提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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鹿島を縛りたいだけの人生だった。




提督(笑)の夜戦

母親にエロ本見つかった時と同じような心境を味わっておりますが、一体どうしたもんだろう…。

 

「しれーっ! しれーっ!」

 

と頭上で叫びながら足で首を絞めてくる時津風とか、しれーが死ねーに聞こえたわ。

 

「こ、これから成長するんだから…」

 

と自分の胸見てからこちらを睨む天津風とか…。

無理なんじゃね? という言葉はそっと胸に仕舞った俺、紳士。

 

「テートクゥゥ! 説明するデース!」

 

掴みかかって来る金剛とか…。説明も何も見たまんまだろ…。

敢えて俺の口から言わせようとは鬼かと思う。

大体において、あのお宝画像はまだ完成ではないのだ。ロリ巨乳フォルダが完成し、次はお姉さん系かななどと考えを…。

最終的には可愛ければ何でもイケる口なんだ俺は…。

そんな事言える雰囲気じゃないけど…。

 

「提督、榛名で妥協してください!」

 

「Heyマイシスター。ドサクサに紛れて何言ってるデスカー」

 

「は、榛名は大丈夫です!」

 

「何が大丈夫なんデスカー?」

 

「…姉さん方、せらうときょうていのぅ(やきもちは怖いの)」

 

浦風さん、ぼそっと言ったつもりだろうけど俺まで聞こえてたんだから、他の娘さん達にも聞こえてたよ。

金剛と榛名がすっごい目でアナタ見てましたからね。

 

「司令! そんな目でお姉さまを見ないでください」

 

と言って金剛の前にカットインする次女。

どんな目で見てたって言うんですかねヒェーさんや。

 

「提督、巨乳ってどのラインからなんだろうね?」

 

「夕立もそこそこあるっぽい!」

 

俺になんて答えを求めていたんでしょうか?

 

「……」

 

成り行きに任せて乾燥昆布食いながら存在を極力消しているツチノコ(初風)。

 

「…しれぇ、なんかすいません」

 

そんな謝り方されると居た堪れないよゆきかじぇぇ…。

もうこの空間にいた各自がそれぞれ好き放題言いだして収拾がつかなそうな時、救世主お艦が現れた。

 

「皆さん昼食が出来ましたよ。提督、やはり節水を心掛けませんと厳しいですね…。…お風呂どうしましょう」

 

お艦が呼びに来る。

 

妖精さんたちが厨房をなんとか使用できるところまで持ってきたらしい。

ただ、通信装置の為の最低限の電源しか持ち込んでないから調理場の方には回ってない…不便だろうなぁ。

せめて冷蔵庫を使えれば…って、なんで皆いっきに俺から距離を置いたんだ?

お艦が最後にボソッとなんか言ってたようだけど…。

 

「あれ、お姉さま? 皆さんもどうしたんですか?」

 

そして俺と艦娘達の間に残されるヒェー。

 

「…重大な問題発生デース」

 

「…榛名は…大丈夫じゃないです」

 

「…待って、最後に入ったの何時だったかな?」

 

「覚えてない…っぽい」

 

「いけんのぅ。 おおがっそう(髪パサパサ )じゃ」

 

何か皆で深刻なお話し合いをされているようなんだが、何か問題があるなら情報は共有した方がいいのでは?

 

「何か問題か?」

 

「しれーは黙ってて」

 

しどい…。

 

あんなに俺の頭の上で好き放題してたのに…。

なんなのよ、その手のひらくるっくるぶりは。

 

「しれぇ! 今のは雪風も良くないと思います」

 

エ、エェ…。

 

「そ、そうだわ! 雨乞い、雨乞いをすればいいのよ!」

 

天津風は特殊なスキル持ってるのか? 猫みたいに顔でも舐めるのかしら。

 

「やったことあるの?」

 

「ないけれど…」

 

ないのかよ。それより水がそんなに深刻なのか…。

 

「ここで考えても仕方ありませんよ。皆さんお食事にしましょう。提督、今食事お持ちしますからお待ちくださいね」

 

「…あぁ。助かる」

 

あ、つい返事してしまったけど、俺もみんなと一緒に行くよ?

報告書を書き終わってする事ないし、父島に帰ればいくらでも仕事あるんだけれども、現状だと暇やねん。

あと水の備蓄量も確認したいし、夕飯作りを手伝いながらその辺り見てみようか。

 

「鳳翔、夕飯は手伝うぞ」

 

「…提督。お気持ちだけいただいておきます」

 

そんな遠慮せんでも、おっちゃん暇やねん。

 

「遠慮は無用だ」

 

「大丈夫です」

 

「いや、手伝お…」

「大丈夫です」

 

「…あぁ」

 

そんな威圧感ある笑顔見せんでも…俺が何したって言うんだ? 解せぬ。

 

そしてチラチラこちらを見て退室していく娘さん達。

何だか知らんがロリ巨乳云々は有耶無耶になったけれども釈然としないぞ。

 

…あ、タブレットは返してくれないんですかね?

 

「あ、提督。タブレットに入っていたものについてあとで少々お訊ねしたいことがあります」

 

…え? なんでお艦がそれを…?

 

「け、決して覗いたわけではないのですよ? 妖精さん達が勝手に…ええ、勝手に…」

 

…なんで目を逸らすんですかね? 釈然としないなオイ。

 

 

なんて事があってからはや数時間。1700からの見張りに行く艦娘さん達が挨拶に来て、

それからしばらくして見張りをしていた艦娘さん達が戻って来た。何でか皆さん必要以上に距離が開いていた気がします。

多分、ロリ巨乳の一件が皆に伝わってドン引きされているんだと思いますけれど! ちくせう。

長波様がやたらと挙動不審でしたよ。あとあの蔑んだ目。…たまらないね。

 

そんでもって司令部施設カッコカリにポツンと俺氏。

いや、大淀さんもいるんだよ? なんかすっごい距離あけられてるけど。

 

そんな大淀さんの横顔を眺めつつどうしたもんかと思案していて気が付いたのだが、

 

「大淀」

 

「なんでしょうか?」

 

「腕章に書かれている文字は『毘』か」

 

今更ながら、大淀さんの腕章の文字が気になった。

ゲームだと桜の花か何かの模様だった気がするんだけれど…。

 

「…そうですが?」

 

「どういう意味だ?」

 

「え!? 毘沙門天からだと思いますけど…」

 

え? なんで驚くの?

 

「……」

 

「艦長以下、乗員が腕章や鉢巻にしていましたから…」

 

へぇー、そうなんだ。まぁ『毘』といえば毘沙門から取ったんだろうと戦国時代好きな奴は思うだろう。

…けど越後の軍神好きだったのかアイツ?

 

「金剛さんと榛名さんの帯にも刺繍されていますよ」

 

嘘だろ? 全然気づかなかった。

 

「…何故だ?」

 

でも何で? 少なくとも金剛の艦橋じゃそういった部下の姿見てないけど。

 

「…提督。金剛さんに『毘』の旗が掲げられていたのを…」

 

「……」

 

知らなかったよ? マジか。

って事はアレですか、一部が俺を戦神なんて呼んじゃったもんだから、戦いの神イコール毘沙門天みたいな事で掲げちゃったりしたわけ?

 

「艦長も島崎艦長も提督にあやかって付けていたようですが…ご存知ありませんでしたか?」

 

「……」

 

えぇ、存じあげませんでした。

 

──ちなみに米海兵からは海賊旗に似ていた事から貴方は海賊とも呼ばれているようです。

 

いらん補足説明ありがとう。

まぁマーシャルでナメプしてた輸送船団襲った事もあるからな…。あながち間違いではないけど…。

 

…聞かなきゃよかったな。そこはかとなく中二病臭がするんだよな…。

 

なんだか体を無性に動かしたくなった。

 

「…提督。どちらに?」

 

「体を動かしてくる」

 

「それではお供致します」

 

「…大丈夫だ。大淀は少し休め。これは命令だ」

 

大淀さん、ずっと働き詰めでしょ。

 

「…わかりました」

 

さてと昼間作った棒とロープをもって外に出るか。

ミック先生、そっちはどんな感じ?

 

──日の入り頃には到着できそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宝石の様に輝く星々を見つめる鹿島の目は虚ろであった。

 

ここ最近というもの、色々な事があったとは言え提督との触れ合いが非常に少ない。

今日も一言二言の挨拶程度の会話しかしていない。

海軍学校時代から父島に赴任する間、後任の引継ぎで一時的に会えなかった期間はあるものの、それ以外は毎日触れ合っていた。

現在、おかれた状況が状況だけに仕方ないと思ってはいても、鹿島は大変不満であった。

 

しかし、それに変化が起きたのが少し前である。

 

提督に挨拶して、夜警組として島の四方に散った。

警戒しながらも「今日も提督さんとあんまり喋れなかったなぁ」と内心溜息をついている頃に転機が訪れた。

 

「…鹿島か」

 

「提督さんっ」

 

満天の星空の下に想い人。自然と口角が上がるのを自覚しながら走り寄りたい気持ちをグッと抑える。

夜警に出る前、簡単に食事をとっていた席で、皆が深刻な顔を突き合わせていた。

その話題と言えば「お風呂に入っていない」というものである。確かにそうである。

艦娘という兵器であるが、乙女でもあるのだ。

好きな人に「濡れた野良犬の臭い」なんて言われた日には三日は寝込むというものだ。

そんな思いもあって提督に近づくのをグッと堪えた。

 

「…ふむ」

 

そんな乙女の心境など知らない提督は思案しながらも鹿島へと近づく。

 

「あ、あの提督さん。その、あまり近づかないで欲しいと…言いますか、決して嫌な訳では無いんですよ!? でも、しばらく…お風呂…ゴニョゴニョ」

 

「…波が穏やかだな」

 

そして鹿島の言葉などお構いなしに近づいて、隣に並ぶ。

 

「え、あ、はい。そうですね」

 

「雲も無い。星空が綺麗だ」

 

夜空を見上げる提督の横顔を眺めながら、鹿島の乙女回路は高速回転で状況の把握を始める。

ど、ど、どういうことなの? 大丈夫よね? フレグランスもっと多めに振りかけとくべきだったかしら?

あの提督さんが「星空が綺麗だ」なんてロマンチックな言葉を言っている今のこの状況はなに?

 

「鹿島」

 

「ひゃ、ひゃい」

 

交差する二人の視線。

もしかして、これはもしかすると…。と鹿島の乙女回路が唸りを上げる。

鼓動が高鳴り、全身の血流が一気に激流になるが如く、熱を帯びる。

 

「…頼みたい事がある」

 

「な、なんでしょう?」

 

手に持つ縄を鹿島に差し出して提督は告げる。

 

 

 

「自身を縛れ」

 

 

 

「…え?」

 

提督の顔と手に持つ縄を交互に見やり、告げられた言葉が言い間違いでない事を確認。

乙女回路はショート寸前。ミラクルロマンスも彼方にすっ飛ばしていく自身の提督。

 

いきなりそんなアブノーマルなプレイを…しかも屋外で!? 何より自分自身で縛らせるという俺様ぶり。

 

とショート寸前の乙女回路で導き出された答えはに難易度が高すぎて固まる。

 

ぎこちなく視線を提督に向けて見れば真剣そのものである。

 

視線が絡み合い、熱を帯びる体。

一体この後どうなってしまうのかと想像する…。

 

そして、

 

鹿島は全てを受け入れる覚悟を決めた。

 

「て、提督さんが縛ってください。…その優しくお願いします」

 

さすがに、縄を使う高度なテクニックも知識も持ち合わせていない。

「香取ねぇ。私は今日、大人の階段を上ります」と目を瞑って、

 

「善処しよう」

 

という提督の言葉を聞いた。

 

 

 

 

 

縛られた縄が女性らしい華奢な腰に食い込む。

下からピチャピチャと多分に水気を帯びた音が響き、肌を撫でる生温い夜風が潮気のある匂いを運ぶ。

両手で握る縄を引き、これ以上は無理だと意思表示を伝えるが、相手はその意思を無視するかのように傍若無人に振る舞う。

 

やがて暴れ回って満足したのか、腰に食い込む縄が緩む。

 

しばらくするとキラキラと探照灯の光が反射する海面から影が浮かび上がってくる。

バシャバシャと音を立てて鹿島のもとにやって来る影は彼女の提督のものである。

引き締まった上半身、肩には1mを超えていそうなメバチマグロを担いで…。

 

彼女の元まで来るとそのマグロを下ろし満足そうに頷いた。

鹿島の足元にはバケツやクーラーボックスが置かれており、その中には大小さまざまな魚介類の姿があった。

流石に1メートルを超える魚を入れるものが無いためマグロは浜に直置きだった。

 

「マグロは足が速い、すぐに捌くとしよう」

 

「…ソウデスネ」

 

鹿島の瞳は虚ろであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南鳥島は一辺が約2kmのほぼ正三角形の形をしている平坦な島だ、

最高地点の標高は10mもない。さてそんな島はサンゴ礁で囲まれてはいるが、その外は水深が一気に深くなり、潮の流れが速い。

素潜り漁をするとなると結構危ないのである。

そこでロープの出番だ。片方は自身を縛って、もう一方は木にでも縛り付けとけば流されなくて済むだろう。

と、思ってたんだけど手ごろな木が海岸線近くにない。

参りましたねぇ。

 

お、誰かいる。

 

「…鹿島か」

 

「提督さんっ」

 

こんばんわ。いい夜ですね。ってちょっと前にあったばかりだけど。

 

ふむ。

 

手頃の木がないなら艦娘さんに持ってもらえばいいじゃない?

しかも木と違って意思疎通できるしある程度移動もできるという融通効くしなんて名案なんでしょうか。

艤装展開で最大8000馬力、人間一人引っ張るのに過剰なまでの出力という超絶安心。

さらにさらに、

 

「…波が穏やかだな」

 

今は、潮の流れが落ち着いているように見える。

 

「え、あ、はい。そうですね」

 

「雲も無い。星空が綺麗だ」

 

天気も崩れる様子もない。という事は天・地・人がすべて揃った。まさに好機。

狙うは大物! 2m越えのマグロッ!

 

「鹿島」

 

「ひゃ、ひゃい」

 

「…頼みたい事がある」

 

というわけでお願いがあるんです鹿島さん。

 

「な、なんでしょう?」

 

手に持つ縄を鹿島さんに差し出して

 

「自身を縛れ」

 

手で持ってるだけじゃ、決して信用してないわけじゃないけどさ、

 

「…え?」

 

すっぽ抜けがあるかも知れないし、念のためにね縛っといて欲しいのです。

 

オナシャス。

 

「て、提督さんが縛ってください。…その優しくお願いします」

 

え、そんな!? 

 

「…善処しよう」

 

マジか、そんな事言われたらドキドキしちゃうじゃない。

あざとい。さすが有明の女帝あざとい。

 

少し撓ませて体に食い込まないように…。

なんかいけないことしているようだ…。イカンぞこれは…。

 

おっし出来た。ちょっと頭冷やしがてら早速行ってくる。

 

海へ直行っ! ドボーン。

 

暗くて何も見えない。なんてこった。

 

「鹿島」

 

再び鹿島さんの元へ…。しまらないなぁ。

ちょっと鹿島さん探照灯で海照らしてください。

 

「え?」

 

「海面に探照灯照射だ」

 

「え?」

 

「…どうした?」

 

「……」

 

崩れ落ちる鹿島さん。

勇んでいったのに直ぐに戻って来た俺が悪かったって、この不甲斐なさは漁で大物獲って来るんでそれで帳消しにしてください。

 

 

鹿島さんは大物獲って来たのに反応がイマイチだった。

1m越えのマグロとの死闘を演じたというのに…。

 

 

 




鹿島さんじゃなくても良かったんだけどね。グラフィック見てたら艤装に探照灯ついてたからね。
なんでわざわざ苺餃子が夜出かけたかって言うと夜になるとマグロが水深浅いとこに上って来るからです。


おまけ


図鑑説明 大淀(苺味)

艦隊旗艦として特化設計された新鋭軽巡洋艦、大淀です。
戦局の変化もあって、連合艦隊旗艦としてはあまり活躍できなかったの。
でも、北号作戦や礼号作戦では活躍したのよ。最後は天一号作戦で奮戦したわ。
最強の艦隊と呼ばれた一翼の力お見せしたいと思います。頑張りますね。


武尊丸(苺味)

戦時を想定し設計建造された民間造船所生まれの油槽艦「武尊丸」です。
妹の平波丸と数々の輸送作戦に従事しました。
色々厳しくなっていた状況の中、最後の大規模船団輸送を成功させたのよ。
油槽艦だと思って侮ったら痛い目に合うんだからね! そうですよね? 阿賀野さん。

たぶん武尊丸型は改修で水上機母艦か軽空母になれるんじゃなかろうか。
ちなみに本作でオリ艦娘として登場の予定は今のところないです。

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