提督(笑)、頑張ります。   作:ピロシキィ

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カーニバルダ…ヨ?

前話の誤字脱字めっちゃ多かったことを反省して、投稿。

あっても笑って許してね(´・ω・`)


提督(笑)と最も熱い夏

 

「コミケに行く」

 

「「コミケ?」」

 

…しまった! 主計さんはともかく艦娘がいる前で言うべきではなかった。付いて来るでしょ絶対。

いや、黙って一人で行くと大変な事になるのは、今回はまぁ特殊ではあったが痛感したので誰かついて来るのは許容するつもりだが、その誰かは金剛じゃない。あんな魔境に連れていったらカメラ小僧に瞬く間に包囲網作られてしまう。間違いない。特に鹿島ちゃんなんて連れていこうものなら…冬コミで彼女のウ=ス異本が量産されてしまう。

恐ろしい事にそれは史実で証明されし事実。

あぁ、なんと恐ろしいことか、その本、一冊もらおうか。

そうなのだ売ってるブツがブツなだけに、ここはメロンちゃん一択なんだ。なんか円盤欲しがってたしそれで釣りつつ言いくるめよう…。

 

 

 

この時、詠の頭の中では思考が高速で回転していた。

高齢の上、直前まで号泣していたとは思えない程の回転ぶりである。

(聞き間違いか? コミンテルン? いや無理があるな。ならば、家名か? 小見、古味、巨海? 小見ならば全国的に見て新潟や群馬に比較的多くいる名ではある。そうか! 司令は自分だけではなく戦士の列に加えるべき者を自ら迎えに行くつもりなのだっ! しかしあの戦いの生き残りにそのような名は…いや、あの戦いだけで判断するべきではない…陸軍のものかもしれぬ)

 

 

「テートク、コミケって何デスカー?」

 

さて、なんと答えて煙に撒こうか?

 

「…日本最大の…本の販売会だ」

 

 

この時、詠の頭の中では思考が軋み高速で回転していた。

(違った!? やはりコミケであった。思い出せ、何度か聞いた覚えはある気はするのだ。は!? 詳しくは知らぬがジャパンカルチャーと外国からも認識され個人が仮装や書籍販売、関連企業がタイアップして広報を行う場と聞いた覚えがあるぞ! 多くの人間が全国から集まるとも。しかしそこに司令が欲しがる書籍はない。あの時代なら「完全なる結婚」のように発禁となるものを取り扱うのではなかったか? それが事実ならお止めせねばっ! この国の発展を喜んでくれた司令がそれを見たら…)

 

「司令っ!」

 

うおう!? 急に大きな声をあげるなよビックリするじゃないか。あと主計も、いい歳なんだから自身の体もビックリするから気をつけなされ。

 

「うむ?」

 

「そこには司令の欲する本はおそらくありません。どういったものか仰って頂ければ、私が探しだしてみせます」

 

イヤイヤイヤイヤ、「じゃ、ロリ巨乳ものを頼む」って言うわけないだろっ! 

 

「自分の目で見たいのだ」

 

俺はね、確かめたいことがあるの。

きっとマイナーゲームの1キャラクターに過ぎない。

人気なんてないし、特設ブースなんてもっての他。どっかのサークルが一冊くらい出してるかもしれないが、それくらいなら俺のSAN値は重傷でなんとか済む。赤い果実の名前のキャラが人気があるものか、信じないったら信じない!明日というか今日か?一日目は諦める。二日目で見てそれを確かめるのだ。

 

SAN値チェックの時間だゴラァ! をやる決意である。

 

ついでに俺好みのラブチュッチュッものがあれば数冊手にいれるのも吝かではない。

 

「ヴァ、ヴァルハラに逝くための準備などは?」

 

ほーん? これは主計さん文乃ちゃんと同じパティーンかい? こんだけ話しててまだ、死神扱いしているという…? これはまた、ウィットにとんだジョークの一つでもかましてやらんとダメだね。

 

「主計の逝くところはサチのいるところであろう?」

 

「え?」

 

え? じゃないよワルキューレとキャキャキャウフフしたい気持ちはわかるけど。

 

「俺はこの娘らと世界の海を解放しに行くのに忙しいのでな」

 

金剛の頭に手を置く。

 

「ハイッ!  任せといてクダサーイッ!」

 

だから、

 

「サチには悪いが、今しばらく生き、我々の活躍を見届けたまえ」

 

君たちが頑張って作った今の日本を守ってやろうじゃないの。まぁ、艦娘とミック先生が頼りだけどな! と渾身のどや顔だ。

表情筋が仕事してるか知らんけど。

 

ちょ、え、また泣くの主計さん!?

 

「本の販売会で海域解放のヒントを探すデース? ワタシも一緒に探すヨ!」

 

金剛、空気読め。それと

 

「…お前は連れていかん」

 

うちの嫁がオカズにされてしまう。…あれ、その理論で行くとメロンちゃんなら良いのかって事にならんか?

 

「What!?」

 

掴みかかってくる金剛をいなしながら、何か方法はないかと模索するも夜はますます更けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

東京国際展示場 夏コミ二日目。

 

この日オータムクラウド所属サークル『オクライリボルシチィーズ』の出展日。

 

連日の夜戦を乗り越え、締め切りギリギリ入稿。

入稿を果たした日、泥のように眠った秋雲は、ついにこの日を迎えた。

血と涙と汗の結晶(長野×長野本)は完売直前。

今年が三回目の参加である。綺羅星の如く現れた新人オータムクラウドは一気に人気サークルの仲間入りを果たしており、今まさに最後の一冊が売れていった。

購入者に二人でお礼を言い、『完売』の札をべたりと貼ったあとパイプイスに腰掛けた秋雲は足を組み、腕を組み、ウンウンと満足そうに首肯く。

 

「今年はちょっと苦戦したわー。去年は午前中に捌けてたんだけどなー。っかしーな渾身の出来だったんだけどなー」

 

おかしいのはお前の頭だと売り子の少女は半目で睨む。

 

「どうして私が売り子なのよ」

 

私服姿の風雲が茶色のポニーテールを揺らし、秋雲へ振り返り恨みがましい瞳を向ける。

 

「いいじゃん。焼き肉奢るんだから」

 

「…そうだけど」

 

まさか、秋雲が書いたブツの即売会の売り子だとは思わなかった風雲である。

連日、うめき声を上げての夜戦(徹夜)をこなしていたのは知っていたが、本当にヤバいブツを書き上げただなんて今日この日が来るまで知らなかった。いや、知りたくもなかった。そして完成品を見て風雲は色々な意味で戦いた。「じゃ、私帰るから」と即行で断りをいれて帰ろうとしたが、「後生やぁ後生やで風雲どん」と若干、キャラ崩壊した秋雲に泣き付かれて渋々と引き受けてしまった事を絶賛後悔中だ。

 

「オークラ氏、オークラ氏」

 

「どったの? ぼるちゃん」

 

そこに同サークルのメンバーである男が汗を拭い、戦利品(ウ=ス異本)を抱えながら戻ってくる。

 

風雲は今日が初めて彼と顔を合わせたわけであるが、強烈だったなぁとつい数時間前のことを思い出した。

 

「拙者、ぼるしちでござる。デュフ」

 

「えっと風雲です。ふうう…「オーッ! オークラ氏が秋雲であるからして十駆繋がりで風雲ですな! 風雲氏もいける口ですな? デュフ、デュフフ」

 

両手を握られてブンブンと握手を交わしたのだ。

 

そんな彼が戦利品を抱え戻ってきたわけであるが、風雲は二人の醸し出す独特のテンションについていけず会釈だけで済ませた。

風雲云々についてはあながち間違いでもないし、艦娘だというとややこしくなりそうなので曖昧に頷いてその場を濁したのだった。ちなみに秋雲も周りに自身が艦娘であることを話してはいない。

 

「これを見てくだされ。祭りになっておりますぞ」

 

この男、格好こそオタクのテンプレ(ダサい文字入りTシャツにジーパン、革の指ぬきグローブにリュック)のようだが、一部の業界では神扱いをされているシナリオライターでもある。ちなみにTシャツには『神』という文字が描かれている。今回の彼の出品物はシナリオの書き方のハウツー本であったが、そこまで多く刷っていなかったため早々に宝探しの旅に出掛けていった。

 

「オークラ氏の今回の作品と関係があるかもしれませんぞ。デュフ」

 

と自身のスマホを秋雲に差し出す。

 

「なになに靖国にヤバいのが出た? って何これ?」

 

二人がスマホを覗き込みながらワイワイやってるのを尻目に、風雲は「あ、すいません完売です」と頭を下げていた。高い肉を注文してやろうと心に誓いながら。

 

「はじまりはネットに上げられた一枚の写真だったようでござる」

 

「あー大和じゃん」

 

「そうでござる。はぁぁ大和さまはお美しい。おっと、某としたことが、もちろんオークラ氏も美しいござる」

 

とウィンクをかます。

 

「ハイハイ。で?」

 

大和、長門、陸奥の三人は公の存在であるからこうして時々、ネット上に登場することがある。海軍としてもプロパガンダに見目麗しい女性を使えて文句はない。一部、その女性を戦わせて良いのかと叫ばれているが、他に今のところ対応できるものがないのだから仕方がない。ただ、配慮として駆逐艦以下の艦級などは見た目が幼すぎるので積極的な公表は控えている。あくまで控えている、であって秘匿というわけではない。現に宿毛湾辺りでは大っぴらに広報活動している艦娘がいるのである。ただし、世間の認知は宿毛湾泊地のイメージアップを図るため売れていないご当地アイドルを起用しているというものであるが。

 

「…大和さまの映るこの画像、この辺を拡大すると軍刀をもった軍人が写りこんでるのを誰かが発見しましてな」

 

ぼるしち曰く、最初は左巻きの連中が士官が身に付けることを許されているとはいえ帯刀して街中に出てくるのはおかしい、軍国主義の復活だと騒ぎ出して拡散し始めた。だか、その拡散画像を見た刀剣マニアが、「その軍刀は昭和刀ではなく日本刀ではないか」と指摘したことで、刀剣マニア達の間であれやこれや始まった。

 

「昭和刀にしては刃渡りが長い。80センチはある」

「反りも深くはないな。1.5センチ位か?」

「黒漆塗の鞘に柄頭は唐草が入ってんな」

「石突は隠れて見えないな」

「柄巻きと刀緒は茶色の旧海軍仕様か?」

「刀身がみられれば一発なのに」

 

と、分析が盛んに行われていた中、画像解像度を上げた猛者まで現れる。

そして誰かが「これ、長野家の長船じゃ…?」と以前、刀剣展に出展された長野家の備前長船兼光を個人撮影した写真をアップした。

 

そしてお祭り騒ぎが始まった。

 

その刀の持ち主は本殿の方へ振り返っており撮られた位置からだと完全に顔が見えなかった。

それが、幸か不幸か、またもや憶測を呼び、大きく3つの見解に分けられる事となった。

 

ただの護衛。

 

大和に憑いた背後(守護)霊説。

 

クローン説。

 

本命は護衛説だが、「じゃ、何で兼光佩いてんの?」と問いには、これぞ!という答えがついにでないままである。そりゃもうネット上では好き放題が始まるのは当然の帰結。護衛説は面白くないのでもっぱら下2つを支持して騒いでいるわけである。季節柄もあるが、クローン説より心霊現象説が支持されているのは鬼女(既婚者女性の略)板で、投稿されたスレを誰かが漁ってきたからだ。

 

「お盆だから帰ってきたのに神域に入れず舌打ちしているに一票」

 

「いや、そこはせめて涙目にしといてやれよ」

 

「そんな生易しいもんじゃない。ガチで誰か呪い殺しに来てる。この画像を見てしまったお前らも気をつけろよ。ほんとにヤバいからコレ」

 

「この軍人が幽霊ってこと? 俺零感だから何も感じないけど」

 

「どう考えてもNAGANOが人体錬成の禁忌に触れたでFA」

 

「ただの幽霊じゃない。かつての大戦で悪魔と恐れられた野苺ちゃんの中の人」

 

「中の人などいない!」

 

「ねぇ、何で肩に人形みたいの乗せてるんだ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

とあれやこれやと面白可笑しく時にゾクッとなるようなレスが書き込み続けられていた。

そしてお祭り騒ぎはネット上だけではなかった。

霞ヶ関では鳴り止まぬホットライン。

 

ある大国からは「お前ッ! クローン作りやがったな! 戦犯解除はこれのためかッ!」と責め立てられ、科学の国と紅茶の国からは「もういい加減、機関の存在を認めろ」と知らないものの存在の是認を強要される。パスタの国は「ソイツを寄越せばパスタ5000万トンを渡す準備がある。大丈夫バチカンには黙っとくから取りに来いよ」パスタは魅力的だが、なんで行くと思うんだ?と首をかしげて、トリコロールの国は「妖精さんが我が国の艦娘の出現を示唆したんだけど、知らない?ねぇ、なんか知ってるでしょ!」と知らないものは知らないのに何度も食い下がってくる。ここ数日、内閣関係者達が徹夜で目を血走らさせていたが、コミケ会場には全く関係ないことである。

 

「オークラ氏はどう思われます?」

 

「あー、ちなみにボルちゃん肩に何か見える?」

 

「デュッホホホ、オークラ氏はこの書き込みが気になるのですな? しかし、釣り師としては二流ですな。まぁ、敢えてのってやるのも一興ではありますが、この手のタイプは途中で投げ出すと某は思うのですデュフ」

 

「あー、そーなんだー。じゃあ護衛なんじゃないの(たぶん、新人提督かなんかだと思うけど…)」

 

二人が後ろであーだこーだ言っている時、風雲は固まっていた。徐々に近づいてくるその集団。

時々、パシャパシャとフラッシュが焚かれている。

皆、なんということもないラフな格好をしているのにも関わらず華やかさがあった。その中で唯一の異物を除けば。

固まっていた一方で風雲の頭の中では暗黒卿のテーマ曲が鳴り響いていた。

物凄く厳しい表情でまっすぐこっちに向かってくる男から目が離せないでいた。襟のついた半袖シャツにチノパン。至って目立つ格好ではない。が、眼光がヤバい。もし、眼光の鋭さだけで人が殺せるのなら風雲は既に何回か死んでいると錯覚するほどヤバい。

帝国海軍絶対に逆らってはいけない指揮官五指に入る長野提督に見えるのだから。

風雲は長野とそこそこの接点を持つ。北西太平洋海戦(ドゥーリトル空襲)は実質上の指揮官として振る舞っていたし、ミッドウェー海戦では飛龍の傍らにいた。第三次ソロモン海戦も敵と味方の間で探照灯を振り回しているのを目撃しているし、風雲的に最も鮮烈に覚えているのは第二次ベララベラ海戦である。

 

第二次ベララベラ海戦。

 

簡単に言えば、周囲の島から日本軍が撤退する中、唯一取り残されていたベララベラ島の陸軍を収容する作戦の途中で敵艦の襲撃を受け、これを撃退したというものである。

 

その作戦中、襲撃してくる米駆逐艦六隻が敵か味方かと指揮官たちがやってるうちに長野(時津風座乗)が勝手に突っ込み砲撃、探照灯照射、魚雷発射を行い瞬く間に敵駆逐艦三隻を行動不能に追いやり、戦端を切った。結果的にアメリカに沈没3大破1中破1の損害を与えた。それに対して日本側は撤退中に空襲を受け、夕雲が大破したのみ。長野が居た理由は陸軍の方がかなりご立腹であり、その宥め役を期待して派遣されたためだった。

 

風雲は今日この場にいることを改めて後悔した。

 




これにて書き溜めてた分は放出しつくしました。

イベント終わるまでは更新ない…たぶん。

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