提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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しばし、お話は亀進行となります。

何ぃ!? そんなの許せん! 
って方はYOU、自分で好きなように書いちゃいなYO!

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は実在名称等ありますが、実在のものとは関係ありません。

いつも感想、評価、誤字修正、報告をくれる方々、本当にありがとうございます。


2017 5 17 広島焼き→広島風 に修正。

広島焼きって広島風お好み焼きだと思っておりました。
伏してお詫び申し上げます。


提督(笑)と爆弾

安物のパイプ椅子に座り、折り畳み机でノートパソコンを開き、キーボードを叩き続ける提督。

その頭では時津風が顔を乗せ「ぬぼぉー」と意味のない言葉を発している。

眠そうな瞳とは裏腹に、身動きする提督の頭の上という不安定な場所であっても、勝手知ったる提督の頭の上。

絶妙なバランス感覚を発揮して全く危なげなく過ごしている。

 

その様子をキラキラとした瞳で見つめる夕立。

言葉を出さずとも「代わって代わって」と見える筈のない尻尾を振り回して提督の前でソワソワしている。

相方の時雨もすまし顔で傷みの激しいソファに腰掛けているが、提督がパソコンから視線を上げて周りを見るたび、忙しなく髪でできた触角がピコピコと跳ねている。

 

床の上で提督に這い寄る金剛とその腰に抱き着く比叡。

その様子をどうしたものかと思案に耽る榛名と浦風。

 

初風は我関せずで、時雨の隣で乾燥昆布をチビチビと齧っている。

提督の両隣に座るのは天津風と雪風で天津風はタブレットと睨めっこしている。

ちなみに爆弾処理のゲームをしている。さらに余談だが、過去にそのゲームで徹夜した男が隣にいる。

そしてハイスコアを各種難易度で更新したが、雪風にことごとく塗り替えられて以来、そのゲームをすることは無くなった。

 

そんな混沌とした雰囲気を醸し出す空間で本日の秘書艦である雪風は業務日誌を書いている。

業務日誌と大層な名前の割には学校の日直の書くそれに近い。というかそれそのものである。

提督が、駆逐艦達では秘書艦の仕事が難しかろうと考えて、苦肉の策で作ったものである。

その日のスケジュール表を提督から渡され、それを日誌に書き写す。

そして今日あった出来事や感想を書き、提督がそれに対して一言添えるという形だ。

いつの間にか駆逐艦以外にも広まって今日に至っているが、艦娘達にとっては提督の一言がささやかな楽しみでもある。

 

南鳥島でサバイバル生活をせざるを得ない今でも。

 

 

雪風の丸みを帯びた字で書かれたのは本日の業務日誌の内容。

本日のスケジュールは口頭で言い渡された。

 

 

七月○×日 晴れ

 

 

本日の予定

 

てんりゅう いそかぜ はまかぜ たにかぜ しまかぜ 1700まで見張り。

 

たつた、ゆうばり、かしま、ながなみ 1700より見張り。それまで休息。

 

ほうしょう ごはん。

 

ていとく ほうこくしょを書く 魚とり。

 

おおよど ほさ

 

ほか、たいき。

 

 

備考

 

しれぇの乗った平波さんの頭がお亡くなりになった時はしんぱいしました。

皆もしんぱいしました。ムリしてはダメだと思いました。

 

 

 

 

業務日誌を書き終えた雪風は、今度は私物の日記を開きパラパラとめくる。

 

 

○がつ×にち はれ

 

ゆきかぜは かんむす になりました。

ながとさんが、にっきちょうをくれました。

がんばって にっき かきます。

 

 

○がつ△日 はれ

 

きょうは、はつかぜちゃんとあえました。

それと、ときつかぜちゃんがけんぞうされました。

またおふたりにあえてうれしかったです。

 

 

○月××日 あめ

 

あまつかぜちゃんがやってきました。

だい十六くちくたいけっせいです、

とってもうれしいです。

 

 

×月○日 はれ

 

みんなでえんしゅう。

つかれたけど楽しかったです。

 

 

 

 

×月△△日 晴れ

 

明日はかいぐん学校でながのしれぇにあえます。

かんむすのみんながおしよせるって、てんりゅうさんがいってました。

会えるのが楽しみです。

 

 

×月□□日 くもり

 

しれぇじゃなかったです。

ときつかぜちゃんがとっても怒ってしまい色んなものをこわしちゃいました。

ゆきかぜも悲しかったです。

 

 

×月□○日 雨

 

十六くちく隊のみんなとてんりゅうさん、たつたさんで父じまにいどうになりました。

 

 

 

 

×△月○日 雨

 

ながなみさんがやって来ました。

ながのしれぇの事を悪く言われて人間さんをなぐってしまったと言っていました。

ゆきかぜもむねがチクチクします。

 

 

×△月〇〇日 晴れ

 

たつたあげ美味しかったです。

 

 

□月×日 晴れ

 

島風ちゃんがやって来ました。

とても速いです。

 

 

 

 

 

□□月○日 くもり

 

深海せいかんがたくさん攻めてきました。

みんなで頑張ってぼうえい成功です。

てんりゅうさんとたつたさんがいっぱいケガをしてしまいました。

こんなケガ大したことないっててんりゅうさんは笑ってました。

すごいです。

 

 

□□月△日 かたい

 

カンパンはパサパサします。

ときつかぜちゃんがパッサパサって変な歌を作ってました。

 

 

□□月△△日 雨

 

父島にしれぇがやって来ました。

かんむすはだれも付いて来てないみたいです。

少しさびしいです。でも、しれぇがやさしい人だといいなと思いました。

 

 

□□月□△日 晴れ

 

天津風ちゃんが新しいしれぇ(しれぇじゃないけど)から逃げ回ってます。

さわられるのが嫌みたいです。雪風も少し嫌です。

 

 

□□月□□日 くもり

 

しれぇは帰っていきました。

ちょっとホッとしました。

 

 

□□月□×日 晴れ

 

新しいしれぇがやって来ました。

 

 

□□月□○日 くもり

 

しれぇは帰ってしまいました。

 

 

 

 

 

△月○日 晴れ

 

さいきん、このままだとダメな気がします。

みんな元気にふるまっていますが、さびしそうです。

 

 

△月×日 晴れ

 

島風ちゃんに相談しました。

競争させられました。追い付けませんでした。

 

 

△月△日 晴れ

 

時津風ちゃんに相談しました。

しれーなんていらないいらないって言われました。

 

 

△月□日 晴れ

 

天津風ちゃんに相談しました。

どうでもいいわよって言われました。

 

 

△月〇〇日 くもり

 

天りゅうさんに相談してみました。

しんぱいするなって悲しそうに笑ってました。

 

 

△月○×日 雨

 

たつ田さんにも相談してみました。

大丈夫よって悲しそうに笑ってました。

 

 

△月○△日 雨

 

長波さんにも相談してみました。

空が青いなぁって悲しそうに笑ってました。

今日は雨がふっているのに長波さんはふしぎです。

 

 

△月○□日 くもり

 

けっきょく、どうすればいいか雪風には分かりません。

このままだとダメなのに分かりません。

どうしたらいいんでしょう。

 

 

 

 

 

6月○○日 晴れ

 

しれぇが着任しました。

アメをくれました。美味しかったです。

長波さんは笑って泣いてました。

 

 

そこまで日記を捲ったところで雪風は司令を見る。

あの日から今日までの色々な事を思い出す。

 

提督着任初日の一堂に会する夕食の席で時津風が大泣きして司令に飛び付いたこと。

天津風が司令の背中に縋りついて泣いていたこと。

島風が司令をパパと呼んで夕張が悔しがっていたこと。

鳳翔の作った夕食が今まで食べた中で一番美味しかったこと。

 

日記を捲りながら、思い出せば楽しいものばかり。

 

朝食を作る提督を見ているのが嬉しいことと美味しいこと。

時津風が提督の頭によじ登るようになったこと。

それが羨ましかったので自分もやってみたこと。

 

自分ばかりでは無く、皆も楽しそうだったこと。

 

本人は否定しながらも天龍が朝嬉しそうに畑仕事に出ていく姿。

「提督、私が朝食の手伝いに行くとお昼の献立は必ず竜田揚げにするのよねぇ~」と笑って話してくれた龍田。

時津風は提督にくっ付いているだけで幸せそうな笑顔を浮かべる。

「べ、べつに羨ましくなんかないんだから」といってそっぽを向いた天津風に司令の頭の上を貸してあげたら、「ま、まぁまぁね」と照れていたこと。

長波は司令と「ん」「ん」だけで会話して凄いと思ったこと。

島風は手を繋いで司令と島中を駆けまわったことを楽しそうに話していたこと。

ツチノコを動物図鑑で調べていた初風。

「載ってないじゃない」って呟いたのを聞いた鹿島が絵を描いてくれて微妙な顔をしていたこと。

 

そして司令と一緒にやってきた新しい仲間たちのこと。

 

とても美味しいご飯を作ってくれる鳳翔。

比叡が「ヒェェー」とよく叫んでいること。

夕張が「アンカー部にトゲトゲつけたいなぁ。あとバーニアも…ってこれじゃハイパーハンマーじゃない!」と訳の分からないものを楽しそうに作ろうとして大淀に怒られていること。

その大淀が執務室から出てくると壁に頭を預けて「くふふ」と変な笑い声をあげているのをよく見たこと。

鹿島もクネクネしているところをよく見ること。

 

そして艦時代何かと縁のあった十七駆逐隊の面々。

磯風は司令に「構え」と言って三つ編みにされていた。それを自慢してくるのが少し面倒くさいと思ったこと。

浜風の胸が柔らかいこと。

谷風にシンパシーを感じること。

 

 

日記を閉じて再び、提督を見る雪風。

そして今、雪風は不安に思う。

 

司令の戦い方、皆を見る時に悲しそうに映るように思える瞳。

今までも時々、そのように感じる事があったが、雪風の瞳には今は以前より強くそう映る。

 

「しれー終った?」

 

「…あぁ」

 

報告書を書き上げたのか背筋を伸ばす司令。そんな状態でも絶妙なバランス感覚を発揮する時津風。

周りを見渡す司令は時雨に視線を止める。

 

「時雨…好みや…モン…広し」

 

「ヒロシって誰さ!?」

 

立ち上がってツッコミを入れる時雨。

雪風の瞳には皆を見る司令が悲しそうに見え…雪風は分からなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んん~~っ。

 

報告書こんなもんかな。

 

「しれー終った?」

 

「…あぁ」

 

頭上からトッキーの声。日に日に俺の頭の上にいるスキルが上達している気がする。

そんなスキル上げてどうするんだという気もするが…。

さてと、もうすぐ昼か…。

周りを見渡せば、…なんだコレ。軽くカオスだな。

特に這い寄る金剛とそれに抱き着いている比叡は何がしたいのか。

「お姉さまお姉さま」とじゃれついているだけだけど。

 

「テートクゥゥ。ヒエー離すデース」

 

こちらに救いを求めないでくれないかな。

今日一日くらい甘えさせてやりなよ。その娘、結構頑張って貴女を救ったのだからさ。

という訳で見なかった事にしよう。

 

それにしても、こ奴ら切り替えが早いな。

ちょっと前までお艦同様に激おこぷんぷん丸だったのに。

金剛と一緒に正座させられてお説教されましたよ、ええ。

泣きながら怒られたらもうね、何も言えないね。こういう時の女性の涙ってズルいわぁ。

マジパナイわぁ。そして君らのその俺に対する思いは重いわぁぁ…。

 

今度はもっと上手くやらなきゃなぁと改めて実感しましたよ…ほんとに。

 

「ぐぅー」

 

トッキーが腹減ったと言っています。

改めて、もうすぐ昼だ。俺も腹が減った…。

 

時雨と目が合う。

 

しぐれ…か、

 

「時雨…好みや…モン…広し」

 

時雨焼き、お好み焼き、モダン焼き、広島風…。

どれも麺が無い、いやお好み焼きはいけるか…。あれキャベツまだ残ってたっけ?

まぁ、今日はお艦がお昼作っているだろうから後日だけどな。

 

「ヒロシって誰さ!?」

 

うおっ! ビックリした。どうしたんだ時雨はん急におっきな声出して。

 

「ふむふむ、ほうほう。ヒロシは時雨が好き」

 

トッキーは何訳分らん事言ってんだ?

 

「大野艦長のことですか? う~ん。でも時雨が就航する頃には予備役になってたと思うんですけど…」

 

ヒェーが金剛の腰に抱き着きながら唸っている。

えっと、だから何の話しているんだ?

 

「何っていうたかのぉ…潜水艦の…ドンガメ会作ったお人にそげな名前の方がおったような」

 

何故、ドンガメ会? 

ドンガメ会というのは潜水艦乗りの艦長たちが「まったく潜水艦は最高だぜ」という信念のもと作り上げた同好会だ。

俺自身は潜水艦の方には関わりは薄い。せいぜい長野商会のディーゼルエンジンが横須賀生まれの潜水艦に使われていたってくらいか。

俺が口出ししたのは甲標的の方。ちょうど艦政本部にいた頃だったので横やり入れた。

「こんな危ないもん使えるかっ」ってな具合で色々と難癖つけた。多分関係者の皆さん大分お怒りだったと思う。

あと潜水艦に携わる現場の人間居ないってどうかと思ったので、参加させた。

排水量、長さ、高さが増して電探付き…電探は運が良ければ稼働した。

八木アンテナ様様だ。ただし電探自体の小型化と各種部品の精度が当時の日本にはまだ厳しかったから性能はお察しである。

この甲標的開発製造段階の当時、戦前は必死兵器、特攻兵器というものは採用しない伝統を引き継いでいたからどうにかなったんだよな。

1隻あたりの建造費は26万円から33万円となり、関係各所から大ブーイング浴びたけど…。

 

「亀? インド洋海戦の事かしら。聞きたいの? 仕方ないわね教えてあげるわ」

 

「誰もそんな事言ってないわよ」

 

天津風が立ち上がり、初風が突っ込む。あまつんがショボーンとしている。

ところでそろそろタブレット返して欲しいのだけど。あれ、なぜ雪風が持っているの?

 

「亀がどうしてインド洋になるのでしょうか?」

 

「榛名ーそれはデスネー。テートクが立案参加したoperation Turtle(亀作戦)からデース!」

 

君、自身が参加した作戦じゃないのに良く知ってるね。この中だと時津風と天津風だろ参加したの。

てか、あれは井上さんが考えた事にしてあった筈なんだけど…。

 

「やっぱり聞きたいんじゃないの。仕方ないわね…」

 

「だから別に…」

「夕立聞きたいっぽい! あと提督さんの頭の上にも乗りたーいっ!」

 

俺の頭はアトラクションじゃないんだけどなぁ。

あと、ぽいぬ夕立は女の子らしい体つきしているから遠慮して欲しいのだけど。

 

「だからヒロシって誰なのさ!」

 

いや、知らんけど…。

 

「しれぇ。女の人の裸が出てきました」

 

「おい馬鹿やめろ」

 

ゆきかじぇ…どうしてフォルダ・イン・フォルダを開けちゃうんだ!?

雪風の持つタブレットへと手を伸ばすが空を切る。

 

「Heyテートク。どういう事か教えて欲しいデース」

 

あれぇ? おかしいな…。ヒェーに抱き着かれて床に這い蹲っていた筈なんだけど!

どうして右手にタブレットを持って左手を腰に当ててこちらを睨んでいるんでしょうか金剛お姉さま。

 

「……」

 

静まる空間。

 

静寂を切り裂くのは、

 

「ロリ巨乳じゃと? 提督さんにこがーな性癖が…浜風の一人勝ちじゃ…いやうちもいけるじゃろ。のぅ提督さん」

 

そんな浦風さんのお言葉であった。

さらりと人の性癖暴露しないで!?

 

ミック先生! 遠隔操作でどげんかしてつかぁさい。

カピパラの画像とかに切り替えをぉ! 切にお頼み申す!!

 

──オニオン9、エンゲージ。

 

オイィィィィィ!? 

 

 




カンパンがガルパンに見えた方は末期です。大洗へ行ってどうぞ。

爆弾処理のゲームはマインスイーパーの事です。
今の子は知っているのかしら?という疑念を抱いたのでここに書いときます。

あと最近、アクセス解析なるものの存在を知りました。
過分な評価を頂いているようで…。いやほんとに…。


おまけ


図鑑説明 浦風(苺味)

生まれは大阪、所属は呉。真珠湾から沖縄まで駆けまわったんじゃ。
最後は金剛姉さん達と決戦に挑んで久高沖…。
まあ、もうどうにもならんなぁ……。

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