提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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更新をお待ちだった方、大変お待たせしました。

あとあけましておめでとうございます。


本編2、外伝3本更新しとります。


提督(笑)と混沌と

夜、月明かりの下、波の音が静かに響き渡り、波止場に寄り添う二人の乙女は幻想的で、

浮世離れしたその姿を眺めるものがいたとしたなら息を飲むほどの物だろう。

 

片や巫女の様な装束に身に包む金剛型一番艦の金剛。

もう一人は大日本帝国が生んだ世界最大最強を誇った戦艦、大和。

 

艦娘という依り代を得た姿は、

膝くらいまである焦げ茶色の髪をポニーテールにまとめ、瞳の色も茶色。

首元に艦首を意識した首輪のような金属輪を着け、服装は、上体のラインにフィットした前留め式の紅白のセーラー服で、肩部分は露出し、脇の下で七部袖に繋がっている。

胸元にはスカーフではなく金の注連縄が巻かれ、左腕にはZ旗を模した腕章が着けられている。

下は紅色のミニスカート。両腰の部分が露出しており、黒紐パンの紐のようなものが見える。

足には左右非対称の紺の靴下を履いており、右は普通の、左はニーソックスで外側面に「非理法権天」の文字が書かれる。

どこか日本神話の女神を思わせる。

それが大和という艦娘である。

 

二人は月が浮かぶ海原を静かに見つめる。

 

そうして幾分かの時を刻んで口を開いたのは大和である。

 

「…金剛さんは、こんな夜更けにどうしたんですか?」

 

「ちょっと眠れなかったネ。大和こそ、どうしたんデスカ?」

 

「私もです」

 

「…そう」

 

会話は途切れ、再び波音だけの静寂が訪れる。

幾分かの時を再び刻み、口を開いたのは金剛からであった。

 

「…大和は何のために戦うノー?」

 

愁いを帯びた声に何かを感じ取った大和は、ゆっくりと言葉を選んで月を見上げる。

 

「…護る為、でしょうか。護る為に私達は生まれてきたのではないでしょうか…。

私はずっと守られてきましたから今度は全力で使命を全うしたいです」

 

艦時代は戦場に出ても戦域の後方。物見遊山しに来ているのか、と皮肉られ、

最期の戦いでさえ、主砲を撃つ事無く終るのかと思えば、金剛を始めとする臨時艦隊に守られて、守られ続けてようやく艦隊決戦を行えて、作戦は成功したものの自分を守った者達は悉く沈んでいった。

大和の胸中は後ろめたさと後悔、無力感が占めていた。

だからこそ、艦娘という姿を得た今は、全力で国を、民を、誰かを護りたいと願う。

 

「…そう。大和は強いですネ。…ワタシはもう分からないヨ」

 

「…金剛さん」

 

「…戦って戦って戦い抜いテ皆を護ッテ、テートクとヴァルハラに…。だけどドーシテ私だけ戻ってくるデスカ? テートクと約束したんダヨゥ。一緒に逝くって約束したんだヨ。この国にテートクはいないし冷たいヨー。どーして? おかしいデス。ワタシは何の為に戦えばいいノ? もうわからないデス。テートクに逢いたいヨ」

 

膝を抱え込む金剛。大和に涙を見せぬようにしたのは最年長戦艦としてのせめてもの意地か。

それは彼女にしか知ることの出来ないもの。

 

「そんな事ないです! ちゃんと長野提督に感謝している人も大勢います。艦娘の皆だって金剛さんを頼りにしてるんです。…そんな悲しい事言わないでください」

 

どんな時であろうと、たとえ相手が上官であろうとも大和の知る限り何者に対しても自分の信念を貫いていた男が、「…この国は守る価値があるのか」と鳳翔の甲板で憂いの表情を一度だけ見せたあの時と、今の金剛の姿が被って見えてしまう。

とてつもなく不安ばかりが募る大和。

 

「……」

 

「…金剛さん」

 

「sorry。ちょっと感傷的になったデース。みっともないところ見せたネー。今夜の事は忘れてくれると嬉しいヨ」

 

「あっ、はい。もう忘れてしまいました」

 

「Thanks大和 それじゃgoodnight」

 

微笑みを浮かべる金剛に一抹の不安を覚える大和。

 

大和を背に歩きはじめる金剛。

 

「あとは大和たちに任せるデース」

 

呟く言の葉は誰に聞かれる事も無く夜の闇に溶ける。

 

「いいですよねテートク? ワタシはテートクに逢いに行くネ。テートクは優しいから許してくれるヨネ?」

 

誰に聞かれる事も無く、運命の羅針盤は回り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   苺入り餃子さんが入室しました。

 

お徳用瑞雲:お、おおお!?

 

雷電☆命 :餃子ktkr(*´▽`*)

 

ライバック:どもどもはじめまして

 

アァーー!:アァーーーーーッ!

 

苺入り餃子:どうも、はじめまして

 

 

 

 

 

 

待って。色々待って。南鳥島攻略に当たり、俺が赴任する前から父島と連携しつつ近海の哨戒活動をしているのが転移組の提督の一人って事が判明した。

その人は硫黄島にいるらしいので今回の作戦時、父島居残り組と共に哨戒活動の協力を要請しようと思ってこのチャットルームに来たのだけど。

チャットルームのアドレスは硫黄島から父島方面へと哨戒していた艦娘さんが、うちの警備府の艦娘さんにメモで渡してくれたもの。

そのメモを渡されたのがツチノコこと初風さんで、そう説明をしてくれた。

 

いや、まぁそんな事はこの際どうでもいい。ハンドルネームおかしくね?

俺一切設定してないよ?

 

──ドヤァ

 

お前の仕業か!? 机の上で九条ネギ振り回している妖精さんにチョップする。

 

「提督、急にどうしたんですか? 駄目ですよ、叩いたら可哀そうじゃないですか」

 

メロンちゃんは本日の秘書艦。

大淀さんが働きすぎっぽいので遂に秘書艦交代制が採用されました。

 

「ソウダソウダ」

 

コンニャロー! てかメロンちゃん何で隣座ってんの? 秘書艦用の机そっちにあるでしょ?

 

「何故、夕張は隣にいるのか?」

 

「パソコン使うんですよね? 提督はまだ初心者ですよね? ブラインドタッチとかできます? 代わりに私がやっちゃいますよ?」

 

「大丈夫だ。戻りなさい」

 

「ブゥーッ! 提督は最近、駆逐艦の娘達ばかり構ってズルいです。私も構ってくださいよー」

 

子供か己は!?

 

近いねん距離感が。駆逐艦はギリ耐えられるんだ、一部ちょっと危ないけど…。

だがそれ以上は駄目だ。

特に鹿島とか小悪魔とか有明の女帝とか、結局、全部鹿島じゃねぇか!

兎に角メロンもダメなんだよ。おかしいじゃん? 毎日警備府の工廠につなぎ姿で籠もってるにもかかわらず、何で甘い匂いがすんねん! 

ドキがムネムネしちゃうだろ。

メロンちゃんが本当にメロン並の物を持ってたら今頃、襲い掛かっていたかもしれない。

駆逐艦以外で大丈夫なのはヒェーと龍田さん。

ヒェーはどういう訳かゆきかじぇとかトッキーとかと同じ感覚なのは何故なのか?

龍田さんは指揮下に入りたいって真剣に言ってこられたからバッチコイとパルッ〇をなでなでして以降、ちょっと怖い。

やり過ぎたかもしれない。すっごい距離感を大事にしているから大丈夫なだけだけど。

 

そういや中二病の天龍ちゃんはいつの間にか指揮下に入ってたな。

 

──頭部の艤装をいやらしく撫でまわしてましたが?

 

あっ、そんな事もあったねぇ。あれは悲しい事故だった。

手が勝手に動いてしまうという、とても悲しい事故だったのだ。

 

「おい、夕張」

 

「ブゥー」

 

頬を膨らませたって可愛くなんて…、可愛くなんて…、チクショウ可愛いなヲイ!

 

「ぶふぅるるっ!?」

 

思わず、両頬を突いてしまった。

頬っぺたプニプニやな。

 

「ひょっ!?」

 

おお意外と伸びる。

 

「わぁいふうんえうか(なにするんですか)」

 

え、何だって?

 

──上官の権力を傘に部下にセクハラを強いる下種の極み。

 

おいぃ!? なんてこと言うんだね君は!

思わず、両手あげて痴漢しませんアピールしてしまったではないか。

 

「……」

 

あぁメロンちゃんメッチャ睨んでる。

頬が赤くなっちゃってる。ゴメンよメロンちゃん

 

「…許せメロ…夕張」

 

「今、メロンて言おうとした!?」

 

「…そんな事…ない」

 

「なんで目を逸らすんですか!?」

 

そ、逸らしてないし…。

 

「……」

 

「ちょっ、無視しないでくださいよー」

 

アーアー聞こえないたっら聞こえなーい。

 

 

 

 

 

 

お徳用瑞雲:あれ、反応ないな?

 

雷電☆命 :まさかの一言で寝落ち!?

 

ライバック:あーもしかしたら、俺のせいかも?

 

アァーー!:ふむ、というと?

 

ライバック:秘密

 

 

 

 

 

 

チャットが些か不穏なんだけど…?

 

──ハッキングしようとしていますのでその都度撃退してます。

 

マジでか!? 狙いは何だ? お宝画像なんて入ってないぞ?

とりあえず、止めてくれと頼んでみよう。

それとミック先生、このハンドルネーム変えられんの?

 

──何か問題でも?

 

あぁうぜぇ。この情報なんちゃらうぜぇ。もういいや苺入り餃子で…めんどくさいし。

 

 

 

 

 

 

苺入り餃子:どなたか存じませんが、侵入するの止めていただけますか?

 

雷電☆命 :おいぃライバック!

 

お徳用瑞雲:何してんだお前っっ!

 

アァーー!:合意なしでそれはいかんぞ

 

ライバック:てへぺろ(?´?`?)ごめんよ。ちょっと腕試ししたかっただけだから悪意は本当にないから許して

 

苺入り餃子:はぁ。

 

 

 

 

 

 

ミック先生。大丈夫?

 

──ハッキング停止しました。必ず阻止しますのでご安心を。

 

うい。宜しく頼むわ。

 

「提督、それってチャットですか?」

 

「そうだな」

 

「相手はどなたなんでしょう?」

 

今度の作戦実行に当たってだね、硫黄島の提督さんと協力したいってか、

硫黄島父島間の防衛ラインを今まで通り協力よろしくみたいな挨拶かな。

父島が手薄になる時にこちらの防衛もちょっと協力してくれると嬉しいみたいな感じか。

 

「いよいよ提督の伝説が始まるわけですね!」

 

作戦にあたって誰が参加するのか編成を本人たちの意思を確認しながらになるから、

全員が嫌だって言えば別の手を考えなくちゃならんのだけど。

そしたら、伝説どころじゃないんだけど…。てか、伝説作るつもりも無いんだけど…。

 

「腕が鳴りますね!」

 

あぁうん。メロンちゃんはやる気十分なんだ。

じゃ、作戦概要カッコカリ見てていいから大人しくしてて。ものの数分で読み終わると思うけど…。

 

 

 

 

 

 

 

雷電☆命 :じゃあ色々あったけど自己紹介でもしとく?

 

お徳用瑞雲:だな

 

アァーー!:じゃあまずは私からしよう。硫黄島で提督をやっている、ここの皆からはホモと呼ばれている。よろしく頼む

 

ライバック:次俺ね、呉所属。最強のコック目指して日夜、料理研究してる。よろしくー

 

雷電☆命 :私はしゅくもうわんで駆逐艦愛でてる。よろしく(*´▽`*)

 

お徳用瑞雲:↑宿毛湾(すくもわん)な。俺は単冠湾所属。

 

苺入り餃子:先日、父島警備府所属になりました。宜しくお願いします。

 

雷電☆命 :餃子ちゃんは固いなー。ところで餃子ちゃんは女の子かな?

 

苺入り餃子:男です。

 

雷電☆命 :くっ、髪は死んだ。

 

ライバック:また髪の話してる…。

 

 

 

 

なんか濃ゆいなこの人たち。

その後、何度も話が脱線しながら、お互いこの世界に来るまでに何してたとか、自分の指揮下にいる艦娘さんの話とかになったりしたんだけど、硫黄島にいるホモに協力を取り付けるに至った。

 

徳田君が何時だったか言ってたっけ。まともなのが居ないとか。

 

うん、本当だね。久しぶりに肉体とは違う疲れかたしたわ…。

彼らの事を簡単にまとめるとだ、

 

お徳用瑞雲

ツッコミ役で一番まともに思える人。単冠湾所属。

転移前は地方公務員だそうな。

 

指揮下の艦娘

戦艦(伊勢、日向)軽巡(多摩)第21駆逐隊(初春、子日、若葉、初霜)

 

 

雷電☆命

アホの子で駆逐艦prpr宿毛湾所属。

転移前は大学生。コスプレイヤーもやってたとか。

 

指揮下の艦娘

第6駆逐隊(暁、響、雷、電)

 

 

ライバック

料理人?濃いけどちょっとキャラ分からん。電脳に強い。呉所属。

転移前はシステムエンジニア。ブラック過ぎる会社から解放されて今は生き生き。

 

指揮下の艦娘

戦艦(長門)重巡(青葉)軽巡(名取)第5駆逐隊(朝風、春風、松風、旗風)

 

 

アァーー!

優秀だがホモだ。硫黄島所属。

転移前は出版関係、だがホモだ。

 

指揮下の艦娘

軽空母(千歳、千代田)重巡(高雄、愛宕)第30駆逐隊(睦月、如月、弥生、望月、卯月)

 

宝の持ち腐れ艦隊とはライバック氏の言葉。

他にも一時的に預かっている艦娘さんが居るとのこと。ちょっと前まで大和が居たんだとか。

大和は誰かの指揮下に入りたいんだそうだが、適合する提督が居ないようで、このホモも戦艦特性あるけど大和を指揮下におけるキャパは無かったということらしい。

 

 

という感じになる。

 

深く椅子に腰掛けて目頭をもむ。

 

「提督」

 

「なんだ?」

 

顔を呼ばれた方に向ければ、真剣な目で俺を見つめるメロンちゃん。

 

「毒されちゃ駄目ですよ」

 

「毒される…か」

 

まぁ濃ゆいかったものね。

しかしだ、今日は初対面という事もあり、終始ですます口調でチャットしてたけど、本来は俺は彼ら側の人間。

だから毒されては駄目という言葉はもう遅い。遅すぎるのだ。

それにメロンちゃんだってどっちかというと彼らの持つ趣味とか近いんじゃないかと思うのだけど。

 

「伝説の釣り師メーロンって一体何なんですか!? 全然可愛くないじゃないっ! なんか色黒の逞しい男の人っぽい!」

 

うちの所属艦娘さん達を紹介した時に誰かがそんな事言ってたね。

パンパンと執務机を叩くメーロン。

 

「落ち着け、メ…夕張」

 

「提督っ」

 

おい服を掴むな。そしてシェイクしないで。

 

「そんなにメロンが嫌いなのか?」

 

「メロンは甘くて好きです。だけどそうじゃなくて…なんというか…」

 

言葉を巡らせ胸元を見るメロンちゃん。

いいじゃないか夕張メロンは甘くて美味しいだろ。

 

「夕張は美味しいだろ」

 

「え?」

 

「…なんだ?」

 

「いや…え? 美味しいか…どうかは…その、提督次第じゃないですかね…」

 

いやいや、前世と変わらない味なら俺は好きだぞ。

 

「俺は好きだぞ」

 

「……っあ」

 

そうだ、今度夕張メロンを取り寄せられたらみんなで食べようじゃないか。

 

「今度、夕張を食べよう」

 

「え? ええええええええええ!?」

 

何だそんなに楽しみなのか。

 

「楽しみだな?」

 

取り寄せできたらいいよねぇ。

 

「うわああああああああああああああ」

 

あれ、どうしたんだいメロンちゃん。

執務室から出て行ってしまったけど…。

 

まぁいいか、残った仕事片しながら待つとしよう。

 

その日、メロンちゃんは執務室に戻ってこなかった。




餃子は刺されればいいと思うの。

ちょいとネット環境がないところに暫くいたので更新できませんでした。
ごめんなさいね。


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