提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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あけおめ ことよろ


提督(笑)の無謀

史実で言うところのサボ島沖海戦の後、五十鈴でトラックに戻ってきた。

その戦いで損傷した艦と一緒にである。今は軽傷の青葉が工作艦明石に横付けされている。

そんな中で、五十鈴で大人しく鼻歌歌い…ってもフンスフンスとしか聞こえないような奴をだが、それをしながら設計図を描く。

そろそろ零戦の後継機作らなあかんと思った訳だ。

紫電を艦載機仕様にすれば良いと思うんだけど、たぶんそれじゃ納得しない連中がいる。

って事で『烈風』の青写真です。あとは堀越さんにぶん投げる。

零戦二一型の初期不良の対応も落ち着いた筈だし、局地戦闘機の雷電は長野重工製だから余裕あるだろ。

うちの会社は雷電の製造と中島さんとこと一緒にやってた陸軍機『疾風』の製造がもうすぐ開始でてんやわんやだから無理。

という訳なので「二郎ちゃん後は頼んだぜ!」なのだ。

 

と遠い本土に思いを馳せる今日この頃。

 

してたら主計さんから司令部が呼んでいると言われたので司令部に赴きます。

そういや、この主計さんは俺が艦長してた時に五十鈴にやって来たけど、今もいるんじゃ異動無かったのかな。

などと現実逃避気味に赴いた泊地には聯合艦隊旗艦をはじめ金剛型四姉妹と、新旧戦艦の勇壮な姿が望める。

 

…え、大和? なんで?

 

「…主計。司令部とは第四艦隊でいいのだろうか?」

 

「いえ、大和にお連れしろと」

 

あ、そうですか。こりゃ井上さんからの説教だけじゃ終わらんな…。

 

 

 

 

はい、滅茶苦茶怒られました。

 

現在の直属上司である井上さんから聯合艦隊司令長官から御付きの参謀方に至るまで。

井上さんも長官もこんな時ばかりは仲良く一緒にお説教するのか。そのままどうぞ仲良くやってください。

ってか、黄金仮面はまだしも変人参謀は同期とは言え、俺より階級が下だろうがちくしょうめ。

ネチネチと厭味ばかり言いやがって、ミッドウェー海戦後に大和に乗り込んで文句言ったのを相当根に持っていると見える。

しかしあれは参謀の酷い言いがかりの様なパワハラだと思うの。

命からがら逃げきった現場のパイロット達。そこに今度は遥かに階級上の参謀が待ち構えていて「なぜ失敗した?」とか言われても「ごめんなさい」しか言えんだろうに。

だからかわりに「お前らの作戦が無謀だった」と言ってやった。

そしたら変人参謀が刀に手をかけやがった。そら、ぶん殴るしかなくなるでしょうが…。

沸点低いにも程がある。

 

──直ぐに手が出る貴方が言っても説得力に欠けると推測。

 

…なんも言えねぇ。

 

「で、君の意見は?」

 

一通り説教終えてすっきりした様子の長官。

英国東洋艦隊の撃破とサボ島沖での戦果で、陸奥の損傷と今回はまぁ、お咎め無しで収めてくれるらしい。

それに関して黄金仮面は黙って見守ってたが、変人参謀はグダグダ言ってたけど無視だ。

 

「囮でしょう」

 

長官の言った言葉に対して俺の発言。

 

なんでも、アリューシャン方面で米戦艦含む艦隊がアッツ島に対して嫌がらせの様な艦砲射撃を実施したそうだ。

それに対して俺の考えを丁度いるから聞いとこうという訳だ。

こんなん史実になかったぜ…。

いや、そんな事言ったら亀作戦自体史実になかったけどさ、いよいよ持ってる史実知識が頼れなくなってきた。

でも大丈夫。俺にはミック先生が付いている。なんとかなるだろう…たぶん。

 

ちなみに戦艦って何が来たん?

 

──ニューメキシコ級ミシシッピおよびサウスダコタ級アラバマ。

 

アラバマって整調訓練中ちゃうんか…? 就役が8月だろ。

今は11月に入ったばっかりだぞ…。なんて無茶な事を…いやそれだけアメさんが切羽詰まってると考えよう。

囮と言ったように南太平洋に来る日本空母の進出を少しでも遅らせたかったのだろう。

でアッツにちょっかいかけて、加賀、瑞鶴は急遽反転してるんだから囮は成功か。

第二次ソロモンでそこまでひどい損傷じゃなかった翔鶴と飛龍ももう少しで修理は終るだろう。

日本の空母は万全体制が整う。搭乗員の訓練が間に合ってるかどうかは別として…。

アメさんは囮まで使って何を狙ってるのか? いや、時間稼ぎか…。

 

ミック先生、もしかしてレンジャーこっち(太平洋)側に来てない? もしくはサンガモン級。

 

──レンジャーおよびサンガモン、スワニーが太平洋上をハワイへ向け航行中です。

 

へぇ…。こっち来ちゃうのか…。

サンガモン級とは油槽船を改造した護衛空母だ。

崩れ落ちたい気分です…。

アメさんにはもうちょっとナメプして欲しかったなぁ。あくまで欧州戦線が主戦場だろうに…。

日本なんて片手間で潰せる! ってな感じで、せめてあと半年くらい思っててほしかったよ…。

連合国は北アフリカ戦線、トーチ作戦どうすんだろうなぁ。

パットン将軍とか生き残れんの? ロンメル閣下に全力でエールを送ろうと思う。

そこで撃退して東部戦線でソ連となるべく長く殴り合っててほしいところだ。

 

まぁ、遠い地の同盟国より今は自分の国の事考えなきゃな。

 

「だろうな。目的は何だと思う?」

 

「レンジャーを太平洋に呼び寄せたのでしょう」

 

あと護衛空母も二隻ついてきますぜ。

大和の作戦会議室に重たい空気が流れる。

 

そもそもだ、長官たちは何しに来たんでしょうか。

まぁ十中八九、ガ島に対して大規模攻勢だろうけど。

金剛、榛名によるヘンダーソン艦砲が行われてないし、アメさんサラトガしかいないと思ってただろうしな。

 

「加賀と瑞鶴は何時こちらに?」

 

「隼鷹を向こうに回す。それと入れ替えでこっちだ」

 

道理でトラックでその姿を見なかったわけだ。

隼鷹を北方派遣して、日本近海で右往左往している加賀瑞鶴がこちらにと言う形ね。

 

「それをもってガ島に大規模攻勢ですか」

 

大和がここまで来てるし、金剛榛名のヘンダーソン基地艦砲起こって無いし、そう考えるのが普通だよな。

 

「いや、ツラギだ」

 

「は?」

 

いや、え? いやいやいやツラギってなんでさ!?

 

「……」

 

長官も呆れた顔してるけどさ、事情を教えてくださいよ。

 

「……」

 

それを聞いて井上さんが顔しかめているけど、俺にも説明プリーズ。

そりゃあね、ガ島の北にあるツラギは取れるなら取った方が良いよ? でもそれ位の価値でしょ。

ガ島を完全占拠できれば、アメさんは恐らく孤立を恐れて撤退するだろう。

もし撤退しなくても日本が大分有利に進められるはず。それからでも遅くないと思うのになぜツラギ?

 

「陸軍さんがどうしてもやりたいそうだ」

 

お、おう。

 

長官のその言葉で察してしまったわ。

目の前の二人の表情から海軍としては俺の考えと大体一緒だという事が分かる。

 

ここに来て面子ですか陸軍さん。勘弁して欲しいですわ。

要はガ島で血を流してんのは主に陸軍だ。しかもそれを主導したのが海軍だからね。

海軍としても突っぱねるのが難しいという事ね。

 

「ガ島に対しても攻勢を行う事を飲ませたがね」

 

井上さん、そんなしかめっ面で言われてもさ…。

てかこれってさ、具体的な作戦聞いてみなきゃ分らんけどさ、ヘンダーソン艦砲射撃+南太平洋海戦+第三次ソロモン海戦みたいな戦いになりかねないぞ。

カオスですわ…。多重影分身でせめて三人くらいになれないかしら…。

そんくらい現実逃避しちゃうわ。なら、せめて

 

「翔鶴と飛龍が復帰してから行うべきです」

 

「レンジャーがこちらに来る。君が言う事が本当なら、急ぐべきだろう」

 

そりゃそうだが…。急いでも加賀、瑞鶴がこっち来るまでにアメさんも合流してしまいそうだけど…。

 

「私はどちらの所属になるのでしょうか?」

 

「五十鈴と共に二水戦に編入する。ただ田中君は旗艦を早潮にするそうだから、君は五十鈴に残りたまえ」

 

「はっ」

 

しゃあない作戦書見せてもらってやるだけの事はやろう。

他に出来る事…、あ、重慶で米英中ソが会談してたよな。

 

日ソ中立条約してんのに対日戦略練ってるのおかしいと思うの。

そこんところ抗議しといた方が良いと思うの。序でにコーンパイプのおっさんが豪州ででかい顔してんだろうから、

それの牽制もかねて平文で色々傍受できるようにしてあげようね。

作戦漏れてますって分かればきっと会談した国同士で疑心暗鬼になるよね。どこの国が果たして情報漏らしたのか、と。

 

あっ、

 

「暗号の件はどうなったのでしょうか?」

 

「その件に関しては現在の所、漏れてないという事で纏まった」

 

長官、井上さん、黄金仮面と変人参謀も同じ意見か…クソッ。

 

前途多難だな…。

 

よし、ムシャクシャするから英国首相を嵌めて憂さ晴らししよう。

あの人、愛人囲ってたよね? すっぱ抜いたろ。

木曜日に会談の事とコーンパイプのおっさんが粋がってる事と英国首相のスキャンダルを暗号と平文を使って、

 

「長官、一つ作戦を具申させて頂きたい」

 

オペレーション ナガノカノンとでも名付けようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テートクゥ…」

 

呼びかけられて目を開くと知らない天井…。

って訳じゃなくて鈍い鉄色。平波の中?

航行してる感もあるな。ぼぅっとする頭を傾ければ金剛の顔がドアップでした。

 

「……」

 

はて? 俺は何時の間に寝たのだろうか?

お、おう、頭ガンガンするぅ。

 

「テートクゥ…」

 

金剛お姉さまメッチャ泣いてるやん。どうした?

なんかめっちゃ体がだるいのだけど、頑張って金剛の頭に手を乗せる。

 

「テートク!」

 

うえーい。おはようさん。

あれ、声が出ない。ちょっとお水貰えませんか?

 

「えっぐ…えっぐ」

 

俺の両手を掴み、顔ぐちゃぐちゃにしてる金剛お姉さま。

 

ちょっとミック先生。

 

──艦娘収容容量の限界を超えました。危うく貴方の頭の私の領域が消えるところでした。

 

ふむ。頭痛を堪えながら思い出してみる。

 

南鳥島は今日もいい天気だなぁ。

倒壊した司令部施設カッコカリの前で金剛型姉妹が勢揃い。

大戦中は第三次ソロモン海戦前…いや南太平洋海戦前にトラックで仲良く並んでたな。

なんて事を思い出しながらいた時に、

 

「金剛お姉様になんて無体な事を! この私、霧島。相手が誰であろうと……」

 

誰であろうと何だろうか。

そして霧島ネキに引き摺られてきたヒェーは首から『飛叡型航空戦艦』って札を下げてるが何だろうか?

 

「……」

 

「……」

 

見つめ合う事、数秒。

霧島ネキは眼鏡を外して拭きだした。

 

そして再び装着。

 

「……」

 

「……」

 

見つめ合う事、数秒。

 

「…お姉様」

 

「ハイ霧島。久しぶりデース。元気にしてマシタカー?」

 

「はいお姉様。ところで、こちらの方は…」

 

「長野業和と言う」

 

「ワタシのテートクデース!」

 

「…長野…業和…」

 

と霧島ネキはそう呟き、周りの面子を見渡し始めて眼鏡をクイッ。

 

「…私、霧島です宜しくお願いします司令」

 

手を掴まれた。

 

「うん?」

 

「っしゃあーー!」

 

ガッツポーズする霧島ネキ。

え、どうした急に? あれもしや…指揮下に入ったか?

 

──そのようです。

 

何故に!? そんなに関わり深くないぞ?

ミッドウェー海戦で主力艦隊までの撤退戦を共にしたくらいだろ。

あとは第三次ソロモン海戦の時は別に霧島に乗ってたわけじゃないですし…。

 

 

なんでだ? と思ったけど、金剛型長女、次女、三女が俺の指揮下にいることにティンと来たんだろう、たぶん。

それならば自分もって感じか。そんな感じで提督決めてもいいものなのかは謎だが、そこで霧島ネキ長野艦隊に参戦。

 

次が、

 

「いやいやあるわけない。そんなわけない」

 

とかエセ関西弁でブツブツ言いながら駆逐艦の様な軽空母娘が近づいて来て、

 

「……」

 

「……」

 

見つめ合う事しばし。

沈黙に耐えられなくなって、

 

「…龍驤型駆逐艦」

 

龍驤型駆逐艦龍驤じゃんティーッス! って挨拶した。

 

「なんでやねんっ!」

 

スナップの効いたナイスツッコミを頂いた。

 

「うおおお!? 本物やん! なんで、なんでや!? 靖国から助っ人外国人枠なんか!」

 

と意味わからんことを言っていたよな。

え、もしかしてツッコミ貰っただけで指揮下に入ってんの? 嘘だろお前…。

 

──真実です。

 

これで我が指揮下の艦娘の数23名。

なんとなく艦これ提督的に24名でハンマープライスな感じがしたわ。

 

その後は

 

「司令官? 司令官だーっ!」

 

口を半開きにしていた清霜が飛び込んできただろ?

キヨシ殿はレイテでしばらく一緒しただけ、礼号作戦時も俺は日本本土側から囮役やってたくらいだから、そこでの面識はない。

礼号作戦自体は史実と時期が違うし、月齢が新月に近い状態だったから清霜も生き残って、北号作戦で本土まで戻って来た。

その途中で航空機から爆弾貰って損傷したらしいけど。

その時も特にこれと言った接点はない。硫黄島に向かって艦砲射撃してたからな。

坊の岬沖は、入渠がようやく終わったところだったが、主砲の連装砲が無い状態だった。

それでも出撃するっていうから天津風と同じように若い連中をなるべくそこに異動して、補給間に合わず待機です。

 

というわけで、レイテでちょっと一緒、あとは最後に艦隊見回りの挨拶しただけだぞ。

 

「ねぇ、どうして? どうしてどうして?」

 

めっちゃキラキラした瞳で見られる理由が分からぬ。

 

で、指揮下に入っちゃったわけ?

 

──肯定。

 

お、おう。

 

それじゃあ、最後は霞ママは…。

 

「…はぁ!? はぁあ!?」

 

指こっち差して驚いた表情だったよな。

 

戦前も特にこれと言ったエピソードはない。あれが朝潮型かぁ位にチラ見した程度。

大戦中前半の霞は北方での任務で面識ない。

中盤は修理と訓練任務で内地にいた。修理は舞鶴だろ。だからこの辺りでも面識ない。

下請け業務で長野造船(茨城県の東海村久慈川河口域)で同じ頃、修理したのは姉妹艦の大潮だった筈。

礼号作戦は清霜と一緒で直接関係ない。坊の岬沖海戦も第二艦隊だったけど、こっちは別動隊だし。

 

あとはレイテくらいじゃね。

まぁそのレイテがてんやわんやだったけどな…。

色々あって本当に色々あって第一遊撃部隊・第二部隊の司令引き継いで、反転命令無視してスリガオへ…。

 

いっぱい沈んだんだ…。

 

ちゃう、ナイーブになるんじゃなくて。つまり霞ママとは大して面識はない。

 

「…霞よ。…今度は助けるから」

 

半目でこちらに手を差し出す霞ママ。

ところで助けるって何の事?

 

「……」

 

「……」

 

で、見つめ合う事しばし再び。

居た堪れなくなって差し出された手を握る。

ほら、意味わからなくね? これで指揮下に入っちゃうんだぜ?

 

おうけー。ここまできちんと記憶はある。倒れてない。

計25人の艦娘さんを指揮下においたけど大丈夫だった。

 

あっ、

 

「ミーはおフランス生まれのカンムス、コマンダンテストざんす。提督どうぞよろしくお願い致します」

 

一連の流れを見ていたコマちゃんが手を差し出してきたんだった…。

 

そのまま、何も考えずに差し出された手を握りましたわ。

 

 

 

「テイトク、大丈夫デス?」

 

大丈夫じゃないよもうっ! 色んな意味で頭痛いわ!

 

俺の馬鹿っ!

 

 

 

 

 

 





英首相の毛根を死滅させていくスタイル。まさに鬼畜の所業。

あとフンスフンスの鼻歌は例の歌ではないです。
とあるCMソング的ななにかです。

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