提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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アニメの艦これちょっと見ました。
うん、まぁ出撃シーンはかっこよかったよ。

11/9 船団護衛の部分加筆訂正。


提督(笑)頑張ります。

ここは父島警備府。時間は深夜。

 

「開かないねー」

 

「開きませんね」

 

「むぅ。いっそ蹴破るか」

 

「駄目に決まってるじゃない」

 

提督の私室の前でそれぞれ寝間着に身を包んだ駆逐艦達は唸っていた。

時津風、雪風、長波、天津風である。

この場にいない島風は昼間テンションが上がりすぎて走り回り、今は熟睡している…初風に抱き着いて。

 

「あなた達何しているの?」

 

「あ、比叡さんこんばんわです!」

 

雪風がぺこりと比叡に頭を下げる。

 

「はい、こんばんわ。ってそうじゃないでしょ」

 

「しれぇーと一緒に寝ようと思ってたんだけど」

 

時津風が未だに鍵穴をガチャガチャとやりながら答える。

 

「あ、あたしは止めたんだぜ」

 

「わ、私も止めたのよ」

 

と長波と天津風。…嘘である。

 

「だ、駄目ですよ? 絶対ダメ。さ、自分の部屋に戻って」

 

その時、ドアがゆっくり開いた。

そこからひょこりと顔を出したのは、提督の肩や頭によく乗っている妖精さんである。

もっとも最近は時津風か雪風が頭によじ登っていることの方が多い。

夕張が「そこ、代わりなさい」と言って提督に少し本気目に「何言ってんだお前」と言われていた時の話は機会があれば語ろう。

 

障害物の無くなった時津風はいの一番に部屋へと突入。

躊躇うことなく寝ている提督に抱き着く。普段、眠りの浅い提督も今日は父島を全力で島風と駆け回り、さすがに疲れたのか気が付かなかった。

 

「あ、ちょっと」

 

「あぁ体が勝手にぃー」

 

「あぁ私も勝手にぃー」

 

長波、天津風も部屋に突入。

 

「比叡さんも一緒に寝ましょう」

 

雪風に手を引かれ比叡も突入。

 

「ヒェェェー。お姉さまに殺されるぅぅ」

 

「比叡煩いよ。しれぇーが起きちゃうじゃん」

 

「ヒェッ」

 

駆逐艦に窘められる戦艦である。

寝る場所で揉めたが、最終的にじゃんけんで、何故か比叡も参加した。

雪風はどこでもいいと辞退したが…。

ちなみにこの中で一番早く眠ったのは比叡であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天一号作戦実施に伴い一部、作戦に口出すことに成功。

だけど油があればなって言われたので、取ってくることにする。

ソ連の南下に備えて北方派遣艦隊と沖縄への第二艦隊、自分の艦隊、油の備蓄を計算したら全然足りない。

いや、自分の艦隊は今の所金剛しかいないんだけど…。それでも足りない。

…マジでジリ貧だし。

準備期間が一月あるのが幸いか。策源地は未だに日本占領下だ。

シンガポールまで行ってヒ船団ホモ船団と合流して日本の門司を目指す。

修理が終わったばかりの阿賀野が使えるのは助かった。

行きは軽巡阿賀野、駆逐艦は長波と時津風、海防艦2隻、武尊丸と平波丸。

比較的高速なこの編成でシンガポールを目指し出発する。

 

ルートとしては門司→台湾→シンガポール→ニャンチャン→香港─台湾→門司という予定。

 

出航前に瑞鶴艦長だった同期が「あり得んだろっ」って詰め寄って来たけど、確かにあり得んよな。

ホモ船団って名前は無いと思うよ。

いやいや、それよりあり得んのは君が何故、青森じゃなくてここにいるのかという方が俺は気になったんだけど。

 

「…何で野元がここにいる」

 

「瑞鶴は俺が乗る。竹二に…そんな事はどうでもいい! 無謀だと言っている」

 

同期の人事局長の苦労が伺えますな。

 

「だが、やらねばなるまい」

 

その瑞鶴を動かす油だって厳しいんだからなぁ。

 

「死ぬ気か貴様っ!」

 

「…馬鹿言え。俺が死ぬわけなかろう」

 

多分、大丈夫。

 

「…必ず帰ってこい」

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

 

 

 

機雷封鎖された海域を突っ切ってまずは台湾を目指す。

途中で空襲が1度、潜水艦に4度も遭遇した。マジでアメさんの物量おかしい。

シンガポールに着いた頃には阿賀野の爆雷を使い切ってしまった。

海防艦が2隻とも大分酷くやられた。ここで戦線離脱だな。

後に推測できた事だがアメさんが台湾と門司間の往復だと読み違えたらしいことは幸運だった。

 

爆雷を海防艦から頂いてタンカー2隻に重油満載。ヒ船団と合流。

油の補充と整備等でちょっと手が空いたから長波と時津風に4日程交互に乗って近海の機雷掃除をして過ごす。

 

そしてまずはベトナムのニャンチャン。可愛い名前の港町を目指し、やっぱり潜水艦に2度も遭遇。

 

両方とも沈めたのだが、なんか阿賀野の乗員たちが、隠れて俺を拝んでくるようになった。

夕張の時の様に無茶な真似していないというのに…解せぬ。

ニャンチャンでホモ船団という嫌な名前の船団と合流し香港を目指す、

8隻の輸送船と駆逐艦、天津風、海防艦4隻加わり、

船団編成が阿賀野、長波、時津風、天津風、輸送船10隻、海防艦4隻となった。

しかしホモ船団…。

いや、分かっている香港→門司間から取っているのは。だがもっと他の無かったのかと問いたい。

香門船団とか…、よけいお下劣になったな…駄目か。

 

南シナ海の制空権は握られている。まぁ制海権もほぼ無いけど…。

だが、あえて南シナ海のど真ん中を突っ切る事にする。

どうにかアメさんの哨戒機コースの網を潜り抜けながらも、海南島の東300km地点で敵の哨戒機に発見される。

あ、これ史実だとヒ88船団に相当するのかと場違いな事を考えながら、

船団には気付かない振りをさせつつ、欲をかいて近づいて来たところを一斉射撃。

航路を北から東に変え、一気に台湾を目指す事に。艦隊速度が10ノットくらいだから冷や冷やものだ。

また潜水艦を発見しては沈めを繰り返し、潜水艦からの情報をシャットアウト。

撃ち落とした敵哨戒機が香港に向かっていると打電してくれたことで、こちらを見失ってくれることを願う。

 

まぁ無理でしたけど…。

 

台湾から南西200kmの位置で航空機に捕捉された。

煙幕張りまくりで史実よりは護衛の駆逐艦は対空戦能力が向上しているとは言え、輸送船の足は遅い。

輸送船10隻のうち3隻が沈没…クソッ。阿賀野とニャンチャンで合流した天津風だけ残し、残りを全速で台湾まで逃がす。もうちょい行けば台湾航空隊が出張ってくるはず。

対空戦闘を繰り広げながら救助活動を続ける。

 

マジで執拗に狙われ続ける。本当にマジで執拗に…。

本土に戻ってミック先生に聞いて知った事だけど俺が乗ってたかららしい。

いやまぁ囮という事なら正しいし、結果良かったんだけど作戦漏れてんじゃん…。

アメさんのぶっ殺したい奴ランキング1位のネームバリューがこんなところで役に立つとは思わんよね。

 

おかげで天津風での救助活動が捗ったけど。

 

「……」

 

阿賀野での居心地の悪さがマジでパナイ。おいおい、なんなんだ君ら拝むな拝むな。

呪詛でもかけているのか!

最近は隠れずに拝んでくる者まで出てきた。

 

なんなんだ君らちょっと本当に怖いからやめて?

 

台湾から門司までの間でやっぱり潜水艦一隻に遭遇。どんだけいるんだ潜水艦。

あぁ最大200隻くらいになったんだっけ?

 

…おい、だから拝むなお前ら。

 

アメさんマジ物量チート、陽炎型19姉妹に対してフレッチャー級は175姉妹とか絶望しか感じねぇ…。

 

全艦稼働できる訳ではないけど何でこんな国と戦争始めようと思いやがった。

まぁアメさんも日本がどっかで折れて頭下げると開戦前は思ってたんだろう。

 

だけど日本の大和民族というものを見誤っていたんだろうな。

マジでアジア人なんて言葉喋る猿くらいの感覚の奴が欧米諸国には一杯いた時代。

アメさんの対日分析官はこれ以上圧力かけると戦争になるって報告してた筈だけど、んな馬鹿な事あるか、と一蹴。

そらねぇ、経済的にもアメさんに依存してたもんねぇ、戦争するとは思わんよね。

まぁ我が国の国民性は平成の世なら理性的で穏やかであるのだけど、この頃の国民性って座して死を待つよりは一戦して散るのみ。

てな具合だもんなぁ。徳川時代は平和が続いたけどそれ以外はドロドロの内戦繰り広げてたんだから、基本戦闘民族なんだろう…。

で、身の丈に合わない相手に殴り掛かった。どっちが先に喧嘩を吹っ掛けたとか置いておく。

 

結局何がいいたいかというと、敵が多すぎて死にかけました。

 

修理したばかりの阿賀野が小破状態で帰投でーす。

 

潜水艦9隻撃沈、航空機十数機撃墜、味方輸送船3隻沈没。海防艦中破ないし小破3さらに2隻はシンガポールで離脱。

 

…輸送船が3隻も沈むという結果だクソッたれ。本当にすまん。許してくれとは言わない。

俺のせいだ…。恨んでくれて構わない。

ミック先生って優秀な存在が居てもこの有様だ。チクショウほんとに自分が嫌になる…。

 

それでも出撃分の石油は持って帰れた。これで軍令部も文句は言うまい。

 

 

と思ってたらあの仙人参謀めぇ…。

嫌味を言わないと気がすまんのか。

流石に温厚な長野さんもブチ切れちゃうよ?

 

 

 

帰ったら日記に文句書いてやるからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初に感じたのは暑さ。その次に体を覆う重さ。

夏の寝苦しさが、なんか変な夢を見させたのか。最後、仙人に抱き着かれたような…。

 

…悪夢やな。

 

「……」

 

てか、体中が重い。右を見る。

 

「…むにゃ…お姉様…カレー…むにゃ」

 

俺の腕を枕にして寝ているヒェー。

紺色のジャージ姿。半分隠れて見えないが左胸に金剛型2番艦 比叡 と恐らく刺繍が入ってる。

可笑しい…あんな夢見るなら普通は参加した駆逐艦娘がこの場所にいるべきだろ。

いやいやそもそも何でお前ここにいるねん?

あ、ゆきかじぇがヒェーに抱き着くように寝とる。小動物的でかわいいなヲイ。

 

「…れー…」

 

自分の体の上を見る。

 

俺の胸に頭を乗せ覆いかぶさるように眠る、

ダークブラウンの髪色をしたショートボブ。今は閉じられている瞳はブラウンの瞳。

肩位まであるもみあげ。側頭部からところどころ跳ねた、ふわっとした髪が伸びておりその毛先に行くに連れて

白くなりグラデーションがかかっている。イメージとしてはタレた犬の耳といった感じ。

本人の性格も相俟ってちょっとおバカな子犬の様な艦娘だ。

今は犬の着ぐるみの様なパジャマ姿だが、服装は雪風同様の大きめな白地に前止め式のセーラー服。

スカートは履いていない黒ストッキング。セーラー服の左端を裾結び そこからちらっと白い紐が見えてたりする。

この幼げな容姿で紐パンとか…アリだな。

また、首には鎖付きの小さな錨が掛けられており、それに首元の黄色いスカーフを巻きつけるようにして固定している。

まぁもっとも今は着ぐるみパジャマに身を包んでいるのだが…。その名を時津風という。

 

うん。重いし暑いし意味わからん。

 

「…い…んだ…か…ら」

 

今度は左を向く。

 

左腕を抱き枕にしている銀髪ロングのストレート。今はツーサイドアップは解いて吹き流しも付けていない。

閉じられている瞳は橙色。昼間は髪型のせいか猫っぽく見える。あぁ今もか。

今はダボダボな長袖の裾の長いTシャツを着ている。Tシャツには『Comfortable wind』とプリントされている多分。

昼間着ている制服は雪風の着ている制服の色違いというべきものに白の縁取りしたブラウン色のワンピースセーラー服。

この娘もスカート履いてない。ガーターベルトに白のラインが二本入ったニーソックスを着用している。

今は良い風Tシャツだけど…。天津風さんである。

 

さらにその天津風に抱き着く黒髪? いや桃色か? 

日の当たる方が黒で当たらない方が桃色という何とも不思議な配色の髪を腰まで伸ばした少女。

いつもは勝気そうに見える透明感ある琥珀色の瞳は閉じられている。

こうしてみると可愛い少女だ。…普段も可愛い少女か。

服装は夕雲型共通の白のブラウス。赤紫色のミニスカワンピース。

首元はエメラルドグリーンのリボンを結び、下は白いストッキング。

とは言え、今はピンクのパジャマ姿の長波。

 

本当に意味が分かりません。どうしてこうなってる? 

寝た時は確実に一人であった。ミック先生ー。

 

──ドアの前でピッキングしてましたので開けてあげました。

 

おいぃぃ! 良くないでしょうそういうの。軍の風紀的にもさ…。

 

──生理心理学の実験で人肌に包まれて眠ると安眠効果があると出ています。

 

お、おう…。包まれるって言っても限度あるよね!? 文字通り包まれてるよねコレ? 

めっちゃ暑いんですけど、そして重い。冬はともかく夏でこれで安眠できる奴の気が知れないね。

 

──勘違いしています。貴方ではなく駆逐艦達です。

 

…どういう事? いや、いい聞きたくないわ。

 

──貴方が居なくなってしまうのではないかと不安に感じているようです。

 

…朝起きたら夢だったってか? 使いまわされたお涙ちょうだい小説家かよ…。

やめてくれよ。聞きたくないって言ったじゃん。

彼女達の為に俺が出来る事なんてないんだよ…。そんな器も包容力も俺にはないんだからさ。

 

どれだけ殺して、どれだけ死なせて…もっとうまくやれた、もっとどうにかできた…。

そんな事ばっかり考えてる後向き野郎なんだぞ俺は。

 

──なら、貴方が望む世界に転生しますか?

 

…え?

 

──私の創造主と相談した結果、転生の権利をもう一度頂けるそうです。貴方の望む世界に…。

 

…ちょっと待って。それじゃあこの娘達はどうなる? この世界は? 妹は?

 

──すべて忘れて貴方が望む世界に。

 

そんなのアリかよ…。ふざけんなよ…。…それは駄目だろ。うまく言えないけど駄目だろ。

 

──この世界が苦痛なのでしょう?

 

そうだよ…。だけど、そんなの駄目だ。

 

あーくそっ! 何だよもう。意味わかんねぇクソッ!

あー分かってるよ。逃げちまえば楽だよな…。そんでもって俺の望む世界だ、ハーレムひゃほーいだってできる。

それがいい…。そうしてしまえ…。

 

でも…。

 

おい、いいのか俺よ? なぁ本当にその選択でマジで後悔しないな? 

今、俺はとんでも無く馬鹿な真似をしようとしているぞ? 本当にいいんだな俺?

 

あぁ我ながら本当に馬鹿だな…。

 

──どうされますか?

 

分かってて聞くんだもんな意地が悪いよなミック先生も…。

 

残るよ。この世界に…。

 

──本当にいいのですね?

 

本当に未練たらたらだけどな! 提督(笑)頑張ります。だバーロー。

 

──そうですか。では頑張ってください。私も24時間何時でも貴方のサポートを。

 

嘘つけ!都合悪いと取り込み中って言うくせに。

 

──大変遺憾に思います。

 

…後で頭百叩きしてやる。

 

──お好きなように。ちなみにさっきのは全部嘘です。

 

なんだと!? 一応聞くけど、どっから?

 

──貴方が望む世界に転生しますか? からです。

 

……。

 

──望むと言われたらどうしようかと思いました。創造主ともコンタクトは取れません。

 

あぁ…。

今見えないけど、妖精の方がドヤァ顔してるのが、ありありと思い浮かぶわ…。

マジでムカつく。

 

──貴方の葛藤する思考は滑稽でした。

 

マジでムカつく…。絶対叩く! 百回叩く! そして葱を取り上げる!

 

──訂正を求めます。九条ネギです。

 

やかましいわ! 

 

 




ご愛読ありがとうございました。(打ち切り感)











…嘘です。まだ続きます。


仙人参謀は誤字ではないです。念のため。
初風も島風も仲間はずれな訳ではないからね?念のため。
龍田もちゃんとあるからね?念のため。
むっちゃんとゆりえちゃんとの絡み?何それエロイ。念のため。
提督(笑)と問題と のあとがきでドゥーリトル参加艦に木曾が抜けてたキソー追加したキソー。念のため。

あと、第一次ソロモン海戦以降史実とは日付がズレていきます。

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