提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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提督(笑)と駆逐艦

長野壱業

 

長野 壱業(ながの かずなり 1898年(明治31年)5月○日 - 1945年(昭和20年)8月19日)は、

日本の海軍軍人。海軍兵学校44期生。最終階級は海軍少将。

1945年に坊ノ岬沖海戦にて戦死。

 

概要

 

日本海軍きってのチート・オブ・チート。

アメリカ海軍がもっとも恐れた男の二つ名が映画の影響で有名。

写真(40代の頃)を見ての通り若かった頃はイケメソと推測される。(外部リンク)

あとすごい金持ちだった。現、世界に名立たる長野グループの礎を作った人でもある。

 

 

○扱い辛い士官代表

 

ミッドウェー海戦に猛反対して第四艦隊に左遷。

ドゥーリトル空襲を読んで敵空母を沈めた実績がなかったら首が物理的に飛んでたかもしれない。

それぐらいに痛烈に軍令部を批判した。

一緒に飛ばされた上官に代わり艦隊指揮を執っていた。基本的に第四艦隊は南洋諸島付近の警備が任務なのだが、舵が効かなかった、たまたま通りがかった、輸送任務の途中と言い訳してミッドウェー海戦に参戦している。

 

○潜水艦は必ず沈める慈悲はない。

 

当時日米ともに対潜ソナーはさほど性能が良くなかったにも関わらず、

この人の指揮下では敵潜水艦の多くが沈められている。

 

○軍艦の性能と数が、戦力の決定的差でない事を教えてやる。

 

ミッドウェー以降大規模な南方海戦のほとんどに参加している。

そして味方を逃がすためにだいたい殿を務めて生還している。

 

○デュエルしろよ

 

坊ノ岬沖海戦では戦艦大和率いる艦隊を囮として敵の目を欺き、

別動隊を率いて台風とともに敵艦隊に突っ込んで強制的に艦隊決戦を強いた。

後に最強の寄せ集め艦隊といわれる。

 

最期の戦では戦艦でドリフトしたという逸話も残っている。

 

 

 

なんぞこれ?

 

 

ウィッキーさん見るのが怖いからニヤニヤ大百科のほうを流し読みしたわけだが、ユーリエさんの端末借りて。

現在、車で横須賀へ移動中です。昨日は実家で過ごし今日は妹との別れを惜しみつつ横須賀へ。もうすぐ着くらしいよ。

出てくるときにいつかもらったお守りを妹にまた渡された、物持ちのいいことだ。

 

運転席の運転手さんとルームミラー越しに時々、目が合う。

 

「そっちじゃなくて、こちらのサイトのほうが詳しく載ってますよ」

 

俺の持つ端末を覗き込むように体を密着させて端末を操作する彼女。距離感近すぎてドギマギして、俺の単装砲が暴発してまうやろ。

 

「いや、もういい」

 

やっぱり見なければよかった。ちょっと言いたい事とか山程あるけど、とりあえず、そんな大した人物じゃないのよ俺。

ミック先生と歴史のカンニングでやってただけだから、他の誰かが俺と同じ立場ならこれくらいできたと思うよ本当に。

 

あと別に大和を囮にしてないし! 第二艦隊が沖縄に突っ込むっていうから、ならうちはうちでやらせてもらいますって。

一緒に死んでもいいよって人たち募って出撃したんだし。八雲も出撃したいって言ったが俺と同じ年齢くらいの更年期船は流石にお断りした。

 

「少佐、随分と短期間で仲良くなられたようで」

 

運転手さんが暫く振りに声を発した。

 

「別に…そんなことないと思うのだけど。ほら、こちらの世界の事を詳しく説明しないといけないじゃない」

 

「……」

 

あ、どうも長野 業和(ながの なりかず)です。カズナリではなくてナリカズです。

混乱を招かないために壱業ではなくて普通の転移者として現れたことにするらしいよ。

たまたま姓が一緒ということで長野家に転移したという設定にして。

まぁ、何でもいいんだけどね。昨日の夜に話し合った結果です。

本当は名前ももっと別のにしたかったんだけど、某暴れん坊な八代将軍が江戸の町で身分を偽って名乗っていた旗本三男坊の名前は速攻で却下された。…解せぬ。

名前に関しては文乃が大分ごねた。業の字は長野の家の男児の伝統で誉でうんたらかんたら…。

 

それで、業和です。これギョウワが転じて餃子とかのあだ名になりそうでちょっと嫌なんだけど…。

私の名前、漢字で書けます? 長野餃子 ぶー違います! ご当地グルメかっ!

 

二人の会話をよそに脳内で一人アブゥごっこをして外の風景を眺める。

 

「…あれ、リニアか」

 

道路の上を走る高架上を物凄いスピードで抜けていった鼻の長い流線型の車両。

もしや、少し技術がこの世界進んでいるのか?

 

「…やはり凄い」

 

「なんだ?」

 

何か言った? てか運転手さんとの会話終ってたんだ。

 

「いえ、何でも。もう直ぐ到着しますよ」

 

「そうか」

 

しかし、とっても眠いです。一晩中、艦歴はともかくとして艦娘の顔と名前を覚えさせられた。彼女の真剣さに、いや知ってますからとも言えずに。

まぁ久しぶりにみる艦これキャラにワクテカしていたからさほど苦にはならなかったけどさ。

問題なのは日本の経済状態から外交、関係各国の状況、今の政治形態といった現代に関する知識。六法全書を持ち出された時は泣きそうになった。

呼ばれた連中の世界の事も聞かされてたけど、まぁ知ってるし途中からも微睡んでいたのは内緒だ。

 

少しうとうとしていたら目的地に到着した。

 

車を降りて、目の前のレンガ調の建物を見上げる。

未だに名称は横須賀鎮守府か…。

本来、日米の軍港として機能していたはずだけど、むかし、クルージングツアーで米軍の空母が停泊していたのを見たなぁと感慨にひたっていれば、

 

「なんでよ! 私が最後まで面倒見るわよ」

 

「いや、おまえはお前の仕事があるだろうが!」

 

どうやらお出迎えに来てくれたらしい軍服を着た若目のお兄さんと運転手さんがお困りのご様子。

ユーリエさんがお兄さんに掴みかからんばかりに詰め寄っている。

 

「この石頭!」

 

「帰れ馬鹿!」

 

そして罵り合いが始まった。

 

「またか」

 

「…また?」

 

俺の隣で困り顔の運転手さんは、ぼつりと呟く。

 

「え、ああ。すいません。聞かなかったことに」

 

えぇ…気になるじゃん。

 

「……」

 

無言で運転手さんに視線アタック。決してそっちの気はないからな。

そして根負けして話してくれた。

 

二人は士官学校同期で、其の頃からよくあった光景らしい。

お互いが優秀で何かとライバル視してぶつかり合うというか、意見の相違とか、性格の不一致とかまぁ、そんな感じ。

 

で、俺を江田島まで送り届ける気満々だったのにお兄さんがその役を担うので噛み付いているんだと。

 

「喧嘩するほど…ともいいますからね」

 

「なるほど」

 

「それでは私はこれで」

 

いつまでも終わる様子のない二人を見て運転手さんが車に乗って逃走した。

 

「テイトクガ チャクニン シマシタ」

 

うお! ビックリした。

 

いつの間にか肩の上に小型犬ほどの女の子。

 

妖精さん、まじ妖精さんだし。

知的好奇心を刺激されてプニプニした頬を突っついていたら、指を掴まれて齧られたでござる。

 

「痛いのだが…」

 

ポケットから飴ちゃん取り出してそっと差し出すと指を開放され、貪るように飴ちゃんに夢中になられた。

見送りの時に妹からもらった飴ちゃんが無ければ長官みたいになるとこだったな。

指に歯形がついとるし…。

 

「ふーむ」

 

しかし、見れば見るほど謎生物である。ゲームでは艦娘を作ったり、艤装を作ったりする存在なのだが…果たしてこの世界での立ち位置は…。

いや、艦これ自体ふわっとしたバックグラウンドで艦娘を愛で、突っついてセクハラし、罵倒されるゲームなんだ深く考えたら負けかもしれない。

 

「オカワリ ト グシンスル」

 

「遠慮ねぇな」

 

と言いつつお代わりに応える。可愛ければ何でもいいよな。という結論にここに至レリ。

 

そんな世界の真理にたどり着いていたら罵り合いが終わった二人がこちらに目を向けた。

 

どした? 鳩が超電磁砲食らったような顔して。

 

「「「……」」」

 

三者無言。

 

「…なるほど。貴様、自分の派閥に取り込むつもりだな」

 

「はあ!? 何訳の分からないこと言ってんのよっ!」

 

お兄さんが再起動を果たし訳の分からないことを言った。

 

「ピクシーとの親和性があるという事は乙種以上の適性だ。甲種でなくとも工廠で働かせれば効率は大幅に上がる…。

どうやって見抜いた? これは隠すことは許されんぞ?」

 

「ああっもう! 勝手に深読みすんな! そんな便利な方法あったらとっくに実践してるわよ! 私だって驚いてるんだから…」

 

「……本当に知らなかったのか?」

 

「アンタ頭良いけど馬鹿よね」

 

「…ぬかせ」

 

いやいや、ちょっとお二人さん本人置いてきぼりなんですけど!?

 

「すまない。驚かせてしまったようだな。私は日本国海軍少佐、徳田宗義(とくだ むねよし)。

君を江田島の海軍学校まで案内する。短い間だがよろしく頼む。長野、彼にどこまで説明した?」

 

おい、まてなんだその名前!

 

「一通り全部」

 

「全部?」

 

「そう、全部よ」

 

何か問題でも? と言いそうな顔だ。可愛いけどさ…。

 

「一日、いや揺らぎを観測した時間からして…半日か一晩でか?」

 

「そうよ? 現在日本の置かれた状況、経済状態から軍事関係、何から何まで全部よ」

 

どや顔だ。

 

「はぁ…。災難だったな君。えっと…」

 

「長野餃子」

 

「「は?」」

 

「ギョウザウマー」

 

あ、違った。

 

「長野業和(ながの なりかず)」

 

「お。おう。…ん、長野? なりかず?」

 

「そう、長野。大方妖精さんが似た名前だから長野本家に呼んだんでしょ」

 

徳田君、困惑気味だ。

 

「いや、しかし」

 

「スゴイ ギョウザヨンダ ホメルガヨイゾ」

 

「…そうなのか。いや彼ら…彼女らの考えや行動は理解不能だ…そんなことも…いや、しかし…」

 

深みに嵌ったようにブツブツと言い出して自分の世界に入り浸ってしまった。

 

「彼は大丈夫か?」

 

そして何気に俺を餃子呼ばわりする妖精さんも大丈夫なのか…。

 

「はい、何時もの事なので。勝手に深読みして自滅するタイプです。」

 

ああ頭良すぎて色々考え過ぎちゃうタイプね。策士、策に溺れて河童に助けられるも一緒に川下りって奴。

そういえば、聞き忘れたけどなんで海路なんだろうか?

さっき見たリニアとか使ったほうが早いんでね?

 

「今更だが…何故、船なんだい?」

 

「ああ、そうですね。その説明してませんでした。ごめんなさい。」

 

そういって頭を下げるユーリエちゃん。そんなに改まらないでほしいのだけど…。

 

「いや、いいから」

 

「はい。では、説明させて頂きますと、我々の敵は深海棲艦だけでは無いのです。特殊な能力を持つ人材はどこの国もほしい」

 

ああ、なるほど。つまり拉致ってことね。

 

で、人の少ない海路の方が警備もしやすい、他国に奪われ脅威になるよりは深海棲艦にやられてしまった方がマシか。

いつの時代も、いやこんな世界だからこそか…使える者はなんでも欲しい…か。

 

「ご推察の通りかと」

 

ちょっと声出してないよ! 読心術でももってるのアータ!?

 

「「……」」

 

見つめあう二人。おっさんは驚愕で固まっているだけなのだけど、彼女はにこにこしてる。

 

え、何、他国の間者より目の前のこの娘が怖いんだけど!

 

「おほん」

 

誰かの咳払いで体の硬直が解けた。ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪い癖が出た。少し考え過ぎて、周りが見えていなかった。

気が付いたら目の前の二人が見つめ合っている。長野のお嬢様がこんなに男に関心を寄せていたことがあっただろうか?

少なくとも海軍士官学校時代は無かった。

 

見つめるその男に対する感情は何だ? 恋慕の想いか、尊敬の眼差しか、どんな感情かはわからない。

 

それでもマイナスな感情ではない事だけはわかる。

 

このまま黙っているわけにもいかず白々しいとは自分でも思いつつ目の前で見つめ合う二人に咳払いをしてこちら意識を向けさせる。

 

 

「まぁ、その一気に詰め込まれても覚えきれなかっただろう。何か気になることがあったら船の上で聞いてくれ」

 

「…ああ」

 

そこらにいる若者の恰好をする目の前の男。年齢は20そこそこといった感じだが、こちらの世界に渡って来た者は皆、

この男のような年齢に見える状態で渡ってくる。見た目に騙されてはいけない。

が、前回と前々回は最悪だった。前回の奴は教育課程で逃げ出し今は政府の監視下、日々無為に過ごしている。

前々回は駆逐艦に言い寄って重体になった。かといってそんな奴らだけではなく性格に難があるが優秀な奴もいる。

 

アタリとハズレの差が大きすぎる。

 

この男は一体どっちなんだろう。

長野のお嬢様が気にかける男だ、きっとこの男何か持っているに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妙に熱い視線を感じながら船上の人になりました。

 

夕方出港し、もうすぐお昼です。結局一睡もできなかった。

船は小型の客船で後部が貨物タイプ恐らく100トンクラス。

で客室も何室かあるにもかかわらず何故か同室で徳田君がずっと見つめてきて、非常にお尻が心配でした。

ユーリエちゃんが許可をもぎ取ってくれた兼光が手放せません。

 

眠い、非常に眠い。でも徳田君が怖い。ということで眠気覚ましに潮風を浴びに甲板に出てます。

 

右舷前方と左舷前方に洋上を走る人影が見える。恐らく護衛の艦娘です。

 

波飛沫が邪魔なのと遠いのでよく見えない。小さいから駆逐艦だと思われ、もっと近くにおいでよ!

俺に姿を愛でさせておくれ。

 

 

あ、前方に発砲した。

 

 

ターンしてこっち来た。アルェェ!? 彼女たちの間を抜けこちらに向かってくる黒光りする物体。

 

クジラのようなフォルムだけどお目目が怪しく光っているじゃない? 歯をむき出した大きな口。

 

イ級!? いやロ級かもしれないけど!

 

けたたましく船のサイレンが鳴り、取り舵が切られる。右舷側にいた俺は咄嗟に何かを掴んだのだけど、掴んだのは船の縁ではなくて兼光だった。

そうであれば当然、船の外へ投げ出されるわけで、

 

 

 

イ級の頭に刀ぶっさしてる。柄を掴んで必死に振り落とされないように……ロデオかっ!

 

 

ヘイ! そこの駆逐艦の娘さんたちはよ助けておくれ!

 

 

…どうしてこうなった!?

 




艦娘より先にイ級に邂逅

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