提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

32 / 87
めりー、くりす、ますー、ぅわぁ~~~い


提督(笑)と似た者同士

 

1942年  八月  トラック諸島

 

 

 

 

 

第一次ソロモン海戦は帝国海軍の完勝に終わったと言える。

これでガ島の飛行場を再奪還して、しばらくは優位に、そして立て直しをする時間が稼げたと思ったんだが、

ガ島に進攻したアメさんの海兵隊が予想外に粘っている。そろそろミッドウェー島攻略の為だった陸軍一木支隊がガ島に転用され上陸か。

しかし、流石に八月中に第二次ソロモン海戦は起きないだろう。

エンタープライズもワスプもいない。

ホーネットも中破だ。復帰までしばらくは掛かるはず…待て、ミッドウェー海戦から2カ月経っている。

そろそろ復帰してくるか…。

しかし、空母一隻で…あっ、レディーサラの存在忘れていた。

伊27号じゃなくて26号潜水艦に魚雷撃ち込まれるのは第二次ソロモンの後じゃねぇか!

そもそも、空母が居なけりゃソロモン方面で反攻作戦なんて実行しない。

一隻で来るという事は先ず無いだろうからホーネットも復帰を果たしているという事か。

 

ミック先生! 両空母はフィジー辺りに展開中か?

 

──肯定。ホーネットが2日前に合流しました

 

てことは、輸送船団ボコボコにした後の帰りに散発的に何機かの攻撃を受けただけっていうのは運が良かっただけか…。

もともと史実で日本が勝ってたから慢心してた、クソッ。

 

 

流石にレンジャーがこっち来ることは無いだろう。

トーチ作戦とかどうすんだって話になるしな。

となると、あとはロングアイランド級を入れれば機動部隊としての体は成せるか。

飛行場設営地にも念のため砲撃を加えておいた。

だから完成していない。ロングアイランドが飛行機輸送に使われることは無い。

クソッ! となると後4日で第二次ソロモンか? どうする考えろ何か良い手を…。

 

長官の短期決戦早期講和も切実に分かるし、井上さんの米豪遮断のガ島飛行場というのも分かる。

でも二人とも読み違えているんだ。

前者はもし仮にミッドウェー島を攻略できたとしてアメリカ国内の世論がそれを許すはずなく、後者はソロモン諸島の重要性をアメリカ側がもう少し軽視すると思ったんだろう。

史実を知っている俺だから言える事か…。結果は…まぁ、ギリギリのところでどうにか踏み止まれたという形か…? いや踏み止まれているのか?

ガ島じゃなくてどうせならポートモレスビー攻略をもう一度やってみるべきだった。

そうすりゃラバウルからの航空支援だってガ島よりはマシだ。いまさら言っても遅いか…。

しかし多聞丸にお願いして空母を失ったパイロット達をラバウルに転属させるのは止めてくれと言ったけど、これは正解だったのか?

あぁクソっ! 分んねぇ…。第二次ソロモンは最悪どうにかして乱入しないとな、それでも時間がないぞ…堂々巡りだな。

 

…一旦落ち着け。

 

整理しよう。

ガ島攻略の戦略的な意味は米豪の遮断にある。

 

何故そこまで遮断に拘るのかと言えば、コアラとカンガルーの国が物資面でアメさんを支援しているからである。

アメさんも自前で用意しようと思えばできるんだろうが、距離的に戦場に近い位置で補給が受けられた方が何かと便利だ。

中継地点があるのも助かるという事もあるが、連合国側はフィリピンへの侵攻ルートにニューギニアを抑えておきたい。

 

日本としては豪州には本土に引き籠っていて欲しいし、ニューギニアを抑えてフィリピンへの侵攻ルートを塞いでおきたい。

ここに来て豪州の対日戦術が防衛主体の消極的なものから反攻、いや、ニューギニアなんかを死守する構えへと変わってきている。

 

それを変えたのはコレヒドールから脱出したコーンパイプのダグおじさん。

やはりフィリピンに釘付けにしておくか、脱出する時にでも海の藻屑にするべきだったのか? 

しかし、戦後の事を考えると最悪の場合はなぁ、このおっさん以外がGHQ司令になった場合が全く読めない。

考えが纏まらんうちに脱出していた。

 

嘘か誠かは知らんが豪州は日本を過大評価しまくってオーストラリア大陸の北東部なんかは人口多いとこ以外切り捨てるつもりだったって話もある。

なら、豪州本土に艦砲射撃でもぶち込んだら、豪州の混乱に乗じて時間を稼げるんじゃないか?

上手くすればニューギニアからも豪州軍撤退…は、虫が良すぎるか…。

それでもコーンパイプのおっさんと豪州との間で対日戦略に隔たりを持たす事はできるのではないか。

となると比較的戦線が落ち着いている南西方面艦隊か。

これは井上さんに話してみよう。

長官も井上さんも今回は承認してくれる可能性が高いハズ。

言葉は悪いがアンタらの尻拭いしたんだ。俺にもちょっとやらせろってな具合なわけだから。

軍令部には…立案は井上さんがした事にして…。良し!

 

井上さーん。

 

ちょっと第二次ソロモン海戦とカンガルーとコアラを見に行きたいから、この作戦承認してちょうだーい。

 

ちょっ! なんだこのムキムキのカンガルーは!? 俺は井上さんに用があるんだ。どけぇ!

 

な、何をおっ立ててやがる!

 

こっちに来るな! やめろっ! やめろぉぉぉ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュッと言う風切り音の後にトンッと軽い音が響く。

 

残心を解き、的を見据える一人の女性。

 

短めの黒髪をサイドテールにして纏め、矢の刺さった的を見る瞳は冷徹。

弓道衣と青い袴スカートに身を包み、張り詰めた空気を作り出し、他者の介入を一切拒むといった雰囲気を持つ。

 

「…ふぅ」

 

彼女が息を吐いたと同時に空気が幾分和らいだ。

 

的には会心から僅かに横にずれた矢が刺さる。

今のはいけない。

五航戦の片割れが、これ見よがしに艦戦を自慢する顔が思い浮かんでしまったと、外面には出ないながらも反省する彼女。

正規空母の艦娘、加賀。

 

「加賀さん。またこんな時間まで訓練して…、いくら私達艦娘が強靭な体を持っているとはいっても、休息も大事ですよ」

 

そんな彼女に物怖じしない女性。加賀と同じ服装で色違いの赤い袴を模したスカートを履き、

此方は加賀とは逆におっとりとした雰囲気を醸し出す。

長くて艶のある髪を持つ女性。

 

「…赤城さん」

 

私怒ってますっという態度を出す赤城であるが、口元には餡子が付いている。

それを見て、加賀は

 

「すいません。…寝付けませんでした。もう少し射たら休みます」

 

と答え、ハンカチを取り出して、赤城の口元をやさしく拭う。

 

「…もぅ。仕方がないですね。加賀さんが無理しないように私がここで見ています」

 

羞恥を覚えたのか赤城は目線を逸らしながら答え、邪魔にならない位置で正座した。

それを見届けて加賀も矢を番えて構える。

 

 

心を無心にする前に加賀は色々な事を考えてしまう。大体は破天荒な一人の男の事。

 

 

男が艦長として着任して数日した頃。問題行動を起こした下士官がいた。

彼は最低限の人員を置いて、残りの乗員を士官も含め全て飛行甲板に集める。

 

「…全員で泳ぐぞ。飛び込め」

 

眉一つ動かすことなく淡々と告げる男に乗員は唖然とする。

 

一度目は渋々と従った。

 

二度目は文句を言った者から投げ飛ばされて強制的に泳がされた。

 

三度目で誰かが問題を起こすと遠泳が待っていると理解した。

 

「私を煩わせてくれるな」

 

言葉少なく誤解される不器用な人。

それでもどんな時でも慌てることなく、不動の心を持つ誰よりも強かった艦長だったその人。

 

 

「ラムネを持っていくべきだった…」

 

と沈みそうな零戦の上から引き上げた時に漏らし、乗員たちを大笑いさせた参謀だったその人。

あれは本気で言っていたと思うのだけど…。

そしてそのまま第二次攻撃隊と一緒にラムネを持って飛び立っていったその人。

「参謀とはなんだ…」と当時の艦長が漏らした言葉に艦橋には忍び笑いが響いていた。

 

 

「…たまたま通りかかった」

 

そして沈む事を覚悟したあの時、再び乗員たちを大笑いさせて勇気づけたあの人。

 

 

 

息を止めて的を見据える。

 

余分な力が消える。

 

視界が鮮明になる。

 

番えた矢が指から離れ、風切音共に的を目掛け進む。

 

トンッという音と共に矢が的の中心に刺さる。

 

「……。(やりました)」

 

「お見事です」

 

パチパチと拍手を送ってくれる赤城を見ながら加賀は思う。

 

もう二度と赤城さんを一人にしない。

この世界には、もうあの人はいないのだから、一航戦の誇りと先に逝かせてしまった赤城さんを今度は私が守らなくては。

鋼の精神を持ったあの人の様に…。

 

そんな風に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲板の火は消えた。後部に至近弾を受けた影響でスクリューも損傷して速力は低下したが航行可能。

敵は去った。憂いは無い。

 

「瑞鶴は本土に戻られよ」

 

与論島近海で合流した瑞鶴に大和の司令部はそう命令を下した。

矢は尽き、弓も折れかかっている空母に何が出来るというのか。

敵が退いたとはいえまだまだ予断を許さない時である。その判断はまさしく正しい。

 

「ふざけるなっ! 奴が血路を開き作戦を成功させた! 救助に向かわずに見捨てろというのか貴様らはっ!」

 

「野元司令…。なにも救助に向かわせないとは言っておりません。既に霞が…」

 

大和の艦長が自ら瑞鶴に赴き、一航戦の司令を説得しようと試みる。

尤も、空母一隻で航空戦隊とは笑わせてくれると皮肉っていた艦長である。

 

「話にならん! 一人でも俺は行くぞ! 抗命罪にしたければすればいいっ!」

 

「……」

 

「話は終わりだっ! 聞いたな貴様ら? 降りたい者は降りろと伝達しろ! ただしすぐ判断しろ」

 

艦橋に響く司令の怒声にそれまで沈黙を守っていた士官たちが動き出す。

それよりわずか30分足らずで瑞鶴は南進を開始する。

 

そして僅かに欠けた月の元に辿り着いた久高島西沖。

 

駆逐艦雪風と霞は懸命に救助活動を続けていた。長野率いる臨時艦隊は全滅。生き残っていた艦のうち第二艦隊併せこの二隻をおいて他にまともに動ける船は無く、

金剛の救援に向かった駆逐艦、時津風と時雨は沈み、浜風、磯風は久高島にて座礁着底した。

 

瑞鶴も搭載艇を全て出して救助活動に加わる。

浮いているだけで奇跡のような有様の艦や、煙を吐き続けて横転している艦。浮遊物にしがみ付き身を寄せ合っているもの。

 

「司令。米兵も助けるのですか?」

 

「…奴ならそうする」

 

そう問いかけて来た士官に静かに答える。

 

それから、どれくらいの時が経ったか。

東の空が明るくなってきた頃に憔悴しきった金剛の乗員を何名か救助し、真夏の太陽が真上に上る頃には救助活動は終了した。

 

雪風、霞と合流し生き残った金剛の士官たちと共に甲板の上まで人に溢れた瑞鶴の艦長室。

皆が疲労の色濃く、とても勝利したとは思えないほど空気は重かった。

 

「……」

 

金剛の主計長だった男に艦隊を率いていた男の最期の顛末を聞き終え、誰もが肩を震わせていた。

そんな中で一人の男が口を開く。

 

「奴の死は口外するな。いいか徹底的に秘匿しろ」

 

その言葉に誰も口を挟まない。

誰もが分かっていた。男の死で間違いなく海軍の…現場の人間たちは動揺するという事を。

 

「聯合艦隊司令部の連中にもだ。わかったな?」

 

無言で頷く士官たちを下がらせた後。

 

「…貴様は死なんと言ったではないか…馬鹿野郎め」

 

嗚咽交じりの罵声が力なく艦長室に響いていた。

 

 

 

 

 

「…かく…ず…く。瑞鶴」

 

肩を揺すられてぼやけた意識が浮上する。

未だに焦点の定まらない瞳は何時もの勝気さとは程遠く、ツインテールにしている黒髪は解かれ、一部が頬に汗で張り付いている。

 

昼間は巫女装束の様な弓道着を纏い、戦場の空を不利な状態からでも覆す歴戦の正規空母艦娘だが、今はどこか頼りなく見える。

 

「…翔鶴姉」

 

「起きた? 随分魘されていたみたいだけど大丈夫?」

 

そんな彼女を覗き込むのは琥珀色の瞳と長い銀髪を持ち、おっとりとした雰囲気を持つ女性である。

彼女も昼間は瑞鶴同様な服装に身を包み、深海棲艦と戦う正規空母の艦娘である。

 

「…あぁ…うん…大丈夫」

 

「…本当に?」

 

「大丈夫だって。ちょっと暑くて寝苦しかっただけだから」

 

そうして気丈に笑顔を姉に向ける。

 

「…そう。それなら良いのだけど…、瑞鶴、無理していない?」

 

今度は守るんだ…。翔鶴姉も…皆も私が必ず守って見せるんだから。

だから無理でもなんでも、自分に出来る事は、やれることは全部するんだ。

 

「無理なんてしてないって、翔鶴姉は心配性だなぁもう」

 

まずは大好きな姉を心配させないように…笑顔を作ろう。

 

夏が来た…。

 

私の嫌いな季節が…。

 

カーテンの隙間から覗く月を見ながら…。

 

そんな風に…。

 

 

 

 

 

 

ゆらりゆらりと覚束ない足取り、表情が抜け落ちた顔。胸中に渦巻くのは心無い言葉の数々。

 

「あの戦争狂の船か」

 

「命令に従わぬ問題児振りはあの男と一緒だな」

 

「貴様のようなものを指揮下におけるか死にたがりめっ」

 

月明かりの下、何処からか微かに聞こえる歌声に、フラフラと当てもなく歩いていた足を止めて耳を澄ます一人の女性。

 

「…この歌」

 

聞き覚えのあるその歌は艦時代…、嵐に突入する少し前の食堂。

士官も下士官も無く無礼講となって乗員達が騒いでいた時に聞いたもの。

 

肩を組み合い勇ましく軍歌を歌う者。昼間釣った魚に舌鼓をうち盃を交わす者。

腕相撲をしどちらが勝つか賭ける者達。

それぞれが皆、楽しそうに何かを忘れるように騒いでいた。

 

艦隊の各艦の艦長たちに囲まれて、いつもより険の取れた表情で喧騒を眺める男。

 

「おい、司令官殿。お前もここは戦意向上の為に何か披露したら如何だろうか?」

 

と敬意の感じられない容易い口調で提案する大淀の艦長だった男に、

 

「…生憎と私は何の取柄も無いのでね。君が代わりにやってくれたまえ」

 

と白々しく返す。

 

「いやいや、戦神と謳われる司令がやってこそ戦意向上に繋がるのです」

 

言葉の応酬に回りの者達は面白そうに見守っていた。

そこに主計長の男が口を挟む。

 

「司令。私は鳳翔の甲板で聞いた歌を今一度拝聴したく」

 

「…主計っ! 貴様っ! この裏切り者めっ!」

 

と珍しく声を上げた男。

 

「ほう。それはそれは…。俺も聞いてみたいですな。どう思いますかな、島崎艦長」

 

「自分も聞いてみたいですな、牟田口艦長」

 

「利(とし)、格(かく)、貴様ら…」

 

忌々しく睨む男に利と格と呼ばれた男たちはどこ吹く風のニヤリ顔。

駆逐艦の艦長たちも次々と声を上げ始め、追い込まれる。

男は最後の抵抗とばかりに、

 

「…ギ、ギターを弾きながらではないと歌えない。実に残念だ」

 

酒が入っていた為か珍しく顔に動揺が見て取れた。

 

「誰ぞ、ギターを持っている者はおらんか?」

 

逃げ道を塞ぎにかかる男たち。結局、誰かが持ち込んでいたギターを渡されて渋々と歌う事になった。

最後の最後まで女々しい歌だから戦意向上には繋がらないなどとごねていたが…。

 

いつの間にか止まっていた足が歌に導かれて再び歩み始めていた。

波止場に座り、月を見上げて歌う女性。

 

「…大和」

 

「…金剛さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろぉぉぉ!」

 

カンガルーッ! はっ!? …夢か。

 

恐ろしい夢だった…。

 

執務室に置かれたソファで寝てたようだ。

 

おかしいな…。

一日に2回も寝落ちする事なんてなかったのになぁ。

二つ一組のソファの間に置かれたローテーブルの上のコーヒーが完全に冷めている。

あぁせっかくの高級品がなんて勿体ない…。ん?

 

俺の体に乗る時津風。これはまぁいいとしよう。良くは無いんだけどね…。

しかしよく起きなかったなこの娘。

 

「魘されてたみたいだけど大丈夫なの?」

 

そして対になっているソファにツチノコがおる。

若干、のけ反った姿勢なのは俺が叫んだせいか?

 

「…初風か。見苦しいところを見せた」

 

驚かせたよね。ゴメンよ。

 

「…別に」

 

あら、クールね。

髪は水色のセミロング、毛先を切りそろえたぱっつんな髪型。瞳の色は翡翠色である。

今はナイトキャップとTシャツに短パン姿だが、Tシャツにヒャッハーって書かれてるけど、それは君の趣味なん?

何気にちょっと俺もほしいのだけど、それ。

昼間の服装は陽炎型の基本型というべきか、白のカッターシャツ。その上に黒っぽいブレザーベスト、

首元には黄色いリボン。

下もブレザーと同じ黒色のミニスカートにベルトを二重に巻き、白のハイソックス&ローファーという出で立ち。

陽炎型の7番艦の艦娘さんだ。

 

ところで、こんな時間にっていうかもう空が明るくなり始めてるか…。

 

「どうかしたのか?」

 

「ちょっと早く起きてしまっただけよ。時津風も見当たらなかったし、どっか変なところで寝てるんじゃないかと思って探してみたのよ。そしたら…」

 

トッキーは俺の上です。何だ俺が変な奴とでもいうのか? 心外な。

 

──事案発生ですね。憲兵を呼びますか?

 

止めてください。てか、ちょっと黙っててくれる?

 

──かしこまりました。

 

「…そうか」

 

さて、じぃーっと見つめられると照れるのだけど。

 

「…信頼されてるのね」

 

「信頼…か」

 

確かに懐かれているのは分かるんだ。これは信頼なのか。

かつて無謀な作戦で艦隊を全滅させた俺に。時津風をはじめ彼女達が慕ってくれる態度をひどく重荷に感じる事がある。

まぁ、それも受け止めにゃならんと心新たにしたわけだけど。

 

「…嬉しそうじゃないのね」

 

「……」

 

「私もあの戦いでアナタが居れば皆と同じような態度をとってたのかしら」

 

ブーゲンビル島沖海戦か。

その時、俺は本土に出頭させられてたからなぁ…。会議が開かれるからついでにってなんだよ。

それにおそらく、あの場にいたとしても第二襲撃部隊の司令は兎も角、第一襲撃部隊の司令とは折り合いがつかなかっただろうからなぁ。

今更考えても仕方がない事。

あと、皆と同じような態度されると常識人枠が居なくなる可能性があるのでやめて欲しい。

 

「そうなったら誰がこいつ等を止めるんだ?」

 

相変わらず俺の上で熟睡している時津風を見ながら答える。

 

「ふふふ、それもそうね」

 

お、ツチノコが笑いおった。これは珍しい。

 

「…何よ?」

 

「そういう顔も出来るのだな。君から少しは信頼されたのか」

 

「…知らない」

 

あらま、顔を背けちゃって可愛い反応。

やはり胃袋を掴む(朝食的な意味で)事、即ち餌付けによる作戦の効果は抜群だな。

 

「しれー、よくない。よくないなー。あたしを置いて楽しそうにするのはよくないな~」

 

「…起きたのか」

 

「じゃ、私は戻るわね」

 

「そうか。ならこれも連れていけ」

 

そろそろ俺の上からどいてください。暑いです。そして鋼の理性が崩壊しちゃうかもしれんから。

…下半身的な意味で!

 

──憲兵さんこの人です!

 

だからまだ何もしてないだろうが!

 

「あたしをこれ扱いとかよくないなー」

 

おいやめろ! 擽るなっ! ちょっマジで! おふぅっ!

 

「頑張ってね」

 

待って! 初風さんこの娘さんも連れてってーーー! いやぁはふんっ!

 

 




本作では12月24日が終戦記念日となっております。
英霊を追悼する日です。性なる夜とかほざいている非国民はどこですか? 

さほど重要じゃない補足

感想にありましたが、提督に喧嘩売ったパイロットのうち一人は志賀氏の設定です。
最後の戦いは瑞鶴にも載って奮戦していたようです。

機上無線は近距離無線なのでせいぜい1から2kmくらいの性能です。
追いかけられている苺餃子にある程度、近づいて掠めるように飛び去って行ったので
ワイルドキャットがそちらに向かったという感じになったのでちゃんと援護してます。

あと苺餃子がエースコンバットやってた時、それを見てたのは米軍側だけ、まだこの時は誰が乗っていたかも不明。戦後、あのイカレたパイロットは誰だとなり、「エェ…」となった模様。


本文で4日後に第二次ソロモンと言ってますが、4日後には起こりません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。