俺がいるココロコネクト-ヒトランダム-   作:チャッキー!!

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大変お待たせしました、最新話ですどうぞ!!


そいつは告げる、なかなか面白い人間達と

「僕、その人じゃないですしね…」

 

 

「お前が、俺達の知る後藤じゃないって言うなら、お前は何者だ?」

 目の前にいるのが後藤ではないというのは、雰囲気と口調ですぐにわかった。

正直信じたくはないが、こいつの話を聞けば人格入れ替わりについて何か得る者

がある、そう感じた俺は【後藤の身体をしたなにか】へ問いかける。

 

「何者…何者って言うべきですかねぇ……。〈ふうせんかずら〉というのが、

僕の名前的なものですけど……」

「〈ふうせんかずら〉って…なんでそんなマイナーな植物の名前が出て来るんだよ」

 不満げに稲葉がぼやく

「…はぁ? …さあ? …まあ、立場で言えば『皆さんを観察する存在』

みたいな感じで…ああ…やっぱりもういいや。じゃあ、僕はただのしがんない

〈ふうせんかずら〉ということで…」

「俺たちを観察する存在? じゃ、本当のごっさんは今どうなってるんだ?誰か

【他の身体】に入ってると言うことなのか?」

「ああ…八重樫さんも理解が早くて助かる…。まあ、そうなんです。正確に言うと

僕の場合は入れ替わりでなく、ただ間借りしているだけにすぎないんですが…」

 間借り?つまり本体の後藤の意識は眠らせておいて、その間身体を使っている

と言うことなのだろうか…

 

「ああ…なんでこんな事喋ってるんですかねえ……。もう用件に入っても良いですか?

…というより入らせていただきます……」

 気怠るそうに、そして相手のことなど全く気にするそぶりのないまま

〈ふうせんかずら〉は話を始めた。

 

「まあ、皆さんが期待しているような説明ではないかもしれませんけど……じゃあ、

早速…。ええと……とりあえずこれから当分の間、皆さん6人の中で…時々アトランダムに

人格が入れ替わるんです。皆さんご苦労様です、って一応言っておきます。」

 ご苦労様といいながらもそんな事一切思っていないといったような口ぶりだった。

「誰と誰が入れ替わるかってのも、いつ入れ替わるかってのも、両方含めて

ランダム?」

 さっきから大人しく、そして以外に平静を保ったままの永瀬が問う。

むしろ普段より落ち着き払っていて、声色が冷たく感じられるほどだ。

 

「ああ…さすが永瀬さん。その通りなんですよ。で、そんなランダム人格入れ替わり

状態である皆さんを、僕が観察する……ただそれだけの話です。

ああ…観察すると言っても、四六時中皆さんのプライバシーを覗き見てるわけではない

のでご安心を。特定の条件の時だけしか見ませんし……。

まあこっちも見たくないですから……面倒くさいし…。」

 

 つまり面倒でなければどのようなプライバシーだろうが侵して観察すると…

さらっと恐ろしい事を言いやがったこいつ。

「とりあえずこれで事態の把握はできましたか?できないって言われても

特に何もするつもりないですけど」

「説明不足が過ぎるだろ……」

そのままの感想を八重樫が漏らす。と、今度は稲葉が尋ねる。

「ふー……、普通なら『なに訳わかんねえこと言ってんだ!』って言いたくなる

ところなんだが、訳がわからんことになってるのは事実だし、まずはお前の話に

乗っかって質問してやるよ。

 

『なぜアタシ達だ?』

『この事態はお前のコントロール下にあるのか?』

『これを終わらせるには?』

『お前の目的は?』

 

……本当はもっとあるが、ひとまずこれだけにしておいてやる。」

 いい質問だと俺は思った。こんな事態になったら普通は

『どうやったらこんな事ができるのか』と聞きたくなるが、それは無意味な

質問でしかない。俺たちにとって最も重要なのは、この現象の終わらせる方法だ。

 

「そうですね……。まず一つ目に関しては『たまたま』

としか言いようがないですかねかぇ。ああ……正確に言えば、

たまたま皆さんが『なかなか面白い』からになるのかなぁ」

「なんだよ『なかなか面白い』って…」八重樫が呟く。

「いやいや、だって皆さん、普通よりもちょっとだけ面白いじゃないですか…?

…ああ、でもそうか。自覚ある人とない人がいるんですよねぇ…」

 

〈ふうせんかずら〉の言葉は、俺達6人全員に向けられているようだった。

 それはなにを意味するのか。

 

「……まあ、適当な感じでしばらく入れ替わって、『そこそこ面白かったなぁ』

という感じになれば、その時点で終わりますから……」

「『そこそこ面白かった』って……完全にお前目線だよな。

少なくとも終わりはお前のコントロール下にあるって事、か。

…じゃあこの現象を引き起こしたのも、お前って事でよさそうだな」

 稲葉が断定口調でズバリと言った。

 

「ああ…ばれちゃった…。というか今の『ばれちゃった』で本格的にばれて

しまいましたね……とにかく皆さん、あんまり気にしないで、普通に生活してて

ください。心配しなくても、別に死にやしませんから」

「もし仮にだが、この現象が周りに知れた時、俺たちはどうなる?」

 もしもこの不可思議な現象の事がばれてしまい、それによって罰のような

何かが起きてしまうのなら、俺たちは入れ替わっているこれまで以上に注意

しないといけなくなる。

 

「…さあ?まあ…そこについては何かが起こる…とだけ言っておきましょうかねえ…」

 答えになってないだろうが…

「…後、『入れ替わり』がどういう原理で成り立ってるいるかとかそういうのも、

考えない方がいいですよ…、皆さんじゃ分かりませんし、皆さんがやるべき主題は

そこじゃあないんですよ。自分自身について考えてください。

その方が早くこの入れ替わりも終わりますので…」

 

 今の状況をただあるがままに、受け入れろと言うつもりなのだろうか。

こんな異常な状況を。

「じゃあ…言い忘れてることもないような気がする…

というかもうないということにして帰ります……。じゃあ頑張って下さい。

心の上っ面のところで、ちょっとだけ応援してますから……。」

 

 くるりと体を翻し、【後藤】は、〈ふうせんかずら〉はドアの方に近付いていく。

 本当に、俺達の都合など微塵も考えることなく、自分のペースで言いたいことだけを

言って、自分勝手に去って…

「オイ、待てよ」

 …行くような奴を、事態の完全掌握を信条とする稲葉が許すはずもなかった。

 稲葉は早足で歩み寄ると、〈ふうせんかずら〉の肩を掴んだ。

 

「とりあえず黙って聞いてやったが、こっちにはまだ聞きたいことが山ほど

あるんだよ。さっき言った質問にも全然答えて貰ってないしな」

恐れも感じさせぬもの言いだった。

「こんな意味わかんないことされてるのに、このまま行かすのは

ちょっと、ねぇ」

 稲葉の背後で、指を鳴らしながら永瀬が続く。

「あの、だからみなさんがすべきことはそういうのじゃないんですけど…」

 困ったというよりも、ただ純粋に面倒そうな態度で、

〈ふうせんかずら〉は稲葉に言う。

 

「お前の都合だけで物事が進むと思うなよ!」

 稲葉が強引に振り向かせようと力を込める。

 ドゴン。

 肉と肉、いや、その奥の骨と骨がぶつかり合う音。

同時に稲葉の体が宙を待った。

 それこそアクション映画のように、後ろにいた永瀬を弾き飛ばして吹っ飛び、

進路上にいた青木を巻き込んだ。

 

 パイプ椅子が、机が倒れ、悲鳴があがる。

「まぁ不本意ですけど、一回こう見せ付けちゃった方が手っ取り早いですかねぇ……。

いや、したくないのは本当ですよ…だって面倒くさいし」

 一瞬見せた鋭い雰囲気を、同じく一瞬で弛緩させ、また元の気怠げな様子で

〈ふうせんかずら〉は言った。

「お前ら……はっ、そいつを……行かすな……」

 息をするのも苦しそうな稲葉が、必死に掠れた声を絞り出す。

 

「稲葉っちゃん!まだ無理しない方がいいって!」

 稲葉を介抱しながら青木が言う。

「…俺、基本的に暴力反対だけど、ここは力尽くもやむなしだと思うな」

 八重樫はそう言い、歩み出る。俺も後を追うように無言で立ち上がる。

「待って、比企谷、太一。ここはあたしに、任せて」

 真っ白なブラウスに包まれた腕を差し出し、俺たちの前進を桐山が止める。

 

「でも、俺がやらなきゃ―」

「太一がやらなきゃならない理由は、ないよ。それは比企谷も同じ」

 確かに俺や八重樫が出るより、女子空手界で『神童』とまで呼ばれていた

桐山の方が恐らく、強い。

 でもその声は少し、震えていた。

 だから。

「なら、一人でも多い方が―」

「邪魔」

言い切る前に却下された。

「唯!ならオレが援護を―」

「消えて」

 いつだって青木に対しては容赦がなかった。

 

 桐山が構えを取り、一呼吸置く。それだけで桐山の発する雰囲気は豹変した。

 部屋の中に猛禽類が一羽。そんな連想が思い浮かぶ程の空気を纏っていた。

「ごっさんごめんっっっ!」

 鷹が獲物を狩るかのような跳び蹴りが飛んだ。

しかしその蹴りは【後藤の姿】をした〈ふうせんかずら〉に簡単に止められてしまう。

 

 瞬きすら許されないような蹴りだったはずだがそれを当然の如く防御する。

この時点で俺のような常人にとっては驚きだったのだが、

二人の勝負は更に想像の範疇を超え、着地を待つことすら許さなかった。

桐山が地面へ落下しながら振り卸気味に拳を振り出す。

 

が、しかし。

 

〈ふうせんかずら〉は事もなにげに先ほどとは反対の手で桐山の右手首を掴む。

簡単そうにやっているが、それが超人めいていることくらい、俺にもわかる。

桐山は両足が地面に着くと同時に、腰が抜けたようにへたり込む。

右手を掴まれただけで、しかも力を入れられている訳でもなさそうなのに、

桐山は完全に戦意を喪失していた。

 俯き、ぶるぶると震える姿は、強者のイメージとは程遠く。とても弱々しく見えた。

あれは強い相手に怯えているのではなく、まるで……

 

「唯っ!」「桐山!」

 俺の思考を遮るように、永瀬が、そしてほんの僅かに遅れて八重樫が、桐山と

〈ふうせんかずら〉の元へと駆け出す。

 まさにその刹那。

 

―視界が歪んで消えた。

 

 次の瞬間、俺は〈ふうせんかずら〉に腕を掴まれていた。

一瞬混乱するが、すぐに桐山と入れ替わった事を理解する。

だがそれと同時に掴まれている腕から強烈な悪寒が走った。

俺は急いで腕を振り払い、〈ふうせんかずら〉から距離を置き周りの状況を確認する。

 

「げほっごほっ…稲葉ん、こんな……キツっ…」

 今の口調から察するに【稲葉】に永瀬が入っているのか…

そして【永瀬】には桐山が入っているようだ。さっきまでの【桐山】と同じように

身体を震わせ、顔面を青白くさせていた。

「あれ……もしかして…このタイミングで入れ替わり?これはちょっと…

面白かったかも…」

 混乱状態に陥っている俺たちを見下ろし、言葉とは裏腹にそれほど面白く

なさそうな顔で〈ふうせんかずら〉は言った。

「ああ…じゃあ、ちょうどよさそうなので今度こそ帰ります……」

 そう告げると、〈ふうせんかずら〉はドアに手を掛ける。

 

「オイ、一つだけ答えていけ」

 そう言って〈ふうせんかずら〉を【俺の姿】をした誰かは呼び止めた。

「アタシ達にお前を止めることはできないだろう。だから問いたい。お前に…

〈ふうせんかずら〉にもう一度会えるチャンスはあるのか?」

「…どうですかねぇ、これが終わる時にもう一度あえますかねぇ……。

まぁ保障はしませんけど…。ああ、だからこの…【後藤さん】でしたっけ?

―を絞り上げるのは止めてあげてくださいよ…。」

「そうかい。ならお前に反撃ということも難しい、か。ふん、本当にそういう

話じゃなさそうだな……。ぶっ潰してやりたかったのに、残念だよ〈ふうせんかずら〉」

「じゃあ…ご武運を……」

 

 そんな言葉を残し、一方的に不条理を押し売りするだけ押し売りした

〈ふうせんかずら〉は、部屋から出て行った。

 

 

 

 ちなみに、一応確認しなければという事で、しばらくしてから職員室に行くと、

そこにはいつもとなんら変わりない文研部の顧問、後藤龍善の姿があった。

さっきまで何をしてたか問うと…

 

「なにってこの書類を仕上げようとさっきからずっと頑張って……あれ?

おいっ、何でコンだけ時間経ってるのに全然進んでないんだ!?ミステリーだ…ん?

なんか左腕が痛い……。おおう!?妙に赤くなってるぞ!?……待てよ?

なんだ、ただ俺が作業中に変な体勢で寝てしまってだけだな、いやー参った参った」

 

 なんて能天気な発言をしやがった。

この発言には俺もイラっと来たが、稲葉は堪忍袋の尾が切れたらしく、

職員室にて後藤へヘッドロックをするという強行に出るのだった。

 




皆さまお久しぶりです、チャッキーです。
前回の登校から実に5ヶ月がたってしまいました…

この小説を後書きまで読んでいただいて本当にありがとうございます。
これからも投稿間隔は空いてしまうと思いますが、温かい目で見守ってください。

それでは今回はこのあたりで終わらせていただきます。
次回も時間がかかってでも必ず投稿します!!
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