なんだこの世界 作:白米
人生、何が起こるか分からない、だからこそ面白い。
そう言った男が居たが、自分はそうは思わない。
何が起きるか分からない、確かに未来が見えていなければ分かるはずが無い。
しかし、その『何が』が、自分の生死を別つものだったら?
面白いと思える筈がない、誰だって死を恐れるものだ。
もし、それで楽しいと思える者が居るなら、ハッキリいって異常者だ、近寄りたくもない。
そう、自分は、恐れてる。
先が分からないから、明日自分が死ぬかも知れない。
そう思ってしまう。
じゃあ未来が見えたら。
明日迫り来る不幸を未然に防げるかも知れない。
死ぬ確率は、グッと減るだろう。
すこし、長かっただろう。
まぁつまり俺の言いたい事は____
「あっは……アハハハハはハハハハはは!!!!」
____未来が見えていたら、俺は血塗れで地に伏す事も無かっただろう。
その日、学生だった俺は部活動の帰りに友人達とゲームセンターに寄ったんだ。
皆で楽しく、笑いあっていた。
やがて日は沈み、辺りが暗くなった時に友人達と別れ、帰路につく。
その帰りの道中、薄暗い道の先に俺の通う高校の学生服を着た少女が居た。
月明かりに照らされた顔を、俺は知っていた。
それは、数日前に俺に、告白をしてきた少女だ。
その時は、大会が迫っていて他のことを気にする暇は無かったから、やんわりと断った。
その後は、お互い廊下で出くわしても少し気まずく頭を下げるだけだった。
今回も、すれ違いざまに少し会釈するだけだと思い、頭を下げ、そのまま終わると思った。
通り過ぎた時、背中側に重い衝撃を感じた。
首を動かし、後ろを見れば少女が俺にぶつかっていた。
それだけならまだ良かった。
「____……ぁ、あ?」
少女がぶつかった程度なら、人よりも少し鍛えている俺なら少しよろける程度だった。
しかし、なぜだろう、背中の一部が、熱い。
「____っ!?」
鋭い痛みが、背中から感じた。
ふと、背中に手を伸ばせば、生暖かい雫に濡れている。
血だ、血____俺は刺されたのだ。
未だ感じた事の無い痛みと、感じた事の無い恐怖が頭を支配した。
膝から崩れ落ち、倒れる。
ああ、痛い、呼吸するだけでも痛みが走る。
俺は、死ぬのだろうか。
「アハハハハ!これで!貴方は私のものよ____!!」
倒れ伏す俺の隣で、嗤う少女。
ぼやけた視界に映る彼女の目に光はなく、ただただ機械的に嗤う。
あぁ、一体どこで間違えたのだろう。
薄れていく意識の中、遠くに聞こえるサイレンの音と、少女の狂気に満ちた笑い声。
________ふと、目が覚めた。
うっすらと視界に映るものは、シミ一つ無い白い天井。
俺は、横になってるということはわかった。
ゆっくりと上体を上げるが、背中に僅かな痛みを感じ、起き上がることを諦める。
首を動かし別の場所をみる、点滴や医療機材が置いてある。
窓は空いているようだ、カーテンを揺らし、心地よいそよ風が頬を撫で、生きていると言う実感を与えてくれる。
「…………生きている。」
そう、俺は生きている。
安堵のため息を吐いて、ナースコールを押した。
その後すぐに駆けつけたナースと医者が俺に体調などの心配をしてくれて、改めて検査をすると言った。
傷の容態は、市販の包丁で少し深く刺されたが奇跡的に内臓を傷付けておらず、包丁は刺さったままだから出血は抑えられたらしい。
近所の方々が救急車を呼んでくれたようだ。
ナースに日付を確認したが、大会の1日前だった。
あぁ、少し深く眠りすぎたようだ。
その後、医者に少し歩く許可を頂いた。
少し長く寝ていたが故に、体は少しだけ、パキパキと音を鳴らした。
すっと、ゆっくり歩いて廊下をでる。
さて、特に行くあてもないのが……
ふらふらと歩いていて、気になる点が1つ見つかった。
気のせいか、そうでないのか。
すれ違い人の全員が、女性だった。
エントランスやすれ違う医者と患者達に男性が居ない。
暇だから試しにエントランスで人数を1時間、男性が通るか確認したが、ゼロである。
これは一体、どういうことだ。
部屋に戻り、ベッドの近くに置いてあった自分の鞄を調べ、携帯をとりだす。
特にやる事もないから、インターネットを駆使して暇を潰そう。
とは言っても検索するものも無いから、ニュースでも見てみよう。
自分が眠っていた間に何が起きたかの確認をした。
が、ここでもなにか違和感がある。
アイドルと言う単語が多すぎる。
自分の知る限り、アイドルというのはそこまで注目される物だったろうか。
しかも、女性アイドルが殆どである。
あぁ、それとなんでも女性が男性を痴漢したとかで逮捕されたようだ。
えぇ…逆だろそれ…
そういえば、散歩に出てから部屋に戻る前に沢山の視線を感じた。
気になる、もう少し調べてみよう。
男性、と検索したらすぐ目についたのは男女比である。
女性の方がかなり多い様だ。
俺が目覚める前の期間で何が起きた……!?
一つの可能性を、考えた。
もしかしたら自分は、パラレルワールドとやらに来たのではなかろうか。
もしくは夢オチ。
ぶっちゃけると夢オチというのが好ましいが、背中の傷の疼きが現実だと物語っている。
パラレルワールド、なんて非科学的な話だ。
悶々と思考を巡らせている。
もしかしなくても、面倒な事になってしまっているだろう。
警察が来た、曰く、何故ひとり血塗れで倒れていたのか。
詳しく調べたいとのこと、俺は、ありのまま起こった事を話した。
自分と同じ制服の少女に刺された、そう答えるしか無かった。
しかし警官が言う。
包丁に指紋は無く、警察に通報した者が言うには、高笑いしている少女など居なかった。
何処かに逃げたのかと思ったが、意識を失う前の事を思い出す。
確か、気絶する前には救急車のサイレン音が聞こえたはず。
その時少女はそこにいた、静かな住宅街に響く少女の声が、頭から離れない。
その後、気分が悪くなり、警官には帰って頂いた。
最後まで心配するかの様な目でこちらを見ていたが、気にする暇は無かった。
なんだか、疲れてしまった……今日はもう、眠ろう。
もぞもぞと、布団に潜り目を瞑った。
すぐに眠気に誘われて、意識を手放そうとした時。
ふと、警官と話した内容の中で、救急車を呼んでくれた人の名前を思い出し、今度礼を言いに行かなくてはと決意する。
名前は確か____
「________天海、春香。」
呟き、意識を手放した。
ん?適当だよ?