提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

53 / 87
お待たせしました。

今回はキャラ崩壊とかあるかもしれませんが、って今更か。



提督(笑)と南の島の日々

さてさて、バナナボートの気分を満喫した後、自分の事をパパと呼ぶ艦娘は天龍ちゃんが連れ去り、俺は空挺部隊の面々と共に食堂にやってきた。

 

「南、手が震えてるぞ?」

 

「分かってて言ってんだろ。あぁん?」

 

空挺部隊の方々は装備の手入れをしている。

そして女性隊員の口が悪い。

マッチョメンこと、丹波氏は肩をすくめて苦笑いである。

 

俺は隊長さんと曹長さんと並んでその様子を眺めている。

厨房でお艦は何か作っている。

他の面々はよく分からんが、飛龍と蒼龍だけ外に残して中で集まってるようだ。

お艦まで行くと飯作る人いなくなるからって事らしいから、それ程重要な案件じゃないのだろう。

 

海水が張り付いて妙に艶めかしい感じになっている女性隊員。名は南さんと言うらしい。をチラ見しながら手元で整備している銃を見る。

 

「三式?」

 

で、気になったのが彼らの持つ自動小銃である。

アサルトライフルと言う呼び名の方が分かりやすいか。

 

「大元は三式自動小銃らしいですな。これはその派生型の七七式です」

 

俺の呟きを曹長さんが拾ってくれた。

 

銃の構造が大きく変化することは無いとは言え、ずいぶんと長く採用されているな。

1977年からという事だろ。元の世界の自衛隊にも言えたけどさ…。

で、三式自動小銃と言うのおっちゃん関わりました。ハイ。もちろんミック先生監修の下で。

ベースはAK-47。それを当時の日本人の平均的体格に合わせて戦前からコソコソと陸軍の人と進めてた。

ついでに当時の技術力と生産性を加味して切り替え射撃なんて機能は省いた。

それでもプレスとリベット打ちで苦労したらしい。俺は途中で戦争はじまって丸投げ状態でしたよ。

そしてようやく三式、つまり皇紀2603年(1943年昭和18年)に運用開始となった。

 

あと先取りしたとはいえ、ミハエルさんには何度も心の中で謝っといた。

 

それはさておき、

 

「…触らせてもらっても宜しいか?」

 

男の子やもん。持ちたくなるやろ普通。

曹長さんが隊長さんに視線をやって、隊長さんが頷くのを見てマガジンを抜いた状態で渡してくれた。

 

ほほう? ほほーう。

 

男ってのは武器を持つと何でこうもテンション上がるんだろうか。と、一時、その答えを考えた事がある。

そして、俺が出した答えは、きっと遥か昔、石斧を持ってマンモスを追っかけてた頃から刻まれた遺伝子に違いない。

石斧から弓や槍や剣、そして銃に得物を変えたとは言え、武器を持つと狩猟を行っていた頃の闘争本能を刺激するのだ。

そう遺伝子に刻まれているのだ。逆らっちゃいけない。

 

だから俺は色んな角度から舐めるように見て、構えたりしても仕方ない事なのだ。

 

ほほーう。ほうほう。ほほーう。

ココがこうなって、こうなると、なるほど!

いいね! かっこいいじゃない。

 

「あの、提督」

 

厨房からお艦が出て来た。

 

「なんだ鳳翔?」

 

見てよお艦。この黒光りする固い筒状のコレ。なんかこれ良くね? かっこ良くね?

 

「曹長さんがお困りですよ」

 

おっといかん。変な世界に浸かってしまっていたらしい。

 

「感謝する」

 

触らせてもらった銃を曹長さんに返す。

 

いかんな。ちょっと変なテンションになっている。

お艦の頬っぺたをムニュムニュしてクールダウンしよう。

 

はぁー癒されますねぇ。

 

あぁ、我が艦隊には何か足りないと思ったら圧倒的に芋成分が足りてないのではないだろうか?

お艦は芋成分には入りません。お艦はお艦成分でできています。

という事で、具体的には綾波の頬っぺた引っ張りたい。

実際に居たら、それはそれで対応に困るんだけどさ…。

 

「……」

 

「ふぇいほふ、いああんおまえでほあいまう(提督、皆さんの前で困ります)」

 

え、何だって?

 

「くっそたれがぁ!」

 

「ちっくしょうが!」

 

銃の手入れしている空挺隊の二名程が叫んでいるが、どうした事だろうか?

 

「ひえぇぇぇぇーー」

 

どっかから叫び声が聞こえてくる。今日もアイツは元気だな。

 

ドタドタと足音が近づいてくる。

 

視線を食堂の入り口に向ければ、ヒェーが走ってきているようだ。

 

 

そしてそのまま、

 

「…何の真似だ?」

 

人の背中に張り付いた。

 

 

と思ったら、さらに足音。

 

またしても入口に視線を向ければ、

 

「チェストーーーッ!!」

 

俺とお艦との間に高速カットインして間を抜けていった高速戦艦の三女。

いつの間にか、お艦は後方に飛び下がっていた。スゲェなお艦。

 

ズザザーっという音が止み、床にスリップ痕を残した犯人の榛名は、こちらに振り向いたが、俯いているために表情が見えない。

彼女はなんで示現流の掛け声を? と思ったけど、最後の艦長の島崎君は薩摩隼人だったか…。

 

まぁそれはいいとして、

 

「…何の真似だ?」

 

本日二回目の問い。

 

「ちょっとヒエーとテートクに聞きたいことがあるデース」

 

いつの間にか食堂に入ってきた金剛。

 

いつもよりいい笑顔だ。

 

「ヒエッ」

 

目が全くこれっぽっちも笑ってないのを除けば…。

 

ちょっと怖いんで逃げたいんですけど、背中にくっ付いている奴は服をがっちり掴んで離さない。

 

「おい比叡。説明しろ」

 

「私もどうしてこうなったのか良くわかりません」

 

「…こうなる前に何があったか聞かせてみろ」

 

「あ、はい」

 

そして比叡は事の始まりを語りだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えーと、私達は司令と別れた後に皆で集まりました。

陸奥たちも話があったようなので、飛龍と蒼龍と鳳翔さん以外全員ですね。

 

「テートクゥ…おかしいヨ。どーして私じゃないデース」

 

お姉さまが悲しんでました。たぶん司令のせいですから謝ってください。

 

「…ダイジョウブデース」

 

あと榛名が俯いてブツブツ言ってたのが怖かったです。

え、先に話を進めろ? わかりました。

 

「え、ちょっと待って。ヴィットリオ・ヴェネト級はともかく、ロリ巨乳ってなに? 弟の部屋でエロ本見つけた時より衝撃的なんだけど…」

 

「百合恵提督。今はそういう話じゃないんじゃない?」

 

「陸奥さんは持たざる者の気持ちを分かってない!」

 

なんか陸奥と陸奥の提督が喧嘩してましたよ。

 

司令、天井なんて見つめて何があるんですか? え、他ですか?

あとは…、

 

「妹二人が姉妹水入らずでの会合を早々に離脱して、しばらくしたら意気消沈して戻って来た件について」

 

「白露、ちょっとほっといてくれないかな」

 

「時雨姉さん、そんな事言わないで」

 

「…っぽい」

 

「夕立姉さん元気出してください」

 

「ど、どうしよう」

 

白露姉妹も全体的に元気が無かったですよ。

多分、司令のせいですね。後で謝った方が良いで…あ、はい。続けます。

 

「…欧州打通作戦…一発なら誤射…計画の遂行のためには…」

 

大淀の眼鏡が光ってました。

 

「イタリア国籍は流石に無理…これはもう艤装をイタリア仕様に染め上げるしか…」

 

「…夕張さんは努力の方向性が違うと思います。提督さんに振り向いてもらうにはもっとこう内面から…」

 

「そんなことないもん! わたしは提督に『食べちゃいたい』って言われたし! 鹿島さんこそあざとい態度を改めなさいよ!」

 

「提督さんがそんな事言うなんて信じられません! それに私、あざとくなんてありませんし! この間、体縛られて一晩中濃密な夜過ごしましたしっ!」

 

「お二人とも、そういう嘘は控えたほうが宜しいですよ?」

 

「何よ大淀? その勝ち誇った顔」

 

「…フフフ。私は提督に夜這いされましたから」

 

「…それこそ嘘じゃない。大淀はロリ巨乳から一番遠いもの。陰でバストアップ体操していたの私知ってるんだから」

 

「…夕張さん、自分の胸を偽装していてそれを言うんですか?」

 

その鹿島の言葉に何人かが肩を震わせて俯いてましたね。

あとは大淀も夕張も膝をついてました。あの司令、だから天井に何かあるんですか?

そうじゃない? よくわかりませんが続ければいいんですね? わかりました。

 

「敵はまさかのイタリア艦じゃ」

 

「…うぁぁあん。ロリ巨乳って言っでだのにぃぃぃぃ」

 

あ、浜風がガン泣きしてましたね。

 

「まぁ待て、浦風、浜風。空挺隊の兵士は好きな軍艦と言ってたのだろう?」

 

「そうじゃの」

 

「ならば、ウニやイクラと言った軍艦巻きの可能性が残されているではないか」

 

「ヴィットリオ・ヴェネト級ってのり巻きがあるってのかい?」

 

「カリフォルニアロールというものがあるのだ。あってもおかしくなかろう」

 

「谷風さんはそんな磯風嫌いじゃないけどね…」

 

「そうだろう? 司令はきっと寿司の好みを答えたのだ。船の好みなら司令が改良を加えた我ら改陽炎型だ。そして司令は私が一番のはずだ!」

 

「アナダばぁ改陽炎型じゃないじゃないでずが」

 

「…え?」

 

「こら、浜風。言っていい事と悪い事があるじゃろ」

 

「…ま、まて。私は改陽炎型じゃないのか?」

 

「「……」」

 

「おい浦風、谷風。何故視線を逸らす!?」

 

この後、磯風もガン泣きしてました。

えぇきっと司令のせいです。

いやちょっと!? イタタタっ! カチューシャをグリグリしないでください!

良いから続けろって分かりましたからっ! 離してください。

 

「それでね! パパと海をぐるってしてきたのっ」

 

「あぁーそっか良かったなぁー。だけど島風、提督は人間だから海は走れないからな…」

 

「大丈夫。私が手を持ってたもん」

 

「…そっか。まぁ提督なら…大丈夫か?」

 

え? 長波は止めなかったのかって? 別にそんな事は言ってなかったようですけど。

島風はまた一緒に駆けっこするって言ってました。

どうしたんですか司令? 何でも無いなら続けますね。

 

「みて、ゆきかぜ。夕張にもらった。ボインボイン」

 

「雪風ももらいました。お揃いですね」

 

「なに喜んでるんだか」

 

「ならアナタは外したら?」

 

「せ、せっかく貰ったんだからつけないと失礼じゃない」

 

「へぇー」

 

初風以外の十六駆の子達は胸部に増設バルジしてました。でもアレ防御力上がるんですか?

え、上がらないんですか?じゃあ何でそんな事を…。

あ、続きですね。

 

「なぁ龍田」

 

「なぁに? 天龍ちゃん」

 

「これは会話に入っていかない方がいいヤツだな」

 

「天龍ちゃんが成長してるわ」

 

「どういう意味だオイ! まぁいいコマ、息を潜めてるんだぞ?」

 

「Oui!」

 

壁際で縮こまってたので後はよく分かりません。

ね、私、何も悪くないですよね? でもお姉さまも榛名もなんか怖くて…。

えっと私が会話した内容ですか。う~ん…、

 

「金剛お姉さまにはこの比叡がいます! 元気出してください!」

 

「Oh…ヒエーは優しいデスネー」

 

「お姉さまー!」

 

お姉さまを抱きしめられて幸せでした。

 

「でも、ワタシは…やっぱり」

 

お姉さまが何か言おうとしていたようでしたが、元気づけるために私いっぱい励ましました。

 

「大体、司令はアホなんです。強引にいれるし、そのくせお姉さまには黙ってろって言うし、無茶苦茶されて飛んで気を失いそうになりましたし」

 

お姉さまは抱きしめてた私を引きはがされました。

でも私は元気づけるためにさらに言ってやりました。

司令の駄目なところを。

 

「司令と一緒に寝てると体温高くて寝苦しいし…、あ、腕枕はまぁまぁです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、まぁこんな感じで話したら、なんかとても良くない空気を感じて逃げてきたわけです。あ、夏場は冷たい体になったりしないんです? 司令」

 

さて色々と、本当に色々と思う事はあるけど、まずは、

 

「…お前、ちょっと黙ってろ」

 

後ろにしがみ付いている奴を黙らせることにする。

だいたい冷たい体になってたら、天に召されてるだろうがよ…。

 

「テートク、説明してクダサーイ」

 

前方には超いい笑顔の金剛お姉様。ちょっと横には二の太刀いらなそうな榛名がおる。

 

「…まずは落ち着け」

 

「ワタシは落ち着いてますヨー」

 

そうですか、なら良かったです。だけど、そうは見えないのですが…。

 

「あ、この状況テレビで観た事あります。昼間やってるやつ。男が刺されるんですよ?」

 

「お前、本当にちょっと黙ってろよ…」

 

思わず素が出たよ…。

俺、この島から生きて帰れるのかなとちょっと不安になってしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

 

しとしととお昼前から降り出した雨。

窓を伝う雨粒を眺めながら曙は溜め息をついた。

 

「アンニュイなぼのたんは今、誰かを思い浮かべているのであった」

 

両手を組みうんうんと頷く漣。

 

「全然違うしっ! ってぼのたんって呼ぶな」

 

「まぁまぁ。この漣の目は誤魔化されませんぞ」

 

「ち、違うって言ってるじゃない!」

 

「分かりやすい反応だなぁ」と漣は思いながら、そっぽを向く曙の視線の先に自身の瞳を向ける。

それほど激しい雨ではないが、航空機を飛ばすには躊躇う強さ。

朧と潮も哨戒からそろそろ戻って来るかなぁと食堂の一角に陣取りながら、ニヤニヤした表情をしている漣である。

 

「あと2、3日すれば戻って来るよ?」

 

「だからっ!」

 

ニヤニヤする漣の向こうを見て言葉を噤む。

 

「ただいまー」

 

「結構降ってきたよ」

 

哨戒を終えた朧と潮が濡れた姿で戻って来た所であった。

 

「どうしたの?」

 

小首を傾げる潮に「何でもないわよ」と曙は言い、漣も愛想笑いを浮かべる。

 

「潮ちゃん。提督に帰投のご報告しなくては」

 

「あ、そうだね。じゃあまた後で」

 

朧の言葉に促され、二人は執務室に向かった。

 

「そのままお風呂入ってくるんだよー」

 

と漣は二人の背中に声をかけて見送る。

 

「漣」

 

「わかってるって」

 

それきり二人は暫く、無言で雨音を聞いている。

 

「…もしも、本当に」

 

「うん?」

 

「なんでもない」

 

「うん」

 

漣は曙が言わんとする事を何となく理解したのでそれ以上、何も言わなかった。

 

珊瑚海海戦において翔鶴が被弾損傷した責任を、半ば八つ当たり的に上から問われたのが潮。

その裏には先のドゥーリトル空襲(北西太平洋海戦)においての長野の活躍へのやっかみもあった。

昔、潮の艦長をしていた事、第七駆逐隊の司令も長野と同期で豪快な性格をしていた事にも起因があった。

曙はエンタープライズを沈める大金星を上げるのと引き換えに、大破判定の損傷を受けて不参加であった。

もしも自身がその場にいればという思いが強い。

それ以降、第七駆逐隊は第一線から外され船団護衛に従事する事になる。

潮はその辺りの事をとても気にしている節がある。

 

以前出会った男に対して曙は大分確信めいたものはあるのだが自信を持てないでいる。漣も疑惑と困惑と言ったところ。

常識的に考えれば、死んだ人間が蘇ったなど馬鹿らしい。

だが、艦娘という存在の自分たちがいるのだし、もしかしたら…。という思いとの間で揺れている。

曙も漣も以前、潮に対して長野の事を聞いたことがある。

オドオドする事のある潮には珍しく、話したくない。ときっぱりと拒んだ。

潮が、件の男をどう思っているのかが不明な以上、余計な事を言って混乱させる必要はないという二人の思い。

だから、この話は漣と曙の間でしかしないのだ。

 

漣は曙が言わんとしようとしていた言葉を紡ぐ。

主語に『潮』という言葉を『ぼのたん』に変えて。

 

「でもぼのたん。もしも、本当にあの長野さんが長野提督だったら、ぼのたんはどうするの?」

 

「え!? いや…でも…」

 

その問いかけに百面相をする曙を頬をついて眺め、漣は雨音と曙の呟きをBGMにしながら「まっ、なるようになるっしょ」と楽観的に笑った。

 

 

 

 




醜い争いだったズイ


おまけ

図鑑説明 瑞鶴(苺味)

翔鶴型航空母艦2番艦、瑞鶴です。
翔鶴姉と共に、ミッドウェーの後は機動部隊の中核として、
坊の岬では最後の精鋭空母として、矢尽き刀折れるまで奮戦しました。
あの日、皆の最後をこの目で見届けて…。


秋イベ(レイテ沖)のE4の攻略情報見て絶望した…。
ちなみに長野さんは第一遊撃部隊第二部隊の司令してました。
ちょっとしたネタバレでした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。