提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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前半、架空戦記のNAISEIパートみたいになってるから艦娘さんと提督のやりとりを見たい場合、半分くらいまで読み飛ばして。



提督(笑)の絶対命令

──1928年(昭和3年)3月

 

サイドシートに乗り、東京の街並みが横目に過ぎていく。築地から三軒茶屋まで平成の時代なら20分位だろうか。だかこの時代、東京といえども舗装された道は一部で、何度かサイドカーが飛び跳ねてケツを強かに打ち付けている。もう少しスピード上げて走ったら吹っ飛ぶこと間違いなし。そこまでスピードが出るものでもないがエンジンの振動も強い。出発直後は目的地まで可能な限りメモを取ろうと意気込んだが、持ってきた鉛筆の芯を5本折ったところで諦めた。

 

若者の町 渋谷はまだ原っぱと田んぼばかりで渋谷川、いや、隠田川だっけか? 其所では水車がまだ現役。高層ビルが乱立してるわけでもないので皇居、建設中の国会議事堂、完成してそれほど経っていない明治神宮が一眸出来たりする。

 

「震災の復興も順調そうだな!」

 

バイクを運転する栗原君がエンジン音に負けないように大声を出す。革のフライトキャップにゴーグル姿がなかなか似合っている。

 

「そうだな」

 

いつも通りの声しか出ないが、どうにか聞こえたようで一安心。

 

関東大震災から約5年。全く元通りと言うわけではないが表面上は落ち着きを取り戻してはいるだろう。一つの目標であった死者の数は史実よりは少なくはなった。それでも四万人が亡くなった。それで終わりというわけでもない。確かに死者は少なくなった。だが、それは家や職を無くし、親を亡くした者が増えたという事でもある。当時、この時代に生を受けて二十半ばの俺にはまだまだ力が足りなくて、今もそれは変わらない。

震災の一年前、ちょうどこの季節だったか。吉原で父親と共に身売りに来ていた少女を買い取ったのは。で、どうしたものかと苦労したな。この時代の価値観てのは弱者にはなかなか厳しい。いや、平成でも問題を抱えたままだった。実際、普通に生活してたら鼻ほじりながら「自己責任乙」とか「可哀想だけど仕方ないね」って言って終わりだ。民度が成熟したと言われた時代でソレ。

当然、今のこの国にはセーフティーネットなんて「なにソレ美味しいの?」状態で、政治家たちもグダグダしてるのが目につくようになった。根付きつつある議会制民主主義が良いんだか、悪いんだかって考えてしまう。

 

妹、文乃が誕生したことで少女は女中見習い兼、文乃のお世話係としてなんとかしたが、一人救うだけでもそれだ。震災の被災者、万を越える人達全員救えるわけもなく、来年には世界恐慌だ。何かしら手を打たないと五・一五事件まで一直線、その前に満州事変か…。もっと、もっと力をつけなくてはならない。それで少しでも救える人達がいるのなら…。 本当の開発者や技術者には悪いがもう行けるところまで突き進ませてもらう。

 

そうやって今、その中の一つが形になった。

サイドミラーを覗けば二台のサイドカー付きモーターサイクル。一台はアメリカ製のインディアン。もう一台はBSA A7シューティングスターっぼい車両。

長野商会発動機部門製、

仮称NH‐01。

多気筒エンジンではなく単気筒エンジンを開発採用。1925年から作り始め、今年4台が完成した。

テスト走行を兼ねて海軍大学から三軒茶屋まで同期の皆とツーリング。

メンバーは西田君、松田君、早川君、野元君、栗原君そして俺。

商会の人が海大に「へへ、ついに完成しやしたぜ」と参考にしたインディアン(分解したり組み立てたりいじくり回された奴)と共にやって来て、置いていった。

 

海大に置かれた三台のサイドカー付きバイク。

 

そしたら、もう三十路の良い大人たちが「俺が乗る」と言って乗り回しはじめた。

教官にめっちゃ怒られたからな… 俺がっ! だいたい乗り回すだけ乗り回して整備するのも俺なんだけどっ!

まだまだバイクの黎明期。手が掛かるんだよ。それが単気筒エンジンにした理由でもある。

 

「古村が悔しがってたな」

 

兵学校でも海大でも一期下の堅気に見えない後輩の顔が浮かぶ。後輩と言っても年齢は上だけど。

あれはもうすぐ到着する目的地で、タダ酒が飲みたかっただけだろう。

 

「もう少し振動を抑えられないのか? 長い時間乗ると手が痺れる」

 

「国中に舗装された道ができないと運用は難しかろう。それにモーターサイクルはすぐに故障すると聞いているが」

 

目的地に到着して、西田君と松田君は事前に気付いたことを教えてくれとお願いしていたので、それぞれの意見を述べてくれる。

 

「満州やフランスでの運用ならどうだ?」

 

「…それなら。しかし故障が多いのでは話にならないのでは?」

 

真面目に議論する彼らの一方、

 

「さっきのは狸だろう」

 

「いいや、貉だった」

 

早川君と野元君は何の会話しているのか?

 

「「長野」」

 

俺は見てないからそんな事言われても困るのだけど。

栗原君に目を向けても首を振るだけだ。彼も見てないようだ。

 

「…地域によっては狸もアナグマもイタチもハクビシンもムジナと呼ぶ」

 

そう言ってさっさとお店に入ってしまう。

走行テストでツーリングを行ったのは、ついでなのだ。

それも大事ではあるのだけど、ここ石橋楼、三軒茶屋の名前の由来になった茶店の一つ。茶店の名前は当初のそれとは違っているし、今は喫茶店から洋食を提供するようになった。ここで今回は待ち合わせしてるんだ。個人的には転生者ですか?って聞いてみたい人に。

ついでに女将に豚肉レシピの反応も聞きたい。

 

「お待ちしておりました」

 

出迎えてくれた女将に挨拶して、同期生達には適当に何か食わせてあげてとお願いし、奥の座敷に通してもらう。

 

「…遅くなりました」

 

「いや、この年寄りが早く来てしまっただけさ。さ、時間は有限だよ」

 

そう言って座を薦めてくれる小柄なご老人。

仕立ての良さそうな紳士服に卓にはカンカン帽子。

幕臣、官僚、実業家として時代を駆けて来た御仁だ。

 

「学校の方は九月には開校できるよ。ただ鉄鋼の方への参入は商工省が難色を示していてね。もう少し時間がかかりそうだ」

 

さっそく進捗状況を説明していただけるのは助かる。

海軍兵学校に入学した頃から個人で株式投資をしていたが、1921年に株式投資を主業務に商会を設立した。

またドイツからの移民も募集。幅広い人材を確保する為に俺が東奔西走するのは難しいので、親父殿に頑張っていただき、こちらは史実で活躍した有名人に片っ端からアポ取りをした。大抵は門前払いもいいところで、会ってくれても協力を得られることはなかった。目の前の御仁だけだった。

平成のネットが普及した世では転生者疑惑をもたれるくらいにチート経済者。日本のお札にならないのが本当に不思議。日本資本主義の父と謳われた渋沢栄一氏。

会ってもらった当時、数時間にわたって俺の考えとアメリカと戦争に至るまでの経緯を説明したら全面的に協力して頂ける運びとなった。

 

「朝鮮への投機は控える事業家は増えたがね、国は未だに多くの予算を組んでいるよ」

 

食事をしながら様々な話をする。

その中で出てきた話の一つ、朝鮮半島の問題。

ロシアの南下に備えなければならないから国境線と基地。それを支える兵站道路や鉄道の整備はしなくちゃならない。それだけに金を使うというのが極端な話理想。だが、それをすると仕事のない半島出身の国民が日本国内にやってくる。治安悪化に失業者増加が目に見える。ならば独立自立させる。…そんな力も近代国家としての統治ができる人材もいないから併合したんだというジレンマ。

何にしろ、今は政局を動かすほどの力はない。とにかく力をつける。渋沢氏が生きているうちは財閥系の牽制はできるのだ。急がなくては。

 

「今こそ、一致団結してマルクス主義社会を実現させる時だっ!」

 

襖を挟んだ隣の座敷から大きな声が聞こえる。

最近、この手の輩が増えたと感じる。

大正時代は「大正文化が花開く」なんて言われて、なんとなく明るいイメージあるが、実際に好景気ではあった。そして調子にのって混沌と化した時代と言ってもいいかもしれない。議会制民主主義が根付いてきたが、政治家がグダグダやってるのが目につく。共産主義や社会主義思想が本格的に入ってきたのもこの時代。

日本は国家として中学生。中二病を患っている頃だろう。そんな時に共産主義、社会主義とかいうカッコイイ装飾のついた剣が目の前に転がって来たら、とりあえず振り回してみたくなるだろ。しかし、剣なんて握ったことないから逆に振り回された。

 

「そうだ! 平等な社会を!」

 

酒でも入っているのかご高説に大分力が籠ってる。

要するにうるさい。

 

「さっきからうるせぇぞ!」

 

「まあ、待て野元。こいつら共産主義らしいぞ。ならばここの支払いはこいつらにも出してもらえばいい。まずは身近なところからだろ、なあ?」

 

「なに言ってやがる!」

 

あれ、この声は早川君と野元君では…?

 

「ポークジンジャーにポークカツレツが四人分、ビフテキとワインも二本あけた。そっちは?」

 

「ふざけんなっ!」

 

いや、ほんとにふざけんな。人の奢りだと思ってどんだけ食ってんだ。

 

「すぺありぶ、食べてみたいんだが」

 

まだ食うの栗原君!?

 

「共産主義にしろ社会主義にしろ指導者がいる時点で真の平等とは言えないだろう。松田はどう思う?」

 

「どちらの思想も指導者を否定はしてない。議論するならば前提条件を設けるべきだろう」

 

真面目かっ!

 

「てーとくさん! てーとくさん!」

 

 

 

 

 

 

んあ?!

 

晴れ渡る青い空。白い砂浜。ビーチパラソルの下で寝転ぶ俺。そしてそんな俺を覗きこんで眩しい空を遮る紅い瞳の女の子。黒地に白の縁が入ったビキニ姿の白い肌が眩しく、健康的な色気が寝起きの頭を一気に覚醒させた。

なんだか寝覚めがいつもよりいい気がする。

 

「どうした夕立?」

 

ここは父島に付随する島、南島。イタリアの豚の飛行艇乗りがアジトにしていたような扇池。池と言っても洞窟から海へ繋がる湾なのだが。まわりにはキャッキャッウフフの水着の女の子たちがいっぱい。

 

「ちょっとソロモン行ってくるっぽい!」

 

え、なにそのコンビニ行くノリで深海棲艦の本拠地と目される海域に行こうとしてるの?

困惑して近くにいる時雨のほうに目を向ける。

こちらも夕立と同じ水着姿。ただ上は白いビーチパーカーを羽織って、下は黒いパレオをつけている。

 

「僕も夕立も調子がとってもいいんだよ」

 

昨日のうちに艤装の修理が終わった。早いよなー。

で、今日は無事父島に帰れたので完全休息日に。

んじゃ、海で遊ぶかということになって、こうして南島にやって来たわけだ。

 

「今日は休みだ。ソロモンは後日にしろ」

 

「…うぅ。わかったっぽい」

 

「いやいやいや、そういう問題ちゃうやろ?」

 

ティーシャツにハーパン姿の駆逐艦のような空母さん。

「うちもいつか、イケてる水着で砂浜ブイブイ言わしちゃるでぇ! みとけよー? …あー…いつかなー」と遠い目をしていたが復活したようだ。

いつか実現するといいよな…。その夢。

 

「全力で走ってくるっぽい!」

 

と海へ駆け出し、そのまま艤装展開して爆走していく夕立。

 

「なに競争? 負けないよー!」

 

まぁ、そうなるな。

 

「時雨」

 

お守りよろしく。

 

「うん、わかったよ」

 

これだけで意図したことが伝わる。なんていい娘。

 

「ムムム」

 

夕立が爆走して立った水飛沫を浴びながら池の真ん中に浮き、艤装の砲を動かしたり手を前に向けて閉じたり開いたりしている金剛。いつもの改造巫女服スタイル。

 

「わかります! わかりますよお姉さまっ!」

 

淡い緑のタータンチェック柄のタンキニ姿の次女。

迷彩柄の水着にも見えなくもない。

 

「こう、艤装に体が持っていかれるような感覚なんですよね!」

 

「……」

 

「確かに。少し慣らす必要性がありますね。私もまだ違和感が残ってますし」

 

メガネクイッとする競泳水着姿の霧島ネキ。

素晴らしきかな、おみ足。

 

「……」

 

「砲の旋回速度も最大速力までの加速時間も上がってますよね。一刻も早く慣れて提督のお役に立てるように榛名頑張りますっ!」

 

白いビキニの上に白い薄手のパーカーと、下も白い長めのパレオを装備した三女。

 

「Hey! シスターズ ! Questionがあるデース」

 

「何ですかお姉さま?」

 

「なんでしょうかお姉さま」

 

「はい、お姉さま?」

 

一度目を瞑り、くわっと見開いた。

 

「ドーシテ全員水着なんデスカー!? 私の水着ハー!?」

 

視線を反らす妹たち。実に平和な光景だ。

 

「フハハハ! 見ろコマ。俺の会心の出来の天龍…城…」

 

砂のお城を作った天龍ちゃんと十六駆逐隊。

意外と完成度高い。そして天龍ちゃんは世界水準軽く越えている白のビキニ姿。デカイ。十六駆はみんなかわいらしいタンキニ姿とだけ言っておこう。あとは昨日、風呂上がりに会ったら見知らぬコスチュームに龍田と一緒になってた。袖無し白シャツに押し上げる胸の間に黒タイ。黒ジャケット着崩してドヤってた。龍田さんと共に改二なったんだって。おめでとう。

 

「Qui! 可愛いデス」

 

そしてコマちゃん。麦わら帽子に薄手のノースリーブVネックブラウスの下に白ビキニ。下は黒のキュロットだ。オサレそしてデカイ。谷風と龍田さんと共に作り上げたヴェルサイユ宮殿がマジでハンパない。

 

「スゲェなオイ」

 

天龍ちゃんが感嘆しとる。

そうそう、コマちゃんに祖国帰りたいか聞いたんだけどあまり良い思い出が無いようで、ゆっくり考えようってことになった。それまではうちの艦娘さんだ。というわけで対外的には香久丸(かぐまる)で通す。

 

「ウフフ。天龍ちゃんたちも頑張ったんじゃな~い」

 

龍田さんは妖艶な黒水着姿だ。

胸元には赤いリボンタイを付け、腰には白のラインが入った黒のパレオを巻いている。 左側の頭につけた白のハイビスカスが…。あれ? ハイビスカスってつける位置で意味があったような…。

ま、まぁそこまで考えてつけたんじゃなかろう。

 

「どうだい? 提督、谷風さんの妙技」

 

「ああ、すごいな」

 

天龍姉妹とコマちゃんを見ながら、そう返す。

他の十七駆のメンバーは簡易的な海の家(妖精さん建築)で、お艦と共に料理を作ってる。磯風に徹底指導中だそうな。ティーシャツにエプロン姿のお艦は新鮮だったな。あと十七駆全員が艤装が新しくなってた。

というよりお風呂上がりに会ったら皆ちょっと成長してた。

 

「あ、提督っ! 『キミタメ』最新刊出てますよ! あ、宇宙戦艦の劇場版の円盤も出てるー!」

 

タブレットを使い、欲しいモノリスト作成中なのは、上が薄いグリーンのキャミソールタイプで、下はホットパンツのタンキニスタイルのメロンちゃん。

本土に付いてくる気満々だな。本土行きのメンバー選考揉めそう。

クーラーボックスを挟んで横に寝転んでるメロンちゃん見ながらそう思う。

ボックスの上にラムネが置かれているのは俺の為か? ありがたく頂くことにしよう。

あれ? これ栓が空いてるな。

 

「あっ」

 

「なんだ?」

 

もしや自分用だったかな? すまねぇな。

クーラーボックスを開けてラムネ取り出してメロンちゃんに渡す。

 

「あかん無自覚やで」

 

「飲むか?」

 

訳のわからんこと言ってる龍驤も飲む?

 

「ちゃうねん。貰うけども!」

 

「提督さーん」

「しれーかーん」

 

手を振りこちらにやってくる鹿島とキヨシ殿。

さっきまで波打ち際でキヨシ殿と戯れていた。

白のフリル付きホルターネックビキニがエロい。とにかくエロい。龍驤を見てこの沸き上がるパッションを抑える。

 

「なんやアレ? 存在が歩く十八禁やろ、腹立つわー」

 

よし。沈静化した。

 

「はい、司令官にぃ、あげるー」

 

キヨシ殿が差し出すのはキレイな貝殻だ。

俺、これ家宝にするわ。彼女もホルターネックのビキニスタイルで下はホットパンツ。霞ママとお揃いだ。

違いは霞ママは下はフリル付のショーツタイプなところ。

彼女はパラソルのもとで、伸びている空挺隊の若者三名を介抱している。さすがママや。

下手人は今もビィーチバァーレェという格闘技を行っている 長門。スパイクを叩き込む度、砂浜が抉れている。

 

あ、名取がやられた。

 

「力加減ってのを知らないの? まったく」

 

霞ママの呟き。

ながもんの対戦相手、空挺隊の隊長さんと曹長さん、女性隊員の南さんはまだギラついた眼をしてるが、五水戦隊カミカゼンジャーのみんなは戦意喪失してる。もう止めたげてよ。

彼女らの格好はシマシマのシューミーズ型? それぞれカラーの違いはあるが形は同じだ。

長門? いつもの格好の下がハーパン一枚になってるだけ。

青葉は我関せずと写真とりまくってるし、ライバック氏は太陽光に長時間当たると死ぬ呪いにかかっているらしく、最初ちょっと艦娘さんたちを愛でていたけど、一時間しないうちに沖に停まってるシーワックスの方に行ってしまった。せっかくの艦娘たちの水着なのになぁ。あ、青葉にパパラッチさせてるのか。なるほど。

 

飛龍と蒼龍は水着を頑なに拒み、海の家でかき氷食らってるらしい。

 

「ねぇなんで百合恵提督、水着持ってきてるの? 他のみんなも」

 

「備えあれば憂いなしですよ陸奥さん」

 

「納得いかないわ。教えてくれてもいいじゃないの」

 

「陸奥さん、普段の格好が水着みたいなものだからいいかなって?」

 

言われて見れば、なるほど。

 

「全然違うわよ!」

 

違うか? 女性の感性は俺にはわからんな。

白露姉妹は時雨や夕立と同じ黒地に白のビキニ。

 

「ヤバいよ。長門さんこっち見てる」

 

「眼を合わせないようにしましょ」

 

と白露と村雨。

 

「どうしてもの場合は陸奥さんを盾にしましょう」

 

黒いぞ春雨ちゃん。

 

「あわわわわ」

 

五月雨ちゃんも皆と同じ水着だ。当たり前っちゃ当たり前だが、そもそも彼女は白露型で涼風は改白露型。なぜこの二人の制服分けたのか? 大いなる神(運営)がドジってしまったのだろう。資料集めとかで。たぶん。

 

「オイ、止めないか!」

 

「くーっ! うらやましいなご主人様。Gカップはありますよ?」

 

徳田くんは七駆によって砂に埋められている。

そしてナイスバディにされている。盛ってるのは勿論、漣。七駆は皆、タンキニスタイルで潮だけワンピースだ。デカイ。

 

「最近の駆逐艦はどうなってんねん」

 

最近の駆逐艦の定義について知りたい。

 

「はあーやっと終わったぜ」

 

制服姿の長波様が海上からこちらに。

半袖ブラウスにベスト、ジャンパースカートではなく普通の。タイツからニーソに、薄手の指ぬき手袋という涼しげな格好になった。

 

「どうだ? 提督、この新しい艤装と制服。っても、これ夏服らしいけどな」

 

くるりと回転して制服と艤装を見せる長波様。

数時間見ないうちにだいぶたわわと育ったな。長波様改二だ。デカイ。

 

…だが、待ってほしい。

 

「夏季第四種軍装」

 

はどうした?

 

「そんなもんあるか! あたしは水着にならないぞ? ならないからな!」

 

フリなのかな?

 

「あー空が青いなー」

 

駆逐艦のような空母の目が死んだ。

 

「むーっ!どうして邪魔するんですか」

 

「ですから何度も繰り返しますが、提督に触れられてもしもの事があったらと申し上げています」

 

麦わら帽子に赤と白のビキニにパレオ姿の龍鳳。

その前に立ち塞がるのは大淀さん。

青色系統のチューブトップビキニに白いパレオ。

 

艦娘さんのキャパの問題でああしてガードされてる。

誰かの指揮下の艦娘さんは大丈夫だ。実際に白露と潮には接触してたし。だが、提督のいない艦娘さんに触れられたらどうなんの? ってことで指揮下の皆さん過保護になってる。前例は一応あるらしい。一件というか一人?

その結果、特に何も起こらないとの事。だから、そこまでしなくてもいいとは思うのだが? まあ、飛龍に「多聞丸の仇ー!」アタックされずに済んでいるけど。

 

「ソンナ テイトク=サン ニ ローホーデス」

 

長波様のスカートの中から白衣を着た妖精さんが飛び出してきた。

 

「うへぇ!? どっから出てきた!」

 

叫ぶ長波様を無視して、クーラーボックスの上に乗る妖精さんは、ハート形の南京錠がついた首輪を取り出し、俺に渡してきた。

 

「ツケテクダサイ」

 

言われるがままに首輪を装着する。

 

「……」

 

「……」

 

妖精さんと見つめ合う。

 

「カンムス ニ ツケテクダサイ」

 

妖精さんの主語がないから悪いんじゃないかな?

 

「はい! 提督さん、私がつけますっ」

 

鹿島に首輪とか…。それはとてもいけない気分になる。

いや、誰に対してもいけない気分になるわ。

鹿島に首輪を手渡すと嬉しそうに装着した。

 

「ウフフ。どうですか提督さん?」

 

どうですか?と言われても何と答えればいいんだ?

 

「テイトク=サン ガ ツケテクダサイ」

 

は? また俺が着けるのか?

まぁ、着けますけど。鹿島から再び首輪を受け取り自身の首に…

 

「なんでやねん! 司令官が艦娘に着けろって事やろ!」

 

せやかて工藤、妖精さんの言葉が分かりにくいねん。

 

「はい、提督さんどうぞ」

 

「ちょっと待ったー! そういう事なら兵装実験艦娘の私が!」

 

え、コレ兵装なの?

というかメロンちゃんと鹿島ちゃんがガルルーはじめたので話が進まんから、

 

「長波」

 

「ん」

 

後ろ髪を手で持ち上げて少し上を向く長波様。

俺も立ちあがり、細く白い首に南京錠のついた首輪を巻き付けた。

 

いけない気分になりました。

 

「テイトク=サン シカ ハズセマセン」

 

「オイ、ほんとに外れないぞコレ!」

 

両手で引っ張って、千切ろうとするも変化はない。

 

「テイトク=サンノ、メイレイニ ゼッタイフクジュウ デス」

 

ほう? なんて素敵なアイテムでしょうか。

 

「長波」

 

「な、なんだよ?」

 

命令に絶対服従。

恥辱にまみれた長波様の表情が見られると思うと胸が熱いな!

 

フフフ、長野壱業が命ずる! 駆逐艦長波っ

 

「今日から波へ「嫌に決まってんだろっ!」

 

妖精さん、話が違うよ?

 

「アレー?」

 

首をかしげる妖精さん。

 

俺にしか外せないだけの首輪。

 

一体何が朗報なのだろうか?

 




映像ではなく文章で描く水着回の難しさ。

早川幹夫 氏
第一次ソロモン海戦の時、鳥海の艦長。
主人公と一緒にヒャッハー!した。
その後、山城、長門の艦長を歴任して第二水雷戦隊司令になる。レイテでは再び主人公と一緒にヒャッハー!した

栗原悦蔵 氏
同郷ということで仲良かった。
仕官候補時代に金剛の甲板に主人公に名前を彫られたとばっちり受けた方。

野元為輝 氏
史実は第二次ソロモン、南太平洋海戦で瑞鶴艦長。本編では第三次ソロモンで瑞鶴の艦長。天号作戦に参加するため大湊から「瑞鶴には俺が乗る」とやって来た。

松田千秋 氏
戦時中は日向、大和の艦長を経て第四航空戦隊(伊勢、日向)司令。主人公に「あとは頼んだぜ」された。

西田正雄 氏
第三次ソロモンで不遇な扱い受ける方。
ソ連殴り帰し隊で陸奥艦長。


カミカゼンジャーの水着姿は「大正時代の水着」で検索でたぶん出てくる。

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