提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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外伝はじめました https://novel.syosetu.org/103144/
見れないという方は活動報告の方からやってみてください。
それでも駄目ならご一報下さい。


提督(笑)と駆逐艦2

父島警備府の提督の朝は早い。

 

畑仕事が一段落すると軍服に身を包み食堂に向かう。

 

そして厨房に入りエプロンを身に着ける。

 

女性向けのピンクのエプロンに「最強十八戦隊」のワッペンが付けられている。

 

…なんともシュールな姿の完成である。

 

割烹着姿の鳳翔と並び、朝食の準備に取り掛かる。

 

「提督おはようございます」

 

「…ああ。おはよう」

 

鳳翔にとっては至福の時である。

 

もともと天龍と龍田が人間たちを警備府建物内に入れることを嫌い、もっぱら料理は彼女たちの担当となっていたが、今までは戦闘や遠征任務もあり彼女たちの負担になっていた。

 

三食のうち一、二食抜きや、戦闘糧食の様なもので済まされることも多々あり、父島所属の艦娘達は少なからず不満であった。

だからと言って人間に頼むという選択肢は無かった。

全員がそういう訳ではないが、父島所属の艦娘達は本土から問題児扱いされていたのもあり、この島に詰めている軍人たちも決して友好的ではなかった。

 

その現状を知り、鳳翔が自らの提案で厨房を一手に引き受ける事となる。

だが、それでは負担が多かろうと、鳳翔も前線に出なくてはならないのだからと、この男は朝食の手伝いを買って出た。

昼、夜に関しても手空きの者が手伝う事になった。

但し、比叡と磯風に関してはもし手伝うのであれば現在の所、鳳翔と提督がいる朝食の準備の時のみとなっている。

 

もっとも本人たちは何故か不満げであった。

 

 

 

 

 

トントンと軽快なリズムで葱を刻む。お昼の分の下拵えもしといた方がいいよな。

午後はお艦にもちょっと哨戒活動に出て貰いたいしなぁ。そろそろ本腰入れて南鳥島攻略も視野に入れて、

その前に横流しと大麻かぁ。早めに妹との再会を果たさねばならないしねぇ。やる事山積みだねぇ。

 

「ふふ、相変わらずお器用ですね」

 

「君で鍛えたからな」

 

「まぁっ。お役に立ててたなら嬉しいですね」

 

鳳翔の乗員だったころは厨房に暇な時と気分転換に料理の手解きをして貰ってたからな。

そういや、わが妹は実家に戻って作ったビーフシチューを大層気に入っていたな。

もちろん肉じゃがではなくてちゃんとした奴だぞ。

東郷元帥が留学してた時に「これうめぇな」って食ったのを帰国後、艦上食として作らせようとして出来たって説あるけど、

本当の事はどうだったのか聞いとけばよかったな。

海軍軍縮会議が開かれていた頃に話す機会があったんだよなぁ。

あれはどういう経緯だったか、軍縮反対派だったからか? でもバレないように作ったらいいじゃない派だったんだよ俺。

元帥にちょっと相談に行くっていうんで何故か末次さんに連れられて他何名かと会いに行ったんだっけ。

 

 

…殴り掛かられたけど。

 

 

機関科の改善案がどうたらって誰かが言いだして、

元帥が「罐焚(かまた)きどもなんかほっとけ」言うて、「船の心臓を扱う者を下に見るとかワロス」とか内心思ってたら口に出てたらしい。

マジギレされたんだよなぁ。いやぁ~良い思い出だよね!

日露戦争の英雄に怒られるとかなかなかできる体験じゃないもんな。

 

「提督?」

 

「あぁ、すまん。昼の献立はビーフシチューにするか」

 

変なこと思い出したらなんか食べたくなったな。

 

「ふふ。そうしましょうか。お肉は少なめになってしまいますけど」

 

「…それはまた争いになりそうだな」

 

「そうですね」

 

肉が入ってないとか、少ないだとか、あいつは多いだとか。

食欲旺盛なのは結構だが一度昼食を一同に会して摂ったときは酷かったなぁ。

穀物や野菜はともかく肉類は一部除き配給制になってるようで後、醤油や味噌が配給制なのは驚いたな。

大豆の自給率は元の世界でも低かったがこの世界でも同じか。今や納豆が高級品扱いだ。

まぁそれでも口に出来ないほどではないのだから国もよくやってる方だろう。

戦時中の末期はほんと酷かったもんなぁ。それを考えたら俺は全然問題ないけどなぁ。

だけどそれを知らない食には煩い日本人世代はさぞ不満だろう。

 

「しれぇ。おはようございますっ! 鳳翔さんもおはようございますっ!」

 

厨房と食堂を隔てるカウンターにキラリとまぶしい白い歯で屈託のない笑顔を浮かべる少女。

少しだけ赤みを帯びた茶色の髪。髪と同じ色の瞳は愛らしい。

頭に乗る測距義に胸のスカーフは黄色のワンピースなセーラー服。

短い本当に短い。よく見えているし、おっちゃんが変態という名の紳士だったら今頃危なかったぞ? げっ歯類。

 

──貴方はそうではないのですか?

 

俺はただの紳士ですから問題ないんです。

 

幸運のビーバーゆきかじぇもとい陽炎型8番艦 雪風 である。

もう一人と共に俺の頭によじ登ることを生業にしている駆逐艦の艦娘さんである。

事前に知っていたけどこの警備府の駆逐艦達は艦これで言うところのレア艦揃いだ。

 

「おはよう雪風」

 

「はい。おはようございます」

 

彼女とは色んな戦場で会っているからな。彼女は数々の海戦を通してほぼ無傷で生き残った幸運艦である。

呉の雪風佐世保の時雨と、海軍内では有名であった。

あの最期の戦いでも敵から受けた魚雷が不発だったらしくほぼ無傷で生き残ったようだ。

 

 

 

そんな笑顔眩しいげっ歯類との出会いは着任初日に遡る。

 

まぁ警備府に着いてからそのうち挨拶をするだろうと思っていたのだが、天龍と龍田とうちの艦娘達が医務室に行っていた頃。

大淀さんと執務室で今後の予定や業務内容を話し合っていた時だ。

 

「おっそーい!」

 

「だから競争なんてしないって言ってるじゃない」

 

「ちょっ、なんでこっちくるのよ!」

 

「雪風。先に行くよー」

 

「アイツら元気だなー。どうした雪風?」

 

「執務室に誰かいます。波平さん」

 

「な、波平って…。喧嘩売ってるんだな。そうなんだな!? よし買ってやる!」

 

「ち、違います!」

 

なんでか扉に穴が開いててさ、ついでに立て付けも悪かったから廊下の声が丸聞こえさ。

廊下が騒がしくなったなぁとか思ってたら雪風と波平? が執務室に勢いよく飛び込んできた。

 

「…いやっちょっ待って」

 

「おらおらどうした降参か」

 

うつ伏せに倒れる雪風を容赦なく擽り続ける波平?

可愛い少女たちの絡み。うん。悪くない。

 

「……」

 

「……」

 

組んず解れつ転がりながら、そして執務机の前まで来た彼女たちは、固まった。どうした?

 

「続けたまえ」

 

──憲兵さん。この人です。

 

ばっ! ちげーし!? 全然そんな邪な考えとか、そんなのねーし! ちげーし! 何言ってんのちげーし!

 

「…しれぇ?」

「…提督?」

 

ほら、なんか誤解された目で見られてんじゃん!? どうしてくれんのさ!?

というか、ミック先生何処にいんのさ?

 

──誰が上か、この警備府の妖精たちに教え込んでいます。

 

おっと予想外に物騒な事してるぅ!?

 

「こほん。提督?」

 

大淀さんが咳払いをしてこちらを見ている。まだ機嫌直らないの? ほら飴ちゃんあげるから機嫌直しいや。

 

「え?」

 

「要らんのか?」

 

「あ、はい。頂きます。って、そうではなく挨拶されてはいかがですか?」

 

ああ、そうか。そうだよね。よしっ!

 

「今日着任して来た長野業和という。よろしく頼む。…雪風、ながな…波平」

 

「何で言い直した!? 提督っ!」

 

「しれぇっ!」

 

机を飛び越え掴みかかって来る二人。椅子ごと後ろに転がらないように超頑張って耐えた。

 

「こんのっ」

 

「しれぇ」

 

しがみ付く雪風と涙を堪えて俺の胸を叩く長波。

やっぱり速攻でバレているらしい。そして慕ってくれているのであろう態度が胸を締め付ける。

 

「しれぇ、雪風も飴欲しいです」

 

「そうか、ほら…。長波にもやろう」

 

「ありがとうございます!」

 

「こんなんで、こんなんで騙されないんだからな!」

 

うん、まぁ後でゆっくりお話ししよう。

なんか大淀さんが冷たい視線向けてくるからさ、とりあえず後でな。

 

 

 

とは思いつつ未だにきちんと話していないわけだけど…。

 

「しれぇ」

 

「雪風。朝食にはまだ早い。座っていろ」

 

「いえ、大丈夫です! 雪風は見てます」

 

見てても楽しいものでもないだろうに…。まぁ本人がいいならいいか。

それじゃあ、ビーフシチューでも仕込むとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府 とある提督の執務室。

 

「おいなんだ長野? 俺も暇ではないんだぞ」

 

「ちょっと徳田に聞きたいことがあるんだけど」

 

軍服を身に着けた男女と並の男なら目のやり場に困るような格好の女性。

 

「あら。お姉さんは邪魔かしら?」

 

戦艦陸奥と

 

「え? なんで?」

 

長野百合恵提督と

 

「……」

 

徳田宗義提督である。

 

「はぁ。頑張ってね徳田君」

 

「…なにをだ?」

 

溜息をつく陸奥にぶっきら棒に答える徳田提督。

 

「なに?」

 

「なんでもないわよ」

 

百合恵提督を見つめてやれやれと言った表情を浮かべる陸奥。

 

「で、何で俺は呼ばれたんだ?」

 

「単刀直入に聞くけど父島って誰の派閥?」

 

「…父島…またアイツの事か」

 

「アイツって…まぁいいわ。で、どうなの?」

 

「どうと言われてもな。お前が何をしようとしているのか教えないなら答えん」

 

「ちっ、融通効かない奴。まぁいいわ、これを見なさい」

 

「これは…」

 

パソコン画面を覗く徳田提督と陸奥。

そこに映るは普通のメールである。それと送付された写真。

 

横須賀ではお世話になりました。

父島では勉強の日々ですが何とかやっています。

最近は暑くなってまいりましたが夏バテには気を付けてお過ごしください。

 

短いながらも普通の近況報告のメールである。

その文字の下に父島警備府の建物の前で、艦娘達と写真に写る送り主である男。

 

「あ、間違った。これじゃない」

 

「いや待て待て」

 

「ねぇちょっと百合恵提督コレ」

 

「二人とも煩い。見せたいのはこっち」

 

この時、徳田提督も陸奥も写真を見て驚いていた。

徳田提督はなんで父島所属の艦娘達が全員写っているのか。少なくとも写真に写るくらいは協力的な艦娘達。

そもそもここから出ていった時点で艦隊編成が可笑しなことになっていたが、さらに艦娘を率いる大勢力になってるんじゃ…と。

陸奥は駆逐艦に集られる件の男の顔に。

 

「おーい徳田。これを見ろ」

 

「…あ、あぁ…」

 

次に見せられたのもメールである。

 

百合恵たん。百合恵たん。

父島警備府は闇がいっぱい((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

マジ、パナイの見つけちゃった(・ω<) テヘペロ

エロイ人に教えたいんだけどどうしたらいいかな?

 

送付した資料と画像はグロだから注意ね|ω・)

 

と、パッとみるとふざけた内容だが、送付された帳簿情報と写真。

 

それを見て徳田提督の顔が歪んでいく。そして百合恵提督を退けるようにパソコンを操作し始めた。

 

「なっ」

 

「ちょっと痛いんだけど」

 

「…ああ、すまん。あの男、これがどれだけ危険なモノか…と思ったが、向こうではエンジニアだったのか」

 

「…ああ。まぁ、間違いではない…のかな」

 

曖昧に答える百合恵提督。

彼女自身もこれを見た時色んな意味で衝撃を受けた。

まず、このふざけた文とアスキーアートに驚き、送付された横流しの帳簿と大麻畑の写真に驚き、そしてこの裏帳簿どこから見つけてきたのだと驚いて、こんなん見られたらヤバいと思い、サーバー見たら第三国の通信衛星から送られていたのに驚き、それ以上の痕跡は全く分からなかったことに…。

 

 

「完全に痕跡が消えてる。このPCが見られない限りは問題ないと思うが…」

 

「知ってるし…。アンタが慌てた理由も分るけど…。いやぁ本当に」

 

規格外過ぎて言葉も出ないという言葉は飲み込んだ。

まぁ見ただけでリニアをリニアと判断したような70年前の何の予備知識もない人なんだけど。

とも思うのだが、わずか半月足らずでパソコンの使い方はおろかハッキング技術まで身に着けるとは誰も思うまい。

 

きっとアスキーアートやふざけた文も変な所から知識を得たんだろうと考え、

それを件の男が真面目な顔して打ち込む姿を想像してちょっと微笑ましい気持ちになるのであった。

 

件の男がそんなことを知れば、馬鹿な男に騙されるんじゃないかと心配するであろう。

 

「まぁ、父島が誰の派閥か知りたいという理由は分かったが…、これを一体どうするつもりだ?」

 

「より良い環境づくり?」

 

大体においていきなり父島に送られるとは百合恵提督も考えていなかった。

横須賀に戻って来たとき、てっきりしばらくは横須賀鎮守府附になるものだと思っていた。

流石に教官の艦娘達を片っ端から指揮下に置いて追い出されたとは思わなかった。

優秀過ぎてすぐにでも即戦力としてなんていう理由だと思っていたのだ。

実際に即戦力として父島に送られることになったのだが…。違う、そうじゃない。色々すっ飛ばし過ぎだからと。

本人が全く気にする様子もなく、父島に長く居座る事も前提でどこか斜め上に物事を考えていることが分かる。

警察にホームセンターで世話になった件を見ても。

 

「あん?」

 

「私、必要なのかな…」

 

幸せになれるようにお手伝いするとは誓ったけど…。助力なんて必要なのか、なんか一人でやってしまいそうな気がしてきた。

そんな風に思う百合恵提督である。

 

「あぁ?」

 

「あぁ、うん。なんでもない。で、派閥は?」

 

「答えになっていないような気もするが…、父島はおそらく細倉中将派閥だろうな」

 

顎に手を当て思案する徳田提督。

 

「なによ。ハッキリしないんじゃない」

 

「あの男は三元中将より狡猾だからな。これを上に上げた所で本人は尻尾切して終わりだ。とりあえず2,3日時間をくれ」

 

「別に手伝ってくれって言って無いけど?」

 

「お前なぁ…」

 

「はいはい百合恵提督手伝ってもらいましょうね。それじゃあ徳田提督は与えられた宿題頑張ってね。じゃ」

 

「お。おい」

 

それまで沈黙を保っていた陸奥は徳田提督を扉の外へ追いやる。そして鍵を閉める。

 

「どうしたの陸奥さん?」

 

「さぁて、百合恵提督。お話しし・ま・しょ」

 

「え、なにどうしたの急に?」

 

自分の秘書艦の態度に得も言われぬモノを感じるのであった。

 




ニコ動で極楽浄土金剛さん→蛙の順で見る。
マジパナイ あ、鬼怒が男前&大きくなりましたね。

あとメロンちゃんが釣り上げた潜水艦はポーパス級。
感想にもありましたが船のスペック的にはイケると思います。但し、
錨を巻き上げる機械の耐久値とかは考えてないので実際やったらどうなるか分りません。
スクリューに巻き込んででもよかったんですがインパクト的に釣り上げた方が面白いと思ったのです。

あと大麻についてですが普通の目的に使うなら離島で栽培する必要ないよねという事ですね。普通にとちぎしろ使えばええやんになるのです。描写が不足してましたがそういう事でお願いします。

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