それと夕凪 琥珀様の案をほぼ採用しております。
許可をくださり、ありがとうございます。
四つ葉の兄妹
二月十四日
いつも不安に思っている。
私は切っ掛けをもらってアイドルになるための道を歩き始めた。それが毎日不安。
だって私は何の取り柄もないし、テレビに出てる女の子と違ってカリスマ性なんか欠片もないのに。
何処にだっているような女の子なのも理解してるし、特別なことも出来ない。どうしてこんな場違いの場所に来てしまったんだろう?
そして私にも、プロデューサーが付きました。
「…比企谷八幡です。よろしく」
「ひゃ!あ、すいません!え、えと、緒方…緒方、智絵里です…よろしくお願いします…」
そこにいたのは目が淀んでる?腐ってる?目がとても印象的で、ちょっと怖い男の人でした。
なんというか、他を寄せ付けないような雰囲気で、とにかくフレンドリーじゃない。
うぅ…なんで私、こんな人がプロデューサーさんなんでしょうか。とても不安です。
二月二十八日
やっぱり怖いです。初めてのプロデューサーさんはどうやら仕事が出来る人らしく、私のプロデュースは着々と進んでいます。
でも私が引っ込み思案な事や、体力の無いところを見ると少し眉をひそめます。
使えないと思われてるんでしょうか?相変わらず距離は遠いし、私と話すときも距離をとります。私が嫌いなんでしょうか?
でも考えてみれば納得です。私をプロデュースするより、もっと才能あって可愛い子のほうが結果を残せますし、そうなればあの人の評価も上がりますし。
マイナスなことばかり浮かんできます。とても不安です。
三月十日
今日プロデューサーさんがトマトを残していました。
嫌いなんですか?と聞いてみたら、トマトだけは食べられないそう。不思議と可愛いと思ってしまいました。あんなに怖かったのにその日は少しお喋りしました。
プロデューサーさんは妹が大好きで溺愛しているそうです。家族っていいなぁ。
でもその時に緒方よりも可愛いと言われ、少しむっとしました。普通担当アイドルに気を使いませんか?どうやらプロデューサーさんは嘘が嫌いみたいです。
三月二十日
今日はミニライブがありました。私は出番が近づくにつれ震えるくらい緊張してしまい、このままでお客さんを前にして歌えるのかとても不安になりました。きっと歌えなかったと思います。でも、
「今日は失敗しても良い。ただやってから失敗しろ。なにもしない失敗だけはするな。……それと俺は緒方の歌が好きだぞ」
プロデューサーさんがそう言ってくれました。どうしてかな?いつも怖いと思っていたはずなのに、距離を感じていたはずなのに、その言葉は私の胸にすんなりと入ってきました。
その後も震えは止まりません。たかがミニライブですけどお客さんはいます。その事を考えるたびに体が震えるんです。でも。
それでも今日はこの人の為に頑張ろうと思いました。
私の歌を好きだといってくれた人がいるから。その人は私の側で見ていてくれると思うから。
そうして歌い、小さな拍手と小さな歓声に包まれたとき、震えが止まっていることに気がつきました。
四月十二日
あの日から私はプロデューサーさんに話しかける事が増えました。それは他愛の無い話だったりすることが多いのですが、プロデューサーさんは意外と話してくれます。ところどころで妹自慢が出るけど…。
いいなぁ、妹さん。
四月二十二日
最近プロデューサーさんとよくお話しします。私にしては珍しく、自分から話しかけています。
というのも、プロデューサーさんはあんまり喋ることが得意じゃないみたいで、
「ぼっちに女の子と自分から話すなんて出来るわけ無いだろ」
とのことです。それでも私が話しかければちゃんと答えてくれますし、会話が苦手というよりも、苦手意識を持ってるって感じかな?最初に距離を感じていたのは、私が怯えてたから距離を取るようにしてたらしいです。
「だ、だってプロデューサーさんって目が怖いです…」
「…悪かったな。治ることはないぞ、残念ながら」
「いえ!あの!今はちょっと素敵かなーって…怒って…ますか…?」
「それくらいで怒るわけ無いだろ。ぼっちは嫌われ慣れてるからな」
時々悲しいことを言います。小町ちゃんの話をするときのプロデューサーさんはとても優しい目をしてるのに…。あ、妹さんの名前は小町ちゃんって言うらしいです。教えてもらいました!
それにミニライブの時も優しかったなぁ。
あーあ、プロデューサーさんみたいなお兄ちゃん欲しかったなぁ。
四月二十五日
……やっちゃった。
最近プロデューサーさんと話せるようになったから調子に乗っちゃった、んだと思う。
「あ、あの…プロデューサーさん!」
「お、おう、どうした」
「お、お兄さん…って呼んでも、いい、ですか…?」
「…は?」
これだけ言って走って逃げた私。
うー。うーうー!うわーん!どうしよう…。明日からプロデューサーさんの顔見れないよぉ…。
四月二十六日
…。
……。
………えへへ。
顔のにやけが止まりません。これを書いてるのは嬉しいことがあった随分後だけど、それでも。
えへへー。
今日プロデューサーさんに会いました。まぁ当然なんだけど。でも昨日の事があったので私は顔を見れなくて俯いていました。そうしていると、
「…智絵里」
「…ふえ?」
「妹なら兄ちゃんに甘えるべきだ。これ千葉の常識な」
その言葉を聞いて私は思わずお兄さんに飛び付いちゃいました。も、もちろん腕にだよ?…それでも駄目かなぁ?私にとってはとても嬉しいことだったから思わずやっちゃった…。
恥ずかしい…。けど嬉しい。
今日、とても良いことがありました。
私に、目が特徴的で不器用だけど、心の優しいお兄さんができました。
ちなみに、お兄さんは、離れろっ!頼む、離れてください、お願いします、と言っていたらしいです。
私には聞こえなかったのだけど…。それに妹なら良いんじゃないかなぁ?
六月二日
今日お兄さんに四つ葉のクローバーをプレゼントしました。
このクローバには運命的な何かを感じたから。
公園を歩いていると道の端にクローバーが群生してました。そこをふと見ると、四つ葉のクローバーと目があったんです。たくさんのクローバがあるのにそれと目があったんです。だから嬉しくて、どこか運命的だと思っちゃったからお兄さんにプレゼントしました。
お兄さんは、ありがとう、大切にする。って言ってくれました。
お兄さんは嘘をつく人ではないので、きっと大切にしてくれます。
六月十一日
私の誕生日です!ついつい鼻唄を歌ってしまいます。
今日も良いことがありました!やっぱりあの日の四つ葉のクローバーは幸せを届けてくれたみたいです!それでは書きますね!
今日もお兄さんと仕事をしていて、それが終わったとき、突然お兄さんが丁寧にラッピングされた小箱を私に差し出しました。
これなんですか?と私が聞くと、誕生日だからな、と言いました。
私はお兄さんが誕生日を覚えていてくれるとは思ってなかったので、とても喜びました。
そろりとそのラッピングされた箱を両手で受け取り、開けても良いですか?と聞くと、女の子にプレゼントなんてしたことはないから期待するなよ、と恥ずかしそうに言ってました。
私は恐る恐る箱を開けます。
リボンを綺麗にほどき、包装紙を破らないように。
そして箱を開けるとそこには、
「四つ葉のクローバー…」
その形のペンダントが入っていました。とても綺麗です。
葉っぱの部分は緑のガラスが入っていて、きらきらと輝いています。
気に入らないなら捨てても…、
私はお兄さんが言い切る前に、嬉しいです!大切にします!と言いました。
これが家族の暖かさなんですね。とてもぽかぽかします。
嬉しさが度を越した私は泣いてしまいました。お兄さんは慌て始め、やっぱり嫌だったんじゃないか?と言いましたが、私の顔を横に振り、
「手を…握ってください…」
と、言いました。特に理由はわかりません。でもそうしたかったんです。
それから、お兄さんは戸惑いながらも手を、握ってくれました。
とても、暖かかったです。
パタンと。私はその日記を閉じた。
ふと右手を見る。
そこにはまだ暖かみが残っている錯覚さえあった。
あらから何時間と経っているはずなのに、まだ暖かい気がする。
まるで我が家の温度とは対極にあるみたい。とても冷たい家。両親は仕事で忙しくあまり家にはいない。だからこそ私はプロデューサーさんに求めた。家族としての暖かさを。
いつも小町ちゃんの話をしているプロデューサーさんはとても眩しく見えた。
こんなお兄さんいたらなぁっていつも思ってた。
そしてプロデューサーさんがお兄さんになってくれた。だから私は冷たい家の中でも、もう寒くて震えることもないです。そんなときはお兄さんを思い浮かべるから。
「…えへへー」
ペンダントを握るとそんな声が出る。端から見ると怪しい子ですが、私は嬉しいので仕方ないですよね?
これを握ると手だけじゃなくて胸がぽかぽかします。
やっぱりお兄さんっていいなぁ。
今日の智絵里はご機嫌である。
その理由にも察しはつく。ある日突然兄になってほしいと言われ、その事について意味はわからなかったが、内気な彼女が精一杯いった言葉だ。恋人になってくれならともかく、兄としてなら特に断る理由もない。なにより妹としてならもっと距離を縮められると思う。
別にやましい気持ちはない。
そして緒方が妹となるならそれ相応の呼び方をしなければいけない。なので智絵里と呼ぶことにした。…噛まなかったことを誉めてほしい。
ともかく、そんなことがあったので兄として妹にプレゼントをしようと思ったのだが、俺にそんなスキルもなく、小町に相談。
『え?妹にプレゼント?小町はお兄ちゃんの気持ちがあればうれしーよ?ん?アイドル?…お兄ちゃん勝手に妹増やさないでよね。小町的にポイント低いよ。でもお姉ちゃんと会わせてくれるならポイント増やすからね!で、えーと、プレゼント?んーその子が好きな物は?四つ葉のクローバー?変わってるね…。ならそれのキーホルダーとかは?あとは妹的には身に付けるものをもらうと嬉しいかも!』
という、参考にはしづらいコメントを貰った。プロデューサーが身に付けるプレゼントってどうなの…。いや、兄としてならおーけーか?
考えた結果、キーホルダーを探したのだが見つからず、シルバー専門店の前を通ったときにペンダントが目にはいった。そしてそれに引かれ、つい買ってしまった。
ついでにどうすればいいかと悩んでいたことも相談したのだが、快く受けてもらえたので結果的には良いことづくめだったと思う。
そうして今智絵里の首にはそのペンダントが下がっている。
どうやらこれが機嫌の良い理由らしい。
どうやら俺は自分が思っていたよりも単純なようで、妹が喜んでいることに俺も少し気分がよくなっているみたいだ。まぁ千葉の兄なら仕方ないよな?
今日はお兄さんも上機嫌みたいです。
いつもよりちょっと楽しそう。顔の表情は変わってないけど。
でもそんなことに気付けるなんて本当の兄妹みたい!と私の気分も上機嫌。…勘違いじゃなかったらいいなぁ…。
そんなことを考えていると、普段お兄さんの首には無いものに気づく。
「あれ?お兄さん、その…ペンダントは?」
「…ああ、智絵里から貰った四つ葉な、あれあのまましてたら枯れるだろ?だから専門店で頼んでペンダントにしてもらった。まぁガラスで閉じただけだけどな」
「……」
私は嬉しくなりました。
家族ってこんなに暖かいんですか?最近嬉しいことが多すぎて私はパニックです。
一人お兄さんが増えた。
ただそれだけで私はこんなにも幸せになれる。
私がプレゼントしたクローバーなんて道端に生えているものなのに、そんなものを大切にしてくれる。
いつもは端から見れば冷たく接してくるお兄さん。でもその内面は優しく、優しい。そして暖かい。大切なものを大切にしようとしてくれる。
妹を、智絵里を大切にしてくれる。
胸はどんどん熱くなる。
嬉しい。
嬉しい!
お兄さんが側にいてくれるなら私は頑張れる。
お兄さんが好きでいてくれるなら私は歌える。
お兄さんがお兄さんでいてくれるなら私は幸せになれる。
あの日の四つ葉はやっぱり幸せの四つ葉だったんだね。
「お兄さん、手を繋いでくれますか?」
「…ここでか?」
「…だめ…ですか?」
「うぐ…わ、かった」
「やた!」
……
「お兄さん」
「なんだ」
「手、離さないでくださいね」
「ああ」
「ずっと…ですよ…?」
「…兄妹だからな」
「えへへー」
強く握る。離れないように。
いつまでもきっと、私の手は暖かい。
前書きありました。前に書くのは嫌いです。本編だけを読みたい派ですので。
今回ネタを提供してくださった、夕凪 琥珀さんには感謝します。まるまる採用といいつつ、あれ、なんか違うくない?と思われた方、気にしない方がいいですよ?
思ったのと違う、キャラが違う、と思われた方には謝罪を。いつもいっていますがキャラの把握はボイス集とGoogle先生です。その程度なのです。ごめんなさい。
今回のようにこのキャラで書いてほしい、等ありましたら活動報告の次回作について、のほうへ書き込みをください。答えられるかはわかりませんが。
ともあれ皆さんの暇潰しになったのなら幸いです。
※名前修正しました。これだからにわかっていけませんね…