次の話ができたので投稿します!!
「で、今度は何の冗談だ?」
冷たい視線を3人に向け、稲葉は言い放つ。
【八重樫】と【永瀬】、【比企谷】は部室に戻ると、現状を確認。途中、
てんやわんやしたところもあったが、今は落ち着いている。
「いやー、魂っていうか中身が入れ替わっちゃったみたいだねー、わたし達3人」
あははと永瀬【俺】は信じられないくらいの軽ノリで明るく笑う。
「ひ、比企谷の笑顔って珍しくない?それに目もさっきより澄んで見えるし」
目をぱちぱちと瞬かせながら桐山が呟く。
「確かに。てか素材は良いんだから、いつもこんな感じならスゲー
モテそうな気がすんね」追随して青木も言う。
「普段の俺はそんなに酷いのか…」
それに目の事は言うな、俺だって気にはしているんだ。
「~~~~っんなことどうでもいいだろうがっ!話題を変えるな!」
どごんと、と稲葉が机に拳を落とす。
「――っつ……」
「今絶対、手、痛かったろ?」
「こんのっ、黙れ――」と稲葉は八重樫【永瀬】に向かって地獄突きをかまそうとして
「―ぇぇいいいい」とギリギリのところで自分の体をくるりと回転させ、貫手を八重樫に当たる軌道から逸らせた。
稲葉はバレリーナのような形で手を広げたまま固まる。羞恥のためか、怒りのためか、
顔がヒクヒクと痙攣していた。
「稲葉ん、楽しそうだね」
永瀬【俺】がぶすりととどめを刺した。
「今のはアレだ、太一が得意としてるぼそっと余計なつっこみをやったもんだから、
それに対し稲葉っちゃんが、いつもの感じで物理攻撃を加えようと思ったら、
姿かたちは伊織ちゃんじゃーん……って気づいて途中で自重したと予想するね、俺は」
「青木如きに上から目線で語られてる稲葉が憐れだわ……」
青木、桐山も続く。散々な言われようで本当に憐れになってくる。
「でもあんな愉快な稲葉は初めて見たな」
八重樫【永瀬】が思った事ををのまま言う。と同時にギロリと太一へ鋭い眼光を向ける。
「……後で覚えておけよたい……」
そこまで言いかけたところで、稲葉は焦ったように口をつぐんだ。
「稲葉ん、今、【永瀬伊織】を見ながら太一って言おうとしたよね?」
永瀬伊織、たぶん俺たちの中で唯一稲葉に対抗できる存在。
「ぐっ」と稲葉は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「それは……お前らが変な演技するから……」
「太一がさぁ、こんなに器用にわたしの、永瀬伊織のモノマネできると思う?」
【俺の姿】をした永瀬が、ずいと稲葉に迫る。姿形も、声も【俺】のものであるのに、
その仕草や話し方は、確実に永瀬伊織のものであった。
「稲葉、確かに信じれないかもしれないが現実に俺達は入れ替わりが起きてる。」
稲葉は俺と永瀬の言葉を聞くと、ぎりっと爪を噛んでから矛先を変える。
「唯と青木はどう思うんだ?昨日は2人して、いや、青木だけだったか、
魂が入れ替わってどうとかこうとか言ってた本人だろ?」
「ああ、間違いなく3人は入れ替ってるね。もち、唯もそう思うだろ?」
「うう……認めるしか……ないわね……」
「昨日はあれだけ否定していたのにか」憎々しげに稲葉が言う。
「だから断腸の思いよっ!あたしだって!」
ばんと机に両手を置いて、桐山が立ち上がった。
「おっ、その感じだと、一昨日の夜の入れ替りも認めるって事か」
へらりと青木に笑いかけられ、桐山は凄く嫌そうな顔をする。
「だって……やっぱりあれが夢っておかしいもの」
「おい……みんな本気で言ってるのか?」
稲葉の気持ちもわかる。『魂の入れ替わり現象』など、聞いただけで
承認できるようなものではないはずだ。
「お前らあっさり認めすぎじゃないか?もうちょっと慌てるとかあるだろ」
「いや~、これがなってみると『そうなんだ~』って感じなんだってば」
「ひき…永瀬、全く説明になってないぞ」
八重樫【永瀬】が間違えそうになりながらもつっこむ。
「あ、頭痛くなってきた……。しかしこのままだと埒が明かんのも事実、か。
もう一度確認するが、お前らは悪ふざけでもなんでもなく、ほんっっっとうに
人格が入れ替わったっていうんだな」
「ああ」と八重樫【永瀬】は強く頷く。
「なら今から【八重樫太一】にしか分からない事を聞くから、それは答ろ。
即答しか認めんからな」
「どんとこい」
「コンマ数秒で答えろよ」
なぜか稲葉は執拗にに念を押す。
「わかったって」
八重樫の言葉を聴き、大きく息を吸い込んでから、稲葉は早口で言い切った!
「最近太一が青木から借りて比企谷へ渡したアダルトビデオのタイトルは!?」
「『巨乳女子こ……』って何を言わせようとしてるんだよ」
いや、お前が何口走ってんだよ。
「だ、第一、稲葉には答えが分からないだろう」
「そこは青木が答え合わせをしてくれるだろ。っで、答えは?」
稲葉は真面目な顔をしていたが、目の奥にはどこか愉悦の色も見て取れる。
永瀬と桐山の様子を窺うと、桐山は顔を真っ赤にして八重樫を凝視し、永瀬は
「巨乳ねぇ……」と呟きながら俺たちにジト目を向けていた。うん、結構傷つくな…これ。
「っ……あ、あの稲葉さん。青木に耳打ちするという形で勘弁してもらえませんか…」
しばしの沈黙の後、稲葉はくいと顎を青木にしゃくる。多分いいぞという意味なの
だろう。八重樫は少しほっとした表情をしながら青木の側に行って正解を耳打ちする。
「どうだった、青木?」
「大正解であります、稲葉隊長!後、エロい単語が【伊織ちゃん】の声で聞けて
ちょっとおいしかったであります!」
……アホだ、青木のアホな発言に、永瀬【比企谷】は
「あれ?なにこれ?なんかすげー損した気分になる。後で金品請求しようかな」
とよく分からない感情を抱いているようだった。
「さて、うちの野郎共が巨乳好きと分かったところで、次は【太一の姿をした比企谷】
だが…お前はいいや」
あれ?今度は、はぶられた。何かさっきから俺の扱いが皆雑でHPがどんどん
削られているような…
「【比企谷の姿をした奴】が伊織かどうか確かめようか」
「まさか稲葉は俺たちの言うことか真実かどうか検証しつつ、さっき小バカにされた
復讐も同時進行させようとしているのか」
余りの恐ろしさに八重樫【永瀬】は戦々恐々としながらつぶやく。
「ぜ、絶対に稲葉だけは敵に回したくないわね」
どうやら桐山も稲葉への恐怖を深めたようだ。いや、前からこんなんじゃね?
稲葉はすくっと立ち上がると、座ったままの【俺】の姿をした永瀬の横に付き、
耳元で何かをぼそぼそと囁く。すると……
「ぶっ!?ごほっ……ごほっ……ちょ、い、稲葉んそれホントなの!?」
「本当だ」きっぱりと断言する稲葉。
「そ、そんな……そんなこと今言わなくたって……でも、こうやって私たちは大人に
なって行くんだろうね」
いったい何を呟いたんだよ稲葉…明らかに俺がするような顔じゃなくなってるぞ……
稲葉は表情を変えずに自分の席に戻ると、ぐっと背もたれに体重を預け、
一度天井を仰ぎ、呟いた。
「人格が入れ替わった、か……認めるよ」
おお、と稲葉が折れたことにより、俺たちからは歓声が上がっていた。
「演技でも比企谷があんなに表情豊かなリアクションを取れる可能性と、
人と人との間で人格が入れ替わる可能性を考えたら、後者の方が
まだありそうだということになった」
「その見解に俺はどうリアクションをすればいいんだ…」
てか他の奴らもその手があったかみたいな反応をするんじゃない。
まぁ自分自身でも否定は出来ないが…
「っで、伊織と太一で人格が入れ替わったってのは分かった。
…分かった事にしておくが、お前らはこれからどうするつもりなんだ?」
今更ながら稲葉は、当たり前に最も考えなければならないことを話題にだした。
「うへー、どうしますかな?」永瀬【俺】はへらへらと笑う。
「お前、なんで今日はそんなに能天気キャラなんだよ……」稲葉も呆れ気味だ。
「そう言えば青木たちの時はどんな感じだったんだ?入れ替わってた時間とか」
「確か、3、40分位だったと思う……よな、唯?」
「えっと、青木の言うとおりで1時間は経ってなかったと思うわ」
青木の振りに、桐山が不安そうに呟く。
「そうか…だったら俺たちももしかしたらそろそろ…いや、それ以外にも何か要因が……」
最後まで言い切る直前。ぶつりとコンセントを引き抜かれたかのように、俺の視界が、
意識が、途切れた。
「―おいっ!大丈夫かっ!」
そう叫ぶ声が、ガンガンと酷く頭に響いて、俺は眉間にシワを寄せながら目を開く。
暗闇は瞬時に消えうせ、先ほどとなんら変わらない部室の光景が目の前に―いや、違う。
今の今まで正面にいたはずの稲葉が斜向かいに見えるし、青木と桐山の位置も
変わってる。なによりも【俺】から見た視点に【比企谷八幡】がいなくなっていた。
ということはすなわち……
「「「元に戻った!」」」
ぱっと顔を輝かせた永瀬、八重樫と共に叫んだ。
「ホントかよ……」呟きながら稲葉はずるりと腰を滑らせていた。
結局その日も、最後に副部長の稲葉から
「現段階ではこの『人格入れ替わり現象』について、ここだけの話で留めて置くように」
とのお達しが下った後、お開きとなった。
やっと……やっと続きが書けました(泣)
思えばこの夏休みの期間、仕事に追われ、微妙に開いた時間で1行でも2行でも
少しずつ書いてここまでこれました!!
正直言って夏休みのバカやろー!!!
俺たちからしたら労働地獄だーって話です(笑)
まぁ雑談はこのくらいにして…
さて今回は稲葉が皆に振り回され、最終的には人格入れ替わりを受け入れる
話になっています。珍しく愉快な稲葉を楽しんで頂けましたでしょうか?
次回はついに物語の中枢を握るあいつが登場します。
これからまたゆっくり書き進めて行きますので応援宜しくです!!