提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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いつも感想、評価、誤字修正、報告をくれる方々、本当にありがとうございます。

前回、感想がびっくりするくらい多かった。



提督(笑)散歩と今日のわんこ

暑い盛り中、早歩き。

靖国神社の神門を抜け、さらに大阪砲兵工廠で作られた第二鳥居を抜ける。

一度、振り返り老人を撒いた事を確認し、拝殿の方へ視線を向ける。

 

 

…友よ。また今度、話に来るよ。

 

 

そして踵を返し、再び歩き始める。

 

生きる意味、そんなの在るのかわからない。

 

お前たちが嵐の中で現れた理由もわからない。

 

でも、お前たちが死後も護っていたんだ、というのは今なら分かる。分かってしまった。

 

もう二度とあの嵐は現れない。

…何でだろうな。それも理由なく理解しちゃってるんだ。

 

だからさ、また今度、ここに会いに来るよ。

それまで、そこで待ってろ。

なに、そんな時間は取らせないさ。

妹とも約束してるんだ。なるべく早く帰るってさ。

 

 

ちょっと世界を救ってくるだけだから。

 

 

 

まぁ、全ては長門に殺されなければ…って但し書きがつくんだけど。

 

土下座してでも許してもらうから。五体投地の方がいいかな。大本営に帰るまでに練習しとくか。

 

歩みを止めず参道を歩く。

 

ミック先生。

 

──華麗な五体投地の方法は…

 

違うわっ! 細倉の居場所を教えれ!

 

──統合参謀本部 海軍部の三階。

 

なんだ、結局帰ることになるのか。

ククク、今宵の雷切兼光は血に餓えておるな。

 

──まだ日の入りまで時間がありますが?

 

うるさい雰囲気だよっ! それに人なんか斬ったら刃零れするからやらん。いや、牙突で肋骨の間狙って心臓ブスッ! ならいけるか?

 

そんな事考えながら大村益次郎さんの銅像横を抜けて…気がついた。

こっち九段下方面やん。帰る方向は逆だ。

 

…まぁ、いいか。高燈籠でも見て帰ろう。

 

ん? やたら人が銅像周りに多いな。

 

髪の長い身長が高めの美人さんが老人達に囲まれ拝まれてる。

 

…。

 

……。

 

………あれ、大和じゃね?

 

その人垣の少し離れた位置でこめかみをおさえてため息ついてるのは矢矧じゃないのか?

 

どっちも制服姿じゃなくて私服姿だけど。

まぁ、大和のハレンチスカートじゃ街は歩けないか。

大和はネックラインがスカラップの白色カットソーシャツにロングスカートと思いきや、黒系の花柄ワイドパンツか。矢矧はさらにシンプルに纏め、白いポロシャツにデニム。美人はシンプルで十分に引き立つということだ。

 

いかん、ファッションチェックなんぞして足を緩めたから山村組長が、三足歩行で必死の形相で追いかけてきてるのが見えてしまった。ここは人混みに紛れて退散するとしよう。

 

じゃあな、山村。長生きしろよ。

 

 

そして私は東京の街を歩くのであった。

いや、一応お堀の内になるのか?

 

何となくまっすぐ帰るのも勿体無い気がして、いつしか音楽系のアーティストの憧れの地となった武道館の脇を通り北の丸公園を抜けて、陸軍の近衛師団司令部の赤レンガ建物。今は国立近代美術館の工芸館…になってない…だ…と?

 

…陸軍の史料館になってるぅ。

そういえば、リニアも開通してるんだよな。

変化した未来か…。

俺という存在が…いや、ミック先生が変えた、が正しい。

 

──私はあくまで情報を提供したまででそれを形に出来たのは貴方の行動あってこそです。

 

って言ってもね、それを形に出来たのは俺じゃない誰かが為した事だろ。誇る気になんてなれんよ。

 

──そうかもしれません。しかし、人は一人では生きていけません。

 

捻くれ者が否定しそうな発言ね。

 

──文明社会に身を置いている以上、それは絶対です。

 

断言した。…なんかネットであった?

 

──初めて殺意という感情が芽生えました。

 

あぁ、そう。一応、言っておくけど何もするなよ?

大体は思春期真っ只中の多感な時期の子供だからな。

 

──…承りました。

 

歯切れ悪いなぁ…。ってネットの闇についてはどうでもいいよ話が逸れてる。

 

彼奴らの命懸けの行動が何か意味のあるものだったんだろうか?

 

この国を少しでも良い未来に変える事が出来たのだろうか?

 

──長野苺ちゃんはクーデレキャラです。

 

こんな国、滅んでしまえっ!

 

──了解しました。国家転覆プランを提示します。

 

ってバカっ! やらないよっ!

 

──そうですか。では、東京観光でもいかがでしょうか?

 

この史料館みたいに変えた未来ってのこの目で見ろと? 確かにそれが良いものにしろ悪いにせよ俺は知らなきゃダメなのかもな。

 

ちょうど国立博物館の方では『刀剣展』やってるみたいだし、ちょっと見たいから上野まで足を伸ばそうか。

工芸館改め陸軍史料館の入口横の掲示板に上野の国立博物館で開催中のお知らせポスターが貼ってある、村田刀が展示してあるからだろう。

 

ん?

 

んん?

 

…え?

 

俺も刀剣や槍にそんなに詳しい方ではないし、見てもゾクリとする美しさを感じるくらいで兼光でさえ、偽物とすり替えられても気づかないだろうけど。展示物の一例の欄に。

 

…御手杵があるぅ!?

 

さすがに天下三槍の名前くらい知ってますよ!

江戸の大火で消失してたんじゃないの!?

 

──認識に誤りがあります。貴方の知る史実では東京大空襲で消失しています。

 

え、そうだったの? なんかと間違って覚えたかなぁ。

…でも空襲あったんだよね。前に調べた時に呉というか広島と東京は大空襲あったって記憶しているぞ。坊ノ岬沖前にもちょくちょく飛来してきてたし。

まぁそれは大きな被害は出てなかったけどさ。

 

──そもそも史実では天号作戦発動前に大規模空襲が行われていました。

 

まぁ、そうね。それの被害を軽くするために迎撃機をずっと開発してた訳だし、アメさんの爆撃機の消耗率も史実よりずっと多かった。原爆もあの時はまだギリギリ完成してなかった。B―29は一度出撃する度にオーバーホールが必要になるくらいにコスパも悪く、日本近海の連合国潜水艦はほぼ潰した。そこでアメさんは沖縄取って日本を完全に封じこめしてから息の根を止めようとしたわけだ。その過程には日本海軍の壊滅も含まれてた。

 

そしてあの海戦。人生最大の博打だったな。

 

──臨時艦隊は台風で半数消失する予測でした。そしてあの一戦はアメリカの対日戦略を破綻させました。その後も奇跡的な要因が重なり、史実の大空襲程の被害は出なかったようです。

 

損害の予測は初耳なんだけど…。でも、俺が思っていた以上に凄い仲間達に支えてもらっていたんだな…。

 

なぁ、死後もこの国を護っていたお前たちに未来ってやつがどう見えてたのかな。

 

見上げれば相変わらず青が眩しい夏空が広がってる。

 

──東京観光しませんか?

 

…そうだな。

 

提督(笑)散歩はじまるよー。てな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今はやめてくださいと言っているのです!」

 

「実家の力で成り上がった小娘がっ! 軍で我が儘が通ると思うなっ!」

 

用を足して戻ってみれば扉の前で押し問答している百合恵提督と三元中将の腰巾着だと記憶している大佐の男。ライバック事、後上提督はそれを見て頭を抱える。

 

「上官の命令に逆らう事がどういう意味かわからんのか?あぁ!?」

 

「三元舞鶴方面司令はともかく、現段階で私は貴方と同階級であります。一方的にがなり立てられる謂れはありません!」

 

「だから、その三元閣下の命令だと言っておろうっ!」

 

「それなら本人が赴くべきでは? 管轄の違う方面指揮官の一人を呼び出すのならそれ相応の手順を踏まれるべきではないのですか?」

 

胆が据わってるなぁ。と後上提督は場違いな思いをしながらも中の様子見せたら一発で撃退できるだろうにと考えていた。

 

そのまま言葉の応酬を繰り出していた両者だったが、やがて男の方が諦め、肩を怒らせながら帰って行った。

 

「お疲れ様です?」

 

と気の抜けた声で話しかけられた百合恵提督はため息をついて中に戻った。後上提督もそれに続き、中に戻る。

 

「…中の様子見せたら腰抜かして帰って行ったんじゃないかな?」

 

殺気だった中の女性たちの姿を眺めながら、ソファーに座り、先ほど思っていたことを言葉にすれば、

 

「漏らされたらどうするんですか?」

 

と辛辣な回答が返ってきたのであった。

 

「しれーの事何も知らないくせに」

「提督さんの事何も知らないくせに」

 

夕立と時津風は同時に言葉を漏らしたが、それ以外の面々にも同じ表情が伺えた。あの大佐の男が何か暴言の一つでも吐いたのだろうと言うことは容易く想像がつく後上提督だった。

 

 

 

 

 

駆逐艦夕立、その名を知らしめる事になったのは第三次ソロモン海戦第三夜。

 

当時、夕立の所属していた第四水雷戦隊はガダルカナル島、ルンガ泊地を強襲する後続部隊に位置していた。

サボ島を南回りでアイアンボトムに進入した夕立達の目前では大規模な艦隊戦が開かれていた。もともとアメリカの艦隊はソロモン海をルンガから北方向に舵を向け丁字戦法で日本海軍を待ち構えていた。しかし砲撃戦は苛烈を極めアメリカはルンガ泊地の前に陣取るように日本はその北側で同航戦にもつれ込み、戦艦4隻対4隻の殴り合いであった。その苛烈な殴り合いの中、三本煙突が特徴的な軽巡洋艦が探照灯を照射し水柱を浴びながらも縦横無尽に駆け回っている。その姿に戦舟の魂が強烈に魅せられた。それが夕立と長野を運命付けた出会い。それは夕立だけではなく、艦長の男も同様だった。

 

四水戦は敵艦隊の目前を突破しルンガ強襲を果たしたが、返す刀で夕立は戦場に戻った。そしてソロモンの悪夢の称号を得て、ビラ・スタンモーア夜戦、クラ湾、第二次ベララベラ海戦、セント・ジョージ岬沖海戦ソロモン海を巡る戦いで戦果をあげ続ける。その傍らに艦長と大抵は長野の姿があった。いつしかアメリカからは猟犬と呼ばれるようになりマリアナ、レイテを経て運命の坊ノ岬沖海戦。金剛を守るように最期まで立ち回り、どんな強大な敵であろうとも怯まぬ犬は、悪夢そのものであったと語られる程となった。

 

その艦の魂を持つ夕立が殺気を漂わせながらも扉の向こう側でグダグダ言っていたそれに襲いかからなかったのは提督がそんな命令を出さなかった故。たとえ主に拒絶されていたとしても、ぎゅっと拳を握り、衝動を抑え込んでいるのであった。

 

「あっ」

 

重苦しい沈黙が支配していた空間で、異変に気がついたのは果たして誰であったか。

萎れていた金剛のアホ毛が「父さん、妖気デース」と言わんばかりに立ち上がる。それに釣られるように夕立、時雨のはねっ毛もピンッと立った。いち早く閉ざされた扉を開け放った時津風は窓が開かれた誰もいない部屋を見て、その窓から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京の街。宛もなくブラブラ。

上野方面というか、東に行くと帰りが遅くなってしまうので『刀剣展』はお預けで渋谷、新宿方面に。本当は史実では被害の大きかった江東区を見ておきたかったのだが、また後日改めて見たいと思う。しかし、渋谷や新宿を見ると戦前の東京を知る人間が見たら信じられないような光景だよな。少し遠くに見える首都高3号線が走ってるあの道を海軍大学にいたころに同期の何人かとバイクでツーリングしたんだったな。朧気な平成の記憶だが、若干街並みとか道路区画違うような気はするが、都心住みでもなかったからよくわからない。時々、大正期に流行った赤煉瓦建物が建ってたりする。

 

──丸の内には東京府庁舎が保存されています。

 

ねぇ、もっと早く言いなよ。北の丸公園にいたときなら足を伸ばせた距離だったじゃん。

 

──明治神宮も焼失を免れたようです。

 

現在地は渋谷のわんこ像の横を通り抜けて、モヤイさんの前である。そろそろ日も暮れてきたし、お参りして帰るとするか。皆、心配してるかな? それとも呆れてるかな。なんか冷静になったら皆の泣き顔がさ…、頭にちらついて凄く気まずいです。しかし、謝る前に処すべき相手を処してからだ。

 

来た道を返し神宮まで歩く。

 

やはり軍服姿は目立つのか、視線をひしひしと感じる。帽子を目深にかぶり、人通りのなるべく少ない道を選びながら暫く行けば楽器店が目に入る。ショーウィンドに吸い寄せられて中を覗いてしまう不思議現象。

 

トランペットを欲しがる少年か俺は。と自分に突っ込み入れて、ガラスに映る自分を見て気がついた。

 

うん、視線を感じるわけだし、向かいからくる人が俺を避けて道を譲る訳だ。途中寄った銀行でよく捕まらなかったな…。

 

…ハードタイプのギターケースを買おう。

 

「いらっしゃい…ませ」

 

と顔をひきつらせながらも笑顔の店員さん。

わかる。分かるよ。やべぇ奴が来ちまったよな。

俺でもそう思う。すぐに用は済ませるから勘弁な。

 

「…ギターケ」

「ギ、ギターはこちらになりまーすっ」

 

ケースが欲しいの…。

まぁいい、近くにケースも売っているだろう。

棚に飾られた楽器や書籍を眺めながら店の奥の方へ。

広く明るい店内の割には客は閑散としている。

 

「えーと、これなんかどうっすか?」

 

ショーケースに入った年代物のエレキを差す店員さん。

お前さん、これ値段がASKって書いてありますがな。

 

「……」

 

「じょ、冗談っすよ?」

 

目を逸らす店員さん。今のはあわよくばって顔だったぞ?

 

「エレキはいらん」

 

というかギターは要らない。ハードケースが欲しいの。兼光入れて置くために。

 

「アコギならこれがオススメっすマーティンの67年製っす」

 

ねぇ、何でヴィンテージの高い奴ばかり薦めてくるの。

 

「……」

 

「じゃ、じゃあこっちならどうっすか?」

 

わーっ! さっきの奴の半額だぁ! やっすい! ってなるかっ! それでも30万越えてんぞオイ。

 

「これなんかどうっすかねー?」

 

その後も俺のジト目に怯むことなくお高めなギターばかりお勧めしてくる店員さん。

 

「お願いしますっ! 買ってください!」

 

エェ…。土下座さーてるんだけどー!?

思わずギャル語になるくらい意味わかんない。

なんか理由あんのか?

 

「そこまでする理由はなんだ?」

 

「夢を追うのがさらに世知辛くなったっす」

 

と言い若い店員さんがポツリポツリと理由を話しだした。ミュージシャンを目指して上京した彼。もともと成功を収めるのは一握りの者達だが、ここ最近は深海棲艦の影響でその狭き門が更に狭くなっているとのこと。

ぶっちゃけ国家総動員体制してても可笑しくない状況で芸術活動ってどうなの? って風潮が少なからず漂っているそうだ。戦時でも風景画を描いていた画家がスパイと間違われ憲兵に捕まるなんて事は良くあったな。

どんな状況であろうとも活動するには先立つものが必要な訳で、店員さんはここと飲食店のバイトを掛け持ちしていたそうだが、飲食店がバイトを雇うほどの余裕がなくなり、この楽器店もこんなご時世で売り上げが、ということで職を失う危機なんだとか。

日本だいぶヤバないか?

 

──現在の国民生活水準を下げることで二年~五年は国体の維持が可能。

 

末期の状況を知って少しでも自分を高く売って高飛びしようって奴が出るわけだ。もしかしなくても亡命政府を作ろうという政治勢力も存在してるな。これは。

 

「そんなわけでこのままじゃ海兵行きっす。自分、船酔いするっす。マジで無理っす。ひい祖父さんみたいにボケたくもないっす」

 

「曾祖父は関係なかろう?」

 

「関係あるっす! 少し前まで生きてたっすけど、ワシは潜水艦を釣り上げた。ってのが口癖だったっす。何言ってんのかわかんないっす。戦争は人を変えてしまうんす!」

 

…へぇー。竿で釣り上げたんだろうか。それが事実ならそりゃ凄いけど回天でも長さ15メートルで直径1メートルあるからな。不発の魚雷でも引っかけたんだろうか。

 

「お願いしまっす! 海兵になんかなりたくないんでなんか出来れば高いの買ってくださいっ!」

 

海兵に向かってその言い草はどうなんだろうか? とか言いたい事はあるが、悲壮感とか全然違うけど身売りした少女と姿が被る。本当に悲壮感とか全然違うけどっ!

 

お値段12万8000円のアコギを持ち、試し弾き用の椅子に座わってギターのチューニング。

さすがにお高いだけあって良い音色…がするような気がする。

 

「~♪~♪~♪」

 

唯一、歌に聞こえる曲を奏でる。

リリンが生み出した文化の極みだぁ。

 

──80点。成長がみられません。

 

うるさいよ!

 

「……」

 

「これを貰おう。ハードタイプのギターケースも2つくれ」

 

これで店員さんの首が繋がるかはわからんけど。

 

「…はっ! うっす! ありがとうございますっ! 俺の進むべき方向性、ワーグナーを越えるっす」

 

お、おう? まぁ、頑張って夢を叶えてほしい。

 

 

 

街灯に明かりが点りはじめたころに巨大なモミの木を見上げる。これが代々木の地名の由来となった木との説がある。

 

──史実では撃墜されたB-29が墜落し焼失しています。

 

この辺りも植林された木々がまだ小さくてこんなに鬱蒼としてなかったよ。自然ってのは偉大だな。

閉門時間で神宮に参拝する時間はないし結局、普通に観光してたな。高いギター買って。

変えた実感が持てたのモミの木と陸軍史料館だけなんだが?

 

──楽しめましたか?

 

まぁ、なんも考えず街並み見てただけだけど、楽しかったと思うよ。心から楽しむってのはちょっと出来そうにないけどさ。あとは隣に美女が居れば完璧だったんじゃない?

 

──成長すれば美女とも言える方が向かって来ています。良かったですね。

 

「しれーっしれーっ」

 

子犬のような少女が顔ぐしゃぐしゃにして胸に飛び込んで来た。

 

「…やだよっ…置いてっちゃっ…やなんだよぅ…」

 

あぁ、俺って奴は馬鹿だなホント。気付いてはいたが分かってはやれてなかったな。それを拒んでいたのか。艦の魂を持って生まれた彼女達もまた後悔や悲しみっての抱えてんだ。いつだったか金剛がちゃんと自分を見てと言っていたのにな。確かに彼女達は上司や同期、部下達の想いを知っている。知っているが本人達ではないのだ。今でも同期や部下、上司の影がちらつくし好意や信頼を向けられるのにも後ろめたいものがある。それはこの先もきっと変わらない。だけど彼女達個人としてきちんと向き合わないのは不誠実に過ぎる。力を貸して貰う者として最低だ。

 

「ごめんな。駄目な提督だったな」

 

時津風を抱きしめかえし皆に心から謝罪しようと誓う。

 

──端から見ると案件です。

 

ねぇっ! 何で今そういう事言うの!? ねぇ!

 

 




高齢者に酷い仕打ちをし、腰に刀ぶら下げ歩く危険人物が闊歩する街、それが東京。

わんこは飼い主さんの為なら熊にだって立ち向かう希有な生き物だそうな。狼はそんなことしないってさ。
別に足柄さんの事言ってんじゃないよ?

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