提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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提督(笑)の戦いはこれからだ

深海棲艦勢力下の赤い海に突入して何度かの戦闘を終えた所。

長波は前方を悠々と行く平波を見ながら考えていた。

 

「なぁ雪風」

 

「なんでしょう?」

 

僚艦になっている艦娘へと問いかける。

現在、長野艦隊は艦娘16人という事で4人で一分艦隊として4つに分け、三分艦隊哨戒、一分艦隊を待機休息としている。

もともと深海棲艦勢力下に入るまでは一分艦隊で哨戒を行っていたのだが、深海棲艦側の攻勢圧力が増して、今の状態になっている。

 

「提督って変わってるよなぁ」

 

「雪風もそう思います。しれぇは凄いです」

 

魚雷が流れていこうが、敵航空機から狙われようが自身の提督は慌てず騒がず指示を出し続ける。

何度も魚雷を避け、航空機を落とし続けている。

 

シーワックス平波の武装に関して説明すると、艦前方に127mm単装速射砲1基、後部に20mm連装機銃1基(妖精さん用)である。

あとはレーダーとソナーと言ったものと対魚雷デコイ。劣化イージス艦のような艦である。

現代の兵器が深海棲艦に効かないとされているが、厳密に言えば微々たる効果はある。

深海棲艦航空機であれば撃ち落とすことは可能である。本土が保たれているのはこの影響が大きい。

また、魚雷に関してもデコイは効果を発揮する。

ただし、リンクシステム、イージスシステムと言ったものは全く役に立たない。

つまり長波たちの提督は手動で迫りくる深海棲艦航空機を撃墜していることになる。

 

 

「そりゃそうなんだけどさ…」

 

敵の攻撃が平波に向かったことを謝れば「気にするな。誰か被弾した者は?」とこちらを心配する始末。

出撃する少し前の指揮下の前で漏らした言葉は…。

自称、自分は情けない人間だと言っていたあの言葉は何だったのかと考えてしまう。

 

提督としてはこれ程頼りになる者はいないと思えるのだが、何かが長波には引っかかっている。

 

「パパ見てた? 島風の速さ」

 

『…警戒していなさい』

 

無邪気に通信で呼びかける島風にパパと呼ばれることに若干の戸惑いを見せてはいたが、今ではいつも通りの口調で返す提督。

もっとも提督の慌てる姿というのも想像しがたいものがある。

そんな提督に何が引っかかるのか。

 

「…長波さん」

 

「あん?」

 

「心配事があるなら話してください」

 

「う~ん? 心配事って言うんじゃなくてな。何か引っかかるっていうかさ」

 

長波は自身がはっきりと把握していない引っ掛かりを拙いながら雪風へと説明をする。

 

「ほんと、うまく言えないんだけどさ」

 

頭を掻きながら唸る長波の言葉を雪風は考え始め、自身の首にかかる双眼鏡を手に取る。

艦時代に色々と見て来たものが蘇る。

楽しかった思い出も辛かった思い出も…。

自身が何も出来ずに仲間の沈む姿を何度も焼き付けて、それでも絶望しなかったのは南方では必ずしれぇがどうにかしてくれていたから。

ずっとずっとそうやって誰かを守って助けて…、最期は…。

 

…あぁ、そういうことなんだ。

 

長波の引っ掛かりというのに雪風は気が付いた。

主要な海戦に何度も参加したからこそ気が付いてしまったのかもしれない。

 

「…長波さん」

 

「うぇ!? ど、どうした! どっか被弾したか!?」

 

泣きそうな顔で呼びかけて来る雪風にギョッとする長波。

 

「しれぇは…壊れちゃってます」

 

「うぇ!? ちょ、ちょっと待て。ゆっくり分かるように説明しろよ。ほら、深呼吸しろ」

 

長波が宥め、雪風はそれに従う。そして自身の考えをポツリポツリと話し始める。

 

「しれぇは最期の戦いで金剛さんと沈んだと思ったら、この時代にいつの間にか居たって言ってました」

 

「そうだな」

 

「しれぇはあの時のままです」

 

「…あぁ。そういう事…か」

 

その言葉だけで長波は自身が何に引っ掛かっていたのか理解をした。

 

 

提督は護国の鬼となり、国を救おうとした。

そこに自身を顧みるという余地はなく、常に戦いに身を投じ続け、戦果を上げていた。

きっとあの出撃前に言った事、それは提督の本音だったのだろうと。

だけど、悩み悔やんだのは仲間の死で、情けない男と言ったのは自身の指揮下で死んでいった者達に対しての自責の念で、決して自分が死ぬことが怖いからという訳では無い。

 

 

提督は自分の命っていうものは全く考慮していないんだ。

考えてみたら当たり前の事だった。

 

この作戦だってもともとおかしかった。

だが、あのふざけた作戦書のせいで注意が逸れた。

もしかしたら、あれがもっと固い文章で色々書かれていたら誰かが止めていたかもしれない。

 

「ったく、戦は上手くても生き方が下手なんだから。…何としても提督を守って、帰ったら説教だな」

 

「しれぇは聞いてくれるでしょうか」

 

普段はアホっぽいのにやはり歴戦艦だなと思い直す長波。

雪風は決して幸運だけで生き残った艦ではないのだ。

 

「上官に噛み付くのは提督の十八番だろ? ならあたし等がやったっていいさ。もし聞かなかったらそれじゃあ軍令部と同じじゃないかって言ってやりゃいい」

 

「…波平さん」

 

「おいっ!? 今、わざと間違えたろ! こっち見ろ雪風」

 

吹けない口笛を吹いて明後日の方向を向く雪風である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少しだけ遡る。

 

呉鎮守府 ライバック執務室内

 

 

苛立った様子の自身の配下の艦娘、長門を見ながら後上雷蔵ことライバックは何度目かの溜息をついた。

 

「ちょっとは落ち着いたらどう?」

 

「落ち着いていられるかっ! 提督、私を出撃させろっ」

 

「出撃させてあげたいのは山々なんだけど、うちの子達は青葉以外船団護衛の遠征中でしょ? 他の提督達にも掛け合ったけど何処もうちと同じような感じで人手不足」

 

一部は非協力的だし…。という言葉は飲み込んだ。

それでも榛名と浦風がすぐに追いかけて行ったから、どっかで追い付ければ最悪の事態だけは避けられるのではないか。楽観的過ぎは良くないとは思うけど。

 

「青葉と二人でというのは認められないからね。 あと数時間でうちの子達が戻って来るから…ってこれ何度目だ?」

 

同じようなやり取りをかれこれ数回は行っている。

そしてまたライバックはため息をつくのである。

 

豊後水道(四国と九州の間)を抜けて、沖縄方面へと季節柄も考慮して網を張ったのだが、それはハズレた。

金剛は紀伊水道を超えて東に向かっているところまでは把握できている。

沖縄には正規空母艦娘が張り付いているから、哨戒網を抜ける手間を嫌ったのか。

本人にしかわからない事だが、激情に身を任せているとは言え、意外と考えなしで動いているという訳でもなさそうだ。

 

「硫黄島のホモ…本多提督に頼んだってこれも何度も言っているか」

 

長門を落ち着かせるためにも何か違う話題をと考えるライバックは

 

「そういえば、良い知らせがどうとか言ってたけど、それなんなの?」

 

「…ふぅ。今度、長野提督の特集番組をやるそうだ。…あの日に合わせてな。だいぶ肯定的なものになるそうだから、金剛にも少しは慰めになると思ったのだが…こんな事態だ」

 

「それ隠す様な事なの?」

 

「…陸奥にそう言われたのだ。あとは父島にいる比叡に必ず会いに行けとも言っていたが…。まぁ偶には妹に顔を見せてやれという事だろう。尤ももう会えな…いや、そんな事は起こさせんぞ」

 

クリスマス前とか夏になるとその手の番組は結構やってたけどね…前の世界だと。

だけどこの世界で? この時期にやることはまぁ間違ってないだろうけど…。

何故だ? ちょっとホモに通信繋いでみようかと考えた所で、通信端末に着信の文字が入る。

 

「はいはい」

 

『落ち着いてる場合かっ!』

 

「いや、いきなりなんなのさ?」

 

通信相手は星崎美琴こと雷電☆命である。

 

『…ぐぬぬ。さっき白露型のわんこちゃん達がうちの鎮守府着いてさぁ、つい金剛ちゃんの事話してしまって…』

 

「みなまで言うな。頭が痛くなってきた。このアホッ!」

 

『…ごめんなさい』

 

こめかみを抑えて天井を仰ぐ。

 

「…あれ、補給はどうした?」

 

『その辺は駆逐艦を愛でる者として抜かりなく』

 

「そうじゃねぇよアホッ! いや、良かったのか? あぁもうっ! とりあえずホモに伝えるっ!」

 

『…それはもう伝えた。超グサグサくる言葉で責められましたとも…。それであとはライバックの指示を仰げって』

 

「…大人しくしておいて」

 

そうして通信を切り、今度はホモへと通信するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽空母龍驤は海を滑り、頻りに自身の艦載機を発着艦させていた。

 

「ほな、いっといでぇ」

 

その龍驤に同伴するのは、

 

「ったく。ほんとにどいつもこいつも」

 

灰色の髪を右側に流したサイドテールは青緑色のリボンに結わえられ、

毛先の方は少し青みを帯びている。

勝気そうな瞳はオレンジと黄色の中間といった不思議な色彩。

白いシャツの上に紺色のジャンパースカート。首元には赤い紐リボンという出で立ちの艦娘。

朝潮型駆逐艦9番艦の霞(かすみ)。

 

「もぅまたそんな事言ってぇ」

 

それに答えるのは膝まである銀色の髪をもつ少女。

その髪を淡黄色のリボンで後ろで二房にくくっている。そしてアホ毛が一本。

前髪は顔にかかるくらい長く、特に右のもみあげの辺りは先を切りそろえた状態で胸元くらいまで伸びている。

また、長波と同様に髪の内側の色が異なり、深青色になっている不思議な髪質でもある。

瞳は薄い茶色。

服装は夕雲型共通の白いブラウスと赤紫のワンピーススカート。

夕雲型20姉妹の19番目清霜(きよしも)である。

 

史実においては清霜が末妹であるが、この世界においては20番艦の妙風が就航しており、彼女が末妹である。

 

彼女たちは硫黄島より北上している、

龍驤が艦載機を繰り出して空から暴走した金剛を探し、その龍驤の護衛として二人が、という具合である。

 

『時雨、夕立も金剛を追った様だ。追加で二人も見つけてくれ』

 

「…次から次へと厄介な注文やね」

 

硫黄島にいる提督の一人から通信が入り、それに答える龍驤。

 

『きっと君はそういう星の下に生まれたのだろう。諦めたまえ』

 

「…あかん。否定できへん自分が辛いわ…」

 

そう答えながらも龍驤は目を瞑り集中している。

艦載機や水上機を運用できる艦娘達はそれらに乗る妖精さん達と意思疎通を交わせるだけではなく、視覚情報を得ることが出来る。

つまり遠く離れた艦載機から見える景色を意識して集中すれば見れるのだ。

 

「ん? あぁ輸送船かー。護衛は特Ⅱ型(綾波型)4人…って、こら関係あらへんな」

 

一瞬、彼女達にも今回の事を伝えた方がいいのか考えたが、進路からするともうすぐ父島か母島あたりに辿り着きそうな辺りである。

時雨や夕立のようになられても困ると思い止めた。

 

「なぁ、父島の提督はどないしたん?」

 

そして気になった事をホモへと通信をつなげて聞いてみた。

 

『哨戒活動の一環として深海棲艦勢力下の海がどうなっているか見に行った。

通信を試みているのだが赤い海に入ったのか、それに近い海域のようで繋がらない』

 

「父島の留守番は?」

 

『全員引き連れていったよ。今現在、父島に艦娘はいない。しばらくそちら側の面倒も頼みたかったんだが…、さてどうしたものか。

一応聞くが、君は分身出来たりしないだろうか?』

 

「できるかっ!」

 

龍驤は何だかとんでもない貧乏くじを引かされた気分になるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉さん事件です。深海棲艦勢力下の海はとても赤いです。

そしてなんか嫌な感じがするところです。

 

常時、薄い雲が空を覆い、ミノ粉でもばら撒かれてるのか、GPS機能はダウンし、無線とかの通信機能も軒並み低下。

艦の搭載レーダー(妖精さん印)が頼りの状態。

まぁだから何だって話なのだけれども。

戦術リンクシステムってなんぞや?の時代で戦ってきた身としてはねぇ…。

ミック先生も敵探知距離は大幅に下がっているようだけど、行動見てると余裕そう。

 

現代兵器が効かないとされている深海棲艦も航空機…あれを航空機と呼んでいいのかは知らんが、アレなら落とせる。

たこ焼き型だと一発じゃ落ちない場合もあるそうだが、それでも落ちる。大戦時と違って自分で操作できる分、楽だしな。

平波の武装の単装三擦り半砲が火を噴きまくっているぜ。

 

──正気を疑うネーミングセンスです。

 

サーセン。

 

しかし、なんか集中的に狙われている様な気がする、

やっぱり大きいから目立つからなぁ。

 

『パパ見てた? 島風の速さ』

 

島風から無線。

 

すまぬ。飛んでくる奴倒すので手一杯でそんな暇なかった。

 

「…警戒していなさい」

 

それより警戒はしててね念のために。怪我でもされたら困るから。

 

この赤い海に入ってくる前は皆、自由にやっておった。

とりあえず、平波を4マンセルで守りましょうって大淀さんの提案受けて了承して、

まぁそんなかで皆フリーダムにやるもんだから、ちょっと燃料と弾薬…はほとんど使わなかったか。

直ぐに交代するし、意味も無く激しい機動するし、とにかく燃料が予定より食いそうな勢いだったから止めさせて、4つに班分けして護衛時間をきちんと設定した。

 

班分けは

 

第一班 夕張 磯風 浜風 谷風

 

第二班 鳳翔 鹿島 飛叡 龍田

 

第三班 天龍 初風 天津風 時津風

 

第四班 大淀 雪風 長波 島風 

 

理由は特にない。

そして今はこのうちの3つが周りを警戒しつつ迎撃。一つが半休息待機という状態。

深海棲艦勢力下はやっぱり敵が多くなって、1つの班だけじゃ対応しきれない事が分かった。

予定では昨日のうちに南鳥島ついている筈なのにまだ200海里向こうだ。そして日が暮れ始めている。

余裕を持ってきたとはいえ燃料と弾薬の消耗が多いしそろそろ潮時かもな。

何故だか知らんが攻勢圧力が大分減って来たけど罠の可能性もあるわけだから。

 

おやぁ? ソナーに今反応出たか?

 

 

──30海里前方深度200にてロシア海軍籍941アクーラ型原子力潜水艦が徘徊しています。

 

アクーラってNATO呼びだとタイフーン型だっけか。

って、おいっ! 知ってたなら教えてよっ!

 

──深海棲艦勢力下では私の能力も低下しています。ちなみに深海棲艦潜水艦ソ級及びヨ級に囲まれつつあるようです。

 

一体何がしたいんだ?

 

──現在、断片的な情報しか収集できませんが、戦術核を使用し深海棲艦を一網打尽にする任務をアクーラ級は受けているようです。

 

大陸間弾道ミサイルを使わないって言うのはバレたら国際世論的に大変だからか。

だからわざわざ射程の短い戦術核持って深海棲艦勢力下まで出張ってきたわけね。

って目標が南鳥島の場合、何時でも打てる距離じゃないか!? あぁでも深度200mじゃ無理か。

海面近くまで上がらないと駄目だったよな確か。

 

となると浮上してくる前に叩くか? 

 

一応警告しておくか…。

理由はどうする? 排他的経済水域だって徘徊してるだけじゃ罪にはならんわけだし。

 

ミック先生。ここでアクーラ級沈めてしまったとしてロシアにバレると思う?

 

──可能性は極めて低いと思われます。

 

それなら、とりあえず警告して爆雷ぶち込んでやろう。

 

「これより無線の出力を上げる。無線の感度に気を付けるように」

 

ロシア語って発音がむずかしいんだよなぁ

 

「Скажите Россия национальность подводная лодка──(ロシア国籍潜水艦に告げる──)」

 

──あっ、ソ級に齧られています。

 

え?

 

──船体が逆さまになり沈んでいってます。

 

「……」

 

そっと無線の出力戻して。

 

『提督、どうかされましたか?』

 

お艦の声が無線越しに聞こえる。

 

「なんでもない。気にするな」

 

『…そうですか? あの提督。少し気になる事があるのですが…』

 

「なんだ?」

 

『艦戦が一機多いんです。何かご存知でしょうか?』

 

「…それは何も問題ない。気にしなくていい」

 

『…はぁ』

 

お艦が無線越しに訝しんだ声を上げてるけど、気にしなくていいんだ。

 

──私からもいいですか?

 

なんだよ?

 

──両翼と尾翼に九条ネギを描きました。

 

あぁ、そう。

 

──機体色と同化して見えません。

 

…凄くどうでもいいです。

 

もう何か疲れた。帰ろうか。

 

『提督。微弱ですが友軍の救難信号を受信しました』

 

あぁ大淀さん、そうですか…。

 

 

姉さん今夜は長い夜になりそうです。

前世も前々世も含めて姉は居たことないけど…。

 

 

 

 

 




おまけ

図鑑説明 夕張 (苺味)

コンパクトボディに充実の重武装を施した実験艦的存在の軽巡、夕張です。
私の残したデータが、様々な重武装最新鋭艦開発の元になったんだから!
ミッドウェー、ソロモンと結構活躍したのよ。
潜水艦を釣り上げた? 仕方ないじゃない、爆雷持ってなかったんだから。




潜水艦一本釣りは六水戦の生き残り戦友会あたりで語り草になってたんじゃない?
だけど、到底信じらんないからういっきーさんでは、んなことあるかいな扱い



外伝の方でイージス艦『こんごう』が『金剛』表記になっているのは仕様です。
何人かの読者さんに誤字報告を頂いておりましたのでここに書かせて頂いておきます。
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