提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

54 / 87
うっすいカルピスと言われたから濃縮還元にしてやったぜ!
きっとツッコミは追いつかない。(なお、話が進むとは言っていない。


提督(笑)の危機?

五十鈴が教えるサボ島沖海戦

 

サボ島沖海戦(サボとうおきかいせん)は、第二次世界大戦のガダルカナル島周辺において

1942年(昭和17年)10月28日深夜~29日に日本軍とアメリカ軍の間で行われた海戦である。

連合軍側の呼称はBattle of Cape Esperance (エスペランス岬沖海戦)。

 

 

経緯

 

 

1942年(昭和17年)8月7日より始まったガダルカナル島(以下ガ島)を巡る戦いで、

連合国軍はガ島にて孤立状態の友軍を救うために夜間に輸送船団を送り込み、日本海軍も先の海戦(第二次ソロモン海戦)で、

主力空母が損傷したためにソロモン周辺の制空権が掌握できず、駆逐艦による高速輸送作戦(鼠輸送)を用いて夜間に活動した。

また、空母加賀および瑞鶴が制空権確保の為、この時期にソロモン諸島の北方に展開する予定だったが、アリューシャン方面、アッツ島が米海軍の戦艦を含む部隊に砲撃されたとの報を受け、日本本土より南進していたが急遽、転進した。

この為、日米共に空母、制空権を欠く状態で、お互いが輸送任務をこなさなくてはならない状態であった。

この輸送船団を同時期に送り込んで起こったのが今回のサボ島沖海戦である。

10月28日アメリカ軍は潜水艦からの報告によって巡洋艦3、駆逐艦5からなる日本艦隊(支援部隊)の出現を確認した。(実際は、巡洋艦4、駆逐艦3)

輸送船団の露払いとして巡洋艦部隊を先行させ、サボ島周辺へ向かうよう指示。同兵力の日本艦隊を発見したという航空偵察の報告を受け、日没とともに戦闘配置を指示し、日本艦隊を待ち構えていた。

 

日本軍もまた輸送部隊とは別に支援部隊を編成し、ガ島の米軍キャンプ地と思われる地点にサボ島南方から侵入して砲撃を行う。

その後、サボ島南方から輸送部隊とほぼ同一の航路をとって日の出近くに撤退するというものであった。

 

 

戦闘経過

 

 

10月28日深夜、日本輸送部隊はガダルカナル島のタサファロング泊地に到達、物資の揚陸を開始した。

1日前にアメリカの輸送部隊も揚陸を果たしている。

一方、日本支援艦隊(古鷹、加古、青葉、衣笠、吹雪、初雪、深雪)はサボ島の沖合に進撃した。

 

アメリカ艦隊(サンフランシスコ、ボイシ、ヘレナ、駆逐艦5隻)は日本艦隊を迎撃するためにサボ島近海を哨戒していた。

同部隊所属であったソルトレイクシティーは第二次ソロモン海戦の折、輸送部隊を護衛していたが、陸奥の砲撃により沈没している。

艦隊の水上偵察機を投入して接近してくる日本艦隊の動向を探ろうと命令を下す。

そんな中、サンフランシスコから発艦した偵察機から「大型艦1、小型艦2、サボ島沖合北16海里にあり。調査のために接近する」という連絡が入った。

事前にあった報告と兵力が違ったために新艦隊かどうかの判断に悩んだが、既出の艦隊である可能性も踏まえて北東に針路を変更し、サボ島沿岸水域を進ませた。

だがこの時、偵察機が発見した日本艦隊の正体は、水上機母艦2隻(日進、千歳)からなる輸送部隊であった。

そんな中、艦隊の先頭を行く駆逐艦が突如、爆発する。

 

 

アメリカと日本艦隊の混乱

 

 

この爆発の光は日本艦隊にも届き、これを日本の輸送部隊の発光信号だと誤認した。

揚陸位置とは少し違う場所から送られているという報告も受け、第六戦隊司令官五藤存知少将は敵か味方かの判断に迷う事となる。

輸送隊の針路が目的地とは違う南西に向かっているという問題もあったが、何らかの都合で針路が変わった可能性も考えられた。

これらの理由もあって、五藤少将は同士討ちを懸念したとされる。

さらに「南西方面より急速に接近する艦影アリ」との報告を受け、この艦影が敵の可能性があった。

急速に接近してくる艦影に対して、第六戦隊司令部は発砲すべきとの見解を示して、砲をその艦影に向けていた。

しかし「艦影は五十鈴」との報告を受け、五藤司令は味方識別信号(オルジス信号)を送るよう命じると共に五十鈴との衝突を恐れ取舵の指示を出す。

すぐさま「ワレアオバ」の発光信号(指向性発光信号)が北東にある目標に送られるが、急速接近していた五十鈴の砲が火を噴いた。

 

 

 

 

 

 

「はい! この時期のアメリカには空母はサラトガだけだったって何かで読んだ気がします。

それもその一隻を失うのが怖くてハワイに引っ込んでいたのにどうして、日本は夜間に鼠輸送を行ったのですか?」

 

僕がそこまで読み終わると、一人の生徒が挙手をして本日講義を行っている教官に質問をする。

その質問を受けて艦娘の教官はツインテールと他一部を揺らしてその質問に答える。

僕の隣の生徒は「C…D…E…F…馬鹿なまだ上がるだと…!?」と教官の一部を見てブツブツ言っているけれど、確かに…大きい。

 

「そうね。まず地図でガ島の位置と周辺を見てごらんなさい。エスピリトゥサント島、ニューカレドニア島、ここに連合国の飛行場があったのよ。

ここから航空機が連日の様にガ島の上に飛んでくるから、なかなか制空権が取れなかったわけね。日本もラバウルとブナってところから零戦を送り出していたのだけど、どうしても距離が遠くて島の上では大して戦えなかったのよ」

 

隣の生徒の呟きは聞こえていないようだ。

しばらく前に新しくやって来た龍鳳教官。今はどっかに行ってしまわれた。

代わりに臨時で教鞭を取るのが今、目の前で講義を行っている五十鈴教官。

深い海の様な色の長い髪を白いリボンでツインテールにしていて、髪と同じ色合いの瞳を見ていると、なんだか猫を見ているみたいな気持ちになる。

艦娘の教官が着る制服が無かったのだろうか、ノースリーブの赤と白のセーラ服。僕は一部を見て恐らく無かったのだろうと思う。

彼女もまた美しい女性だと思うけど、僕は龍鳳教官のふんわりした雰囲気が好きだったのだ。

鹿島教官がいなくなって失われた僕の癒し。しかし神は僕を見捨てなかった。新たな癒しの降臨。

それが龍鳳教官だ。

新しく来た鈴谷教官はなんか高校の時にいたクラスの中心的な女子っぽくて苦手意識が強い。

大井教官は怖い。いつもニコニコしてるけど質問に答えられなかったりするとたまに舌打ちするし…。

香椎教官はなんか腹黒そうだし…。

 

はぁと溜息をついてしまう。

 

「あら、五十鈴の授業がそんなに退屈かしら?」

 

「あ、いや、そういうわけじゃ…すいません」

 

五十鈴教官の細めた瞳に射抜かれて、しどろもどろに謝罪の言葉を口にする。

 

「いい事、かつて五十鈴では山本提督や山口提督、そして長野提督が艦長をしていたのよ?

その五十鈴が授業をしてあげているのだから光栄に思いなさい」

 

「…はい」

 

素直に謝ってその場を収めた僕。それにしても長野か…。

鹿島教官があの武士にふしだらな事されてないか僕は心配です。

また溜息が出そうになるのを堪えて、机の上に視線をやる事にする。

 

 

参加艦艇&損害

 

 

日本

 

古鷹△ 加古× 青葉 衣笠 五十鈴 吹雪× 初雪 深雪× 

 

 

アメリカ

 

サンフランシスコ△ ボイシ、ヘレナ× 駆逐艦5隻 うち4隻×

 

△大破または中破 ×沈没

 

 

 

 

 

「後に研究家たちの意見が紛糾するのだけど、大体の見解が、あの場に五十鈴がいなかった場合、日本は大損害だったのではないかと言われているわ。そうこの私、五十鈴がいなかったらね!」

 

顔を上げればフンスと鼻息荒く、ドヤァと擬音が背景に付きそうな五十鈴教官がいた。

 

「シンガポールを出港して潜水艦を半日追い掛け回して砲撃で沈めたり、ラッセル諸島にある島影に隠れること三日。夜はチマチマと機雷の設置に命がけよ。

艦長の読み通りの航路を取るアメリカ艦隊。ここまでは完璧。でも、このままだと敵も味方艦隊も設置した機雷原に…。

でも、さすが艦長ね。慌てず騒がず完璧なタイミングでの突撃よ。まぁその際、青葉と衝突しそうになったり五十鈴の砲弾が掠めそうになったけど」

 

それはいい笑顔で五十鈴教官は語りだした。

もうしばらくその艦長自慢が続きそうなので僕は気付かれないように溜息をついた。

隣の生徒は相変わらず一部に目を奪われたままだった…。

 

 

 

 

 

龍鳳教官がしばらくいないので、その代わりの空母の教官も本日からしばらく講義を受け持つんだって。

 

「航空母艦 加賀 です」

 

「翔鶴型2番艦 瑞鶴です」

 

僕たちの前に立つ、不機嫌そうに見える二人の女性。

一人はサイドテールでもう一人はツインテール。

 

「……」

 

「……」

 

二人ともお互いにそっぽを向いてそれで黙ってしまった。

 

「…ちょっと加賀さん、なんか言いなさいよ」

 

「貴女が説明しなさい。おしゃべりは得意でしょ五航戦のうるさい方」

 

あ、この二人仲が悪い。僕以外の生徒も察した。

 

「むかっ! さっきも私だったじゃない! あーもうっ! なんで翔鶴ねぇと一緒じゃなくて一航戦の冷たい方と一緒なのよ」

 

「それはこちらの台詞なのだけれど」

 

僕は喧嘩は良くないと思います。

口に出して言えないけど…。

 

「…はぁ。仕方ないわね」

 

サイドテールの加賀教官の方が溜息をついて語りだした。

溜息つきたいのはこっちだよ…。

つけないけど…。

 

「これからしばらくの間、あなた達に何かしら教えるわ。一応、顔合わせも含めているそうよ。…そうね、私が提督に求める条件は三つかしら」

 

そう言って加賀教官は指を一つ立てた。

 

「屈強な肉体。具体的に言うのであれば瀬戸内海を縦断できるくらい泳げたらいいかしら」

 

何を言ってるんだろうかこの人…。

僕たちの思いは通じずにさらに加賀教官は指を一つ立てた。無表情なピースサインだ。

 

「戦闘機の操縦。八機…と言いたいところだけれど、三機相手に勝てる程度でいいわ」

 

だから何言ってるんだろうこの人…。

さらに指を立てて続ける。

 

「いかなる状況に陥ろうとも揺るぐことなく、諦めない心。以上よ」

 

最後のはまともだった。

でも、僕には無理かもしれない。最後まで武士に啖呵を切れなかったから。

 

「ねぇ、それ人間なの? その三機だってエースパイロットと呼ばれるくらいの腕前なんじゃないの?」

 

「当然の事じゃない? 貴女は理想が低いのね。私は最低でもこれくらいしてもらわないと提督候補にもならないのだけれど」

 

「加賀さんの理想が高すぎるんでしょ」

 

「なら、あなたが求める条件を教えてあげたらどうかしら? 良かったわね、あなた達。こんなのでも一応、精鋭と呼ばれる娘よ。指揮下におけたら一目置かれるわ」

 

「こんなのとか一応とかいちいち強調しないでいただけます!?」

 

暖簾に腕押し、ツインテールの瑞鶴教官が噛み付いているが無表情の加賀教官。

ほんとに仲悪いなこの二人。

 

「ちっ。…私が提督に求める条件は、えーと体は丈夫な方が良いわ。何事にも体は資本だもんね。あとは相手の二手、三手先を読む戦術眼でしょ。艦載機の知識もあった方が良いわよね。んー、一番は最後の最後まで諦めないって姿勢かな。…こんなところよ」

 

具体的に言ってないけど、大して加賀教官と変わらないんじゃないだろうか。

僕はそう思った。

もちろん口に出したりはしない。

 

はぁ~、龍鳳教官に会いたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メーデー! メーデー!

緊急事態発生! どうしてこうなってる!?

 

「All stratagems In love, and that the sharpest war, are lawful」

 

「それなら榛名が邪魔しても許されますね! お姉さま」

 

「ぐぬぬぬ…」

 

目の前で腰を落として手を組み合ってる金剛、榛名。

レスリングでも始めるのか…? いや、そんな事より下着がですね…。

その、見えてるのですけれど…。

だって仕方ないの。俺寝かされてるから…。しかも動けないの。ちょっと顔を上げると視界に入るんだもの。

どうやら後ろ手で縛られているようである。両足も縛られているようである。

あと、なんでズボンが太ももの辺りまで下がっているん?

 

ちょっと何故、このような状態になっているのか思い出してみよう。

 

高速戦艦の次女の言葉足らずで、浮気がばれた夫が妻に必死で言い訳をしている構図になったわけだけど。

いや、結婚した事ないんでその例えでいいのか悩むところだが、とりあえず誤解を解いた。

 

「大体、司令はアホなんです。強引にいれるし、そのくせ混乱を招かない為にお姉さまには黙ってろって言うし、無茶苦茶されて飛んで気を失いそうになりましたし」

 

この一言に対して親切丁寧に釈明させていただきましたよ。

 

「何を説明すればいい?」

 

と、逆ギレにも聞こえなくもない態度だったけど…。

 

「では、まずは強引にいれたってナニを入れたデスカー?」

 

「比叡を指揮下に」

 

大体、これだって苺呼ばわりしたからつい手が出ちゃっただけだし…。

まぁ戦力増強で、指揮下には入って欲しかったから。

 

「…ドーシテ、黙ってたデスカー? 教えてくれてたら…直ぐに会いに行ったネ…」

 

それについては申し訳ないと思う。

まさか、ギリギリの心理状況だなんて知らなかったし。

知ろうともしなかったし…。

 

「…すまない」

 

「金剛さん、提督にも事情があったのですよ。あまり責めないであげてください」

 

とお艦が助け舟を出してくれた。

 

「分かったデース。最後にヒエー飛んだって何デスカー」

 

「…言葉通りだ」

 

「司令。ちゃんと説明してください! 聞いてくださいよ、お姉さま司令ってば酷いんですよ」

 

とヒエーは黙ってろと言ったのにあれこれと説明しだす。

ついでに、お姉さまの為に俺に変な虫がくっ付かないように毎晩、大淀の目を掻い潜り、監視して結局眠くなって一緒に寝てたと言った。

 

「ヒエー?」

 

「何ですかお姉さま?」

 

「ギルティーデース」

 

「え、ちょ!? 榛名! ひえぇぇーー」

 

と榛名に首根っこ掴まれて三人は去っていった。

 

「ちっ、あのままもげればよかったのに…」

 

とマッチョメン丹波氏。彼は俺に何か恨みでもあるのだろうか?

 

 

ってな事があって、後は普通に夜警組を除く皆で晩飯を食べて、

ユーリエちゃんが持ち込んだ物資の中にビールがあったんで、隊長さんと曹長さんと俺で一本ずつ飲みながら語らって…。

うん、そこまでの記憶はある。

 

で、何でこの状況? ミック先生! 状況説明プリーズ。

 

──既成事実をなんたらと言っておりました。オニオン9、エンゲージ。

 

 

え、ちょっと何事!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門は走った。

 

後上雷蔵(ライバック)が率いる艦隊から水平線に南鳥島が見えて来た頃。

提督の制止の声を無視してシーワックスを飛び出し海上を走った。

一刻も早く、金剛の無事を確かめたいがために。

 

霧島がそれに続いた。

海上を走っている途中、龍驤が「ムッキー」と奇声を上げ、上空で飛び回っている自身の繰り出した艦載機達に矢継ぎ早に命令をしていたが些細な事である。

上空には味方機しかいないのだから。

 

長門は走った。

 

ついに南鳥島に辿り着き艤装を展開したまま。

先に上陸を果たしていた清霜が「でっかいかたつむり!」と言い、それに近づこうとして霞に止められた。

「触っちゃダメ!」と強めに言われてしょんぼりとしていた。

マイマイと呼ばれるでっかいかたつむりは寄生虫が怖いのである。流石は霞ママと呼ばれるだけはある百戦錬磨の駆逐艦。

意外と博識である。ちなみに彼女はカイゼル髭が好きである。

 

長門は走った。

 

「おーろーせー」

 

「おーろーしーてー」

 

と時津風と天津風が簀巻きにされて木の枝に吊るされていた。

 

「うぅ漏れそうです」

 

同様の雪風は太ももをすり合わせていた。何かが限界なのかもしれない。

 

「ちょ、まちなさい! 今降ろすからっ!」

 

そして初風は三人を降ろそうと四苦八苦していた。

 

長門は思った。

 

もしやここの提督というのはとてつもない変態で、艦娘達に無体を働く輩ではないかと。

 

さらに長門は走った。

 

建物が見え、その前には人間たちが纏めて縛られていた。

 

「曹長、マグロというのは素手で獲れるものなのだろうか?」

 

「現にその御仁は獲っておりますからな。獲れるのでは? それよりも仮にも精鋭と呼ばれた我々がこの状況。帰ったら鍛え直さねばなりませんな」

 

「…聞いたか馬場。曹長の今の言葉」

 

「あぁ聞いたよ鳥羽、帰りたくなくなってきたな」

 

「村雨嬢と一晩のアバンチュールをしたかった…」

 

「丹波うっさいよ!」

 

その人間たちを横目に入口に向かい走る。艤装を展開したまま…。

そうなると長門の大きな艤装は引っかかる。

だが力任せにぶっ壊して長門は中へ突入した。

 

飛叡型航空戦艦一番艦 飛叡 という札を首から下げた比叡が廊下で項垂れていた。

一緒に付いて来ていた霧島がその姿を見て離脱した。

 

長門は走った。

 

「止めなさい磯風さん!」

 

食堂で鳳翔が厨房に向かって悲痛な叫びをあげていた。

 

「男を落とすためには胃袋だと聞いた。この磯風止まりはせん!」

 

「せめて手順を聞いてちょうだい!」

 

鳳翔の悲痛な叫びは磯風には届かなかった。

 

「なるほど! 一理ありますね! 司令の胃袋を掴んでなおかつロリ巨乳の私は勝ち組ですね」

 

「…さっきまでの消沈ぶりはどうしたんじゃ」

 

「なんか色々、吹っ切れちまったようだね」

 

浜風、浦風、谷風は鳳翔と共にまとめて縛られていた。

 

長門は思った。ここの提督は艦娘を縛り上げるとんでもなく悪いやつだと。

 

さらに長門は走った。

今は彼女達より金剛の身が心配である為に。

 

「提督さんハァハァいけません。こんなこといけませんって」

 

司令部施設的な場所に辿り着けば白い軍服を顔に被せられた鹿島が縛られた状態で身を捩っていた。

 

「放置プレイ…放置プレイなんですか提督?」

 

男物のTシャツらしいものを頭に被せられた大淀も同様であった。

間違いなくここの提督は悪いやつだと長門は憤怒した。

その横にはアンカーチェインで縛られた夕張の姿。口はガムテープで塞がれた状態なのだ。

 

長門は夕張の口を塞いでいたガムテープを取り払った。

それはもう力の加減を間違えて。

 

「いったーーーい!」

 

「おい、これはいったいどうなってる!?」

 

「はっ! そうだ金剛さんが…」

 

とそこまで聞いた長門は再び走り出した。

入口をまた破壊したが些細な事である。

それよりもなにより金剛の身を案じた。

 

「提督を攫った…」

 

という後半の言葉は長門には届かなかった。

 

長門は走った。

 

さらに建物の中を洗いざらい探していくが、金剛が見つからずに焦燥感が身を包む。

 

一方その頃、遠い日本本土の地では、

有名戦艦の一人である大和がリニア新幹線に乗って呉から東京へと向かっていた。

 

「ねぇ、矢矧。どうして汽車での移動なの? 艦娘なのに…艦娘なのにぃ」

 

としょげていた。

 

「…便利でいいじゃない」

 

膝くらいまである長い黒髪を赤紫色のゴムバンドでポニテにまとめ、瞳の色は赤色の凛とした女性がそれに答えた。

阿賀野型四姉妹三女の矢矧である。

矢矧は「燃料馬鹿食いするから仕方ないじゃない」という言葉を飲み込むくらいできる女である。

主に大和のお守りをする艦娘でもある。

次女の能代は長女と末妹のお守りである。

 

長門の暴走を止められるかもしれない陸奥は、長門が上陸を果たしたのとは反対の海岸で百合恵提督と海を眺めていた。

 

よって長門を止める者はいない。だから長門は走った。

 

至る所に艤装をひっかけ、ぶっ壊しながら。

 

「誰だ貴様?」

 

ある部屋で頭を抱えて震えている艦娘を発見した。

 

「…ミ、ミーはおフランス生まれのカンムス、コマンダンテストざんす」

 

「…そうか。金剛がどこにいるか知っているか?」

 

ちなみに長門が生み出す破壊音に怯えていたのである。

 

「コンゴウ? Je pense que c'est là-bas.」

 

そして尋常じゃ無い剣幕で迫る長門に怯えながら外を指さす。

天龍と龍田は平波の船底に閉じ込められている。

艤装を展開してぶっ壊せば抜けられるのだが、それをしないくらい長門とは違い常識的である。

 

長門は走った。

 

コマンダンテストが差す方向へと。

そこには妖精さん達により頭に被せものをされている最中のシーワックスの姿があった。

 

長門は艤装を展開したまま途中で水密扉ニ、三個を破壊し、平波の船内の至る所を傷付けながら走った。

妖精さん達から大ブーイングを受けても止まらない。

さらに一人の妖精さんが長門に捕まった。

 

「金剛は何処だ!?」

 

ちょっと持つ力加減を間違えている。

 

「カンチョーシツ…ガクッ」

 

妖精さんはとばっちりである。

 

そして艦長室へと辿り着く。

そこの水密扉を強引にこじ開けた。

 

会いたかった金剛が、妹の榛名と取っ組み合いをしていた。

 

さらに、男がズボンを半分程度脱がされた状態で縛られて転がされていた。

 

「…提督のハートを掴むのは私デーッス!」

 

「勝手は榛名が許しません!」

 

「…長門か。久しいな」

 

格好とは見合わない冷静な男の声が長門の耳に衝撃と共に届いた。

 

 

 




あと艤装展開すれば縄切れるんじゃね? という野暮なツッコミはなしで。

おまけ

図鑑説明 加賀(苺味)

私、加賀は八八艦隊三番艦として建造されました。
様々な運命のいたずらもあって、最終的に大型航空母艦として完成しました。
あの戦いは赤城さんと共に栄光の第一航空戦隊。
運命のミッドウェー以降も主力空母として奮戦しました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。