かなりの期間が空いてしまいましたが、続きができましたので投稿します。
それではどうぞお楽しみください。
Side of 八重樫太一
「もうわかっているとは思うが、今日集まって貰ったのは他でもない、
今週一週間の大反省会をするためだ!」
気合が入り過ぎて怒気を含んだような稲葉の言葉に対して、永瀬、桐山、青木は思い思いの返答をする。
〈ふうせんかずら〉と相見えたのが先週の金曜日で、それから一週間が経過して本日は土曜日、俺たち文研部のメンバーは1人を除いて稲葉宅に集合していた。
「ところで、なんであの腐った目のバカは来てないんだ」
「タリいだって…ってあいた!?何で俺叩かれたの今?」
「なんか今の言い方が比企谷に似ててムカついた」
相変わらず稲葉の青木に対しての接し方は理不尽だ。
「はぁ…とりあえず比企谷は今度会ったらしめるとして…」
「しめるって…まぁ自業自得だから仕方ないわね…」
稲葉の発言に桐山はじゃっかん引いていた。
「仕方ない、今日はこの五人で話を進めよう。ではまず…ん?」
どこかの部屋から電話の鳴る音が響く。
「スマン、ちょっと電話に出てくる。大人しく待ってろよ」
まるで小さい子供に対するような言い草を残し、稲葉は部屋を出て行った。
「にしても、相変わらず稲葉っちゃんの部屋は『らしい』よな。以前来たのは、合宿という名の遊び旅行の日程を決める時だったっけ」
「確かあの時って6月位だったからまだヒッキーが入部してない時だったよね?」
「そういえばそうだったわね。あの時も思ったけど稲葉はいいわよね…こんなに広い1人部屋があって。」
「確かに、6人も人がいて狭さを感じないのはすごいな」
「あたしも最近やっと1人部屋貰えたけど、すっごい小さいから必要な物置いたらスペースほとんどなくなっちゃうし、おまけに妹が自分の部屋にはテレビがないからってしょっちゅう居座られるし。てゆーかあいつ最近無駄に大きくなりやがって…」
そこで一息つくと、床にぺたんと座り、机の上のお菓子をぽりぽりしながら
「まあ小さい方が可愛いと思うからいいんだけど」
と小さく呟いた。
「それは胸の話か?」
俺は思ったままを口にしていた。と、
「てぇぇぃ!」
クッキーを顔面に投げつけられる。予想外に痛かった。
「なんでそうなるのよっ!身長に決まってるじゃない!わ、わかった。いつも胸のことばかり考えてるからそうなるのね……!太一は違うと思ってたのに…。そこのエロがっぱと同じだったなんて…」
「そこのエロがっぱって俺の事だよね…?一応否定させてもらって―」
「却下」
こんな扱いのされ方が定着している青木が憐れだった。
「おうおう、クッキーをそんな風にこぼしてると稲葉に怒られるよ」
「ああっ、そうだわ!エロがっぱ達のせいで稲葉にお仕置きを喰らうなんてごめんよ」
永瀬に言われ、這いつくばってせっせとクッキーのカスを拾い集める桐山。自分が食べている時に落としたクズにも気が付いたらしくそれも拾い集めていく。
そして―
「ゴミを拾う唯が、方向転換していく姿を、男達二人はパンチラを期待しつつ凝視するのであった」
永瀬が勝手に小説の地の文風に一言入れた。
「な、何を言ってるんだ永瀬。俺はそんなこと…」
「くそう!あと少しだったのに!」
俺の横にいたのは救いようのないバカ正直な…いや、正直者のバカだった。ばっ、と慌ててワンピースの裾を押え、その場に座り込む。その後すぐに、顔を赤く染め上げながらぷるぷると震えだす。
「ダメだって、唯!散らかすと稲葉んに怒られちゃうって!」
ゆっくりとクッキーの入った皿に手を向かわせていた桐山を永瀬が制止する。自らがこの状況を生み出した張本人だが、ふざけっぱなしではなく、蒔いた種は自分で刈り取る―
「だからこの『ずっしり重みのある低反発クッション』を使うんだ!」
―訳なんてなかった。
「永瀬っ!俺にはそっちの方が被害拡大するように見えるぞ!?後ずっしりした重みはヤバいって!」
だが、その叫びも虚しく、永瀬は低反発クッションを「あっはっは」
と高笑いしながらトス。その落下地点で、桐山が飛翔しながら回転する。
しかしそんな派手な動きをすれば必然―。
「あ、パンチラ」
…青木の最後の一言で、桐山の回転に更に捻りがが加えられた。
「…ん?どこだここは―」
「ファイヤァァァァ!」
青木が何かを言いかけたところで、桐山の蹴りがクッションへヒットし、青木へめがけて飛んだ。
「どはぁ!」
青木が真正面からクッションを受け、吹き飛ばされる。
と同時にドアが開き、
「オイ、なに騒い―」
ぼすんっ。
青木に当たり、勢いが弱まったとはいえ、結構な速度で宙を舞うクッションが、見事稲葉の顔面を直撃した。
そしてコンマ数秒の時間が経ち、クッションが下へと落ちていく…
その先に、鬼がいた。
他の四人は抗弁することもできず、ただただ震え上がった。
「…覚悟のできた奴から手を挙げようか……!」
―ピンポーン―
「誰だこんなタイミングで家に来る奴は!?」
突然のインターホンにより、助かった…と思ったのもつかの間、戻って来るまで覚悟して待ってろと言い残し、稲葉は玄関へと向かって行った。
結局、何故デコに赤い痣をつくった比企谷を連れて戻ってきた稲葉は、俺と永瀬にデコピン一発、桐山が二発、青木に二発とビンタ一発喰らわせるのだった。
Side of 比企谷八幡
俺は今、稲葉の家の前でインターホンを鳴らすまいか悩み、たたずんでいた。傍目から見たらただの不審者にしか見えないな…これ…
何故今更ながらこんなところにいるのかと言うと、最愛の妹である小町に家を追い出されたからである。
どうやら八重樫との電話でのやり取りをたまたま近くで聞いていたようで、
「せっかくの友達との約束をボイコットするなんてとんだゴミイちゃんだね」
等ととても冷たい笑顔で言われたのだ。
正直、とても怖かったです。
さて、本当にこのまま合流して良いもだろうか…多分、今さら合流しようが
しまいが必ずどこかで痛い目をみる。それなら…
「よし、どこかで暇を潰して帰るか」
そう心に決め、振り向いた瞬間―世界が暗転する―
「…ん?どこだここは―」
「ファイヤァァァァ!」
再び周りが見えるようになり、すぐに飛び込んできた光景はパンツ…ではなく、
宙を舞う桐山が、俺に向け今まさにクッションを蹴り出そうとしている所だった。
そしてコンマ数秒の後に顔に衝撃が走る。
―そこでまた、視界が暗転した―
直前の出来事に元の体に戻ってすぐ、ふらついてしまい、直ぐ後ろにあった
インターホンに頭をぶつける。
そして…
―ピンポーン―
「誰だこんなタイミングで家に来る奴は!?」
稲葉の怒号が聞こえる。あぁもう、後戻りはできなくなってしまった…
結局、鬼の形相で出てきた稲葉は、俺の姿を見るなり全力で頭を叩き、デコピンを二発喰らわせた後、自らの部屋へと引きずっていくのであった。
「さて、それじゃ、そろそろこの一週間の反省に入ろうか」
そんなこんなで反省会は始まった。
「まず、初歩中の初歩!誰か異性と入れ替わっている時、男と女のトイレを間違えたことのある奴っ!」
「「「「はいっ!」」」」
俺と稲葉以外全滅だった。
「何故間違う!?男と女で入れ替わったら注意すべきことナンバーワンだろ!べったべた過ぎてネタにもならんぞっ!」
「やっぱ癖がねー」
永瀬は笑いながら答える。
「笑うな、永瀬。おかげで俺たちは高校生になってもトイレを間違える変人だと思われているんだぞ…」
それが原因なのか、青木は変態扱いをされ、俺に至っては目が腐った犯罪者扱いだ…。
あれ、自分で言っててなんだか悲しくなってきた。
「あ、それで提案あるんだけど、みんな入れ替わってないうちに、もっとトイレ行っとかない?」
桐山が顔の横あたりで手を挙げながらいう。
「だってあたし達女子が【太一達】になってる時、トイレに行きたくなったら……必然的にあのおぞましいものを見なきゃいけないのよっ!いやあああ!」
思い出しただけでもダメージを受けたようで、桐山は鳥肌を揉み消すように自分の腕を撫でる。
「あんまり気にしなければ大丈夫だよ、唯。私なんてもうもう立ちションできるようになったしね!」
へらへらと笑って言う永瀬。いや永瀬はもっと気にしてくれ…
「まぁ、その点については分かった。俺たちも気にかけておく」
「あ、うん。ありがとう、太一」
「しかし、それよりもアタシ達の貞操というか体は大丈夫なのか…?」
おふざけ調子から一転して、今度は真面目な雰囲気で稲葉が尋ねる。
それに関しては、はっきりと断言することができる。
「大丈夫だ。なあ青木、比企谷」
「あぁ」
「あー、確かに自分が【女の子の身体】になるんだもんなー、あんなことやこんなことやってみたくなるよなー……って、なに?皆さん普通にドン引きしないでよ。それはやってないって…。道徳的にまずいでしょ…。いやホントだって。その刺すような視線止めてくれよ、ははは……」
虚しげな青木の笑い声が、室内に反響する。
「俺はなにもしてないぞ」
「俺もだ…」
「太一や比企谷は…まあ、そう言うなら、な」
一応稲葉は認めてくれるようだ。
「もちオレも―」
「……本当か?」
稲葉が疑いの眼差し全開で青木を見据える。
「ホントだって!こういう時こそ信頼関係ってのが重要になるじゃん!だからそんなバカな真似はしないって」
「―そ…うだな」
それは一瞬だけれども、稲葉は言葉に詰まって、苦いものを飲み込むような顔をしたのを、俺は見逃さなかった。
いかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら幸いです。
それでは次の投稿まで、またしばしお待ちください。
では最後に一言だけ…
仕事が忙しすぎて書いている暇がない・゜・(ノД`)・゜・(笑)