の美少女振りを何割増しかにしている。

 

しかし、自分は? 何時だったか夕立が言っていた。

「敵をいっぱい倒したら提督さんがいつか迎えに来てくれるっぽい」

その言葉が時雨の胸の中を複雑な思いにさせる。あの時、どうして僕は…。

 

提督は…、僕の事も迎えに来てくれるかな…。

 

「きっと大丈夫っぽい!」

 

時雨の内心を悟ったかのように時雨の言葉を真似て夕立は無邪気に笑う。

史実では左程、繋がりは強くなかった二人だが、この世界ではあの最期の戦いで、二人とも壮絶な終わり方をしている。

そこに確かな絆が存在していた。

 

「ありがとう。…僕も頑張らないとね」

 

「夕立負けないっぽい!」

 

お互い笑いあい、彼女たちは今日もどこかの海を行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

無駄に広い執務室で、無駄に肉のついた男はとある報告書に目を通して皮肉めいた言葉を発した。

 

「もう少し使えると踏んだが…所詮は三下か」

 

報告書を机に投げ捨てるように置くと、それを持ってきた部下を睨みつける。

 

「奴の家族の方は処分しました」

 

「当然だ」

 

元より切り捨てるための捨て駒。それを失った事も襲撃が失敗した事も痛い訳ではない。

だが、想定外に公安、監査局、あとはよくわからん連中の介入が早かった。それが苛立ちを募らせている。

 

この観測者の反応を測りたかったというのが一点。しかし、

もし今回の襲撃で何らかの責任問題を大将に突き付ける事が出来れば…。

甘い見積もりだとは分っていたし、失敗する事も想定済みではあった。

だから、隣国の間者を捕まえ、奴の家族を人質に襲撃犯に仕立て上げた。

此方の罠に捕まるような間抜けだ、しかも尋問により色んな情報を吐いてしまう無能。

捨て駒としては丁度いいと思って飼っていた。

大した役に立つことは無いとは分っていたが、帰還ルートを流してやって怪我すら負わすことの出来ないこの体たらく。

公安でも恐らく情報を吐くだろう。もっとも、ここまでの繋がりまで分らないであろうと考えている。

それでも、やはり苛立つものは苛立つのだから、この男の性格の問題であろう。

 

「それで、これを持って俺を不快にさせに来ただけじゃねぇだろうな?」

 

「件の男が新しく比叡を傘下に入れたそうです」

 

「…チッ何なんだソイツは?」

 

「……」

 

部下に悪態をつきながら三元中将は苛立ち紛れに煙草に火をつける。

何もかもが苛立たせる。海軍の体制も艦娘の運用もなにもかもが生温いのだ。

そうこの男は考えている。

艦娘など、どんどん前線に送り出して突撃させ、深海棲艦と共にすり減らしていけばいいのだ。

それを人道的観点や、まずは近海シーレーンの確保が優先だと宣う馬鹿共。

何時からこの国の軍は腑抜けた組織になったのか?

考える間もない。あの長野という狂犬を飼い慣らせなかった前大戦の大本営の失態だ。

奴に終戦工作まで政治家を通して仕組まれた。奴が英雄と言うのは認めてやろう。

だが、政治センスは無かっただろう。事実上敗北に近い講和条件。

おかげで終戦後、この国の軍は連合国側に徐々に牙を抜かれていった。

新兵器を開発すれば技術は抜かれていく。駐屯する連合国の一部の馬鹿のせいで小競り合いが何度も発生し、その度に我が国の腐った政治家共は軍の高官を更迭し、内部がボロボロになっていくのに気づかない。

平和主義を謳う頭の中に糞でも詰まってる左派や大陸の赤旗が大好きな連中の何ともうるさい事。

民衆の自由主義だとか責任転嫁には辟易するのだ。

 

もう一度、あの強い帝国海軍を復活させる。

 

その為に、他の派閥の切り崩し、工作を重ねてきたのだ。

そこに現れた忌々しいあの男と似たような名前を騙る観測者の男。

襲撃されたにも関わらず、微塵も動揺した様子が見られず、驚くべき速さで艦娘という兵器を指揮下に置いている。

この先奴を派閥に置くことで勢いを吹き返すところが現れるかもしれない。

 

気に入らん。が、

 

「…取り込むか」

 

「…長官が現在、士官学校査察に行っております」

 

「チッ、ジジィめ動きが早いな」

 

「それと父島赴任が来月中にも行われるそうです」

 

「なんだと!?」

 

父島に送るのは早計だったか。しかしまさか後一月でとは誰もが思うまい。

獅子飼のジジィも何かを掴みやがったな。

取り込めないのなら消すしかあるまい。奴が行くのは最前線の父島だ。

 

「ふざけた名前を名乗る自分を恨め。くっくっく」

 

顎の贅肉を弛ませ三元中将は嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

小笠原諸島、硫黄島に次いでの大きさを誇るその島は面積23.45km²。

地続きになった事のない島で多くの固有種が生息し、1920年代頃から要塞化が進められ、

現在は深海棲艦と争う最前線の基地となっている。

海軍の父島警備府が置かれ、その建物の一室で事務処理に追われる二人の女性が居た。

 

「あーくそっ! 全然終わりが見えねぇ。早く提督よこせよなぁ」

 

「そんな事言って、来たらどうせ強く当たるんでしょう?」

 

一人は紫がかったショート黒髪に角みたいな艤装を装着し、金色の瞳は左目の眼帯の為一つしか見えない。

服装は女子高生のようなブレザー型の制服。

指ぬきグローブと眼帯が思春期特有の病気を発症しているのではないかと伺わせるが、

世界水準軽く超えてると自称する彼女のプロポーションはかなりいい。

八八艦隊計画の3,500トン級巡洋艦として建造された、天龍型のネームシップである。

通称、おっぱいのついたイケメン。

 

もう一人は男らしい口調の天龍とは対照的におっとりした喋り方をする女性である。

天龍よりも紫が強いセミロングヘアーで、その頭上に天使の輪の様なものが浮いている。

ドーナツ型の蛍光灯から、通称、パ〇ックと呼ばれている。瞳は髪と同じ色で、左の泣き黒子が妖艶な雰囲気を醸しだしているかもしれない。

体形は姉?(竣工は妹のが早い)と比べると一部控えめであるがスタイルはとても良い。

 

「仕方ないだろ! どいつもこいつも根性がねぇんだから。…って! この間のは龍田が煽って勝手に怪我して帰っていったんじゃねぇか!」

 

「あら、そうだったかしら」

 

「そうだったよ!」

 

そう悪態は吐きながらも書類を片付けるのだから根は真面目なのだろう。

 

「あら、電文が届いたわよ天龍ちゃん」

 

PCを使い作業をしていた龍田はポップアップされたウィンドウを開く。

 

「あん?」

 

「ふふっ、良かったわね天龍ちゃん。近々、提督が赴任してくるそうよ? しかも提督の名前を騙ってるから確かめてだって」

 

「また勘違い野郎か。ふふ、怖がらせてやるぜ」

 

「あんまり無茶なことしちゃ駄目よ」

 

ちょいと絞めてやって後は机に縛り付けて書類仕事を任せようと考える天龍だった。

 

 

 




香椎は想像ですが、胸部装甲はきっと当たってるはず!
実際に実装されたら修正します。

そういや、夕立の生存ルートが見えないという感想がちらほらありましたが、大丈夫。私にも見えていません!
…違うんや。もともとは別の娘やったんや。でもイベントの時に大活躍してくれたから…つい…。



あと描写不足って指摘が何件かありまして、そう思った方はどこがどう不足しているのか書いてくれると今後の参考にしますけん。教えてクレメンス。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。