世に文月のあらんことを…。
そして前話で曙を表記するところを漣になってました。混乱させた方ごめんなさい。
エンタープライズに魚雷ぶち込んだのも、主人公に体中舐め回されたのも、ぼのたんです。
そしてあとがきに書き忘れたこと。
この世界の艦これユーザー転移者は主人公がが歴史を変えた世界線のユーザーです。
彼はその事説明されたときに微睡んでたので気付いてませんが。
春うららかな今日この頃。窓辺からの温かい光に包まれながらセーラー服姿の少女は頬杖をつき、事務机に置かれたパソコン画面を眺めていた。
慎ましい胸元の橙色の特徴的な大きなリボン。
光に照らされた春緑の髪は大きな緑色のリボンに結わえられ、いつもは快活そうであろう瞳は今は少し垂れているが間違いなく美少女であろう。
「夕張さん、今度使う講義の資料出来ましたか? あ、またその映画見てる」
「いいじゃない、好きなんだから…」
どっかのオータムクラウドと名乗る駆逐艦が読んでるものより万倍健全だと夕張は考える。
「私もその作品好きですけどね…」
そんな彼女に声をかけたのは、白い士官服にミニスカート、そこから覗く眩しいおみ足。
手入れが行き届いているであろう銀糸の髪を緩くふわりと両サイドテールにした
こちらは大分、豊かである。何がとは言わない。どこか小悪魔めいた雰囲気を持つ美少女である。
「はいこれ」
「…あの夕張さん?」
そう答えつつ、銀糸の髪を持つ少女、鹿島は夕張から受け取った資料を流し読み、
「何でしょう? 試し撃ち、ご所望ですか?」
「いえ、そうではなくて…この 長野提督が愛した艦 っておかしいと思います」
資料の見逃せないある一点に着目する。
「えぇー、私の武装を説明するんだったら必要よね」
「長野提督がそんなこと言った記憶も記録もありません」
大体、艦娘の武装に関する資料なのに、軽巡の主要武装に関する項目の先頭に、軽巡洋艦を代表する船、長野提督が愛した艦夕張という下りは不要だろうに。
ていうか、お前は軽巡を代表する艦でもないだろう、どっちかというとイロモノ枠じゃないのか、などと本人が聞いたらぶち切れるかもしれないことを考えながらも苦笑い程度で済ませている鹿島である。
「でもぉ」
「でもぉ…じゃありません。せめて書くなら平賀氏が愛した艦ですよ」
設計者が草葉の陰から泣いてると思う。
けど気持ちはわからなくもないと鹿島は考える。第四艦隊の旗艦時代、珊瑚海海戦の直前にやってきた奴は彼女にとって衝撃だった。
良くも悪くも練習巡洋艦だった鹿島は海軍の人間はこういう者たちかというのが良く見えていた。
その常識をぶち壊したのは間違いなく奴だった。
奴が上層部に噛み付いていた所を収めようとしたら、とばっちり食らって奴と一緒にこちらに回されたと言っていた哀れな士官が、アイツに関わったばかりに…と司令に嘆いていたのがすごく印象的だったのを思い出す。
良くも悪くも目立つ存在ではあった。
鹿島はトラックで第四艦隊司令部として機能していたので、奴が乗っていることは少なかったが、夕張は奴にがっつり、こき使われていた。こき使われていたかどうかは本人達がどう思うかであろうが…。
「はいこれ」
鹿島がそんな思考に浸っていればいつの間にか修正された資料を手渡す夕張。
「夕張さん」
長野提督が指揮し大活躍した艦 となっていた。
「なによぅ」
膨れた顔の夕張に
「…そこは譲れないんだ」
と鹿島は呟いた。
これ以上この話をすると不毛になりそうだったので鹿島は話題を改める事にした。
「あ、そうでした夕張さん」
「何でしょう? 試し撃ち、ご所望ですか?」
どんだけ試し撃ちしたいのやら。
「それはもういいですから…。今日、新しい提督候補の方がいらっしゃるそうです。施設の案内よろしくお願いしますね」
「え? この時期に? 病気か何かで入学が遅れたのかしら」
季節は桜舞う時期であるが海軍士官学校の入学日からはいささか日付が経過している。
「妖精さんに呼ばれてきた方だそうです」
「うわぁ…またメロンちゃんて呼ばれる…試し撃ちしても…」
「だめですよ」
顔を顰め、何やら物騒な事を言おうとした夕張に鹿島は釘を刺した。
「あぁ~もう~っ。わかったわよぅ」
「じゃあ私も講義がありますから失礼しますね」
鹿島の背中を見送り、窓の外を見上げる。
「私の提督はいつになったら着任するのかしら」
誰に聞かれることもない呟き…。
PCの画面はクライマックスを迎え、提督と金剛が沈むところであった。
というわけで、現在海軍士官学校の校長室です。
校長先生にご挨拶。
「徳田少佐、観測者を案内してまいりました」
敬礼する徳田君。
「……」
観測者って俺の事か、転移組の事そう呼んでるんだ。
「御苦労。校長の獅子飼(ししかい)だ」
眼光鋭い壮年の階級章は中将殿ですね。めっちゃ見られてる、超見られてる。
そらそうか、徳田君と俺なら俺の方がイケてるメンマだもんな。だが、生憎俺には衆道趣味はない。
や・ら・な・い・か? と問われても、 や・ら・な・い・YO! と答える。断固としてである。
というか徳田君といい、この中将といい海軍は腐女子が喜びそうなやつしかいないのか…そんな…まさかな。
「おい長野」
なんだ? 今すごく気持ちが萎えてるんだけど…。あ、自己紹介ね、おうけーおうけー。
「長野業和」
敬礼もしておこう。第一印象は大事だよ。まぁ俺の場合、口数少なくて威圧している雰囲気あるらしいからあんま意味ないけど。
「ふむ。君の父上は旧海軍好きかね?」
親父殿? なんで急に親父殿の話だ? うちの親父殿は絵描きになりたかったそうだが、自分の才能の無さに絶望したそうな。
妹が小さい時に動物を描いてと強請ったときに出来上がったUMAは今でも忘れられない。
親父殿、絵描きにならなくて正解だ。いや、今ならあのエキセントリックな絵が売れた可能性も…ないな。
「いや」
日露戦争の時も日本がお祭り騒ぎの中醒めてた記憶がある。好きではないだろう。
「なら祖父殿か?」
「知らな…知りません」
爺ちゃんに会った事ねぇよ、幕末の志士だったって話だけど。どうだかねぇ? てかなんでそんなこと聞くの?
「そうか」
「……」
「まず一つ、この世界はそんなに甘くない。私は君たち観測者組にさほど期待はしていない。
確かに提督たりうる能力は高いのだろう。そして幾人かの功績には目を見張るものがある、それは認めよう。
だが、君たちのほとんどはどこか遊び感覚でやって来る。そんな者に大事な戦力は預ける事は出来ない。
ここで過ごす間に己がどんな世界で過ごすことになったか、そして守るべきモノが、どういったものか心に刻んでほしい…
以上だ」
そういって中将は退室を促した。
ふむ、彼は尊敬に値する軍人だ。衆道だと思ったことは謝ろう。
彼の言ったことは正しいし、俺も前大戦を経験してなく普通の転移者だったら彼の気迫にビビってたと思うわ。
いや、結構ビビってたんだけど…。当事者じゃないとわからない事ってあるもんなぁ。
平和ボケした奴に戦闘指揮が務まるのかって話だようん。
「……」
「……」
廊下に出てしばらく、二人無言で歩く。どこ行くのかは知らない。
「ふぅ、やはり校長の前は緊張するな」
「そうか、…少し聞きたいことがある」
「なんだ?」
「転移者、いや観測者達は皆が提督なのか?」
俺も転生したとき、ミック先生が居なければビビって何も出来なかったんじゃないだろうか?
赤紙もらってどっかの戦場でのたれ死んでるのが関の山だったんじゃないだろうか。
そう考えるとだ、よほどのタフか、馬鹿か、艦娘愛が強くないとビビって逃げ出しても可笑しくないのでは?
「…いいや。逃げ出した奴もいるし、艦娘に手を出そうとしてボロボロになった奴もいる。他にも色々だ。観測者組で提督やっているのは現在4名だ」
「…そうか」
年間2~3人、深海棲艦が現れたのが5〜6年前だそうだから、残るのは3分の一程度か、これが多いのか少ないのか知らない。
だけど、残った奴らは頑張ってるんだろう仲良くしたいものだ。
出来れば駆逐艦をprprする会を作りたいしな。
「…その、なんだ。その連中も…決してマトモというわけではないからな」
「…というと?」
「駆逐艦をいつも膝にのせて執務する女、厨房にこもり艦娘に振る舞うことが仕事になってる仕事しない奴。あと瑞雲至上主義」
なんだろう、シリアスがシリアルになってくこの感じ。
「あと一人は?」
「…優秀だが…ホモだ」
「……は?」
「…優秀だが…ホモだ」
何で二回言った!? そんなの大事な事じゃねぇんだよ!
「お前も気を付けろ」
え!? 何を、尻を!? 真顔で言わないでよ超怖いんですけど! やだやっぱり腐女子が喜びそうな海軍ジャナイデスカーー!
「着いたな。ここで待ってろ。そのうち誰か来る。俺の仕事はここまでだ」
一つの部屋に通される。中は質素な応接室だ。
「そうか」
俺はもう何か疲れたよ。精神的にも肉体的にも初日も二日目もほとんど寝てないんだよお。
「願わくば、お前が優秀な提督になることを祈る。では」
敬礼して出ていく徳田君にこちらも答礼で答えておく。
いい天気だなぁ。ちょっと微睡んでもいいかなぁそこの窓際なんて絶好のお昼寝スポットだぜ?
「第四艦隊に異動…ですか…」
「そうだ」
長官は重々しく口を開く。
「……」
「あんだけ俺や上に噛み付いてこれで済んだ事に感謝してくれてもいいんだがなぁ?」
それは分かる、分かるが…。
「何をそんなに恐れてるんだ? 君の作戦でエンタープライズを沈めたじゃないか。
もし米国の空母が出てきてもワスプ、ヨークタウンの2隻こちらは赤城、加賀、蒼龍、飛龍の4隻なんだ」
「それはそうですが…」
ミッドウェー島攻撃中に空母狙われたらどうするんだ?
ワスプ76機、ヨークタウン90機+ミッドウェー島の航空機部隊、もしかしたらあのチート国家ならホーネットの復帰もあり得る。
赤城と加賀だけで補用含め約90機ずつ、この上更に蒼龍と飛龍70機ずつ。なるほど勝てると思うわ。
だが、
エンタープライズとホーネットの攻撃でどれだけ艦載機が落とされたと思ってるんだ。
半数だぞ加賀と祥鳳の艦載機の半数だぞ。陸軍の爆撃機を載せていたにもかかわらずだ。
VT信管が本格配備される前でそれだけの防空能力だ。アメさんの射撃管制システムを甘く見てたつもりは無かったが見積もりが甘かったと言わざるを得ない。
全滅は無いにしても確実に痛手を負う。それは避けたい。
「俺も空母は怖いさ、だがなこれで勝てば米国も音を上げる。そうすりゃ早期講和だ」
馬鹿な! そんなのアメリカの民意が許さない! という声を必死に抑える。
そもそも長官と俺では戦略が真逆だ。米国の部隊を適当な島に上陸させてちくちく通商破壊と島への爆撃で
米国の厭戦ムードを高め時間を稼ぎ、徐々に戦線を後退、今日本で建造中の空母全部の完成を以て日本近海で迎え撃ち、空母総力戦ののち艦隊決戦、此れでもかなり無茶だが。
長官の言う戦略よりは…、
皮肉にもドゥーリトル阻止してエンタープライズを沈めたことがMI作戦を後押しした形になってしまった。
結局は、何も出来ず異動。
しかも、ドゥーリトルで活躍し、搭乗員や艦載機の補充でドタバタした祥鳳に乗ってだ。
珊瑚海海戦だってMO作戦には口を出す暇もなく開戦だ。あんなの失敗して当たり前だ。
事前の綿密な打ち合わせも訓練もなしで成功する方が奇跡。
クソやめろよ。自分の無力さを感じさせられるじゃねぇか。
第四艦隊の上の方が先の珊瑚海海戦の責任問題でごたごたしているのを良いことに命令をミック先生に捏造してもらい、夕張に乗り天龍、龍田あと第29駆逐隊連れて護衛任務についた。
部下に護衛対象と場所を聞かれたが秘密にした。
ミッドウェーに空母を護衛しにちょっと遠出だ。
途中、潜水艦一隻沈めて戦場に着いてみれば赤城は大破炎上中、蒼龍はすでに後部は炎上、船首甲板が海に浸かってた。
魔の五分が有名だけどミッドウェー海戦は七日間あったのだ。日本も決して今回は慢心してたわけじゃないし、電探により敵の艦載機が近づいてるのは分ってた。
にもかかわらずそれだけ被害を受けていた訳だ。
搭乗員の疲労や、艦載機の損失、整備員たちの疲労だってある。挙げればきりがないがこれが空母戦の恐ろしさだ。
ワスプ、ヨークタウンは沈めたらしいがホーネットはまた生き残ったらしい。
(ドゥーリトル阻止の時に)エンタープライズは沈めたものの、そっちを集中的に狙ったというのもあるが、ホーネットは中破判定で逃げられた。
まさか、ミッドウェー海戦までに復帰してくるとは思わなかったけど、エンタープライズに代わりワスプ、ヨークタウン、ホーネット。
いま米国に動かせる正規空母は無くなった。だが、
もうすぐエセックス級の脅威が始まる。
とりあえず損傷した加賀を連合艦隊まで引っ張って、最上も誰かに引っ張らせて後は…
それよりもまずはホーネットを沈めろと喚いている目の前の大男か、これ死んだかも…。
厭な夢を見てしまったマジであの人、人殺しの目だよ。
「赤城も蒼龍も助けてやりたかったな」
「そうですね。…でも提督頑張ってましたよデータもバッチリ」
「…夕張か」
アルゥゥェェェ!? なんで俺メロンちゃんに膝枕されてんの!? アレ、アレェェェェ!?
ちょっと訳が分からない。
感想でタグの件があったのですが、このタグはつけとけってのあれば反映させます。
あ、艦これキャラのタグは今のところ考えてないのでそれ以外でオナシャス。